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第1章
魔道鉱脈にて
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俺とラミアは、王都を出てしばらく馬車を走らせ、目的地である魔導鉱脈の廃坑へと到着した。
この鉱脈はかつて王国が管理していた採掘場だったが、魔物の発生や鉱石の枯渇が原因で放棄されたらしい。
しかし――
「くくく……捨てられた鉱脈ってのは、実はまだ掘れる宝の山だったりするんだよな」
ラミアが酒瓶を傾けながらニヤリと笑う。
「そんなもんか?」
「そりゃそうよ。王国の連中は採掘のプロじゃねぇ。取り尽くしたと思って放棄するが、ドワーフの目から見れば、まだまだ掘れる場所はたくさんあるもんだぜ」
なるほど、プロの視点ってやつか。
(じゃあ、ここでしっかり掘れば、俺の元の世界で売れるような珍しい鉱石が手に入るかもしれないな)
「よし、じゃあ探索開始だ」
「待て待て、その前に……」
ラミアが俺の腕を掴む。
「一応、念のために魔力感知で内部の魔物の気配を探ったほうがいいな」
「なるほど」
俺は【魔力感知】を使い、廃坑の中の魔力の流れを探る。
(……結構な魔力の反応があるな)
確かに、この鉱脈には普通の鉱石とは違う"魔力を帯びた鉱石"が眠っているのは間違いない。
しかし、それと同時に――
「魔物の気配があるな」
「まぁ、そりゃそうだろうよ。魔導鉱脈なんだから、魔力を喰うヤツらが集まるのは当然だ」
「厄介そうなのは?」
「わかる範囲だと、そこまで強力な個体はいないな。ただし……魔力暴走体が数体混じってる」
魔力暴走体――ギルドの話でも聞いた、魔力を異常に吸収し暴発の危険がある魔物。
(つまり、無闇に攻撃すると爆発するタイプの敵が出てくる可能性が高いってことか)
「慎重に行くぞ。魔物がどんな動きをするかわからん」
「おう! んじゃ、掘る準備も整ったし……行くぜ!!」
---
廃坑の中は、予想以上に魔力の濃度が高かった。
ランタンの光に照らされる坑道は、荒れ果てているが、壁や床に微かに輝く鉱石が見えている。
「おおっと……早速良いもん見つけたぜ」
ラミアが壁に埋まった鉱石を見つめ、軽くツルハシを当てる。
「これは……ファイアクリスタルだな」
「炎属性の魔導鉱石か」
「おうよ。魔法の触媒に使えるし、エネルギー源としても応用が効く。下手すりゃ、魔道具屋に持ち込めば金貨数十枚にはなるな」
「いいじゃねぇか」
「んじゃ、掘るぜ!」
ラミアがツルハシを振り上げ、鉱石に打ち込もうとしたその瞬間――
「……待て、動くな」
「へ?」
俺は素早く魔力感知を拡張し、壁の奥に潜む異常な魔力の波動を感じ取った。
「この鉱石の裏に……何かいる」
「……!」
ラミアは一瞬緊張した表情を浮かべ、ツルハシをゆっくりと下ろした。
「まさか……こいつが"魔力暴走体"か?」
「可能性は高いな。しかも、結構デカい」
壁の向こうに、巨大な魔物の魔力が渦巻いているのがわかる。
(これは……迂闊に手を出すとまずいな)
「どうする? このまま掘るか?」
ラミアが俺を見上げて尋ねる。
---
選択肢――どう動く?
① 一旦撤退し、別の場所を掘る
危険を避け、確実に採掘できるポイントを探す。
しかし、レア鉱石のチャンスを逃す可能性がある。
② 罠を仕掛け、魔物をおびき出して倒す
魔力暴走体を確実に処理し、鉱石を安全に掘る。
ただし、魔物の能力が未知数なため、リスクあり。
③ 俺が魔力を抑制しつつ、ラミアが掘る
魔力制御スキルを使い、魔物の暴走を防ぎながら採掘する。
ただし、俺の魔力制御の負担が大きい。
---
「さぁ、どうする? あんたが決めてくれ」
ラミアが酒瓶を口にしながら、俺を見つめた――。
どう動く?
