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訪ね歩くは本の虫
図書の街
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まず、図書の街を目指すことになった。
街にはそれぞれ魔法使いがおり、最高位の魔法使いの役職に沿って名前が決められる。
魔法使いの位は4段階あり、胸から提げているネームプレートの材質で見分けることができる。
一番下から、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4段階だ。
ブロンズからシルバー、ゴールドに上がるのにそう手間は掛からないが、ゴールドからプラチナに上がるにはかなりの難度を要する。
この、使い魔の妖精に道案内されているセイカという男は、こう見えてその難度をこなし薬の魔法使いとして「薬の街」を見守ってきたのだ。
「なぁ。いつまで砂漠なんだよ」
『しょーがないじゃん!図書の街まで長いんだよぉ!この砂漠、至る所にオアシスあるから良いじゃん!』
「あちぃだろうがよ。歩きにくいしよ」
『わがまま魔法使い!!』
「うるせー」
セイカは、妖精と口喧嘩しながらユルユルと歩を進めている。
冷風の魔法は掛けているが、それでも砂漠と言うだけで暑い。
途中でオアシスを見つけては、休むを繰り返しながら図書の街を目指す。
「あっち~……」
『気のせいだよご主人!涼しいよ魔法で!』
「あちぃよ、気分が」
『うるさいなぁ!』
数年ぶりの太陽の下、生粋の出不精には堪えるようだった。
薬の魔法使いとして、薬草などは採取する。だがそれも使い魔のセラに任せている。
ふと、辺りを見回すとあの桃色の花は咲いていなかった。
昔と変わらないオアシスと、黄金の砂が広がるばかりだ。
「おいセラ、あの向こう、誰か居ねぇか?」
『ん?あ、ほんとだ!おーーい!すみませーーん!!』
「元気だなオマエ」
セラが大声を上げてみると、その影はセラとセイカを見た。
そして、よろりと立ち上がり、オアシスの木からこちらへと歩んでくる。
が
どう見ても、人間とは思えない様相をしていることに気が付いた。
というのも、人間の原型は残っているものの、所々黒ずみ、その黒ずみからはトゲのある蔦が伸び始めていた。
もはや言葉を発することはなく、呻いているだけだった。
「あ゛……ぁあ゛……」
「なんか……やべぇの来てねぇか?」
『うん、やばそう。あれなにご主人?』
「しらねーよ。どうする?」
『なんかアレだね。…………逃げるしかないねッ!』
そう言うと同時に、セラとセイカは走り出した。目的地の方向とは1度逆に走り、追いかけてきた事を利用してオアシスを迂回し順路に戻った。
あれが人間かどうかの判断もつかなければ、アレをどう処理するのが正解なのかも分からない。
おおよそ人間だったと思われるそれも、動きはのろいが確実にセイカとセラを追いかけてきている。
これをもうすぐつく街に連れ込んでしまってもいいのか。それとも、もうみんな、このような状態なのか。
現状誰とも連絡が取れない以上、どれを判断するにも情報不足だった。とにかく、街の手前でこの生き物を足止めして入らねばならないだろう。
「撒くにしても止めるにしても、どうやるよ」
『なんかこう……気を引くことって出来ないのかな……』
1度、あちらが2人を見失い失速したと思われるタイミングで大きな岩に隠れた。
様子を見るに、目が悪いのか辺りをキョロキョロとしていた。
動きものろく、周りに仲間がいるようには見えない。
体にある蔦は、どんどん侵食してきていた。
「……あいつ、見失ってるな、完全に」
『そう、だね……。どうするご主人?』
「ここにいても仕方ねぇしな……。あいつが俺たちを視認してるのか分かんねぇから、普通に出る訳にも行かねえ……」
