異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

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第2章

昇格試験

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【王都郊外・ダンジョン前】

 岩場に囲まれたダンジョンの入り口に、ユートたち3人の他に、一人の男が立っていた。

 「ふむ、君たちが今回の受験者か。私はギルド本部から派遣された“監督役”のグレイスンだ」

 筋の通った背筋と無駄のない動き。
 軽装だが、腰に装備された細身の剣が只者ではないことを物語っていた。

 「基本的に口出しはしないが、万が一のときは安全確保のために介入する。もちろん、合否には影響しない」

 「つまり、見張られてるってことだな」
 バルトが小声で言うと、グレイスンはうっすらと笑った。

 「その通り。だが、君たちの実力を信じているよ」


---

【ダンジョン内部】

 湿気がこもる洞窟に、4人の足音が響く。
 先頭はバルト、その横にティナ、後方支援としてユートがつき、一番後ろにグレイスンが静かに歩いていた。

 「前方に気配。ファングベア2体」
 ユートが囁くと、グレイスンは何も言わず頷いた。

 「ティナ、俺が引きつける。お前は横から回れ」
 「了解!」

 戦いが始まり、2人は今までの修行の成果を存分に発揮する。

 俊敏に動くティナの斬撃。
 力強く攻めるバルトの剣圧。
 ユートは一切手を出さず、補助魔法すら唱えない。

 数分の激闘の末、2体のファングベアは倒された。

 「……見事だ」
 グレイスンが静かに拍手する。

 「連携、反応、状況判断。申し分ない。だが……本番はこれからだぞ?」


---

 通路の奥、強い魔力の波動が響いていた。

 「気づいてたか。……中ボス級、来るぞ」
 ユートが呟き、バルトとティナが深く頷いた。


---
【ダンジョン内部・最奥手前の大広間】

 奥へ進むと、空気が変わった。

 湿った冷気に混じる、獣のような息遣い。
 そこには、岩肌の広間に身を伏せていた魔物が、低く唸りを上げていた。

 「……アイアンクロー・リザード」
 ユートが名前を呟いた。

 全長3メートルを超えるトカゲ型の魔物。
 全身は岩のように硬い鱗で覆われ、前足には鉄の鉤爪のような鋭い爪が光る。

 「完全にCランククラスだ。防御も攻撃力も一級品。迂闊に近づくと危ないぞ」

 「……でも、逃げたくない」
 ティナが剣を握る手に力を込める。

 「俺たちでやるって決めたからな」
 バルトもぐっと地面を蹴って前に出た。

 グレイスンは後方で腕を組み、真剣な眼差しを送る。


 「うおおおおおっ!」

 バルトが大きく踏み込み、斬りかかる。
 だがアイアンクロー・リザードは低く唸りながら体を回転させ、その尻尾で迎撃する。

 「くっ……! 硬ぇ!」

 「バルト、下がって! 私が隙を作る!」

 ティナが俊敏に回り込み、敵の後脚へ一撃!
 しかし鱗が硬すぎて、剣が浅くしか刺さらない。

 「なら――《フェイント》!」

 バルトが一旦後退するフリをし、そこから地を這うような斬撃を放つ。ティナも一瞬後に合わせて突きを入れた!

 ガンッ!

 魔物が呻き、前足を振り上げる。その隙を逃さず――

 「――今だ、頭!」

 2人の斬撃が交差し、魔物の喉元を同時に貫いた。

 ゴゴゴッ……!

