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そして取嶺結汰は決意する
やがていつも通りの日常の歯車は狂い始める
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さて、休日も終わりいつもの朝が来る。カーテンから射し込む日差しは、やはり変わらない。起き上がり、洗面台へと向かう。
鏡に映る俺は、嘘つきでプライドを持った風な仮面を被りヘラヘラと嗤う。
「どうしようもないもクズだな、俺は」
彼女達の気持ちに気づいて、俺はどう思ったのか。それはただの持論で、感情論だ。答えは、
「どうでもいい」
あのお見合いから帰った夜から、月曜日の朝までずっと考えて答えが出た。それを何百回も問いただし、出てきた答えがこれだった。
「今日はいつもより学校に行きたくないなぁ」
そんな俺を嘲笑うかのように鏡に映る俺は、俺を見ていた。
○ ○ ○
学校の校門前にて。
「おはよう、結汰」
城桜。俺を嵌めて、そして道化の真似事をした少女。そして、気に入ったものや人間はどんな手を使っても手に入れようとする。例えそれが固く結ばれた絆であろうとも。今日もポニーテールの髪型に眼鏡ときまっている。
「おう」
短く返事をして俺はその場を離れようとする。すると、後ろからがっしりと肩を掴まれる。
「くふっ。そんなに慌てなくもよいじゃろう?」
「いや朝からクラスの用事があるから」
「ないのは知っておる」
見え透いた嘘が即座にバレる。うおぉ!恥ずかしいっ!が、その程度で俺はあきらめない。言い訳に関しては俺がトップ。
「朝トイレに行くの忘れてな、今から行こうと思ってたんだ」
それじゃ話は終いだと言わんばかりに俺は肩を掴まれている手をどけ、そのまま全力疾走していく。が、後ろから軽やかに追いかけてくる。
生徒会室前まで来たところで、誰かに部屋へと引っ張られる。いたのは子犬のような後輩、河鷺昂莉だ。
「だ、大丈夫ですか?」
「お、おう。助かった」
つい、反射的に河鷺の頭を撫でてしまう。
「えへへ…」
可愛らしく撫でられたところをくしくしと撫でかえす。あれ?河鷺は俺のこと嫌ってるはずじゃ…。
「先輩…は、いつまで自分を…傷つける気ですか?」
その目は、何かを切実に訴えるようだった。そしてふと思い当たる。あの時言われた、これ以上傷つけないでください、と。あれは、俺に発した言葉ではなく俺の行動に対して発したのだ。
「さあ、な。むしろ俺は傷つくことは無い。なぜな」
「じゃあ何でそんな悲しい顔をするんです?」
「ーーーーーーーーッ!!」
悲しい顔?わけがわからない。何言ってんだこの後輩は。俺が悲しい顔なんてしたことは無い。見せることもないのだ。自分の自己満足と嘘と汚いプライドで埋め尽くした感情が面に出るはずはない。
「何言ってんだよ。俺はいつもこんな顔だ。悲しさも嬉しさも、いつも嘘で塗りつぶす。溢れる感動もなければ溢れる悲しみもない。河鷺、お前には俺がいい人に見えるらしいがそんなことはない。いい人ぶっているわけでもない。ただ自分の好奇心や探究心が勝って好き勝手に行動しているだけだ。お前の件に関しても俺は野次馬に近しいものだ。だから、お前を助けたわけじゃない」
そう言い残し、俺生徒会室を出た。扉が閉まるまで河鷺は悲しそうなそれでいて同情するような目で俺を見ていた。
「さて、と。教室に戻る前に」
俺はそのまま体育館裏まで行く。生徒会室からは程よいくらいの遠さで、軽くジョギングができるくらいだ。
「よ、臥京。手紙を下駄箱に入れるなんて古典的すぎだろ」
「ふん、あなたもその手紙に乗った古典的な人でしょう?」