「俺が魔力を抑制する。その間にお前が掘れ」
俺は決断し、ラミアにそう告げた。
「おう、マジか。なかなか無茶するな」
「無茶は承知だ。ただ、この場所を逃したくない」
壁の向こうに眠る鉱石の波動は、間違いなく貴重なものだ。
もし元の世界へ持ち込めれば、とんでもない価値を生む可能性がある。
(魔力暴走体の影響がある以上、普通に掘れば暴発の危険がある……)
「ふっ、まぁいいさ。俺のツルハシさばきを見せてやるぜ!」
ラミアがニヤリと笑い、ツルハシを構える。
(よし……やるか)
俺は深く息を吸い、魔力制御を最大限に高める。
魔力感知を広げ、暴走体の魔力の流れをつかむ。
(……こいつの魔力は、まるで膨張し続ける風船みたいだ)
内部に溜め込まれたエネルギーが常に不安定で、刺激を与えると一気に爆発する仕組みになっている。
つまり、適度に魔力の流れを分散させれば、暴発を防げるはずだ。
「……ふぅっ」
俺は集中し、周囲の魔力を意識的に操作し始める。
壁の奥で揺らめいていた魔力が、俺の制御のもとで少しずつ沈静化していく。
「……いける、今のうちに掘れ!」
「へへっ、やっぱりすげぇな、あんた」
ラミアは嬉しそうに笑い、ツルハシを振り上げた。
カァァァン!
ラミアのツルハシが壁に打ち込まれる。
小さなヒビが入り、青白い光を放つ鉱石の一部が姿を現した。
「おぉっ……これは……!」
ラミアの目が輝く。
「間違いねぇ、エーテルオパールだ!」
「エーテルオパール……?」
「超高純度の魔力を蓄えた鉱石さ! これ一つで高位魔道具のコアに使えるレベルだぜ!」
(そんな貴重なものがこんなに簡単に……)
「よっしゃ、もっと掘るぜ!」
ラミアが勢いよくツルハシを振るい、さらに鉱石を削り出していく。
(……とはいえ、ずっとこのままってわけにはいかないな)
俺が魔力を抑え込んでいるとはいえ、魔力暴走体のエネルギーが完全に消えているわけではない。
むしろ、俺の抑制がなくなれば、一気に暴発する危険がある。
(時間がない……そろそろ決着をつけるか)
「ラミア、そろそろ仕上げろ。あんまり長くはもたん」
「おうよ! んじゃ……こいつでフィニッシュだ!」
ラミアが最後の一撃を打ち込む。
カンッ!
大きな音とともに、壁が崩れ、エーテルオパールの鉱脈がむき出しになった。
「やったぜ! これで――」
だが、その瞬間――
ゴゴゴゴゴゴ……!!
壁の奥で、異常な魔力の渦が巻き起こる。
「……っ、やべぇ!」
ラミアが咄嗟に後退する。
(クソ……抑えていた魔力が一気に解放される!)
壁の向こうから、光を帯びた魔物のシルエットが浮かび上がる。
「うおおおっ!? 出てきやがった!!」
ラミアが叫ぶ。
姿を現したのは、純粋な魔力の集合体のような魔物だった。
大きさは3メートルほどの半透明な球体で、その表面には魔法陣のような模様が浮かんでいる。
(……やばいな、こいつ、かなり不安定だ)
「ユート、こいつ、どうすりゃいい!?」
ラミアが俺を見て叫ぶ。
(攻撃すれば暴発、無視すれば魔力を吸収し続ける……なら――)
---
選択肢――どう対処する?
① 魔力吸収で無効化する
俺の魔力制御スキルを使い、魔物の魔力を吸収して消滅させる。
ただし、膨大な魔力を扱うことになるため、俺自身に負担がかかる。
② 冷却魔法で封じる
魔力の暴走を防ぐために氷魔法で冷却し、動きを封じる。
しかし、完全に無力化できるかは未知数。
③ 魔導鉱石を利用して誘導する
近くのエーテルオパールを使い、魔力を別の方向に誘導して暴走を回避する。
ただし、鉱石を消耗するリスクがある。
---
「おいおい、早く決めろよ、ユート!」
ラミアが焦るなか、俺は一瞬の判断を迫られる――。
(ここで爆発されたら、廃坑ごと吹っ飛ぶ可能性もある……)
なら、俺が吸収するしかない!