『あ!じゃあこうしようよ。ご主人、野良の精霊を1匹召喚できるでしょ?それをあいつの目の前に出すの。妖精は飛んでるから、音もしないし』
「いい案だな。お前を使ってもいいが?」
『そんな薄情な魔法使いだとは思わなかったよ』
「わりぃわりぃ」
茶番を繰り広げながら、セイカは片手で砂に魔法陣を描く。
描き終え、魔法陣に魔力を注ぎ込む。
すると、野良の妖精がゆっくりと出てきた。
野良の妖精は、鳴くことも喋ることも無い。ここから契約するかどうかによって、自我を持つか持たないかが決まる。そのため、今は無自我の状態だ。
「あの生き物の目の前に出ろ」
セイカに命令されると、こくりと頷き、何の躊躇もなく出ていく。
が、生き物は、至近距離で目の前にいてもキョロキョロとしていた。
ということは、目が見えていない事になる。
「んじゃあ、多分音だな。もどれ」
セイカは妖精を呼び戻し、再度命令する。
「音を立てて、あいつの気を引け」
妖精は、また頷くと、生き物の前に飛び出した。そして、セイカが指さしている方向に向かって音を立て始める。本来は鳴らない羽音を立てると、生き物はぐるりとそっちを向いた。
そして、その羽音の方へと走っていった。
「よしっ!今のうちだ!」
『おー!』
2人は走り出し、街の入口を目指す。この砂漠の景観にはそぐわない街だ。
入口からは緑の生い茂る美しい石畳の景観になっている。
走っていると、段々と芝生が生えてきた。街が近い。
「ここまでくれば、大丈夫だろ……」
『そうだね……って、ご主人、この花』
「またあったな……ここは……いつも門番が居たはずだが」
門の前には、門番は居なかった。門の扉も開いており、侵入を許してしまうだろう。
門番が居た箇所には、人は居らず、代わりに花が咲いていた。
「この花、多分やべぇと思う。さっきの生き物にも着いてたよな、ちいせえけど」
『うん。しばらくは触らないでおこうよ』
「そうだな」
2人はその花を1度見送り、街へと足を踏み入れた。
この街は元々静かなため、現状、薬の街と同じかの判別は付かない。
窓から中を覗くにも、窓の位置が高く、小さいため見づらい。
「……いねぇ、かなあ」
『話し声すらしないね……』
不穏な空気を感じながら階段を登り、街を進んでいく。
7割が階段で出来たこの街は、最上層以外はかなり移動に体力を使う。
『ねぇご主人。律儀に登ってるけどさ、浮けば良くない?』
「……あ、そんなもんあったな。使わなさすぎて忘れてたわ」
『ちょっと~~』
セイカは、石が持つ魔力とは相反する属性の魔力を纏い、反発する力で宙に浮く。
移動が楽になった為、スイスイと階段をのぼり、図書館を目指した。
「けど、こんな現状でよぉ。居るかアイツ?」
『ビオン師、大丈夫かなぁ。とっても優しいからご主人より好きなんだけど』
「ふーん?へ~?まぁ良いけど?」
『う~そ~だ~よぉ!ご主人だーいすき!』
「それは嘘」
『嫌い』
「ごめんて」
雑談をしながら登っていくと、巨大な木に沿うように建てられた豪勢な石造りの城にも見える図書館に着いた。ここに、プラチナ魔法司書のビオンが居るはずだ。
「おーい、ビオーン、いるかー」
セイカが声を掛けると、しばらくしてからドタドタと足音が聞こえてきた。
「せ、せせ、セイカくん!?セイカくんだよね!?ほ、ホンモノだよね!?」
「こんなふてぶてしいプラチナ、他に居るかよ」
「自分で言わないで欲しいかもね。あ!上がって上がって!暑かったよね、いま冷たいものを出すからね!」
「さんきゅな」
ビオンは、相変わらずのようだった。金縁の丸メガネに、淡い栗色のパーマヘア、薄い水色の瞳、下がった眉。
気弱そうな見た目を代表しているが、これでもプラチナ級である。
「あーよかったわ、お前は無事そうで」
「う、うん」
「なんかしらねーけど、人間誰1人居ねぇしよ。なんか変な花咲いてるし」
「ぇっ、も、もしかしてセイカ知らないの!?2年前のこと……」
「あー?……家にこもりきりで知らねぇ」
『ご主人、3年ぶりなんだよお外』
