異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

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第3章

ギルドから呼び出し

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【王都・冒険者ギルド・朝】

 その朝、ユートたちの家に、ギルドからの使いがやってきた。

「ユート殿、ティナ殿、バルト殿。
 ギルドマスターより、“3人で揃って来い”とのご指示です」

 ティナがパンをくわえたまま、ぽかんと目を見開く。

「……え、ギルドマスターから直接? なんかやらかした?」

「俺は何もしてないぞ! 昨日ミリアさんに怒られたぐらいで……」

 バルトが慌てて両手を上げる。

 ユートはスプーンを置き、少し眉を寄せてつぶやいた。

「タイミング的に、あれだろうな。ゼラストの件が絡んでる。
 ……とりあえず行こう」


---

【ギルド本部・ギルドマスター室】

 分厚い木扉をノックすると、中からすぐに声が返ってきた。

「入れ!」

 中に入ると、ギルドマスター――筋骨隆々で鋭い目をした中年男が、
 机に肘をつきながら、3人をじっと見据えていた。

「来たか。座れ」

 ユートたちが椅子に腰を下ろすと、ギルドマスターは唐突に言い放った。

「お前ら、Aランク昇格試験を受けろ」

 ティナが思わず口を開ける。

「……は? 私たち、Bランクになったばっかり――」

「知ってる。だが“上から言われてる”んだよ。……“早く上げろ”ってな」

 ギルドマスターは頭をかきながら、苦々しく言葉を続けた。

「本音を言えば、こんな手間いらねぇ。
 お前らの実力は、すでにAどころかSでもおかしくねぇ。
 でも、**“周りへの示し”**ってやつがある。無条件で昇格させたら、文句が出る」

 バルトがぼそっとつぶやく。

「……理不尽ってやつだな」

「そういうこった。だから形式的にでいい、サクッと試験を受けろ。
 こっちとしても、すでに試験官と内容は準備してある」

 ユートが腕を組みながら、軽くため息をついた。

「……はいはい。じゃあ、ちゃっちゃと片付けるか」


---

「試験は二本立てだ」

 ギルドマスターが机の引き出しから書類を取り出し、ユートたちの前にドンと広げた。

「ひとつ目は模擬戦。現役のAランク冒険者チームと一戦交えてもらう。
 全力でやれとは言わん。だが、実力の“証明”はしてもらう」

「ふーん、相手は誰?」

 ティナが身を乗り出すと、ギルドマスターはニヤリと笑った。

「“グランズ・バース”だ」

 バルトが「うわ」と顔をしかめる。

「筋肉ゴリ押しチームじゃん……」

「あいつらは前衛三人で突っ込んで、後ろから斧が飛んでくるんだよな……」

「知ってるなら話が早い。とにかく、そこで腕を見せてもらう」

 ギルドマスターは書類をひっくり返し、次の紙を示した。

「そして二つ目は討伐任務だ。
 最近この王都近郊に現れた“赤鉄ヒル・キング”の巣を潰してきてもらう」

「……赤鉄ヒル?」

 ユートの目がわずかに鋭くなる。

「名前はアレだけど、あれって大型種じゃなかったか?」

「そうだ。鉄を食って巨大化するヒルの魔獣種。
 放っておくと地下構造に潜って、建物の基礎を崩す厄介な奴だ。
 お前らなら単独でも問題ないだろうが、一応、“三人一組”での連携も見せてもらう」

 バルトがニヤッと笑った。

「いいねぇ。筋肉と魔法と連携、全部見せろってか!」

「おう。文句言わせねぇためには、手加減せずやってくれ」

 ギルドマスターは手帳に何かを書き込み、最後に言った。

「模擬戦は明日の昼、訓練場でやる。
 討伐任務はその翌日だ。現地にはギルドから監査役を同行させる。
 ――いいか、お前ら。“A”ってのは、王都で顔が利くって意味でもある。
 適当にやって恥かかせるなよ」