「ラミア、後ろに下がれ!」
「お、おう!」
俺は魔力制御スキルを最大限に発動し、魔力暴走体が放つエネルギーを抑え込みながら吸収し始めた。
「ぐっ……!!」
想像以上に強大な魔力の流れが俺の身体に流れ込んでくる。
(こいつ……ただの魔力の塊じゃねぇ……!)
吸収しようとするたびに、まるで生き物のように抵抗してくる。
俺が魔力を引き込むたび、暴走体は形を変えながら逃げようとする。
(逃がすか……!)
俺はさらに魔力制御を強化し、暴走体の魔力を確実に引き寄せていく。
(……あと少し……!)
俺は吸収の力を最大限に引き出し、暴走体のエネルギーを完全に飲み込む。
そして――
「……っ!」
パァンッ!!
暴走体は完全に魔力を失い、霧散した。
「っしゃあああ! やったぜ、ユート!」
ラミアが歓声を上げる。
俺はゆっくりと息を整えながら、手を握りしめた。
(……吸収した魔力、まだ俺の中に残ってるな)
これだけの魔力を飲み込んだ以上、何かしらの形で影響があるかもしれない。
「ふぅ、危なかったな……」
「でも、そのおかげで、安全に掘れるようになったぜ!」
俺たちは改めて、エーテルオパールの採掘を再開した。
採掘を進めるうちに、俺たちは合計10個の高純度エーテルオパールを手に入れた。
「こりゃあ……とんでもねぇ価値だぜ」
「そんなにすごいのか?」
「こんな純度の高い鉱石、貴族や王族の魔道具師ならいくらでも欲しがるぜ。普通に売れば金貨数百枚は軽く超えるな」
(ってことは、俺の世界で売れば……?)
異世界貿易の第一歩として、これ以上ない収穫だ。
「よし、これを持ち帰るぞ」
「おう! これで酒がたんまり飲めるな!」
(結局そこかよ……)
俺とラミアは、魔物を無力化し、貴重な鉱石を手に入れることに成功した。
だが、今回の件で俺は確信した。
(この世界には、俺の知らない未知の資源がまだまだ眠っている)
異世界貿易の可能性は、まだ始まったばかりだ――。
この鉱脈はかつて王国が管理していた採掘場だったが、魔物の発生や鉱石の枯渇が原因で放棄されたらしい。
しかし――
「くくく……捨てられた鉱脈ってのは、実はまだ掘れる宝の山だったりするんだよな」
ラミアが酒瓶を傾けながらニヤリと笑う。
「そんなもんか?」
「そりゃそうよ。王国の連中は採掘のプロじゃねぇ。取り尽くしたと思って放棄するが、ドワーフの目から見れば、まだまだ掘れる場所はたくさんあるもんだぜ」
なるほど、プロの視点ってやつか。
(じゃあ、ここでしっかり掘れば、俺の元の世界で売れるような珍しい鉱石が手に入るかもしれないな)
「よし、じゃあ探索開始だ」
「待て待て、その前に……」
ラミアが俺の腕を掴む。
「一応、念のために魔力感知で内部の魔物の気配を探ったほうがいいな」
「なるほど」
俺は【魔力感知】を使い、廃坑の中の魔力の流れを探る。
(……結構な魔力の反応があるな)
確かに、この鉱脈には普通の鉱石とは違う"魔力を帯びた鉱石"が眠っているのは間違いない。
しかし、それと同時に――
「魔物の気配があるな」
「まぁ、そりゃそうだろうよ。魔導鉱脈なんだから、魔力を喰うヤツらが集まるのは当然だ」
「厄介そうなのは?」
「わかる範囲だと、そこまで強力な個体はいないな。ただし……魔力暴走体が数体混じってる」
魔力暴走体――ギルドの話でも聞いた、魔力を異常に吸収し暴発の危険がある魔物。
(つまり、無闇に攻撃すると爆発するタイプの敵が出てくる可能性が高いってことか)
「慎重に行くぞ。魔物がどんな動きをするかわからん」
「おう! んじゃ、掘る準備も整ったし……行くぜ!!」
---
廃坑の中は、予想以上に魔力の濃度が高かった。
ランタンの光に照らされる坑道は、荒れ果てているが、壁や床に微かに輝く鉱石が見えている。
「おおっと……早速良いもん見つけたぜ」
ラミアが壁に埋まった鉱石を見つめ、軽くツルハシを当てる。
「これは……ファイアクリスタルだな」
「炎属性の魔導鉱石か」
「おうよ。魔法の触媒に使えるし、エネルギー源としても応用が効く。下手すりゃ、魔道具屋に持ち込めば金貨数十枚にはなるな」
「いいじゃねぇか」
「んじゃ、掘るぜ!」
ラミアがツルハシを振り上げ、鉱石に打ち込もうとしたその瞬間――
「……待て、動くな」
「へ?」
俺は素早く魔力感知を拡張し、壁の奥に潜む異常な魔力の波動を感じ取った。
「この鉱石の裏に……何かいる」
「……!」
ラミアは一瞬緊張した表情を浮かべ、ツルハシをゆっくりと下ろした。
「まさか……こいつが"魔力暴走体"か?」
「可能性は高いな。しかも、結構デカい」
壁の向こうに、巨大な魔物の魔力が渦巻いているのがわかる。
(これは……迂闊に手を出すとまずいな)
「どうする? このまま掘るか?」
ラミアが俺を見上げて尋ねる。
---
選択肢――どう動く?