 アイアンクロー・リザードが仰向けに倒れ、地面を揺らしながら絶命する。



 「はあ……っ、やった……やったよね!?」
 ティナが剣を構えたまま笑顔になる。

 「決まった……っ! よっしゃあああっ!!」
 バルトは倒れた魔物の前で思わずガッツポーズ。

 「完璧な連携だった。手出しの必要すら感じなかったな」
 ユートが満足げに笑う。

 「文句なしだ」
 グレイスンも一歩前に進み、真顔で頷いた。

 「この結果をギルドに報告する。おめでとう。二人とも、Cランク昇格だ」


---

【王都・冒険者ギルド】

 ダンジョンから戻り、ギルドの扉を開いたとき――
 受付嬢のエルナがぱっと顔を輝かせた。

 「お帰りなさい! 昇格試験、成功したんですね!」

 「うん……ばっちり倒してきたよ!」
 ティナが少し誇らしげに笑うと、バルトが拳を握りしめて続けた。

 「俺たち、やったぞ。ちゃんと力を合わせて!」

 後ろからゆっくりと歩いてきたグレイスンが、静かにギルド職員へ報告書を手渡す。

 「二人とも、文句なしの合格だ。現場でしっかり見届けた」
 「ありがとうございます!」
 ティナとバルトが揃って頭を下げる。

 「では、改めて――」

 ギルド職員が大きく宣言した。

 「ティナ・バルト、正式にCランク冒険者へ昇格と認めます!」

 ギルドのロビーに小さな拍手が起こる。
 いつもの喧噪の中に、温かな祝福の空気が流れた。


---

【夜・ユートの家】

 テーブルに料理が並び、照明の明かりが柔らかく揺れる。

 「いや~、やっぱり頑張った後の飯は最高だな!」
 バルトが大きく肉を頬張りながら嬉しそうに笑う。

 「ユートもありがと。いろいろ支えてくれて……」
 ティナは真っ直ぐな目で礼を言う。

 「本当に強くなったな。これからは、もっと幅広い依頼が受けられる」
 ユートは二人の成長を噛みしめるように言った。

 「次はBランクだな!」
 「気が早いよ、バルト!」

 そんな笑いが、今日だけは止まらなかった。


---
【翌朝・王都の市場通り】

 朝の光が石畳を照らし、賑やかな商人たちの声が響く。

 「で、ユート? 今日はどこへ行くんだ?」
 バルトが小走りでユートの隣に並ぶと、ティナもその後ろに続いた。

 「今日はお前たちの昇格祝いだ。Cランクになったんだから、それに見合う装備を持ってもらう」
 「えっ……マジで!?」
 「うそ……いいの?」
 バルトもティナも目を丸くしてユートを見た。

 「いいに決まってる。ここまでよく頑張ったからな。しっかりした武具を揃えて、次に備えよう」


---

【武具屋《鍛冶工房グランブル》】

 武具屋の扉をくぐると、熱気と金属の香りが一気に押し寄せてくる。
 中には、大小さまざまな武器や鎧がずらりと並び、職人らしき男たちが忙しく作業をしていた。

 「おお、ユートさんじゃないか!」
 奥から現れたのは、以前にも対応してくれた屈強な店主・バルド。

 「今日はどうした?」
 「この2人がCランクになったんだ。昇格祝いに、新しい武具を揃えてやりたくてな」

 「ほう、それはめでたいな! ならばうちのCランク帯向け特注品を見せよう!」


---

 「うおお……すげぇ!」
 両手剣の棚の前でバルトが興奮気味に眺めていた。

 選ばれたのは、黒鉄の両手剣。
 刃に重みがあるが、バルトの筋力なら扱える。
 斬撃時に“衝撃波”を伴う加工が施されており、見た目以上に威圧感があった。

 「これ……今の俺なら振れる……!」


 一方ティナは、実戦を見越した軽量の**片手剣《ミスリルフェンサー》**を手に取る。
 「そろそろ火力が足りないかなと思ってた」
 刃は細身だが、魔法金属ミスリルの加工がされており、軽く鋭く、魔力にも耐性がある。

 「すごく……手に馴染む。これなら、もっと戦えるかも」


【会計】

 「……っと、合計で金貨55枚になるな。ま、特注品だから安くはないが」

 「構わない。良い物だ」

 ユートが躊躇なく金貨袋を差し出すと、バルトとティナは思わず顔を見合わせた。

 「ユート、本当にありがとう」
 「この恩は、次の戦いで返す!」

 ユートは笑って肩を叩いた。

 「期待してるぞ。お前たちは、もう立派な“前線の冒険者”だからな」


---
【王都・防具屋《鋼羽(はがねば)防具店》】

 武器を手に入れた3人は、次に通りの角を曲がった場所にある、防具専門店に足を運んだ。

 店内は金属と革の匂いが漂い、整然と並ぶ鎧や防具が目を引いた。

 「ようこそ、防具なら一通り揃ってるよ。ランクCに上がったなら、それ相応の装備が必要だね」

 軽装中心に見繕い、バルトには上半身に着る軽量チェインメイルと強化革の脛当て、
 ティナには動きやすさ重視の胸当てとガントレット、肩と太腿の防刃装備を購入。どれも軽装だが、素材は一級品。

 「これ、軽いのに守ってくれるのすごい……」
 「チェインの中に入ってる芯が魔獣の繊維でできててな。切れにくくて動きやすい」

 会計は防具一式で金貨30枚。


---

【王都・魔道具店《マージナル工房》】

 続いて向かったのは、王都でも評判の高い魔道具店。店内は香草のような香りと魔力の気配に包まれていた。

 「いらっしゃい。今日はどんな魔道具をお探しで?」

 「昇格祝いで、戦闘支援系の指輪を探してる。具体的には――身体強化系か魔力系」

 「こちらになります」

 店主が出してきたのは、いずれもランクC冒険者向けのステータス上昇系の指輪。


---

●バルト用:筋力強化の指輪
 常時、筋力+10相当の効果。重い剣の振りがさらに鋭くなる。

●ティナ用:敏捷強化の指輪
 移動時の反応速度と回避性能が向上。機動力特化型。

 指輪は魔力供給型で、日常では負担にならず、戦闘時に効果を発揮。


 「お代は……特別に、2つで金貨40枚でどうでしょう。これ、在庫の最後です」

 「いい買い物だ」
 ユートは迷わず購入。バルトとティナは恐縮しきりだったが――

 「……大事に使って、もっと強くなる。絶対、恩返しするから」
 ティナが指輪を左手にはめながら、決意をにじませて言った。


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