スマホ片手に異世界ライフ! ~神様のアプリで無敵冒険者~

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第1章

緊急召集

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朝、ギルド本館。
まだ陽も高くない時間だというのに、Cランクに昇格したばかりの冒険者たち五組が、重苦しい空気を纏って集まっていた。

受付前には、「ギルドマスター・グレッグ」の姿。

飄々とした爺さんだが、今はいつもの軽口も封印して、厳しい表情をしていた。

「おう、揃ったな。……ったく、朝から集めるこっちの身にもなれってんだ」

軽く咳払いすると、グレッグは真顔になり、低い声で告げた。

「――依頼だ。内容は【調査任務】。対象は“東の森”だ」

集まった者たちがざわつく。

「森に異変が起きている。魔物の数が、激減した」

「……魔物が、減った?」

ガアラが眉をひそめた。

魔物の減少は、単なる自然現象ではない。
普通、ありえない事態だ。

グレッグは続けた。

「この前のお前らCランク試験、ラズ・セリア鉱窟だったな? あの鉱山の周囲でも似たような兆候が出てた。……魔物が消えた場所には、必ず“何か”がいる。そういうもんだ」

静かな緊張が、場に広がる。

「今回動くのは、昇級試験を通ったお前ら五組だけだ。……現場慣れさせるためにもな」

グレッグの目が、ガアラたち、スキンヘッド三兄弟、ジャグたち、そして貴族チームへと順番に向けられる。

「指揮系統はねぇ。それぞれ自由に動け。ただし、最悪の場合は協力しろ。死にたくなきゃな」

ぼそりと皮肉を飛ばしてから、ギルドマスターは巻物を取り出した。

「対象区域はこの辺り。地図にマークした。東の街道を進み、そこから南東に外れた一帯が調査範囲だ」

「制限時間は半日。日没までに帰還できない場合は、捜索対象に切り替える。……まぁ、死ぬなよ」

そう締めくくり、巻物を渡す。

受け取ったのは、今回最年長のノッポ・ジャグ。

「んじゃま、始めるか。負けたくねぇしな」

ニヤリと笑って、ジャグがガアラたちを一瞥する。

すぐ隣では、レオン・ファーロックが冷ややかに目を細めていた。

「……あまり、邪魔をしないでもらいたいものだな」

「そっちこそ、背中晒すなよ、坊ちゃん?」

ガアラが軽く挑発すると、レオンの眉がピクリと動く。

空気がピリつくが、ギルドマスターがあくび交じりに言った。

「喧嘩すんな。行け。何か出たら生きて帰れ」

それだけ言い放ち、グレッグはくるりと背を向けた。

 

こうして、Cランクたちは――
森の異変調査へと向かう。

何も起きなければいい。
だが、彼らの歩む先には、想像を超える“現実”が待ち受けていた。


---

ギルド本部の会議室を出たCランク冒険者たちは、すぐさま準備を整え、グラースの東門へ向かっていた。

朝の冷たい空気を切り裂きながら、十数名の冒険者たちが無言で行進する。 それぞれ試験を共にした顔ぶれ――ガアラたち、バリカンズ、ジャグたちケンカ屋三人組、貴族チーム、普通チーム。