鼻で俺をあしらう臥京。実は城桜に追いかけ回されている間に下駄箱を開けて靴を履き替えようとした時、手紙が入っていた。それは臥京が俺宛に書いたもの。
「何の用だ?俺は早く教室に戻ってひと眠りしたいんだ」
「あなたはいつもそう」
「あ?」
ポツリと臥京が呟く。その呟きはか細く消え入りそうな声だった。
「そうやってはぐらかして、答えが出ていても答えずに捨てる。自己満足で自分を満たしても意味が無いことを知ってなお、自己満足で自分を満たそうとする。あなたには嘘が本物で真実が嘘だと言い聞かせて、だから周囲からは卑屈と思われる。あなたは優しい。でも、優しさを忘れたあなたの優しさは空っぽで、優しさには程遠い。その足りない部分は、どうしたら埋まるの?生徒会では埋まらないその空洞は」
「うるせぇよ」
以外にも、俺の声は怒気をはらんでいた。こいつの俺を知っているような口調が気に食わない。
「お前に俺の何がわかる。ああそうだとも。優しさなんて所詮は同情でしかない。それは相手を傷つけるだけだ。俺は自分より上にいるやつに優しさをくれてやることが、最高に気持ちいい。そんな優しさは空っぽだろうな。空の優しさを分け与えてやって何が悪い?俺はな、自分の心情とかどうだっていいんだ。見てて哀れだから嘘の優しさを差しのべる。俺は卑怯だ。知っている。だけど、その卑怯を作ったのは周りの人間だ。期待され、応えられなかった。それだけで人は勝手に俺のことをダメなやつだという。中学から俺は優しいヤツになった。小六の頃に大勢の前で子猫を助けたから。だからなんだ?優しさでも何でもないものを子猫に押し付けた、ただのエゴだ。俺の空洞を埋めてあげたい?勝手に決めつけんなよ。そんな空洞に俺は迷惑も感謝もしていない。ならそれは俺にとって必要の無いものだ」
喉が痛い。喋りすぎて口の中が渇く。目の前にいる臥京は目を見張り、ただ突っ立ていた。俺は声もかけずにその場を去っていった。
だけど、俺は生徒会のメンバーの絆を修復しようと思う。それが俺に出来る唯一のことだから。
鏡に映る俺は、嘘つきでプライドを持った風な仮面を被りヘラヘラと嗤う。
「どうしようもないもクズだな、俺は」
彼女達の気持ちに気づいて、俺はどう思ったのか。それはただの持論で、感情論だ。答えは、
「どうでもいい」
あのお見合いから帰った夜から、月曜日の朝までずっと考えて答えが出た。それを何百回も問いただし、出てきた答えがこれだった。
「今日はいつもより学校に行きたくないなぁ」
そんな俺を嘲笑うかのように鏡に映る俺は、俺を見ていた。
○ ○ ○
学校の校門前にて。
「おはよう、結汰」
城桜。俺を嵌めて、そして道化の真似事をした少女。そして、気に入ったものや人間はどんな手を使っても手に入れようとする。例えそれが固く結ばれた絆であろうとも。今日もポニーテールの髪型に眼鏡ときまっている。
「おう」
短く返事をして俺はその場を離れようとする。すると、後ろからがっしりと肩を掴まれる。
「くふっ。そんなに慌てなくもよいじゃろう?」
「いや朝からクラスの用事があるから」
「ないのは知っておる」
見え透いた嘘が即座にバレる。うおぉ!恥ずかしいっ!が、その程度で俺はあきらめない。言い訳に関しては俺がトップ。
「朝トイレに行くの忘れてな、今から行こうと思ってたんだ」
それじゃ話は終いだと言わんばかりに俺は肩を掴まれている手をどけ、そのまま全力疾走していく。が、後ろから軽やかに追いかけてくる。
生徒会室前まで来たところで、誰かに部屋へと引っ張られる。いたのは子犬のような後輩、河鷺昂莉だ。
「だ、大丈夫ですか?」
「お、おう。助かった」
つい、反射的に河鷺の頭を撫でてしまう。
「えへへ…」
