異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

文字の大きさ
9 / 114
第1章

1週間たった

しおりを挟む
ゴブリンの耳を袋に詰め終えた俺は、大きく息を吐いた。

「よし……ギルドに戻ろう」

 初めての戦いを終えた俺の体は、汗と土まみれだったが、妙な充実感があった。

「お前、顔つきが変わったな」

「そりゃ、初めて自分の力で戦ったんですから!」

 藤堂さんはニヤリと笑い、俺の肩をポンと叩いた。

「じゃあ、初仕事の報酬をもらいに行くか」


---

 ギルドに戻り、受付で討伐報告をすると、女性の受付嬢がニコリと微笑んだ。

「お疲れ様でした、ユートさん。初めての討伐依頼はいかがでしたか?」

「めちゃくちゃキツかったです……!」

 俺は正直に答えた。

 受付嬢はクスッと笑いながら、持ち込んだゴブリンの耳を確認し、報酬を算出する。

「今回はゴブリン5体の討伐ですね。報酬は1体につき銀貨3枚、合計で銀貨15枚になります」

「おおっ、銀貨15枚!」

 手渡された銀貨は、異世界に来て初めて自分で稼いだ金だった。

(これが、俺の力で得た収入か……!)

 たった15枚の銀貨。だけど、俺にとってはすごく価値のあるものに思えた。


---

 ギルドを出た後、俺はふと呟いた。

「……そういえば、こっちに来てどれくらい経ったんですかね?」

「もう1週間だな」

「え、そんなに経ってたんですか!?」

 驚いて振り向くと、藤堂さんは「何を今さら」と言わんばかりの顔をしていた。

「お前、戦闘訓練と魔法の修行で必死だったからな。時間の感覚がなくなっても無理はねぇ」

「たしかに……」

 俺はゴブリン討伐の前に、ひたすら訓練と修行をしていた。魔力制御、剣の訓練、魔法の発動――すべてが初めての経験で、時間の流れを気にしている暇もなかった。



 ギルドの近くの通りを歩き、俺たちはいつもの拠点へと向かった。

 そこは、藤堂さんが手配してくれた小さな借家だ。

1週間ここで暮らしていた。

「……」

 借家は、こじんまりとした一軒家で、家具も最低限そろっていた。

 1週間の間、ここで藤堂さんと一緒に生活している。

「これからお前がどうするかは自由だが、ちゃんと生活基盤を作っていかないとダメだからな」

「ですね……」


 部屋に戻り、一息ついた俺は、ふと考えた。

(……そういえば、俺、元の世界では会社員だったんだよな)

 突然の異世界転移で、会社には無断欠勤している状態。

(絶対ヤバいことになってるよな……)

 俺のスマホは異世界では使えなかった。連絡も取れないし、いきなり1週間も行方不明になったとなれば、大問題になっているはずだ。

「おじさん、俺……一度元の世界に戻らないとダメかもです」

「だろうな」

 藤堂さんは腕を組んで頷いた。

「向こうのことが気になるんだろ? まぁ、そりゃそうだな」

「でもな、ユート。お前、向こうの世界に戻ってどうする?」

「え?」

「会社に戻るのか? それとも、こっちの世界で稼いでいくのか?」

「……!」

 藤堂さんの言葉に、俺は一瞬考え込んだ。

 確かに、会社に戻れば今までの生活が続く。でも、こっちでは**"異世界冒険者"として生きていく道**もある。

「……もし、こっちで稼げるなら、俺……会社辞めてもいいかも……」

 俺がそう呟くと、藤堂さんはニヤリと笑った。

「なら、ひとつ提案がある」

「なんです?」

「こっちで手に入る鉱石や素材を、向こうの世界で売るんだ」

「えっ、それって……」

「こっちの世界には、向こうにはない貴重な鉱石や素材が山ほどある。それを向こうの世界で売れば、相当な金になるぞ」

「マジっすか……!」

 異世界転移を利用した"異世界貿易"――確かに、向こうには存在しない素材を持ち込めば、高値で取引されるかもしれない。

「こっちで稼ぎながら、向こうで売る。そうすれば、お前はどっちの世界でも金に困ることはなくなる」

「すげぇ……!」



 俺はふと思った。

(でも、おじさんはいつまで俺に付き合ってくれるんだろう?)

「おじさん、俺のこと、いつまで面倒見てくれるんです?」

「ある程度、お前が一人で戦えるようになるまでだな」

「え、じゃあ、いずれは俺、一人で……?」

「ああ。当たり前だろ? いつまでも俺がそばにいるわけにはいかねぇし、お前も独り立ちしねぇとダメだ」

「……!」

 その言葉を聞いて、俺は改めて決意した。

(強くならなきゃ……!)

 いつかは、俺一人でこの異世界で生きていくために。




「よし、とりあえず一度向こうに戻って、身の回りの整理をしてくるか」

 藤堂さんが立ち上がり、手をかざす。

「じゃあ、転移するぞ」

「はい!」

 次の瞬間、視界がグニャリと歪み――

 俺は、元の世界へ戻ることになった。


---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...