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第1章
引っ越し
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「……なあ、そろそろ宿、変えたくないか?」
ガアラがそう切り出したのは、朝食を食べ終えた直後だった。
ギシギシ鳴るベッド。薄い壁。慣れたとはいえ、やっぱり少しストレスだった。
「いいよ。実は私もそろそろ限界だった。
隣の部屋のいびき、夜中に何回殺意わいたか……」
「だよな……。じゃあ、次の宿探すか」
「――じゃなくて、家。借りた方がいい」
「家?」
「あんた、冒険者だし、荷物も多いでしょ?
訓練だって室内より外の庭でできる方がいいし。
自炊もできるし、洗濯だって干せるし――」
「え、なに、急にやけに現実的……」
「生活力ナメないでよ。
っていうか、私が何回あなたの洗濯物拾ってると思ってんの」
「すまん……」
「というわけで、不動産屋行くよ。街の東の商店通りにあるって聞いた」
◆
不動産屋『バレスト物件管理所』。
店先には「今週のおすすめ物件」などの手書き看板がずらりと並んでいる。
中に入ると、品の良さそうな中年の女性が丁寧に迎えてくれた。
「はいはい、お探しですね? 冒険者さん向け? それともご夫婦で?」
「――夫婦じゃねぇです」
「そういうことじゃないんです! ふたりで住める場所を探してまして!」
リィナが顔を赤くして慌てて否定するのを、店員がにやにやと見ている。
数件の物件情報をもらい、その場で内覧に出る。
◆
街の喧騒が少し遠く感じられる、南の端の一画。
庭付きの小さな一軒家を見学していたガアラとリィナ。
「風通し悪くないし、部屋の数もちょうどいい。……収納は少なめだけど、まあ許容範囲かな」
「……なあ、何でリィナが主導してんだよ。不動産屋への注文、ぜんぶおまえがやってるじゃん」
「は? 何言ってんの?」
リィナが振り返る。その目は、いつになくまっすぐだった。
「私も住むけど? ――文句ある?」
「…………ないです」
「よろしい」
リィナは当然といった風に、もう一部屋の窓を開けて空気の流れを確かめている。
◆
物件名:シュトラ通り南端・庭付き一軒家
・2部屋+台所+収納
・簡易家具付き(ベッド・棚・机)
・裏庭に干場あり
・魔石式ポンプ水道つき
> 【敷金:銀貨10枚】
【月額:銀貨5枚】
「……ちょっと高いけど、しっかりした家だな」
「この辺りじゃ相場より安い方だよ? 庭ありでこの条件なら悪くない」
「そうか……」
最終的に、ふたりはその場で仮契約を決めた。
拠点ができるという安心感と、少しの照れくささを残したまま。
◆
帰り道、ガアラがぽつりと漏らす。
「おまえ、最初から家借りるつもりだったな?」
「……うん。あんたの荷物が増えてくの見てたら、宿じゃ限界来ると思って。
それに――自分の居場所って、大事でしょ?」
その言葉に、ガアラは「なるほど」と頷き、静かに笑った。
こうしてふたりは、新たな拠点での生活を始めることになる――。
---
契約を済ませてから二日後。
最低限の荷物と、いくつかの生活用品を持って――ふたりは新居へと引っ越した。
「……やっぱ広いな」
ガアラが荷物を玄関に下ろして、周囲をぐるりと見渡す。
質素なつくりだが、木の香りがほんのりと残っている。
「このくらいの広さがちょうどいいんだよ。動きやすいし、音も響かない。訓練するにも困らない」
「そっちがメインなのか?」
「当然でしょ」
◆
初日は、掃除と片付けであっという間に過ぎた。
リィナは手際よく布を使って棚を拭き、ガアラは物干し台の設置や荷運びを任された。
「はい、あんたのスペースこっち。あたしはこの部屋使うから」
