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第3章
自警団
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【数日後・エンデリオ商会 王都支部】
ノア・スヴェルの報告は早かった。
契約締結からわずか三日後には、王都の上流貴族向けに**“数量限定の香る魔道石鹸”**が並び始める。
特に話題を呼んだのは、その香り――
> 「“森の精霊がささやくような香り”だそうですよ」
「日が暮れると、かすかに香りが変化するって話も……魔道香水とはまた違った品ですのね」
言葉は誇張されながらも、美しく装飾され、王都中に広がっていった。
---
【フィルデン・開拓本部】
エンデリオ商会からの最初の売上報告に、セリナは目を丸くした。
「……三十本が、もう全部……!?」
「完売だよ。しかも、追加の予約が来てる。
ノアが“今後の拡販体制を整えたい”って言ってきた」
「で、でも、まだそこまで生産できない……!」
ユートは笑って首を振る。
「焦らなくていい。最初は“少数精鋭”で、丁寧に作ろう。
それが“フィルデン品質”ってことになるんだから」
「……はいっ!」
---
香りと共に街の名が広まれば、当然それに惹かれる者たちも出てくる。
翌週――
新規商会の使者:「香る雑貨と化粧品の共同開発に興味が」
職人志望の青年:「自分の技術を試す場所を探していた」
逃れてきた女性薬草師:「身分に縛られず、自由に働ける場所があると聞いて」
彼らは口々に言う。「ここなら、何かを始められる気がする」と。
---
【フィルデン・仮設執務室】
増えていく住人、新しい商人や職人、そして興味本位で訪れる旅人たち。
フィルデンの広場は、いつしか“出入りの多い拠点”となっていた。
「……そろそろ限界だな」
ユートは、地図の脇に溢れ出した名前リストを見ながら呟いた。
「物資の管理も、人の出入りも、全部“信頼”だけで回してきた。
でも、これ以上は“仕組み”が要る。特に“守る力”だ」
---
【宮野の提案】
「小さな衝突や盗難が起き始めてる。まだ悪質じゃないけど、兆候はある。
だから、先に“ルールを守る人間”を立てておくべきだ」
「自衛団、みたいな?」
「そう。名目は“街の安全を守る警邏隊”。
住民の中から信頼されている者を選んで、少数でいい。
最初は“見回り”と“話し合い”が仕事で、武力は最終手段だ」
「よし、じゃあやろう。
この街は“力に頼らない自由な場所”であるべきだけど、
だからこそ、最低限の“秩序を守る者”は必要だ」
ユートはマップの空き地に目を落とす。
「まずは詰め所と宿舎を作ろう。
それから、“街の憲章”に沿って行動する者に“徽章”を与える。
“力を誇るため”じゃなく、“信頼されるため”の証だ」
---
宮野とユートは、受け入れ方針を協議する。
「今のうちに、“街の入植基準”を定めた方がいいな。
どんな人でも歓迎するが、“一定の誓約”は必要だ」
「誓約……?」
「“この街の一員として働く意思があるか”――それを形式にして残しておく。
いずれ本格的な市政制度を整える前の、“信頼のサイン”だ」
「なるほど……“志願者の誓い”って感じか。よし、文案考えてくれ」
--
香りは、人を惹きつけた。
次に必要なのは――**「暮らしやすさ」「安心」「未来への拡張性」**だった。
そしてユートの中に、ひとつの新しい想いが芽生え始めていた。
(街を支える役所がいる。暮らしを守る者がいる。
次は――この街に“守る力”を、ちゃんと備えなきゃいけないな)
---
【フィルデン・広場・掲示板前】
掲示板には、新たに張り出された紙が風に揺れていた。
【フィルデン自治管理団《ルーセ衛士団》 初期構成員を募集】
集まった人々の間で、早速ささやき声が広がる。
「ルーセ……って何の意味だ?」
「ちょっとカッコいいけど、聞いたことないな」
「ユートさんが決めたのかな?」
その場に現れたユートが、少し照れくさそうに笑いながら言った。
「“ルーセ”ってのは、この辺りに昔あった、幻の小村の名前らしい。
滅びた理由も記録に残ってないけど――
“森と光に守られた平和な村”だったって、言い伝えがあるらしいんだ」
---
「今、ここに作ってる街が“誰にとっても安心できる場所”なら、
かつて存在していたそういう場所の名前を受け継ぐのも悪くないって、そう思った」
「……滅びた村の名前を?」
「だからこそだよ。
もう一度“ルーセ”をここに作るんだ――今度は、絶対に滅びないように。
ちゃんと、守る力を持って、みんなが“帰ってこられる”街にする」
「……なんか、グッと来たな」
「守られるだけじゃなく、“自分も守り手になれる場所”って感じだ」
「ルーセか……いい名前だ」
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ノア・スヴェルの報告は早かった。
契約締結からわずか三日後には、王都の上流貴族向けに**“数量限定の香る魔道石鹸”**が並び始める。
特に話題を呼んだのは、その香り――
> 「“森の精霊がささやくような香り”だそうですよ」
