スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

引っ越し

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「……なあ、そろそろ宿、変えたくないか?」

ガアラがそう切り出したのは、朝食を食べ終えた直後だった。
ギシギシ鳴るベッド。薄い壁。慣れたとはいえ、やっぱり少しストレスだった。

「いいよ。実は私もそろそろ限界だった。
隣の部屋のいびき、夜中に何回殺意わいたか……」

「だよな……。じゃあ、次の宿探すか」

「――じゃなくて、家。借りた方がいい」

「家?」

「あんた、冒険者だし、荷物も多いでしょ? 
訓練だって室内より外の庭でできる方がいいし。
自炊もできるし、洗濯だって干せるし――」

「え、なに、急にやけに現実的……」

「生活力ナメないでよ。
っていうか、私が何回あなたの洗濯物拾ってると思ってんの」

「すまん……」

「というわけで、不動産屋行くよ。街の東の商店通りにあるって聞いた」

 



不動産屋『バレスト物件管理所』。

店先には「今週のおすすめ物件」などの手書き看板がずらりと並んでいる。

中に入ると、品の良さそうな中年の女性が丁寧に迎えてくれた。

「はいはい、お探しですね? 冒険者さん向け? それともご夫婦で?」

「――夫婦じゃねぇです」

「そういうことじゃないんです! ふたりで住める場所を探してまして!」

リィナが顔を赤くして慌てて否定するのを、店員がにやにやと見ている。

数件の物件情報をもらい、その場で内覧に出る。

 



街の喧騒が少し遠く感じられる、南の端の一画。
庭付きの小さな一軒家を見学していたガアラとリィナ。

「風通し悪くないし、部屋の数もちょうどいい。……収納は少なめだけど、まあ許容範囲かな」

「……なあ、何でリィナが主導してんだよ。不動産屋への注文、ぜんぶおまえがやってるじゃん」

「は? 何言ってんの?」

リィナが振り返る。その目は、いつになくまっすぐだった。

「私も住むけど? ――文句ある?」

「…………ないです」

「よろしい」

リィナは当然といった風に、もう一部屋の窓を開けて空気の流れを確かめている。

 



物件名:シュトラ通り南端・庭付き一軒家
・2部屋+台所+収納
・簡易家具付き(ベッド・棚・机)
・裏庭に干場あり
・魔石式ポンプ水道つき

> 【敷金:銀貨10枚】
【月額:銀貨5枚】 



 

「……ちょっと高いけど、しっかりした家だな」

「この辺りじゃ相場より安い方だよ? 庭ありでこの条件なら悪くない」

「そうか……」

最終的に、ふたりはその場で仮契約を決めた。
拠点ができるという安心感と、少しの照れくささを残したまま。

 



帰り道、ガアラがぽつりと漏らす。

「おまえ、最初から家借りるつもりだったな?」

「……うん。あんたの荷物が増えてくの見てたら、宿じゃ限界来ると思って。
それに――自分の居場所って、大事でしょ?」

その言葉に、ガアラは「なるほど」と頷き、静かに笑った。

こうしてふたりは、新たな拠点での生活を始めることになる――。


---

契約を済ませてから二日後。
最低限の荷物と、いくつかの生活用品を持って――ふたりは新居へと引っ越した。

 

「……やっぱ広いな」

ガアラが荷物を玄関に下ろして、周囲をぐるりと見渡す。
質素なつくりだが、木の香りがほんのりと残っている。

「このくらいの広さがちょうどいいんだよ。動きやすいし、音も響かない。訓練するにも困らない」

「そっちがメインなのか?」

「当然でしょ」

 



初日は、掃除と片付けであっという間に過ぎた。

リィナは手際よく布を使って棚を拭き、ガアラは物干し台の設置や荷運びを任された。

「はい、あんたのスペースこっち。あたしはこの部屋使うから」

「……分かってたけど、決定権ないな俺」

「言っとくけど、こっちの部屋の方が朝日入るからね。私が先に目覚める方がいいでしょ?」

「なるほど、合理的……っつーことにしとくか」

 



