青春ラブコメと無関係な世界

涼雪 涼

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そして取嶺結汰は決意する

そしてまた取嶺結汰は人を傷つける

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 さあ、フィナーレといこう。俺のそして彼女らとの一ヶ月間を終わらせるエンディングセレモニーを奏でようじゃないか。

 俺は家で少しお高めのソファに寝転び考えていた。彼女達の絆の糸に俺という名の鋏が入ったことにより、その糸が切れかかっている。

「俺がするべきことはなんなのか」

 ぼんやりと考える。答えは出ているはずなのに、それを結局実行しようと思わない。いや、のだ。それをすると彼女らが壊れてしまいかねない。なら、俺に何が出来るのか。

 薄っぺらなプライドを俺は脱ぎ捨てられないでいる。これまで散々傷ついた。だからもう傷つかなくてもいいのだろう。だが、俺は人間関係を持ってしまった。もう要らないと、必要ないとのたまったはずなのに。笑えてしょうがない。

「はっ、こうやって中途半端に人間関係にはまろうとしたからこうなったんだ。考えろ、取嶺結汰。お前はわかっているはずだ」

 答えは出ている。もうこれしかない。

「俺が臥京達あいつらの悪口や陰口を言い、拒絶する。そして俺が彼女らに暴行危害を加えたと噂を流す。臥京達を被害者に仕立て上げ、俺を加害者にする」

 だがそれには協力者が必要とされる。ただ一人、俺には話せる奴がいる。そいつは恐らく俺の名前すら知らないだろう。あまり好きではない。だが、そいつもボッチで目立ちたがっている。なら俺の悪口の根源をあいつに説明させ、さらに本人から聞いたと言わせておけば容易に収集がつく。

 解決はする。あとはそれを臥京達あいつらが肯定するかしないか。それがかかっているのは、俺の言葉だろう。

「実行は明日の放課後。生徒会室で」


     ○     ○     ○


 翌日。授業が終わる時間が自棄に早く感じた。俺は緊張の面持ちで生徒会室に行く。

 生徒会の扉の向こうでは話し声がしない。人の気配はあるのに話が聞こえないとは…。いやはや、恐ろしい。そんなことを考えつつ俺は扉を開ける。

 中にいた人がいっせいに俺を見る。俺も人数確認をする為、辺りを見回す。河鷺昂莉、城桜七乃、そして臥京遊佳。OKだ。これで役者は揃った。

「よう」

 まずは軽く挨拶をする。それに合わせるかのようにそれぞれが挨拶を交わす。重く、そして痛い空気。

「話がある」

「何かしら?私は仕事で忙しいのだけれど」

「儂も最近ちと忙しくて」

「わ、私…も、です」

 それぞれにかたくなに聞こうとしないが、それは別に構わない。重要なのは第一インパクトだ。

「生徒会をやめる」

 瞬間、生徒会室の空気が凍る。よほどの言葉だったのか!臥京はむせ返り、河鷺は口をぽかんと開ける。ただ想定内のことに城桜だけは平然としていた。

「何で!?私ならあなたを変えてあげられる!なのに」

「無理だ。お前達には俺を変えることも俺を助けることも出来ない。できるのは俺を追い出す。それだけだ」

 その言葉に城桜は嗤う。

「クフフ。お主は何がしたいのじゃ?」

「明確だよ。俺はあんた達が嫌いだ。嘔吐が出るくらい」

 これまで沢山間違った。だから、もう間違える事はできない。俺に選択肢を選ぶ権利は、ない。

「何でもかんでも助ける助けるって、じゃあんたらは他に人を助けてきたか?いいや、していないね。俺はあんたらのなんだ?」

 その言葉を吟味する様に黙り込む生徒会一同。一体俺は彼女らの何なのか。俺には勿論分かるはずがない。自分は人の何なのか、それは人が考えそして答えを出すものだ。自分がわかっていたら、人との関係に問題やいさかいは起きない。

「ほら、あんたらはまるで俺を愛玩動物として扱ってきたんだろう?はっ、笑わせやがる。恋愛感情とでも思っているのか?それも違う。あんたらは心の拠り所を求めてただけだ。心なんてもんは実際にあるのかと思うがね。心臓かな?」

 嗚呼、そんな失望の目で俺を見ないでくれよ。これじゃぁ、

 

 口角が釣り上がっているのが自分でもわかる。もう楽しくて仕方が無い。自虐をしてそれを他人に聞かせ、愉悦に浸る。これが気持ちよくて仕方が無いのだ。楽しくて楽しくて、

「私はそんなふうに思った事は一度としてないわ。人は人と扱っている。それだけよ」

 臥京は俺を睨みつけてそう言う。それに続くかのように城桜も話し出す。

「儂も思ってはいまいよ。ただ、お主を思って…。コウもユウもみんな」

「皆ってなんだよ?」

「えっ?」

 河鷺が戸惑いの声を上げる。そりゃそうだろう。皆と言うが皆なんてない。誰かが省かれ、そして疎外される。皆なんて容量を得ない言葉なのだ。

「そんなことも分かんないのか。じゃあんたらに引き止められる筋合いはない」

 そして俺は最後、こう言うのだ。

「あんたらの恋心なんて」

 わざと、そしてニヒルに、笑う。その笑いはどこか薄っぺらで、嘘臭い。

「どうでもいいんだよ」

 そうして俺は生徒会室を出ていった。


   ○   ○   ○


 彼女達は深く傷ついただろうか。いや、少し浅すぎた気もする。だけどこれでいいのかもしれない。

 真昼の日差しが俺を責め立てるように照りつける。もう終わりにしよう。嘘にまみれたこの生活に、終止符が打たれる時だろう。 
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