異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

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第2章

また魔大陸へ

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静まり返る街。星明かりの下、ユートは屋敷の裏庭に立っていた。
 空気が張りつめ、周囲の草木まで震えているように感じる。

 「じゃあ、行くか――」

 そう呟くと、彼は右手の薬指に嵌めた“魔力制限の呪い指輪”を見つめた。

 「……今日は本気でやる」

 指に力を込める。

 バキィッ!!

 鈍く重い音と共に、魔力制限の指輪が砕け散った。

 その瞬間、空間が震え、地鳴りのような“魔力の唸り”が周囲に響き渡る。

 「《転移:魔大陸》――」

 視界が白く染まり、ユートの身体は閃光と共に消えた。


---

ユートが転移したのは、瘴気が濃く立ち込める“瘴気の谷”。
 空は暗く、視界は常にかすんでいた。普通の人間なら、ここに数分いただけで意識を失う。

 「……この空気、相変わらず最悪だな」

 彼の目の前にそびえるのは、ねじれた巨木。
 その根元に、ぽつんと淡い緑光を放つ“命樹の芽”が、複数生えていた。

 「……あった。けど当然、守りはいるか」

 咆哮とともに現れたのは、巨大な赤黒い獣《ブラス・ハウンド》。
 魔大陸でしか見られない、最上位の魔物のひとつだ。



 巨獣は地を砕きながら突進してくる。
 ユートは即座に魔力を集中し、次々に魔法を発動。

 「《ファイアボール》《ウォーターカッター》《ウィンドスライス》《ストーンバレット》!!」

 四属性の魔法を連続で放つ。
 炎が燃え、水が切り、風が斬り、土が叩きつける――!

 「――まだだ、《ダブルキャスト》《マルチショット》!」

 魔法の弾幕がさらに加速。四方八方から魔力が交差し、煙と衝撃が谷を揺るがす。

 だがブラス・ハウンドは怯まず、黒い雷を纏って牙を剥いた。

 「ッ……クソッ、こいつ、タフだな!」

 ギリギリで飛び退きながらも、次の魔法を詠唱。

 「《ストーンランス》! 《ウォーターカッター》! ――連射!!」

 地面から突き出す岩槍と、高速で切り裂く水刃の連撃。
 ようやく獣の動きが止まり、咆哮と共にその巨体が崩れ落ちた。


【命樹の芽を回収】

 瘴気の中、ユートは慎重に接近し、光る芽を丁寧に採取する。

 「……5つ。よし、次だ」

 疲れた身体にヒールをかけながら、次の目的地へ転移する。


---

【魔大陸・黙滅の谷】

 世界の底を思わせるような谷――
 “音が消える”とまで言われる、死と沈黙の場所《黙滅の谷》。

 ここに、命の核石は存在する。

 谷に一歩踏み入れた瞬間、全ての音が遠くに霞んだように感じられた。

 「……ここの空気、重すぎるな……」

 そして、姿を現す――

 黒き騎士《ブラッド・ナイト・オルデイン》。
 漆黒の大剣に雷を纏い、赤い眼でユートを見据える。



 「なら――こっちも手加減しねぇ」

 ユートが両手を構えると、周囲に魔法陣が展開。

 「《フレイムシュート》《アクアスピア》《ウィンドブレード》《ロックニードル》!!」

 左右上下から放たれる基本魔法の“弾幕”。

 しかし騎士はすべてを読み切り、雷の剣で切り裂く。

 ユートは一瞬の隙を突き、《ウォーターボール》を地面に撒く。
 滑った騎士がわずかにバランスを崩したその瞬間――

 「今だッ!」

 《ストーンバースト》《ファイアバースト》!
 爆裂のような魔法が集中し、ついに黒騎士の動きが止まる。

 「――決める」

 特大の《ファイアランス》を高く掲げ、一直線に騎士の胴体へ。

 音もなく貫いたその一撃のあと、騎士の巨体が崩れ落ちた。


【命の核石を5つ回収】

 「……これで、揃った」

 淡く青白く輝く“命の核石”を丁寧に採取し、魔力で包む。
 その瞬間――ユートの身体を強烈な光が包んだ。

 【レベルアップ:Lv570】

 「……今回のはさすがに、キツかった」

 だが、その瞳に迷いはなかった。

 「これでまた、助けられる命があるなら――それでいい」


---
ユートは静かに扉を叩き、重々しい木の扉が軋む音を立てて開いた。
 中には、いつものように無口な職人、ゼネが佇んでいた。

 「……何か、作らせる気か」

 「今回は多いぞ。いい素材が手に入った」

 ユートは魔道袋から次々に素材を取り出す。

 《命樹の芽》──上級ポーション50本分
 《命の核石》──万能薬5本分

 ゼネは素材を無言で手に取り、品質を確認する。
 何も言わないが、わずかに口元が引き締まるのをユートは見逃さなかった。

 「これだけの数……さすがに時間がかかる。最低でも数日は必要だ」

 「構わない。その分しっかり仕上げてくれ」

 ユートは報酬として、用意していた金貨150枚を差し出した。

 「前回より数も手間も上。足りるか?」

 「充分だ。支払いに文句はない。……完成したら連絡する」

 ゼネはそう言って、すぐに調合台へ向かっていった。
 彼にとって、すでにユートは“ただの依頼人”ではないのかもしれない。


---

【数日後・再訪】

 約束の日。再び研究室を訪れると、ゼネはやや目の下に隈を作っていたが、背筋は伸びていた。

 「――できた」

 ゼネが無言でトレーを差し出す。

 整然と並べられたポーションの瓶は、それぞれがわずかに輝き、澄んだ気配を放っている。

 ・《上級ポーション》×50本
 ・《万能薬》×5本

 「命樹の芽も核石も、非常に扱いやすかった。
 今までで最も安定した出来だ。保存状態も良好。使用期限は長めに持つ」

 ユートは一つひとつ丁寧に確認し、魔道袋へと収納していく。

 「……感謝する。これで、また何人か救える」

 「口外は無用だ。あの薬は、知られすぎてはいけない」

 「ああ、わかってる。これは――命そのものだからな」


---

王都の中心部、石畳の通りに面した立派な商館。
 ユートが足を踏み入れると、すぐに顔なじみの職員が出迎えた。

 「ユート様、お待ちしておりました。応接室へどうぞ」

 応接室では、品のある服装に身を包んだライネル商会の代表――ライネル本人が待っていた。
 落ち着いた物腰と、どこか底の知れない笑みが印象的な商人だ。

 「これはユート様。ご無事で何よりです。今回も“特別な品”で?」

 ユートは軽く頷き、魔道袋を机の上に置く。

 「《上級ポーション》を20本。それと今回は、特別に《万能薬》を1本、預けたい」

 ライネルの目がわずかに細まり、しかしすぐに整った笑みを浮かべる。

 「……ついに、その段階まで来られましたか。
 承知いたしました。責任を持って、厳重に管理いたします」

 ユートは静かに言葉を添える。

 「いつも通り、“匿名”で。取り引きの際も俺の名前は出さないこと」

 「もちろんでございます。ライネル商会の信用にかけて。
 上級ポーションはすぐに取り引きに入れます。
 万能薬のほうは……価格帯と出品先を慎重に調整いたします」

 ライネルは丁寧に記録し、受領証をユートに手渡す。

 「価格が確定次第、改めてご報告いたします」

 「よろしく頼む」


---

ユートが預けたもの:

《上級ポーション》×20(高品質・欠損再生可能)

《万能薬》×1(即時再生、極秘扱い)


ユートの所持分(未使用):

《上級ポーション》×40

《万能薬》×4


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