夕方、簡単な夕食を買いに出て、パンと干し肉、スープの素、そして少しだけ野菜を買い込んだ。

「ガアラ、火、頼んだ。私は鍋洗っとく」

「はいよ。……火魔法アプリ、ファイア・弱・短時間」

ボッ、と小さく鍋の下に火が灯る。

「……あんた、そのスマホの使い方、もう完全に主婦だね」

「いや、これが便利すぎるんだよ。ボタン一発火加減調整付きって、文明の勝利」

「はいはい。現代技術の神様に感謝だね」

ふたりで笑いながら、スープの香りが部屋を包んでいく。

 



その夜。

ガアラはベッドに横になりながら、ふと天井を見つめて呟いた。

「なんかさ、ちゃんと“帰る場所”って感じするな。宿じゃなくて」

「……うん。わかる。
こういう時間があると、少しだけ安心できる」

隣の部屋から聞こえてくる、リィナの小さな声。

扉一枚隔てた静かな空間に、優しい風が流れていた。

(明日も頑張ろう。戦うためだけじゃなくて――生きるために)

 

こうして、“ふたりの拠点”での生活が静かに始まった。


新居に引っ越して数日が経ち、落ち着いた生活の中で、ガアラはスマホを確認していた。

その中に――見慣れないアイコンがひとつ。

> 【スキル改造アプリ】
※スキルを分解・強化・合成する特化型アプリです。
※アプリ起動にはMPを消費します(内容によって変動)



「……おいおい、これ、またとんでもないやつきたな……」

アイコンをタップすると、AR画面が浮かび上がる。

> 【ようこそ、スキル改造アプリへ】
現在の保有スキルを元に、以下の操作が可能です:




---

◆選択可能なモード

1. スキル強化
 → 対象スキルの性能を上げる(条件を満たすと派生スキルに進化)


2. スキル融合
 → 同系統のスキルを合成し、新スキルを生成(例:剣術+見切り → 剣閃反応)


3. スキル特化
 → スキルの一部性能を捨てて、特定効果に特化させる(例:剛力 → 一撃特化型 or 継続強化型)


4. スキル名カスタム(外見・演出変更のみ)




---

「こっちが強化、こっちが融合……ってことは、“スキルそのものを編集する”ってことか。チートすぎる」

そのとき、画面にスキル一覧が自動表示される。

> 【現在保有スキル一覧】
・HP回復量増加 Lv6
・剛力Lv5
・剣術Lv5
・見切りLv3
・隠密Lv1



「……試すなら、“見切り”かな。実戦でも何度も助けられてるし、伸ばせるなら伸ばしたい」

ガアラは「スキル強化」を選び、「見切りLv3」をタップした。

> 【条件確認中……】
・実戦発動回数:62
・仮想戦闘成功カウント:28
・連続回避反応:複数回確認

【スキル進化条件達成】
→ 見切りLv3 → 「予知回避」Lv1 へ進化可能



「予知回避……!? 名前からしてヤバそう……」

> 【この改造にはMPを80消費します。実行しますか?】
▶ YES / NO



ガアラは一瞬だけスマホを見つめ、迷わずYESをタップした。

> 【スキル改造完了】
→ 「見切りLv3」 → 【予知回避Lv1】に変化しました。




---

◆新スキル:予知回避Lv1

効果:
敵の初撃モーションを0.3秒前に“直感的に察知”し、
一定確率で自動回避/超反応回避行動に移行できる。

補足:
・ステップ、スウェー、しゃがみなど状況に応じた最適動作を自動補正
・自動発動時はスキル演出エフェクトあり(AR視覚支援)


---

「これは……使いどころ、間違えなきゃとんでもねぇ盾になりそうだな……」

ガアラはスマホを握りしめ、次の実戦を思い描く。

次は「剣術」か?
それとも「剛力」を、限界まで研ぎ澄ますか――

“育てる”という選択肢が、彼に新たな可能性を与え始めていた。


---
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