緊急召集の目的はただ一つ。

《森の異変調査》。

最近、街の外縁に広がる「ファングリーフの森」から魔物が激減している。 異様な静けさ。動物たちの逃走。 ただ事ではないと、ギルドが直ちに調査を命じたのだ。

「全員、聞け」

先頭を歩くギルド職員が声を上げる。

「本日の調査指揮は、リーダーを立てない。各チームごとの行動を基本とする。ただし――」 「異変が発生した場合は、即座に連携を取れ。単独行動は禁止だ!」

「了解!」

全員が応じる中、後方からノッポのジャグがヒョイと顔を出した。

「なあ、聞いたか? 後から援護に、Aランクチームも来るらしいぜ」

「Aランク?」 リィナが小声で振り向いた。

「ああ。西門で別件やってるが、調査が済み次第こっちに回すってよ。ガチでヤバい異形でも出たら頼れってさ」

「……心強いのか、情けないのか」

ガアラが肩をすくめる。

カリアは前を向いたまま小さく呟く。

「でも、Aランクが動くって……よほどの異常ってことだよね」

空気が一段、引き締まる。

ファングリーフの森はすぐそこだった。 東門を抜け、広がる草地を越え、森の入り口へ。

茂みは異様に静かだ。

鳥の声も、虫の羽音もない。 木々の間を抜ける風だけが、微かに葉を揺らしていた。

「……本当に、静かすぎる」

誰ともなく、呟きが漏れた。

「カリア、気流を読む。リィナ、気配を探知」

「了解」 「任せて」

ガアラたちは即座に対応。 他チームも、警戒態勢に入る。

森の奥には、まだ見ぬ異形。 そして、試される――Cランクたちの“本物の力”。

これが、彼らにとって本当の"試練"の始まりだった。


---

ファングリーフの森へと足を踏み入れたCランク冒険者たちは、それぞれ間隔を保ちながら慎重に進んだ。

リィナが気配を探る。

「……生き物の、気配が……ない」

その声に、ガアラもスマホで周囲を確認する。 気配察知アプリは静かすぎるほど静かだった。 本来なら、この森には小動物や低級魔物がうごめいているはずなのに。

「こっちだ」

カリアが手を振る。 風の流れを読む彼女の指示で、東へ少し進んだ。

その時――

「……これは」

目の前に広がったのは、異様な光景だった。

地面には黒ずんだ焦げ跡。 草は枯れ、木々は折れ、瘴気のようなものが微かに漂っている。 そして、腐りきった魔物の死骸が、いくつも転がっていた。

「……一体、何があった?」

リィナが短剣を構え直す。

カリアが、さらに顔をこわばらせた。

「これ、自然死じゃない……。何か、ものすごい力で、まとめて……潰された跡だよ」

「間違いねぇ。ここに、何かいる」

ノッポのジャグが後ろから歩いてきた。 その顔も、いつもの軽口を叩く余裕はない。

続いて、スキンヘッド三兄弟、貴族チーム、普通チームも追いついてくる。

「……まるで、狩場みたいなもんだな」 ゲーラが唾を吐いた。

「くそ、嫌な予感しかしねぇ」 ミックが舌打ちした。

その時。

ズズ……ッ。

地面がかすかに振動した。

「……!?」

皆が同時に振り向いた。

森の奥、霧の向こう。 巨体が、ゆっくりと姿を現した。

――大型異形。

全身が漆黒に染まり、背には骨のような突起を生やし、四肢は異様に太い。 片目だけがぎらぎらと赤く光り、こちらを見据えている。

「また、あの化け物か……!」

ガアラが剣を引き抜いた。

だが。

異形もこちらを見据えたまま、ゆっくりと低く、呻くような咆哮を上げる。

「ッ、来るぞ!!」

異形は地を蹴った。

ズドン!

地響きと共に、一気に距離を詰め――

「ばらけるな!陣形を維持しろ!!」

誰かが叫んだ。

だが、すでに遅い。 一斉に武器を抜き、身構えるCランクたち。

――しかし、連携は取れていなかった。

ジャグたちが前に出て、無理矢理突撃。 貴族チームは後方で魔法準備に手間取り、 スキンヘッド三兄弟は慣れない位置取りで混乱する。

(バラバラだ!)

ガアラはリィナとカリアを守るため、すぐに左に展開。 だが、他のパーティーは好き勝手に動き、異形の攻撃範囲に次々と引き込まれていく。

――ズガァァァァン!!!

異形の豪腕が振り下ろされ、ジャグとゲーラが吹き飛ばされた。

「うわっ……!」

「クソ、無茶すんなって言っただろ!」

ミックが必死で支えようとするが、異形の勢いは止まらない。

さらに続けざまに、地を薙ぐような蹴り。

「ぐぅっ!」

「やべっ……!」

リィナが素早く回避。 カリアはギリギリで風魔法を展開し、吹き飛びを防いだ。

「最悪……! 全員、まとまってない!」

ガアラも剣を構え直しながら、息を荒げる。

だが――異形は、こちらを狙っている。

(止めないと、マジで全滅するぞ……!)

