異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

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第2章

依頼完了

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数日ぶりに帰ってきた王都。
 一行はギルドで正式に依頼完了の報告を済ませ、ひと段落したところだった。

 「ふう……とりあえず、今回は大成功だな」
 バルトが気の抜けたように背伸びをする。

 「アレッサ博士も無事でよかった。あの魔物……本当に怖かった」
 ティナがユートの隣で、そっと剣の柄を見つめながら呟いた。

 そんな彼らの元に、ザイドが近づいてくる。

 「ユートさん……いや、あんたさ」
 「……ん?」

 「俺、けっこういろんな冒険者見てきたつもりだったんだが……あんたは、ちょっと別格だな」

 ユートは少し目を細めた。
 ザイドの口調は軽いが、真剣な目をしていた。

 「戦闘でも、判断でも、魔法の使い方でも……“隙がない”。何者なんだよ、本当は」

 「……ただの“ちょっと旅をしてる奴”さ」

 「ふーん……まあ、詮索する気はないけどよ。1つだけ、頼みがある」

 「頼み?」

 ザイドはすっと手を差し出した。

 「また、組んでくれないか。今度はこっちが正式に頭下げて依頼したいくらいだ」

 ユートは一瞬だけ驚いた顔をし、次いでその手を軽く握り返した。

 「……面白い依頼なら、考えてもいい」

 「マジか……よし、そんときは最高のメンバー集めて待ってるぜ」


---

 少し離れたところで、ティナとミリアが見ていた。

 「……仲良さそう」
 「ミリア……嫉妬?」

 「んー……ちょっとだけ」

 ティナがまた真っ赤になった。


---

【王都・夜の自宅】

 ギルドでの依頼を終えたその夜。
 ユート、バルト、ティナ、そして家政婦のミリアと共に、夕食を囲んでいた。

 「ティナ、最近よく動けてるな。剣の振りも、すごく安定してる」
 バルトが素直に褒めると、ティナは少し恥ずかしそうに俯きながら笑った。

 「うん……ありがとう。道場の先生にも、少しずつって言われてて……」

 すると、ふとティナが箸を置き、ぽつりと呟いた。

 「……ねえ、ユート。わたし、今度……“ある人”に会いに行きたいんだ」

 ユートが表情を引き締める。

 「誰に?」

 ティナはしばらく黙っていたが、小さく答えた。

 「……昔、お世話になってた……獣人だけで暮らしてる集落があって。王都の外れにあるの。逃げ出したように出てきたから、ずっと気になってて……」


---

 翌日

 ユートとバルトを連れて、ティナは王都のさらに南――小さな森の奥へと向かった。

 そこにあったのは、ひっそりと佇む“獣人の村”。
 10棟ほどの古びた木造家屋が並び、ほとんどが人目を避けるようにして暮らしている。

 「ティナ……!?」

 村に入った瞬間、1人の老女が目を見開いた。

 「久しぶり……ミーネばあちゃん」

 「ほんとに、お前なのかい……あの時は突然いなくなって……っ」

 老女がティナにすがるように抱きついた。ティナの目にも涙が浮かぶ。


---

【村の集会所】

 ティナが幼い頃、村は人間の商人に“奴隷として売られる契約”を結ばされそうになっていた。
 ティナはその話を偶然耳にし、恐怖から村を飛び出したという。

 「私、逃げたの……怖くて、誰にも何も言えなくて。でも、あれから村が無事だったってわかって、ほっとした……」

 「今は違うんだよ。この人達が守ってくれてね、あの時とはもう違う」

 ユートとバルトは静かにその話を聞いていた。

 ティナは村の長老に深く頭を下げる。

 「いつか、私が……この村をちゃんと守れるように、強くなる。だから……ごめんなさい。そして、ありがとう」

 ユートはそっとティナの肩に手を置いた。

 「行こう。お前の過去は、お前の一部だ。それを受け止められたなら……もう、一歩前に進めるな」


---

朝から活気に満ちたギルドのホール。
 依頼掲示板の前には、冒険者たちが群がっていた。

 「うーん、討伐系は多いけど……どれも似たような内容ばっかだな」
 バルトが腕を組みながら掲示板を見上げる。

 「でも、最近はあんまり無茶しないって約束でしょ?」
 ティナが少し笑いながら言うと、ユートは軽く頷いた。

 「そうだな。俺たち3人でちょうどいいくらいの、程よく動いて稼げるやつにしよう」

