女子に追いかけられて死んで転生した:ヌルゲーで異世界生活:

涼雪 涼

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信仰都市ギャンヴェル編

27 到着、信仰都市ギャンヴェル

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 そう言えば今更だけどルシファーが治めている国名が分からないな。

「本当に今更ですね」

 巨大な城壁に沿い城門を馬車で探しながら話が進む。

「確かあの国は貿易都市グリゴレオだったはずです。今私たちが見ているこの城壁の向こうは怠惰の魔王の治める国、信仰都市ギャンヴェルですね。大体はギャンヴェルからの輸出品がグリゴレオの市場に出回っています。ただ、ギャンヴェルが豊かなのかと言われればそうではありません。神様への信仰のせいですけど。なので多少は嫉妬の魔王の国から仕入れたものとしばしば混ざることもあるそうです」

 話が終わるとリヴィアンがはっと目を覚ます。…寝てたのか。自治問題は大事なことなんだから聞けよ。

「ま、まぁそんなところね!」

 俺のジト目からさっと目をそらしわざとらしく前に見えた城門を指差すリヴィアン。

「ほら!着いたわよ!怠惰の魔王の治める国、信仰都市ギャンヴェル!でも何でルシファー様はギャンヴェルに寄るように言ったのかしら」

 この娘はアホの子かしら?理由わからず寄ったとか少しは考えようよ。はてと首を傾げるリヴィアンにマグは説明を始める。

「いいですか?グリゴレオとギャンヴェルが貿易条約を結んでいるのは、リビドー平原という比較的安全な平原を挟み両国が建国しているからです。それに加え、怠惰の魔王と傲慢の魔王の仲がそこそこ良かったためグリゴレオとギャンヴェルは和親条約を結んだのです。つまり、傲慢の魔王とそこそこ仲が良くて協力してくれるかもしれないからとの理由ですよ」

 説明が終わったと丁度城門が見える。そしてその城門の脇には小さな小屋が一軒、ポツンと建っていた。

 おそらく小屋の中には警備兵がいるのだろう。

 その小屋に着くと扉を軽く叩く。数秒後、窓が開き兜を被らず鎧だけの警備兵が気だるそうに俺達を見た。

「すみません、門を開けてもらいたいんですが…」

 すると突然警備兵がビシッと姿勢を正す。先程とはえらい違いだ。

「何処から来た?」

「貿易都市グリゴレオから」

「用件は?」

 すぅと息を整える。なるべく怪しまれないように、わざと強気な目で。

「怠惰の魔王、すなわちベルフェゴール殿に挨拶を」

 そして暫く警備兵は黙っていたが、

「まぁ、いいだろう。その代わり監視を同行させてもらうが、よろしいか?」

 監視兵か。問題はないだろう。俺はそのまま頷く。その後、門を開けてもらう。馬車の後には監視兵の少女が乗り込んでいる。

 入国成功である。

 賑やかな街。それが俺の第一印象だ。歩いている人は大体が聖職者ばかりで、片手に聖書、もう片方には十字架という格好の人が多かった。

 だがそれだけでは街は賑わうはずがない。縁の下の力持ちはやはり商人たちだろう。ひっきりなしに喚くように商品の紹介をする露店。この時期に取れる旬の食べ物をうる八百屋や魚やなどなど。さすがはグリゴレオに輸出するだけはある。

 大通りの先には大きな教会と城が見えた。俺は安堵のため息をついた。

「どうしたの?」

 リヴィアンが俺の顔をのぞき込む。お前には分からないのか?と視線でリヴィアンに聞く。

「城が大きくて安心したんだよ。にしても、魔王の城と教会がくっついてるとは。魔王と神様、対照的なもんなのにな」

「そうでもありません。魔王、又は悪魔などは神が堕天したらなるものです。あるいは神が死ねば悪魔などになります。似てないようで似ている、それが魔王と神様です」

 後ろに座っていた監視兵の少女が淡々と話す。物静かで何というか話しかけづらい。そんな感じの印象だったが以外と可愛らしい声だったので顔を見たくなった。

 「あの、突然ですいませんが兜を外してもらえます?」

 そんなことを口走っていた。兜の奥から睨まれているのが分かる。

「なぜ外す必要が?」

「いや、顔を覚えていないとはぐれた時とか」

「あたしが覚えています」

「でも、それだとコミュニケーションが…」

「こみゅ?何ですかそれ」

「意思疎通ってことなんだけど」

「これだから転生者は嫌いなんです」

「え」

 結局この後監視兵の少女と話すことは無かった。俺はこの少女が言ったセリフが頭の中で渦巻いていた。

 暫くの沈黙の後、ふと馬を止めてしまう。偶然通りかかった露店で面白いものがあったからである。

「模倣宝石ですか。転生者はそんな物が好きなんですか?」

 少し馬鹿にしたように笑う監視兵の少女。

「でもまぁ、あたしも嫌いではありません。偽物なのに本物になろうと輝いているのは素敵だと思います」

 リヴィアンとマグは馬車が止まると同時にさーとどこかへ行ってしまった。後で探す俺の身にもなってくれよ…。

「ふーん」

 俺は馬を進めようとしたが、監視兵の少女がまじまじ模倣宝石を見ている。

「欲しいの?」

「けっ、決して欲しいとは」

「おっちゃん、この赤い模倣宝石ペアリングネックレス頂戴」

 もう買おう。可愛いわ。もうね、お兄ちゃん何でも買っちゃう。

「200ガルドね」

 ペアリングネックレス一つで1200円。え、高くない?模倣宝石だよね?しぶしぶ払う。これも監視兵の少女の喜ばせるため…!

「ほれ、片方あげる。もう片方は俺が記念にもらうから」

 シャラと音を立てて、監視兵の少女の手のひらに落とす。

「いやっ、でもお金…」

「心配すんな。俺はお前にあげるために買ったんだし。俺の勝手にしたことだ」

 暫くもじもじしたものの、お礼を言う。そして、兜をあっけなく脱いだ。

 瑠璃色の髪。その髪と合わせるように綺麗なウルトラマリンの瞳。すっとした顔立ちはキリッと強気でしかしそれでいて弱さを持っているような。おそらく鎧の下はナイスボディなのだろう。ボン・キュッ・ボン!なのだろう。

 「そうですよ。こんな髪の色だから化け物扱いされたり、異国人といって差別されるんです。転生者は髪や目を欲しがります。だから、転生者は嫌いなんです」

 何か過去に重い何かがあったのか。それより容姿も見れたんだし名前も知りたいな。

「名前、教えてくれない?」

 暫く考えたような素振りをしたが、頬を赤らめ上目遣いで教えてくれる、ってもうカワエエわー!

「モーガン=ル=フェイ」

 …は?

「今、なんて…」

 聞き間違いではないなら今、モーガンて、

「だから、あたしの名前はモーガン=ル=フェイ」

 あの妖姫と呼ばれる魔女。そして、水の妖精とも呼ばれる。モーガン=ル=フェイは俺をじっと見ていた。 
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