① 一旦撤退し、別の場所を掘る
危険を避け、確実に採掘できるポイントを探す。
しかし、レア鉱石のチャンスを逃す可能性がある。
② 罠を仕掛け、魔物をおびき出して倒す
魔力暴走体を確実に処理し、鉱石を安全に掘る。
ただし、魔物の能力が未知数なため、リスクあり。
③ 俺が魔力を抑制しつつ、ラミアが掘る
魔力制御スキルを使い、魔物の暴走を防ぎながら採掘する。
ただし、俺の魔力制御の負担が大きい。
---
「さぁ、どうする? あんたが決めてくれ」
ラミアが酒瓶を口にしながら、俺を見つめた――。
どう動く?
「俺が魔力を抑制する。その間にお前が掘れ」
俺は決断し、ラミアにそう告げた。
「おう、マジか。なかなか無茶するな」
「無茶は承知だ。ただ、この場所を逃したくない」
壁の向こうに眠る鉱石の波動は、間違いなく貴重なものだ。
もし元の世界へ持ち込めれば、とんでもない価値を生む可能性がある。
(魔力暴走体の影響がある以上、普通に掘れば暴発の危険がある……)
「ふっ、まぁいいさ。俺のツルハシさばきを見せてやるぜ!」
ラミアがニヤリと笑い、ツルハシを構える。
(よし……やるか)
俺は深く息を吸い、魔力制御を最大限に高める。
魔力感知を広げ、暴走体の魔力の流れをつかむ。
(……こいつの魔力は、まるで膨張し続ける風船みたいだ)
内部に溜め込まれたエネルギーが常に不安定で、刺激を与えると一気に爆発する仕組みになっている。
つまり、適度に魔力の流れを分散させれば、暴発を防げるはずだ。
「……ふぅっ」
俺は集中し、周囲の魔力を意識的に操作し始める。
壁の奥で揺らめいていた魔力が、俺の制御のもとで少しずつ沈静化していく。
「……いける、今のうちに掘れ!」
「へへっ、やっぱりすげぇな、あんた」
ラミアは嬉しそうに笑い、ツルハシを振り上げた。
カァァァン!
ラミアのツルハシが壁に打ち込まれる。
小さなヒビが入り、青白い光を放つ鉱石の一部が姿を現した。
「おぉっ……これは……!」
ラミアの目が輝く。
「間違いねぇ、エーテルオパールだ!」
「エーテルオパール……?」
「超高純度の魔力を蓄えた鉱石さ! これ一つで高位魔道具のコアに使えるレベルだぜ!」
(そんな貴重なものがこんなに簡単に……)
「よっしゃ、もっと掘るぜ!」
ラミアが勢いよくツルハシを振るい、さらに鉱石を削り出していく。
(……とはいえ、ずっとこのままってわけにはいかないな)
俺が魔力を抑え込んでいるとはいえ、魔力暴走体のエネルギーが完全に消えているわけではない。
むしろ、俺の抑制がなくなれば、一気に暴発する危険がある。
(時間がない……そろそろ決着をつけるか)
「ラミア、そろそろ仕上げろ。あんまり長くはもたん」
「おうよ! んじゃ……こいつでフィニッシュだ!」
ラミアが最後の一撃を打ち込む。
カンッ!