「……分かってたけど、決定権ないな俺」
「言っとくけど、こっちの部屋の方が朝日入るからね。私が先に目覚める方がいいでしょ?」
「なるほど、合理的……っつーことにしとくか」
◆
夕方、簡単な夕食を買いに出て、パンと干し肉、スープの素、そして少しだけ野菜を買い込んだ。
「ガアラ、火、頼んだ。私は鍋洗っとく」
「はいよ。……火魔法アプリ、ファイア・弱・短時間」
ボッ、と小さく鍋の下に火が灯る。
「……あんた、そのスマホの使い方、もう完全に主婦だね」
「いや、これが便利すぎるんだよ。ボタン一発火加減調整付きって、文明の勝利」
「はいはい。現代技術の神様に感謝だね」
ふたりで笑いながら、スープの香りが部屋を包んでいく。
◆
その夜。
ガアラはベッドに横になりながら、ふと天井を見つめて呟いた。
「なんかさ、ちゃんと“帰る場所”って感じするな。宿じゃなくて」
「……うん。わかる。
こういう時間があると、少しだけ安心できる」
隣の部屋から聞こえてくる、リィナの小さな声。
扉一枚隔てた静かな空間に、優しい風が流れていた。
(明日も頑張ろう。戦うためだけじゃなくて――生きるために)
こうして、“ふたりの拠点”での生活が静かに始まった。
新居に引っ越して数日が経ち、落ち着いた生活の中で、ガアラはスマホを確認していた。
その中に――見慣れないアイコンがひとつ。
> 【スキル改造アプリ】
※スキルを分解・強化・合成する特化型アプリです。
※アプリ起動にはMPを消費します(内容によって変動)
「……おいおい、これ、またとんでもないやつきたな……」
アイコンをタップすると、AR画面が浮かび上がる。
> 【ようこそ、スキル改造アプリへ】
現在の保有スキルを元に、以下の操作が可能です:
---
◆選択可能なモード
1. スキル強化
→ 対象スキルの性能を上げる(条件を満たすと派生スキルに進化)
2. スキル融合
→ 同系統のスキルを合成し、新スキルを生成(例:剣術+見切り → 剣閃反応)
3. スキル特化
→ スキルの一部性能を捨てて、特定効果に特化させる(例:剛力 → 一撃特化型 or 継続強化型)
4. スキル名カスタム(外見・演出変更のみ)
---
「こっちが強化、こっちが融合……ってことは、“スキルそのものを編集する”ってことか。チートすぎる」
そのとき、画面にスキル一覧が自動表示される。
> 【現在保有スキル一覧】
・HP回復量増加 Lv6
・剛力Lv5
・剣術Lv5
・見切りLv3
・隠密Lv1
「……試すなら、“見切り”かな。実戦でも何度も助けられてるし、伸ばせるなら伸ばしたい」
ガアラは「スキル強化」を選び、「見切りLv3」をタップした。
> 【条件確認中……】
・実戦発動回数:62
・仮想戦闘成功カウント:28
・連続回避反応:複数回確認
【スキル進化条件達成】
→ 見切りLv3 → 「予知回避」Lv1 へ進化可能
「予知回避……!? 名前からしてヤバそう……」
> 【この改造にはMPを80消費します。実行しますか?】
▶ YES / NO
ガアラは一瞬だけスマホを見つめ、迷わずYESをタップした。
> 【スキル改造完了】
→ 「見切りLv3」 → 【予知回避Lv1】に変化しました。
---
◆新スキル:予知回避Lv1
効果:
敵の初撃モーションを0.3秒前に“直感的に察知”し、
一定確率で自動回避/超反応回避行動に移行できる。
補足:
・ステップ、スウェー、しゃがみなど状況に応じた最適動作を自動補正
・自動発動時はスキル演出エフェクトあり(AR視覚支援)
---
「これは……使いどころ、間違えなきゃとんでもねぇ盾になりそうだな……」
ガアラはスマホを握りしめ、次の実戦を思い描く。
次は「剣術」か?