「相変わらずだね……わかった、説明するよ」
ビオンは、冷たいお茶を3つテーブルに置くとソファに腰掛け、話し始める体勢をとった。
街にはそれぞれ魔法使いがおり、最高位の魔法使いの役職に沿って名前が決められる。
魔法使いの位は4段階あり、胸から提げているネームプレートの材質で見分けることができる。
一番下から、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4段階だ。
ブロンズからシルバー、ゴールドに上がるのにそう手間は掛からないが、ゴールドからプラチナに上がるにはかなりの難度を要する。
この、使い魔の妖精に道案内されているセイカという男は、こう見えてその難度をこなし薬の魔法使いとして「薬の街」を見守ってきたのだ。
「なぁ。いつまで砂漠なんだよ」
『しょーがないじゃん!図書の街まで長いんだよぉ!この砂漠、至る所にオアシスあるから良いじゃん!』
「あちぃだろうがよ。歩きにくいしよ」
『わがまま魔法使い!!』
「うるせー」
セイカは、妖精と口喧嘩しながらユルユルと歩を進めている。
冷風の魔法は掛けているが、それでも砂漠と言うだけで暑い。
途中でオアシスを見つけては、休むを繰り返しながら図書の街を目指す。
「あっち~……」
『気のせいだよご主人!涼しいよ魔法で!』
「あちぃよ、気分が」
『うるさいなぁ!』
数年ぶりの太陽の下、生粋の出不精には堪えるようだった。
薬の魔法使いとして、薬草などは採取する。だがそれも使い魔のセラに任せている。
ふと、辺りを見回すとあの桃色の花は咲いていなかった。
昔と変わらないオアシスと、黄金の砂が広がるばかりだ。
「おいセラ、あの向こう、誰か居ねぇか?」
『ん?あ、ほんとだ!おーーい!すみませーーん!!』
「元気だなオマエ」
セラが大声を上げてみると、その影はセラとセイカを見た。
そして、よろりと立ち上がり、オアシスの木からこちらへと歩んでくる。
が
どう見ても、人間とは思えない様相をしていることに気が付いた。
というのも、人間の原型は残っているものの、所々黒ずみ、その黒ずみからはトゲのある蔦が伸び始めていた。
もはや言葉を発することはなく、呻いているだけだった。
「あ゛……ぁあ゛……」
「なんか……やべぇの来てねぇか?」
『うん、やばそう。あれなにご主人?』
「しらねーよ。どうする?」
『なんかアレだね。…………逃げるしかないねッ!』
そう言うと同時に、セラとセイカは走り出した。目的地の方向とは1度逆に走り、追いかけてきた事を利用してオアシスを迂回し順路に戻った。
あれが人間かどうかの判断もつかなければ、アレをどう処理するのが正解なのかも分からない。
おおよそ人間だったと思われるそれも、動きはのろいが確実にセイカとセラを追いかけてきている。
これをもうすぐつく街に連れ込んでしまってもいいのか。それとも、もうみんな、このような状態なのか。
現状誰とも連絡が取れない以上、どれを判断するにも情報不足だった。とにかく、街の手前でこの生き物を足止めして入らねばならないだろう。
「撒くにしても止めるにしても、どうやるよ」
『なんかこう……気を引くことって出来ないのかな……』
1度、あちらが2人を見失い失速したと思われるタイミングで大きな岩に隠れた。
様子を見るに、目が悪いのか辺りをキョロキョロとしていた。
動きものろく、周りに仲間がいるようには見えない。
体にある蔦は、どんどん侵食してきていた。
「……あいつ、見失ってるな、完全に」
『そう、だね……。どうするご主人?』
「ここにいても仕方ねぇしな……。あいつが俺たちを視認してるのか分かんねぇから、普通に出る訳にも行かねえ……」
『あ!じゃあこうしようよ。ご主人、野良の精霊を1匹召喚できるでしょ?それをあいつの目の前に出すの。妖精は飛んでるから、音もしないし』
「いい案だな。お前を使ってもいいが?」
『そんな薄情な魔法使いだとは思わなかったよ』