 その時、受付の女性が声をかけてきた。

 「おはようございます、ユートさんたち。ちょうどいいタイミングです。
 この“森林地帯の魔物掃討”依頼、ランクCですが、3人で受けるには最適ですよ」

 彼女が差し出した依頼書には、郊外の森林地帯で目撃された魔物群の討伐依頼と書かれていた。
 報酬は銀貨15枚。魔物の素材も持ち帰れば追加報酬になる。

 「よし、これにしよう。準備して昼には出発する」

 「はいっ!」
 ティナとバルトが声を揃えてうなずいた。


---

【王都郊外・森林地帯】

 午後には現地に到着し、ユートはすぐに周囲の魔力を探る。

 「小型の魔物が数匹、そして奥に……中型クラスが1体。悪くない構成だ」

 「俺が前に出る。ティナは支援に回ってくれ。ユートは……って、言うだけ無駄か」
 バルトが苦笑する。

 「ま、楽勝とはいえ気は抜かないように」

 森の中に踏み込むと、素早い動きの“フォレスト・ウルフ”が牙を剥いて飛びかかってきた。

 「ティナ、右に1匹!」
 「了解!」

 3人の連携は息が合っており、刹那のうちに狼型魔物たちは倒されていく。


--

 「これで全部か。中型の魔物も討伐完了。あとは素材を回収して戻るだけだな」
 ユートが魔物の体内から魔石を抜き取りながら言った。

 「ふふ、バルトもティナも、ちゃんと強くなってるな」
 「ま、当然だよ!」
 バルトがふんっと胸を張り、ティナも笑顔で頷いた。


---
【王都ギルド・夕方】

 陽が傾き始めた頃、ユートたちは無事に王都へ戻り、ギルドのカウンターに依頼書と魔物の素材を提出した。

 「確認いたしました。フォレスト・ウルフの群れ、討伐完了ですね。お疲れさまでした!」

 受付嬢がにこやかに対応し、ほどなくして報酬の小袋が手渡された。

 「こちら、報酬の銀貨15枚です」

 ユートが受け取り、仲間の二人に見せる。

 「はい、5枚ずつ。今日はこれで晩メシだな」

 「おっ、いいね!ガッツリ肉が食いたい!」
 バルトがニッと笑って拳を握る。

 「ふふ……私、甘いものも欲しいな」
 ティナはほわっとした笑顔を見せて、銀貨をそっと巾着にしまった。

 「よし、じゃあ飯行こう。王都の外れに美味い店があるって、前にミリアが言ってた」


---

【王都の食堂・夜】

 灯りのともる賑やかな店内。焼かれた肉の匂いと、甘い果実酒の香りが混ざり合い、冒険の疲れを癒してくれる。

 「やっぱこういうのが一番だなぁ……」
 バルトが肉の串を両手に持って、幸せそうにかぶりつく。

 「お疲れさま。今日は3人ともよく動いたな」
 ユートがグラスを持ち上げ、ティナとバルトもそれに合わせて乾杯した。

 冒険者としての日常。小さな達成感と仲間との時間が、確かに積み重なっていく――。


---
【王都ギルド・午前】

 ユートが受付で日常的な報告をしていたところに、カウンター奥から声がかかった。

 「ユートさん、ちょうどよかったです。ティナさんとバルトさんの冒険者ランクですが、条件を満たしたので、Cランク昇格試験を受けることができますよ」

 「おっ、来たな!」
 バルトが嬉しそうに拳を握る。

 ティナも小さく息を飲み、すぐに頷いた。

 「うん、受けたいです」

 「もちろん、俺たちが一緒にやってきた成果だしな」
 ユートが笑いながら背中を叩く。


---


 担当のギルド職員が説明を始める。

 「Cランク昇格試験は、実技重視です。指定されたダンジョンに入り、
 決められた目標――“中型以上の魔物の討伐”と“証拠の持ち帰り”を達成してください」

 「危険度はCランク相当。ただし、補助として1名まで同行可能です」
 職員がユートを見た。

 「もちろん、ユートさんの実力は十分承知していますが、今回はあくまでおふたりが主役という形でお願いします。あまり手を出しすぎないように……」

 「了解。指導役に徹するよ」


---

【その日の夜・ユートの家】

 夕食の後、試験の準備を確認している3人。

 「なあユート、俺……緊張してるのかな? ちょっとだけソワソワする」
 バルトが言うと、ティナも微笑んだ。

 「私も。でも……ユートが一緒なら、きっと大丈夫」

 ユートは真面目な表情でうなずいた。

 「お前たちは十分強くなってる。自信を持って行け。俺は必要最低限のフォローしかしない。これは、お前たち自身の戦いだ」


---
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