「日が暮れると、かすかに香りが変化するって話も……魔道香水とはまた違った品ですのね」
言葉は誇張されながらも、美しく装飾され、王都中に広がっていった。
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【フィルデン・開拓本部】
エンデリオ商会からの最初の売上報告に、セリナは目を丸くした。
「……三十本が、もう全部……!?」
「完売だよ。しかも、追加の予約が来てる。
ノアが“今後の拡販体制を整えたい”って言ってきた」
「で、でも、まだそこまで生産できない……!」
ユートは笑って首を振る。
「焦らなくていい。最初は“少数精鋭”で、丁寧に作ろう。
それが“フィルデン品質”ってことになるんだから」
「……はいっ!」
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香りと共に街の名が広まれば、当然それに惹かれる者たちも出てくる。
翌週――
新規商会の使者:「香る雑貨と化粧品の共同開発に興味が」
職人志望の青年:「自分の技術を試す場所を探していた」
逃れてきた女性薬草師:「身分に縛られず、自由に働ける場所があると聞いて」
彼らは口々に言う。「ここなら、何かを始められる気がする」と。
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【フィルデン・仮設執務室】
増えていく住人、新しい商人や職人、そして興味本位で訪れる旅人たち。
フィルデンの広場は、いつしか“出入りの多い拠点”となっていた。
「……そろそろ限界だな」
ユートは、地図の脇に溢れ出した名前リストを見ながら呟いた。
「物資の管理も、人の出入りも、全部“信頼”だけで回してきた。
でも、これ以上は“仕組み”が要る。特に“守る力”だ」
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【宮野の提案】
「小さな衝突や盗難が起き始めてる。まだ悪質じゃないけど、兆候はある。
だから、先に“ルールを守る人間”を立てておくべきだ」
「自衛団、みたいな?」
「そう。名目は“街の安全を守る警邏隊”。
住民の中から信頼されている者を選んで、少数でいい。
最初は“見回り”と“話し合い”が仕事で、武力は最終手段だ」
「よし、じゃあやろう。
この街は“力に頼らない自由な場所”であるべきだけど、
だからこそ、最低限の“秩序を守る者”は必要だ」
ユートはマップの空き地に目を落とす。
「まずは詰め所と宿舎を作ろう。
それから、“街の憲章”に沿って行動する者に“徽章”を与える。
“力を誇るため”じゃなく、“信頼されるため”の証だ」
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宮野とユートは、受け入れ方針を協議する。
「今のうちに、“街の入植基準”を定めた方がいいな。
どんな人でも歓迎するが、“一定の誓約”は必要だ」
「誓約……?」
「“この街の一員として働く意思があるか”――それを形式にして残しておく。
いずれ本格的な市政制度を整える前の、“信頼のサイン”だ」
「なるほど……“志願者の誓い”って感じか。よし、文案考えてくれ」
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香りは、人を惹きつけた。
次に必要なのは――**「暮らしやすさ」「安心」「未来への拡張性」**だった。
そしてユートの中に、ひとつの新しい想いが芽生え始めていた。
(街を支える役所がいる。暮らしを守る者がいる。
次は――この街に“守る力”を、ちゃんと備えなきゃいけないな)
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【フィルデン・広場・掲示板前】
掲示板には、新たに張り出された紙が風に揺れていた。
【フィルデン自治管理団《ルーセ衛士団》 初期構成員を募集】
集まった人々の間で、早速ささやき声が広がる。
「ルーセ……って何の意味だ?」
「ちょっとカッコいいけど、聞いたことないな」
「ユートさんが決めたのかな?」
その場に現れたユートが、少し照れくさそうに笑いながら言った。
「“ルーセ”ってのは、この辺りに昔あった、幻の小村の名前らしい。
滅びた理由も記録に残ってないけど――
“森と光に守られた平和な村”だったって、言い伝えがあるらしいんだ」
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「今、ここに作ってる街が“誰にとっても安心できる場所”なら、
かつて存在していたそういう場所の名前を受け継ぐのも悪くないって、そう思った」
「……滅びた村の名前を?」
「だからこそだよ。
もう一度“ルーセ”をここに作るんだ――今度は、絶対に滅びないように。
ちゃんと、守る力を持って、みんなが“帰ってこられる”街にする」
「……なんか、グッと来たな」
「守られるだけじゃなく、“自分も守り手になれる場所”って感じだ」
「ルーセか……いい名前だ」
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