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第1章
1週間たった
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ゴブリンの耳を袋に詰め終えた俺は、大きく息を吐いた。
「よし……ギルドに戻ろう」
初めての戦いを終えた俺の体は、汗と土まみれだったが、妙な充実感があった。
「お前、顔つきが変わったな」
「そりゃ、初めて自分の力で戦ったんですから!」
藤堂さんはニヤリと笑い、俺の肩をポンと叩いた。
「じゃあ、初仕事の報酬をもらいに行くか」
---
ギルドに戻り、受付で討伐報告をすると、女性の受付嬢がニコリと微笑んだ。
「お疲れ様でした、ユートさん。初めての討伐依頼はいかがでしたか?」
「めちゃくちゃキツかったです……!」
俺は正直に答えた。
受付嬢はクスッと笑いながら、持ち込んだゴブリンの耳を確認し、報酬を算出する。
「今回はゴブリン5体の討伐ですね。報酬は1体につき銀貨3枚、合計で銀貨15枚になります」
「おおっ、銀貨15枚!」
手渡された銀貨は、異世界に来て初めて自分で稼いだ金だった。
(これが、俺の力で得た収入か……!)
たった15枚の銀貨。だけど、俺にとってはすごく価値のあるものに思えた。
---
ギルドを出た後、俺はふと呟いた。
「……そういえば、こっちに来てどれくらい経ったんですかね?」
「もう1週間だな」
「え、そんなに経ってたんですか!?」
驚いて振り向くと、藤堂さんは「何を今さら」と言わんばかりの顔をしていた。
「お前、戦闘訓練と魔法の修行で必死だったからな。時間の感覚がなくなっても無理はねぇ」
「たしかに……」
俺はゴブリン討伐の前に、ひたすら訓練と修行をしていた。魔力制御、剣の訓練、魔法の発動――すべてが初めての経験で、時間の流れを気にしている暇もなかった。
ギルドの近くの通りを歩き、俺たちはいつもの拠点へと向かった。
そこは、藤堂さんが手配してくれた小さな借家だ。
1週間ここで暮らしていた。
「……」
借家は、こじんまりとした一軒家で、家具も最低限そろっていた。
1週間の間、ここで藤堂さんと一緒に生活している。
「これからお前がどうするかは自由だが、ちゃんと生活基盤を作っていかないとダメだからな」
「ですね……」
部屋に戻り、一息ついた俺は、ふと考えた。
(……そういえば、俺、元の世界では会社員だったんだよな)
突然の異世界転移で、会社には無断欠勤している状態。
(絶対ヤバいことになってるよな……)
俺のスマホは異世界では使えなかった。連絡も取れないし、いきなり1週間も行方不明になったとなれば、大問題になっているはずだ。
「おじさん、俺……一度元の世界に戻らないとダメかもです」
「だろうな」
藤堂さんは腕を組んで頷いた。
「向こうのことが気になるんだろ? まぁ、そりゃそうだな」
「でもな、ユート。お前、向こうの世界に戻ってどうする?」
「え?」
「会社に戻るのか? それとも、こっちの世界で稼いでいくのか?」
「……!」
藤堂さんの言葉に、俺は一瞬考え込んだ。
確かに、会社に戻れば今までの生活が続く。でも、こっちでは**"異世界冒険者"として生きていく道**もある。
「……もし、こっちで稼げるなら、俺……会社辞めてもいいかも……」
俺がそう呟くと、藤堂さんはニヤリと笑った。
「なら、ひとつ提案がある」
「なんです?」
「こっちで手に入る鉱石や素材を、向こうの世界で売るんだ」
「えっ、それって……」
「こっちの世界には、向こうにはない貴重な鉱石や素材が山ほどある。それを向こうの世界で売れば、相当な金になるぞ」
「マジっすか……!」
異世界転移を利用した"異世界貿易"――確かに、向こうには存在しない素材を持ち込めば、高値で取引されるかもしれない。
「こっちで稼ぎながら、向こうで売る。そうすれば、お前はどっちの世界でも金に困ることはなくなる」
「すげぇ……!」
俺はふと思った。
(でも、おじさんはいつまで俺に付き合ってくれるんだろう?)
「おじさん、俺のこと、いつまで面倒見てくれるんです?」
「ある程度、お前が一人で戦えるようになるまでだな」
「え、じゃあ、いずれは俺、一人で……?」
「ああ。当たり前だろ? いつまでも俺がそばにいるわけにはいかねぇし、お前も独り立ちしねぇとダメだ」
「……!」
その言葉を聞いて、俺は改めて決意した。
(強くならなきゃ……!)