大きな音とともに、壁が崩れ、エーテルオパールの鉱脈がむき出しになった。
「やったぜ! これで――」
だが、その瞬間――
ゴゴゴゴゴゴ……!!
壁の奥で、異常な魔力の渦が巻き起こる。
「……っ、やべぇ!」
ラミアが咄嗟に後退する。
(クソ……抑えていた魔力が一気に解放される!)
壁の向こうから、光を帯びた魔物のシルエットが浮かび上がる。
「うおおおっ!? 出てきやがった!!」
ラミアが叫ぶ。
姿を現したのは、純粋な魔力の集合体のような魔物だった。
大きさは3メートルほどの半透明な球体で、その表面には魔法陣のような模様が浮かんでいる。
(……やばいな、こいつ、かなり不安定だ)
「ユート、こいつ、どうすりゃいい!?」
ラミアが俺を見て叫ぶ。
(攻撃すれば暴発、無視すれば魔力を吸収し続ける……なら――)
---
選択肢――どう対処する?
① 魔力吸収で無効化する
俺の魔力制御スキルを使い、魔物の魔力を吸収して消滅させる。
ただし、膨大な魔力を扱うことになるため、俺自身に負担がかかる。
② 冷却魔法で封じる
魔力の暴走を防ぐために氷魔法で冷却し、動きを封じる。
しかし、完全に無力化できるかは未知数。
③ 魔導鉱石を利用して誘導する
近くのエーテルオパールを使い、魔力を別の方向に誘導して暴走を回避する。
ただし、鉱石を消耗するリスクがある。
---
「おいおい、早く決めろよ、ユート!」
ラミアが焦るなか、俺は一瞬の判断を迫られる――。
(ここで爆発されたら、廃坑ごと吹っ飛ぶ可能性もある……)
なら、俺が吸収するしかない!
「ラミア、後ろに下がれ!」
「お、おう!」
俺は魔力制御スキルを最大限に発動し、魔力暴走体が放つエネルギーを抑え込みながら吸収し始めた。
「ぐっ……!!」
想像以上に強大な魔力の流れが俺の身体に流れ込んでくる。
(こいつ……ただの魔力の塊じゃねぇ……!)
吸収しようとするたびに、まるで生き物のように抵抗してくる。
俺が魔力を引き込むたび、暴走体は形を変えながら逃げようとする。
(逃がすか……!)
俺はさらに魔力制御を強化し、暴走体の魔力を確実に引き寄せていく。
(……あと少し……!)
俺は吸収の力を最大限に引き出し、暴走体のエネルギーを完全に飲み込む。
そして――
「……っ!」
パァンッ!!
暴走体は完全に魔力を失い、霧散した。
「っしゃあああ! やったぜ、ユート!」
ラミアが歓声を上げる。
俺はゆっくりと息を整えながら、手を握りしめた。
(……吸収した魔力、まだ俺の中に残ってるな)
これだけの魔力を飲み込んだ以上、何かしらの形で影響があるかもしれない。
「ふぅ、危なかったな……」
「でも、そのおかげで、安全に掘れるようになったぜ!」
俺たちは改めて、エーテルオパールの採掘を再開した。
採掘を進めるうちに、俺たちは合計10個の高純度エーテルオパールを手に入れた。
「こりゃあ……とんでもねぇ価値だぜ」
「そんなにすごいのか?」
「こんな純度の高い鉱石、貴族や王族の魔道具師ならいくらでも欲しがるぜ。普通に売れば金貨数百枚は軽く超えるな」
(ってことは、俺の世界で売れば……?)
異世界貿易の第一歩として、これ以上ない収穫だ。
「よし、これを持ち帰るぞ」
「おう! これで酒がたんまり飲めるな!」
(結局そこかよ……)
俺とラミアは、魔物を無力化し、貴重な鉱石を手に入れることに成功した。
だが、今回の件で俺は確信した。
(この世界には、俺の知らない未知の資源がまだまだ眠っている)
異世界貿易の可能性は、まだ始まったばかりだ――。
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