「わりぃわりぃ」
茶番を繰り広げながら、セイカは片手で砂に魔法陣を描く。
描き終え、魔法陣に魔力を注ぎ込む。
すると、野良の妖精がゆっくりと出てきた。
野良の妖精は、鳴くことも喋ることも無い。ここから契約するかどうかによって、自我を持つか持たないかが決まる。そのため、今は無自我の状態だ。
「あの生き物の目の前に出ろ」
セイカに命令されると、こくりと頷き、何の躊躇もなく出ていく。
が、生き物は、至近距離で目の前にいてもキョロキョロとしていた。
ということは、目が見えていない事になる。
「んじゃあ、多分音だな。もどれ」
セイカは妖精を呼び戻し、再度命令する。
「音を立てて、あいつの気を引け」
妖精は、また頷くと、生き物の前に飛び出した。そして、セイカが指さしている方向に向かって音を立て始める。本来は鳴らない羽音を立てると、生き物はぐるりとそっちを向いた。
そして、その羽音の方へと走っていった。
「よしっ!今のうちだ!」
『おー!』
2人は走り出し、街の入口を目指す。この砂漠の景観にはそぐわない街だ。
入口からは緑の生い茂る美しい石畳の景観になっている。
走っていると、段々と芝生が生えてきた。街が近い。
「ここまでくれば、大丈夫だろ……」
『そうだね……って、ご主人、この花』
「またあったな……ここは……いつも門番が居たはずだが」
門の前には、門番は居なかった。門の扉も開いており、侵入を許してしまうだろう。
門番が居た箇所には、人は居らず、代わりに花が咲いていた。
「この花、多分やべぇと思う。さっきの生き物にも着いてたよな、ちいせえけど」
『うん。しばらくは触らないでおこうよ』
「そうだな」
2人はその花を1度見送り、街へと足を踏み入れた。
この街は元々静かなため、現状、薬の街と同じかの判別は付かない。
窓から中を覗くにも、窓の位置が高く、小さいため見づらい。
「……いねぇ、かなあ」
『話し声すらしないね……』
不穏な空気を感じながら階段を登り、街を進んでいく。
7割が階段で出来たこの街は、最上層以外はかなり移動に体力を使う。
『ねぇご主人。律儀に登ってるけどさ、浮けば良くない?』
「……あ、そんなもんあったな。使わなさすぎて忘れてたわ」
『ちょっと~~』
セイカは、石が持つ魔力とは相反する属性の魔力を纏い、反発する力で宙に浮く。
移動が楽になった為、スイスイと階段をのぼり、図書館を目指した。
「けど、こんな現状でよぉ。居るかアイツ?」
『ビオン師、大丈夫かなぁ。とっても優しいからご主人より好きなんだけど』
「ふーん?へ~?まぁ良いけど?」
『う~そ~だ~よぉ!ご主人だーいすき!』
「それは嘘」
『嫌い』
「ごめんて」
雑談をしながら登っていくと、巨大な木に沿うように建てられた豪勢な石造りの城にも見える図書館に着いた。ここに、プラチナ魔法司書のビオンが居るはずだ。
「おーい、ビオーン、いるかー」
セイカが声を掛けると、しばらくしてからドタドタと足音が聞こえてきた。
「せ、せせ、セイカくん!?セイカくんだよね!?ほ、ホンモノだよね!?」
「こんなふてぶてしいプラチナ、他に居るかよ」
「自分で言わないで欲しいかもね。あ!上がって上がって!暑かったよね、いま冷たいものを出すからね!」
「さんきゅな」
ビオンは、相変わらずのようだった。金縁の丸メガネに、淡い栗色のパーマヘア、薄い水色の瞳、下がった眉。
気弱そうな見た目を代表しているが、これでもプラチナ級である。
「あーよかったわ、お前は無事そうで」
「う、うん」
「なんかしらねーけど、人間誰1人居ねぇしよ。なんか変な花咲いてるし」
「ぇっ、も、もしかしてセイカ知らないの!?2年前のこと……」
「あー?……家にこもりきりで知らねぇ」
『ご主人、3年ぶりなんだよお外』
「相変わらずだね……わかった、説明するよ」
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