いつかは、俺一人でこの異世界で生きていくために。
「よし、とりあえず一度向こうに戻って、身の回りの整理をしてくるか」
藤堂さんが立ち上がり、手をかざす。
「じゃあ、転移するぞ」
「はい!」
次の瞬間、視界がグニャリと歪み――
俺は、元の世界へ戻ることになった。
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「よし……ギルドに戻ろう」
初めての戦いを終えた俺の体は、汗と土まみれだったが、妙な充実感があった。
「お前、顔つきが変わったな」
「そりゃ、初めて自分の力で戦ったんですから!」
藤堂さんはニヤリと笑い、俺の肩をポンと叩いた。
「じゃあ、初仕事の報酬をもらいに行くか」
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ギルドに戻り、受付で討伐報告をすると、女性の受付嬢がニコリと微笑んだ。
「お疲れ様でした、ユートさん。初めての討伐依頼はいかがでしたか?」
「めちゃくちゃキツかったです……!」
俺は正直に答えた。
受付嬢はクスッと笑いながら、持ち込んだゴブリンの耳を確認し、報酬を算出する。
「今回はゴブリン5体の討伐ですね。報酬は1体につき銀貨3枚、合計で銀貨15枚になります」
「おおっ、銀貨15枚!」
手渡された銀貨は、異世界に来て初めて自分で稼いだ金だった。
(これが、俺の力で得た収入か……!)
たった15枚の銀貨。だけど、俺にとってはすごく価値のあるものに思えた。
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ギルドを出た後、俺はふと呟いた。
「……そういえば、こっちに来てどれくらい経ったんですかね?」
「もう1週間だな」
「え、そんなに経ってたんですか!?」
驚いて振り向くと、藤堂さんは「何を今さら」と言わんばかりの顔をしていた。
「お前、戦闘訓練と魔法の修行で必死だったからな。時間の感覚がなくなっても無理はねぇ」
「たしかに……」
俺はゴブリン討伐の前に、ひたすら訓練と修行をしていた。魔力制御、剣の訓練、魔法の発動――すべてが初めての経験で、時間の流れを気にしている暇もなかった。
ギルドの近くの通りを歩き、俺たちはいつもの拠点へと向かった。
そこは、藤堂さんが手配してくれた小さな借家だ。
1週間ここで暮らしていた。
「……」
借家は、こじんまりとした一軒家で、家具も最低限そろっていた。
1週間の間、ここで藤堂さんと一緒に生活している。
「これからお前がどうするかは自由だが、ちゃんと生活基盤を作っていかないとダメだからな」
「ですね……」
部屋に戻り、一息ついた俺は、ふと考えた。
(……そういえば、俺、元の世界では会社員だったんだよな)
突然の異世界転移で、会社には無断欠勤している状態。
(絶対ヤバいことになってるよな……)
俺のスマホは異世界では使えなかった。連絡も取れないし、いきなり1週間も行方不明になったとなれば、大問題になっているはずだ。
「おじさん、俺……一度元の世界に戻らないとダメかもです」
「だろうな」
藤堂さんは腕を組んで頷いた。
「向こうのことが気になるんだろ? まぁ、そりゃそうだな」
「でもな、ユート。お前、向こうの世界に戻ってどうする?」
「え?」
「会社に戻るのか? それとも、こっちの世界で稼いでいくのか?」
「……!」
藤堂さんの言葉に、俺は一瞬考え込んだ。
確かに、会社に戻れば今までの生活が続く。でも、こっちでは**"異世界冒険者"として生きていく道**もある。
「……もし、こっちで稼げるなら、俺……会社辞めてもいいかも……」
俺がそう呟くと、藤堂さんはニヤリと笑った。
「なら、ひとつ提案がある」
「なんです?」
「こっちで手に入る鉱石や素材を、向こうの世界で売るんだ」
「えっ、それって……」
「こっちの世界には、向こうにはない貴重な鉱石や素材が山ほどある。それを向こうの世界で売れば、相当な金になるぞ」
「マジっすか……!」
異世界転移を利用した"異世界貿易"――確かに、向こうには存在しない素材を持ち込めば、高値で取引されるかもしれない。
「こっちで稼ぎながら、向こうで売る。そうすれば、お前はどっちの世界でも金に困ることはなくなる」
「すげぇ……!」
俺はふと思った。
(でも、おじさんはいつまで俺に付き合ってくれるんだろう?)
「おじさん、俺のこと、いつまで面倒見てくれるんです?」
「ある程度、お前が一人で戦えるようになるまでだな」
「え、じゃあ、いずれは俺、一人で……?」
「ああ。当たり前だろ? いつまでも俺がそばにいるわけにはいかねぇし、お前も独り立ちしねぇとダメだ」
「……!」
その言葉を聞いて、俺は改めて決意した。
(強くならなきゃ……!)
いつかは、俺一人でこの異世界で生きていくために。
「よし、とりあえず一度向こうに戻って、身の回りの整理をしてくるか」
藤堂さんが立ち上がり、手をかざす。
「じゃあ、転移するぞ」
「はい!」
次の瞬間、視界がグニャリと歪み――
俺は、元の世界へ戻ることになった。
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