その時だった。

――ズズン。

後方の森から、新たな足音。

複数。

「遅くなったな!」

声が響いた。

現れたのは、漆黒のロングコートを羽織った、四人の冒険者。

――Aランクチーム《ナイトホークス》。

リーダー格の黒髪の男・グレイが前に立ち、鋭い視線をガアラたちに投げた。

「このバラバラな連中が、噂のCランクか。――ったく、情けねぇ」

「下がれ。後は俺たちがやる」

言い終わると同時に、彼らは駆けた。

ガアラたちは、ただ見守るしかなかった。

ここから――
AランクとCランクの、実力差をまざまざと見せつけられることになる。


---

ズシン――

黒いコートをはためかせ、グレイたちAランク冒険者が前に出る。

異形が彼らに気づき、咆哮を上げた瞬間――

「スイッチ、スタートだ」

グレイが短く号令をかけた。

その瞬間、空気が変わった。

 

まず動いたのは、赤髪の大男・バース。

「うおおおおおッ!!」

巨大な戦斧を振りかざし、一直線に異形へ突っ込む!

異形も巨腕を振り下ろすが――

ズガン!!

バースの一撃が異形の腕を弾き飛ばす!

吹き飛ぶのは、異形のほうだった。

「……ありえない……」

リィナが呟いた。

ガアラも言葉を失っていた。

(正面から、力で……押し返した……!?)

 

そこへ、二人目。

蒼髪の魔術師・シエラが素早く詠唱。

「――《氷結牢獄》!」

異形の両脚を瞬時に凍らせ、動きを封じた!

異形が抵抗しようと力を込めるが、すぐに動けない。

 

三人目、短剣使いのフェイが背後へ回り込み――

シュッ!!

喉元に素早く短剣を突き立て、喉を切り裂く!

「ガアラ!」

カリアが思わず叫ぶ。

「異形の皮膚、切れた……!」

(――信じられない)

あの硬かった異形の皮膚を、まるで紙みたいに。

 

最後に、リーダーのグレイが静かに前に出た。

剣を抜き、一歩一歩、異形へ迫る。

異形が抵抗し、腕を振るう。

だが――

グレイは一閃。

剣が、空間すら切り裂くような音を立てた。

スパァンッ!!

異形の腕が、肩からごっそりと切断された。

絶叫。

だが、グレイは表情一つ変えない。

「――終わりだ」

魔力を纏った剣を、異形の胸に突き立てた。

ゴンッ!!

その一撃で、異形の巨体が大きくのけ反る。

続けざまに、バースの斧が胴体を叩き割り、 シエラの氷が内側から砕き、 フェイの短剣が心臓を突き刺した。

 

ドゥゥゥゥンッ!!

異形が、音を立てて崩れ落ちた。

完全なる、完封だった。

 



静まり返った森。

ガアラたちCランク冒険者たちは、誰一人言葉を発せなかった。

ただ、圧倒的な実力差を、まざまざと見せつけられた。

(……あれが、Aランク)

(あれが、頂点に立つ者たち……)

震えそうになる心を、ガアラは必死で押しとどめた。

 

グレイが剣を払いながら、こちらを向いた。

「――見たか?」

声は静かだったが、重かった。

「お前らCランクは、バラバラだった。個人の力だけで突っ込んでも、こんな奴には勝てない」

「連携もなければ、指揮もない。バラバラに動いて、バラバラに倒れるだけだ」

リィナも、カリアも、スキンヘッド三兄弟も、レオンたち貴族パーティーも、誰も言い返せなかった。

グレイは、なおも言葉を続ける。

「だが――」

一拍置いて、静かに告げた。

「今日、こうして生きて帰れる。なら、次はどうすべきか、自分で考えろ」

「俺たちは、待ってるぜ」

フェイがにやりと笑い、シエラはそっと手を振った。 バースは無言で大斧を担ぎ、背を向ける。

 

Aランクチーム《ナイトホークス》は、悠然と森の奥へ歩き去っていった。

まるで、最初から"次元が違う"とでも言うように。

 



静寂。

それでも、誰も口を開かない。

ガアラは、拳を握りしめた。

「……次は、ああなる」

ポツリと呟いた。

リィナとカリアが、顔を上げる。

スキンヘッド三兄弟も、ジャグたちも、レオンたちも―― その言葉に、ハッと何かを掴んだように顔を引き締めた。

まだ、負けてはいない。 負けたままでは、終わらない。



こうしてCランクチームたちは、悔しさと誓いを胸に、森を後にする。

だが――

本当の試練は、まだこれからだった。

帰還途中。

更なる大型異形の影が、待ち構えていたのである――!


---
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