それとも「剛力」を、限界まで研ぎ澄ますか――
“育てる”という選択肢が、彼に新たな可能性を与え始めていた。
---
ガアラがそう切り出したのは、朝食を食べ終えた直後だった。
ギシギシ鳴るベッド。薄い壁。慣れたとはいえ、やっぱり少しストレスだった。
「いいよ。実は私もそろそろ限界だった。
隣の部屋のいびき、夜中に何回殺意わいたか……」
「だよな……。じゃあ、次の宿探すか」
「――じゃなくて、家。借りた方がいい」
「家?」
「あんた、冒険者だし、荷物も多いでしょ?
訓練だって室内より外の庭でできる方がいいし。
自炊もできるし、洗濯だって干せるし――」
「え、なに、急にやけに現実的……」
「生活力ナメないでよ。
っていうか、私が何回あなたの洗濯物拾ってると思ってんの」
「すまん……」
「というわけで、不動産屋行くよ。街の東の商店通りにあるって聞いた」
◆
不動産屋『バレスト物件管理所』。
店先には「今週のおすすめ物件」などの手書き看板がずらりと並んでいる。
中に入ると、品の良さそうな中年の女性が丁寧に迎えてくれた。
「はいはい、お探しですね? 冒険者さん向け? それともご夫婦で?」
「――夫婦じゃねぇです」
「そういうことじゃないんです! ふたりで住める場所を探してまして!」
リィナが顔を赤くして慌てて否定するのを、店員がにやにやと見ている。
数件の物件情報をもらい、その場で内覧に出る。
◆
街の喧騒が少し遠く感じられる、南の端の一画。
庭付きの小さな一軒家を見学していたガアラとリィナ。
「風通し悪くないし、部屋の数もちょうどいい。……収納は少なめだけど、まあ許容範囲かな」
「……なあ、何でリィナが主導してんだよ。不動産屋への注文、ぜんぶおまえがやってるじゃん」
「は? 何言ってんの?」
リィナが振り返る。その目は、いつになくまっすぐだった。
「私も住むけど? ――文句ある?」
「…………ないです」
「よろしい」
リィナは当然といった風に、もう一部屋の窓を開けて空気の流れを確かめている。
◆
物件名:シュトラ通り南端・庭付き一軒家
・2部屋+台所+収納
・簡易家具付き(ベッド・棚・机)
・裏庭に干場あり
・魔石式ポンプ水道つき
> 【敷金:銀貨10枚】
【月額:銀貨5枚】
「……ちょっと高いけど、しっかりした家だな」
「この辺りじゃ相場より安い方だよ? 庭ありでこの条件なら悪くない」
「そうか……」
最終的に、ふたりはその場で仮契約を決めた。
拠点ができるという安心感と、少しの照れくささを残したまま。
◆
帰り道、ガアラがぽつりと漏らす。
「おまえ、最初から家借りるつもりだったな?」
「……うん。あんたの荷物が増えてくの見てたら、宿じゃ限界来ると思って。
それに――自分の居場所って、大事でしょ?」
その言葉に、ガアラは「なるほど」と頷き、静かに笑った。
こうしてふたりは、新たな拠点での生活を始めることになる――。
---
契約を済ませてから二日後。
最低限の荷物と、いくつかの生活用品を持って――ふたりは新居へと引っ越した。
「……やっぱ広いな」
ガアラが荷物を玄関に下ろして、周囲をぐるりと見渡す。
質素なつくりだが、木の香りがほんのりと残っている。
「このくらいの広さがちょうどいいんだよ。動きやすいし、音も響かない。訓練するにも困らない」
「そっちがメインなのか?」
「当然でしょ」
◆
初日は、掃除と片付けであっという間に過ぎた。
リィナは手際よく布を使って棚を拭き、ガアラは物干し台の設置や荷運びを任された。
「はい、あんたのスペースこっち。あたしはこの部屋使うから」
「……分かってたけど、決定権ないな俺」
「言っとくけど、こっちの部屋の方が朝日入るからね。私が先に目覚める方がいいでしょ?」
「なるほど、合理的……っつーことにしとくか」