 ユートは立ち上がり、ひとつ頷いた。

「……了解。さっさと受けて、さっさと終わらせますよ」


【ギルド訓練場・模擬戦当日】

 昼過ぎのギルド訓練場。
 見物人の冒険者たちが囲む中、模擬戦のリングの中心に二組のチームが向かい合っていた。

 一方はユート、ティナ、バルト。
 そして対するは、筋肉前衛三人組のAランクチーム――“グランズ・バース”。

「よぉ、ユートくん。今からでも降りていいぞ? あとで泣かれても困るしよォ?」

 グランズ・バースの隊長、アグリスが不敵に笑う。
 鉄球のような斧を片手でクルクルと回しながら挑発してくる。

「……じゃあ、ちゃっちゃと終わらせようか」

 ユートがぼそりと呟く。が――

「ユートは下がってていいよ!」

 ティナがキラッと笑いながら剣を抜き、

「前衛は俺たちに任せろー!」

 バルトがテンションMAXで大剣を肩に担ぎ、リングへ一歩踏み出す。

 ユートが肩をすくめて一歩後ろに下がる。

「……はいはい。俺、見てるわ」


---


 開始の合図が鳴ると同時に、バルトが突っ込んだ。

「うおおおおおおおっ!!」

 その巨体から繰り出される大剣の一撃は、地響きを起こすような重さ。
 グランズ・バースの盾役が受け止めようとした瞬間――

「ぐはっ!?」

 そのまま吹き飛ばされた。

「後ろががら空きだよ!」

 ティナが滑るように横から回り込み、
 鋭く、正確な斬撃をグランズの副隊長の喉元すれすれに突きつけた。

「……ま、参った……!」

「次はお前だあああ!!」

 バルトの二撃目は、地面ごと叩き割るような勢いでリング中央を抉り、
 アグリスが両腕で防いだものの、武器ごと弾かれ――

「ギブッ!! ギブだギブ!! やべぇってその筋肉!!」



 開始からわずか一分で、模擬戦は終了した。

「……え、もう終わり?」

 ユートは一歩も動かず、後ろでボーっと立っていた。

「魔法の準備すらしてなかったぞ……」

 観客席からも驚きのどよめきが起きる。

「Bランクになったばかりって嘘だろ……」

「ってかあの男の大剣、あれ人間が振っていいもんなのか……?」

「剣士の女の子も速すぎて見えなかったんだけど……」

 そんな声が飛び交う中、ティナが肩をほぐしながら戻ってきた。

「いやぁ、気持ちよく動けたー!」

 バルトも満面の笑みでサムズアップ。

「いいウォーミングアップだったな!」

 ユートが肩をすくめて小さく呟く。

「……俺、見学してただけなんだが」

【王都南・赤鉄ヒルの巣近郊】

 翌日――
 ユート、ティナ、バルトの三人は、討伐試験として“赤鉄ヒル・キング”の巣へ向かっていた。

「……今日はさすがに、俺も少しは出番あるよな?」

 馬車を降りながらユートがぼやくと、ティナが軽く笑う。

「え、なに? ユート、昨日出番なかったの根に持ってるの?」

「いや別に根には……ちょっとしか……ほんのちょっとな」

 バルトが大剣を担ぎながら、やる気満々で胸を張る。

「でもよ、出番が無いってのは、俺たちが優秀ってことだろ?
 つまりユートは俺らを信じての温存ってやつだ。な?」

「前向きすぎて、ある意味うらやましいわ……」


---

【赤鉄ヒルの巣・入口】

 地面のあちこちにぽっかりと空いた穴。
 地熱が立ち昇り、ぬめりを帯びた痕跡が続く。

 監査役のギルド職員がやってきて、ボードに記録をとりながら声をかける。

「では、目標は“赤鉄ヒル・キング”の討伐一体。
 手段は任せますが、出来るだけ迅速にお願いします」

「オッケーです!」

 ティナが軽やかに手を挙げたかと思うと、
 次の瞬間――

「いっくよー! 火炎瓶スロー!」

 ヒュッ

 ゴオォォォォッ!!

 いきなり巣穴の中へ、手製の火炎瓶をブチ込み。

 「ひゃはあああっ! 地面動いたぞ! でっけーの出てくる!!」

 バルトがすでに待ち構えていた。

「さぁて、“鉄喰いデブヒル”ちゃんよぉ……このオレの筋肉に耐えられるかな?」

 ズガアアアアアアン!!!

 巨大な赤鉄ヒルが巣穴から飛び出してきた瞬間、
 バルトの大剣が火炎と共にド直撃!!

 ヒルの頭がめり込むように地面にめり込み、そのままバタリ。

「はい、討伐完了!!」

 監査員「……え?」


---

 数分後、
 呆然とした監査員が紙に“完了”と書く横で、
 ユートは小声でつぶやいた。

「……マジで何もしてないんだけど」

 ティナがにっこり笑って答える。

「魔法使いはね、ちゃんと後ろで指示出してくれるだけでいいんだよ」

「出してねぇよ、指示なんて!」

 バルトが肩を叩いてくる。

「安心しろ、ユート。次こそはお前の魔法が必要な依頼がくるって!」

「“次こそは”って言ってる時点で、今日がダメだったって認めてんじゃねぇか……」


---

 ギルドに戻って報告書を提出すると、
 ギルドマスターが報告を一目見て顔をしかめた。

「……なぁユート、お前……今回も一発も撃ってないらしいな」

「そ、そう見えるかもしれませんが、精神的指揮とか、戦略的沈黙とか……」

「お前もういっそ審査員やれよ……。
 まあ、いい。合格だ。文句言う奴がいたらオレが殴っとく」


---

 こうして、
 ユート・ティナ・バルトの三人は、無事Aランク冒険者となった。

 ……ただし、ユートは今も「活躍してないAランカー」として、
 ギルド内のネタにされ続けているという。
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