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部長の記憶
次の日。
大学のチャイムが鳴ると同時に、浩一は教室の外へ飛び出した。
いよいよ、今日の夜に実行するんだ。
浩一は心の中にそう言い聞かせながらキャンパスを出ようとする。
すると、どこからか声をかけられた。
「あれ、田中くん?」
部長だ。
でも、今は早く帰りたい、そんな思いもある。
「すみません。今日は用事があるので......」
早々に断り、その場を通り過ぎた。
「あっ......」
部長は声をかける間もなく、早足で過ぎ去っていく浩一の姿を呆然と見つめていた。
◆
「どうしたんだろう。田中くん」
オカルト研究会の部室に入った部長は普段と違う浩一の様子を案ずるように言った。
「何かあったの?」
部室に先に来ていた逢が返事をする。
「いや、別に気にすることでもないんだけど、すごい急いでいる様子だったから」
部長は少しばかり引っかかる様子だった。
「特に悪いことじゃなかったらいいけど......」
部長と逢は気に留めているところもあったが、何事もなかったかのようにサークルを始める準備をした。
その時、部室の扉が開き、副部長が入ってきた。
「部長、お疲れ!」
部長は元気よく挨拶をする。
「お疲れ!」
唐突に、副部長は部長に話しかける。
「部長! そろそろ夏休みですよね」
「そうだね!」
そういえば、もう夏休みか。
部長はそう考えた。
そうか、たぶん田中くんは夏休みに何かやることがあるのかもしれない。
あるいは、この余暇にどこか行くためのお金をためようと、一目散にバイトに向かったのかもしれない。
部長は安堵の表情を浮かべた。
すると、副部長はご機嫌な様子で再び話しかけた。
「オカルト研究会でどこか合宿とかいきませんか? 心霊スポットとか」
「心霊スポットか......」
心霊スポット、確かにオカルト研究会なら行ってみたいような思いもある。
だが、部長は中学時代に起こった。悲惨な体験を忘れずにいた。
それは、部長が中学1年生のときだった。
隣町に幽霊が出ると有名な廃墟があった。
クラスの友達5人でその廃墟に遊びに行こうという話になり、夏休みの夜に塾に自習をしに行くという名目で彼らはその廃墟に向かった。
廃墟の中は真っ暗であり、中はひんやりとしていた。
そして、友達の一人が言う。
「そうだ。この中で合わせ鏡とかこっくりさんやらね?」
当時の部長は全くそのようなことに引け目を感じていなかったので他の友達と喜んでそれに加担した。
最初に手っ取り早く行える合わせ鏡を廃墟の中で行った。
とは言えども、実際は10円ショップで買った合わせ鏡をそれぞれ向かい合わせにおいただけであったのだが。
そして、その状態で彼らは合わせ鏡を彼らの真横に起き、空いたスペースでこっくりさんを実行した。
最初は遊び半分で無理やり紙の上に置かれた10円玉を動かしていた彼らだったが、10円玉をふざけて動かしていたうちの一人が急に気分の悪さを訴えてうずくまった。
「どうしたんだよ!?」
そう言いながら立ち上がった部長は、首筋にひんやりとしたものが触れるような感触を感じた。
「うわっ!」
そう叫んだところで、手に持っていた懐中電灯が消える。
心霊ドラマであるような光景を実際に目の当たりにした彼らは一目散にその場を後にした。
それから数日後のことだった。
部長の友人が交通事故で死んだ。
あの気持ち悪さを訴えていた少年だ。
部長は悪寒を覚え、それ以降体調不良が止まらなくなった。
そして、部長自身もひどい熱にうなされてしまう。
朦朧とした意識の中で見た夢は、あの廃墟の中で自分に黒髪の女性のようなものが徐々に近づいていくるというものであった。
熱の中で部長は何度もうなされながら、「やめろー!」と大声で叫び飛び起きることを繰り返していた。
事情を聞いた部長の父は激しく彼を叱る。
そして、父の知り合いの住職にお祓いをしてもらうことにしたのであった。
お祓いの数日後、熱が下がった部長は何度も父親からその件を咎められた。
その経験が強く残っているからこそ、部長自身もそのような廃墟や心霊スポットなどに面白半分で足を踏み入れてはいけないと心に強く誓っていたのであった。
部長自身もオカルト研究会を立ち上げたからには、危険な廃墟や心霊スポットを巡ることを企画しようとしたこともあった。
しかし、やはりあの経験が引っかかり、企画はすべてお蔵入りとなった。
部長自身も「オカルト研究会はどちらかというと娯楽や趣味の範疇であって、度胸試しをするために設立した訳ではないよ」と話しており、部員もその考えに苦言を呈することはなかった。
それでも部員の中には個人でそのような廃墟や心霊スポットに行ったり、「やってはいけない危険な遊び」に手を出している者もいたと考えられる。
その一人が「ひとりかくれんぼ」に必要な道具を買おうと近くの100円ショップに急ぐ浩一であった。