◆
夕方、簡単な夕食を買いに出て、パンと干し肉、スープの素、そして少しだけ野菜を買い込んだ。
「ガアラ、火、頼んだ。私は鍋洗っとく」
「はいよ。……火魔法アプリ、ファイア・弱・短時間」
ボッ、と小さく鍋の下に火が灯る。
「……あんた、そのスマホの使い方、もう完全に主婦だね」
「いや、これが便利すぎるんだよ。ボタン一発火加減調整付きって、文明の勝利」
「はいはい。現代技術の神様に感謝だね」
ふたりで笑いながら、スープの香りが部屋を包んでいく。
◆
その夜。
ガアラはベッドに横になりながら、ふと天井を見つめて呟いた。
「なんかさ、ちゃんと“帰る場所”って感じするな。宿じゃなくて」
「……うん。わかる。
こういう時間があると、少しだけ安心できる」
隣の部屋から聞こえてくる、リィナの小さな声。
扉一枚隔てた静かな空間に、優しい風が流れていた。
(明日も頑張ろう。戦うためだけじゃなくて――生きるために)
こうして、“ふたりの拠点”での生活が静かに始まった。
新居に引っ越して数日が経ち、落ち着いた生活の中で、ガアラはスマホを確認していた。
その中に――見慣れないアイコンがひとつ。
> 【スキル改造アプリ】
※スキルを分解・強化・合成する特化型アプリです。
※アプリ起動にはMPを消費します(内容によって変動)
「……おいおい、これ、またとんでもないやつきたな……」
アイコンをタップすると、AR画面が浮かび上がる。
> 【ようこそ、スキル改造アプリへ】
現在の保有スキルを元に、以下の操作が可能です:
---
◆選択可能なモード
1. スキル強化
→ 対象スキルの性能を上げる(条件を満たすと派生スキルに進化)
2. スキル融合
→ 同系統のスキルを合成し、新スキルを生成(例:剣術+見切り → 剣閃反応)
3. スキル特化
→ スキルの一部性能を捨てて、特定効果に特化させる(例:剛力 → 一撃特化型 or 継続強化型)
4. スキル名カスタム(外見・演出変更のみ)
---
「こっちが強化、こっちが融合……ってことは、“スキルそのものを編集する”ってことか。チートすぎる」
そのとき、画面にスキル一覧が自動表示される。
> 【現在保有スキル一覧】
・HP回復量増加 Lv6
・剛力Lv5
・剣術Lv5
・見切りLv3
・隠密Lv1
「……試すなら、“見切り”かな。実戦でも何度も助けられてるし、伸ばせるなら伸ばしたい」
ガアラは「スキル強化」を選び、「見切りLv3」をタップした。
> 【条件確認中……】
・実戦発動回数:62
・仮想戦闘成功カウント:28
・連続回避反応:複数回確認
【スキル進化条件達成】
→ 見切りLv3 → 「予知回避」Lv1 へ進化可能
「予知回避……!? 名前からしてヤバそう……」
> 【この改造にはMPを80消費します。実行しますか?】
▶ YES / NO
ガアラは一瞬だけスマホを見つめ、迷わずYESをタップした。
> 【スキル改造完了】
→ 「見切りLv3」 → 【予知回避Lv1】に変化しました。
---
◆新スキル:予知回避Lv1
効果:
敵の初撃モーションを0.3秒前に“直感的に察知”し、
一定確率で自動回避/超反応回避行動に移行できる。
補足:
・ステップ、スウェー、しゃがみなど状況に応じた最適動作を自動補正
・自動発動時はスキル演出エフェクトあり(AR視覚支援)
---
「これは……使いどころ、間違えなきゃとんでもねぇ盾になりそうだな……」
ガアラはスマホを握りしめ、次の実戦を思い描く。
次は「剣術」か?
それとも「剛力」を、限界まで研ぎ澄ますか――
“育てる”という選択肢が、彼に新たな可能性を与え始めていた。
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