可愛らしく撫でられたところをくしくしと撫でかえす。あれ?河鷺は俺のこと嫌ってるはずじゃ…。
「先輩…は、いつまで自分を…傷つける気ですか?」
その目は、何かを切実に訴えるようだった。そしてふと思い当たる。あの時言われた、これ以上傷つけないでください、と。あれは、俺に発した言葉ではなく俺の行動に対して発したのだ。
「さあ、な。むしろ俺は傷つくことは無い。なぜな」
「じゃあ何でそんな悲しい顔をするんです?」
「ーーーーーーーーッ!!」
悲しい顔?わけがわからない。何言ってんだこの後輩は。俺が悲しい顔なんてしたことは無い。見せることもないのだ。自分の自己満足と嘘と汚いプライドで埋め尽くした感情が面に出るはずはない。
「何言ってんだよ。俺はいつもこんな顔だ。悲しさも嬉しさも、いつも嘘で塗りつぶす。溢れる感動もなければ溢れる悲しみもない。河鷺、お前には俺がいい人に見えるらしいがそんなことはない。いい人ぶっているわけでもない。ただ自分の好奇心や探究心が勝って好き勝手に行動しているだけだ。お前の件に関しても俺は野次馬に近しいものだ。だから、お前を助けたわけじゃない」
そう言い残し、俺生徒会室を出た。扉が閉まるまで河鷺は悲しそうなそれでいて同情するような目で俺を見ていた。
「さて、と。教室に戻る前に」
俺はそのまま体育館裏まで行く。生徒会室からは程よいくらいの遠さで、軽くジョギングができるくらいだ。
「よ、臥京。手紙を下駄箱に入れるなんて古典的すぎだろ」
「ふん、あなたもその手紙に乗った古典的な人でしょう?」
鼻で俺をあしらう臥京。実は城桜に追いかけ回されている間に下駄箱を開けて靴を履き替えようとした時、手紙が入っていた。それは臥京が俺宛に書いたもの。
「何の用だ?俺は早く教室に戻ってひと眠りしたいんだ」
「あなたはいつもそう」
「あ?」
ポツリと臥京が呟く。その呟きはか細く消え入りそうな声だった。
「そうやってはぐらかして、答えが出ていても答えずに捨てる。自己満足で自分を満たしても意味が無いことを知ってなお、自己満足で自分を満たそうとする。あなたには嘘が本物で真実が嘘だと言い聞かせて、だから周囲からは卑屈と思われる。あなたは優しい。でも、優しさを忘れたあなたの優しさは空っぽで、優しさには程遠い。その足りない部分は、どうしたら埋まるの?生徒会では埋まらないその空洞は」
「うるせぇよ」
以外にも、俺の声は怒気をはらんでいた。こいつの俺を知っているような口調が気に食わない。
「お前に俺の何がわかる。ああそうだとも。優しさなんて所詮は同情でしかない。それは相手を傷つけるだけだ。俺は自分より上にいるやつに優しさをくれてやることが、最高に気持ちいい。そんな優しさは空っぽだろうな。空の優しさを分け与えてやって何が悪い?俺はな、自分の心情とかどうだっていいんだ。見てて哀れだから嘘の優しさを差しのべる。俺は卑怯だ。知っている。だけど、その卑怯を作ったのは周りの人間だ。期待され、応えられなかった。それだけで人は勝手に俺のことをダメなやつだという。中学から俺は優しいヤツになった。小六の頃に大勢の前で子猫を助けたから。だからなんだ?優しさでも何でもないものを子猫に押し付けた、ただのエゴだ。俺の空洞を埋めてあげたい?勝手に決めつけんなよ。そんな空洞に俺は迷惑も感謝もしていない。ならそれは俺にとって必要の無いものだ」
喉が痛い。喋りすぎて口の中が渇く。目の前にいる臥京は目を見張り、ただ突っ立ていた。俺は声もかけずにその場を去っていった。
だけど、俺は生徒会のメンバーの絆を修復しようと思う。それが俺に出来る唯一のことだから。
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