青春ラブコメと無関係な世界

涼雪 涼

文字の大きさ
4 / 19
河鷺昂莉はイジメの対象

イジメの発端

しおりを挟む
 イジメの始まり方は様々だ。

 例えば、絡んでいた女子が好きな男子に告白され挙句振った。

 例えば、ある雰囲気の中で言わない方がいいことを言ってしまったり。

 例えば、"選ばれようとしていた娘より、先に何故か選ばれてしまったり"。

 ニュースでよく言っている。イジメはなくなるのか、と。

 否。イジメは無くならない。

 解。人間が人間と繋がっているから。

 だが、イジメられなくすることなら出来る。人間関係を壊すか、はたまた"イジメ返す"か。

 だが存外、人という生き物は心が脆く常に情緒不安定だ。いじめ返すのは勇気がいる。

 何故なら、いじめられた側の気持ちがよく理解できるからだ。イジメは、弱い自分を守る為の本能だ。だから他人がどうこう言う事ではない。

 よくもまぁ悪人を庇うなんてことを立て続けに言うやつだな、とは思って欲しくはない。

 庇ってはいない、只の結果だ。俺が生きてきて俺が思ったことだ。だからといって、無闇やたらと人を傷つけてはいけない。

 俺も小学校の頃、イジメにあった。3人の女子に。内1人は、空手の黒帯を所有していた。きっかけは、給食の時に面白いなぞなぞをしてと言われたことから始まる。

 この頃からあがり症だった俺は、ふと思いついたなぞなぞを口にした。

『ブリはブリでも家の中で走り回るブリななんだ』

 ちなみに、このなぞなぞの答えはゴ○ブリ。給食の時間にも関わらず、食欲の失せるなぞなぞだなと今になってわかる。

『えー?分かんなーい』

 可愛子ぶった声。

『…リ』

『え?』

『だから、ゴ○ブリ』

 教室中が水を打ったように静かになる。その数10秒後、空手の娘(ここではそう呼ばせてもらおう)が怒気を孕んだ声音でブチギレた。

『あぁ?今飯食ってる最中だろうが!キモイんだよ!近寄ってくんな!』

 そう言って、俺の机を蹴って絡んでいる女子と運動場へと去って行った。

 翌日、教室に入ると俺の机が無かった。よくよく見ると、教室の奥のベランダにひっくり返して置かれていた。

また違う日には、机の上に大量の砂がかけられていた。ざっと砂をゴミ箱に捨てると、手に鋭い痛みを感じた。見てみると画鋲が無数に手に刺さって血が出ていた。

 その様子を、先生は見ていた。にも関わらず見て見ぬ振り。ここでようやく俺は気付く。俺に味方はいない。ここにいる奴らは全て敵だと認識した。これらは全て6年生の時に起こった出来事。

 以後、中学生になってからは周囲全ての人間を疑った。そして今の俺に至る。

 憐れみの目は時に人を傷つける。



 そんな回想をしながら俺は"イジメの現場"を見ていた。イジメの対象は小動物のような、

 河鷺昂莉。

 俺は助けずに見ている。ここはどっかの主人公みたくイジメを止めさせた方がいい?否、俺が出たところで状況が悪化するだけだ。

 そんな臆病者の俺の耳にリーダーらしき声が入ってくる。

「あんたさー、くっそ地味の癖に生徒会長に選ばれるとか、何様のつもり?マジウザイんですけど。あんま調子乗ってっとマジでイジメ殺すよ?」

 今は昼休み。行きつけの場所で昼食を摂るのだが、来てみれば修羅場となった場所があった。

 ふと見てみると金魚の糞Aが河鷺に砂をかけている。

「選ばれなかったらこんな事にはならなかったのにねーww」

 それに追い討ちをかけるように金魚の糞Bが、河鷺にべっと唾を吐く。

「お前じゃまともに書記なんて務まるかよww」

 そしてリーダーがおもむろにポケットからカッターナイフを出す。

「あ!そーだ!あんたのスカートズタズタにして教室に戻れないようにしてあげる」

 嫌な笑みで河鷺に近づく。流石にこれは不味いと俺でもわかる。

 …仕方ない。

「先生、こっちでーす!ここに逃げたいぬがー!」

 声を裏返し、頭で考えたセリフを叫ぶ。

「やっば!」

 そんなセリフを残してイジメ団(これから使おう)はこの場から去って行った。

 ちゃんと逃げたか確認し、河鷺のほうへ向った。

「大丈夫か?」

 傍観者が何を言っているのか、自分が自分を嘲笑う。

 河鷺は濡れた瞳で俺を見上げる。

「あ、ありがとうございます…」

 お礼とともに立ち上がる河鷺を見て、俺は駅前で配られていたポケットティッシュを渡す。

「それ。拭いとけ。匂いが気になるなら水場に行ったら…」

 ぐすっ。

「え?」

 泣いていた。誰が?河鷺が。何故?分からない。

「ーーーっ!?な、泣くなよ。な?」

 それでも、手で口を抑え微かな嗚咽と共に涙を流していた。

 その涙を止める術は今の俺には無かった。

 いや、俺が慰めるわけにはいかない。傍観者が被害者を慰めるのは、憐れむのは余計に被害者を傷つけるだけだと分かっていたからかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...