だが、部長はそんな事を知る由もなく、サークルの部員と楽しく談笑をしていた。
大学のチャイムが鳴ると同時に、浩一は教室の外へ飛び出した。
いよいよ、今日の夜に実行するんだ。
浩一は心の中にそう言い聞かせながらキャンパスを出ようとする。
すると、どこからか声をかけられた。
「あれ、田中くん?」
部長だ。
でも、今は早く帰りたい、そんな思いもある。
「すみません。今日は用事があるので......」
早々に断り、その場を通り過ぎた。
「あっ......」
部長は声をかける間もなく、早足で過ぎ去っていく浩一の姿を呆然と見つめていた。
◆
「どうしたんだろう。田中くん」
オカルト研究会の部室に入った部長は普段と違う浩一の様子を案ずるように言った。
「何かあったの?」
部室に先に来ていた逢が返事をする。
「いや、別に気にすることでもないんだけど、すごい急いでいる様子だったから」
部長は少しばかり引っかかる様子だった。
「特に悪いことじゃなかったらいいけど......」
部長と逢は気に留めているところもあったが、何事もなかったかのようにサークルを始める準備をした。
その時、部室の扉が開き、副部長が入ってきた。
「部長、お疲れ!」
部長は元気よく挨拶をする。
「お疲れ!」
唐突に、副部長は部長に話しかける。
「部長! そろそろ夏休みですよね」
「そうだね!」
そういえば、もう夏休みか。
部長はそう考えた。
そうか、たぶん田中くんは夏休みに何かやることがあるのかもしれない。
あるいは、この余暇にどこか行くためのお金をためようと、一目散にバイトに向かったのかもしれない。
部長は安堵の表情を浮かべた。
すると、副部長はご機嫌な様子で再び話しかけた。
「オカルト研究会でどこか合宿とかいきませんか? 心霊スポットとか」
「心霊スポットか......」
心霊スポット、確かにオカルト研究会なら行ってみたいような思いもある。
だが、部長は中学時代に起こった。悲惨な体験を忘れずにいた。
それは、部長が中学1年生のときだった。
隣町に幽霊が出ると有名な廃墟があった。
クラスの友達5人でその廃墟に遊びに行こうという話になり、夏休みの夜に塾に自習をしに行くという名目で彼らはその廃墟に向かった。
廃墟の中は真っ暗であり、中はひんやりとしていた。
そして、友達の一人が言う。
「そうだ。この中で合わせ鏡とかこっくりさんやらね?」
当時の部長は全くそのようなことに引け目を感じていなかったので他の友達と喜んでそれに加担した。
最初に手っ取り早く行える合わせ鏡を廃墟の中で行った。
とは言えども、実際は10円ショップで買った合わせ鏡をそれぞれ向かい合わせにおいただけであったのだが。
そして、その状態で彼らは合わせ鏡を彼らの真横に起き、空いたスペースでこっくりさんを実行した。
最初は遊び半分で無理やり紙の上に置かれた10円玉を動かしていた彼らだったが、10円玉をふざけて動かしていたうちの一人が急に気分の悪さを訴えてうずくまった。
「どうしたんだよ!?」
そう言いながら立ち上がった部長は、首筋にひんやりとしたものが触れるような感触を感じた。
「うわっ!」
そう叫んだところで、手に持っていた懐中電灯が消える。
心霊ドラマであるような光景を実際に目の当たりにした彼らは一目散にその場を後にした。
それから数日後のことだった。
部長の友人が交通事故で死んだ。
あの気持ち悪さを訴えていた少年だ。
部長は悪寒を覚え、それ以降体調不良が止まらなくなった。
そして、部長自身もひどい熱にうなされてしまう。
朦朧とした意識の中で見た夢は、あの廃墟の中で自分に黒髪の女性のようなものが徐々に近づいていくるというものであった。
熱の中で部長は何度もうなされながら、「やめろー!」と大声で叫び飛び起きることを繰り返していた。
事情を聞いた部長の父は激しく彼を叱る。
そして、父の知り合いの住職にお祓いをしてもらうことにしたのであった。
お祓いの数日後、熱が下がった部長は何度も父親からその件を咎められた。
その経験が強く残っているからこそ、部長自身もそのような廃墟や心霊スポットなどに面白半分で足を踏み入れてはいけないと心に強く誓っていたのであった。
部長自身もオカルト研究会を立ち上げたからには、危険な廃墟や心霊スポットを巡ることを企画しようとしたこともあった。
しかし、やはりあの経験が引っかかり、企画はすべてお蔵入りとなった。
部長自身も「オカルト研究会はどちらかというと娯楽や趣味の範疇であって、度胸試しをするために設立した訳ではないよ」と話しており、部員もその考えに苦言を呈することはなかった。
それでも部員の中には個人でそのような廃墟や心霊スポットに行ったり、「やってはいけない危険な遊び」に手を出している者もいたと考えられる。
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