11 / 13
夏の国
夏の街と猫耳フード
しおりを挟む
片腕を失った少年と、食料と猫を抱え、2人は街を目指す。
鹿は重いだろうが、波瑠は案外何食わぬ顔で抱え歩いている。
「波瑠お前、うんどうぶ……とか言っていたな。何をしていた?鹿は流石に重いだろう」
「重いねほんとに!んまぁでも歩けるくらいだよ。運動部って言うのは、学生の時に皆がそれぞれ所属するものの運動メインでやる団体の事だよ。僕は剣道ってスポーツしてたの」
「剣道……剣か?お前も剣を扱えるのか?」
「まさか!ルミエさんみたいのじゃないよ!まぁ力は要るか……。剣道部は、うちの学校週2だったから他はバスケ部入ってた」
「ふむ……バスケ……?食べ物か……?」
「あっははははっ!!なぁにルミエさん!面白いじゃん」
「なんだかよく分からないんだ……!」
雑談をしながらひまわり畑を進むと、ようやく抜けられたようだった。
ひまわり畑を抜けた先には、白く輝いていたはずのレンガ造りされた街並みが広がっていた。純白の壁はくすみ、所々崩壊し、街としての機能も失っていた。
「何せ火と水が欲しいな……。おい猫、水場を知らないか。人間は見ておくから、波瑠と猫は開けた場所に着き次第、水と木材を探してきてくれ。火は……どうにかしよう」
「わかった!あ、あそこなんてどう?というかもはや誰もいないし廃屋で良いよ、まだ綺麗なはず」
「なら、悪魔が来ないことを確認して入るぞ」
「うん」
元は立派な一軒家だったのだろうが、最早廃屋になった家の扉を開き、中を確認する。
特に中は荒らされた様子もなく、廃屋と言うには綺麗な状態だった。
少し掃除をすれば、問題なく使える程度には整っている。
「うん、2階にもどの部屋にも、悪魔みたいなのは居なかった。電気も水もガスも無いから、雨と直射日光しのぎにしかならないけど……でも、中って結構涼しいんだね?」
「あぁ…。この街の建物は、白い石で出来ているだろう。白は太陽の光を反射するから、家屋内までは浸透してこない。それに、この石は特殊でな。熱を吸い取る性質があるから、万年暑いこの国でも快適なんだ」
「へぇ……生活の知恵ってやつだねぇ。さて……この子をホコリだらけのベッドに寝かせる訳にも行かないな……洗いたいけど、それまでどこに寝かせよう……」
「……仕方がない、とりあえずは膝を貸してやる。波瑠、お前にほとんどのこと任せても良いだろうか」
「いいよ!猫さんと一緒ね!とりあえずは水場だよね。シーツとかを洗うのにも必要だし、探してくるよ!あとは木の枝と…フライパンとかはここの家から拝借しちゃおう。この家の人、大容量のバッグとか持ってないか探してきてもいい?」
「ああ。頼んだ」
波瑠が家の中を捜索し、大きめの旅行バッグを見付けた。
どうやら家人は、よくどこかに行っていたのだろう。この夏の国の遠いところか、それとも他の国か。
その中に、埃まみれのベッドシーツと枕を詰め込み、大きめのカゴと鍋、使っていたであろう空のウォーターサーバーのタンクボトルを持って出掛けた。
その間、家の中でルミエはひたすら眠る少年を見守った。
「人間は、どうしてこうも弱いんだ。…お前も、よくこうなった世界で今日まで生き延びたものだ。まだ幼いだろう…」
返事はなくとも、夢にでも出ていれば御の字だと語り掛けた。
幸い、少年の表情は落ち着いており、穏やかな寝息を立てて眠り続けている。
よく見れば、顔には不思議な模様、来ている服は独特なデザインのパーカーだった。
ポンチョタイプのパーカーと、その下にはタンクトップを着ており、ショートパンツというこの年頃の男児にしか出来ない格好をしている。
「…この人間も、波瑠と同じか…?」
膝で眠る少年の頭を撫でながら、天使はその家で、波瑠の帰りを待った。
一方、波瑠と猫は水場を探して歩き回っていた。
苔むしてツタに覆われた街を抜け、森に入る。
この森は扉の森とは違い、木々がそれぞれに生い茂り、陽光を適度に取り入れる暖かな森だった。
猫は、恐らく主人なのであろう少年が助かったからか、少し足取りが軽く見えた。
「なぁ猫ちゃん。あの子、君のご主人?」
「ウニャー」
「そっかあ。助かって嬉しい?」
「ンナ!」
「はは、君って賢いねぇ、人間の言葉分かってるみたい。こうして水場も探しに来てくれるしほんとに……え?ほんとに賢い」
「ニャ、ニャッ」
波瑠が困惑していると、猫は自身の尻尾を見せつけてきた。尻尾には、青いリボンと鈴が着いている。
「なにこれ、めちゃくちゃ可愛いね」
「ウニャ、ウルニャッ」
「ん?……?…………はっ!もしかして!パーカーと同じようなこと!?」
「ウニャー!」
「ご主人くんが着けてくれたの?」
「ウナ!」
「そっかそっかぁ~~~~!賢いねぇ偉いねぇヨシヨシヨシヨシ」
「ゴロゴロ……」
森の中で、猫と一通り戯れる。すると、今まで喉を鳴らしていた猫が突然、ハッとした様子で道の先を見詰めた。
不思議に思い、波瑠もそちらを見つめる。耳を澄ますと、流れる水の音のようなものが聞こえてきた。
と、同時に。
「ァ……アァー……」
「わー、忘れてたあ…………そうだよねえ、森には居るよねぇ……悪魔」
「フーーーーーーッ……!!!!」
「猫ちゃん、あいつらにやられたんでしょ?ご主人様くん」
「ウニャー!」
1人と1匹を取り囲むように、悪魔が3体脇道から出現する。
波瑠は猫を抱き抱え、撫でるためにしゃがんでいたところから立ち上がる。
「僕が仇取ってあげるからね」
「ウニャ……?」
「はは、仇は難しかったか、可愛いねえ猫ちゃん」
波瑠が3体を見つめ、数秒の瞬きの後。辺り数メートルの青々とした木々は、桜の木に変わる。
そして、そこから舞い散る花びらは地面には落ちず、空中で三体に向かい花弁の根元を向けた。
「人間じゃなかったら、ちゃんとご飯にするからねー」
花弁は、波瑠が指を鳴らすと同時に悪魔へと集まり始めた。
花弁は竜巻のように1体1体を取り囲み、鋭利な性質を付与された花弁の根元で切り裂いて行く。
竜巻のような花弁が、一気に空中へ弾けた。
中に囚われた悪魔は、切り裂かれ息絶えた。そこに残った死骸は、兎、狸、蛇だった。
「お、この3びきなら食べられそうかも。蛇はちょっと……面倒くさそう……。猫ちゃん、食べる?」
「ンニャ!ニャー!」
「そっかそっか、じゃあこの蛇さんは猫ちゃんのご飯だね!」
「ンニャ~!」
「猫ちゃん、背中に乗せて歩ける?」
「ゥナン!」
「じゃあ、よろしくねえ」
猫の背に食料を乗せ、水の音のする方へ歩き出す。
そこからは、心地よい風が吹いてきた。
じっとりと汗をかいた身体は、冷たい水を欲していた。
数分歩くと、目の前には美しい川が現れた。飲むには濾過したいところだが、透き通っていてかなり純度が高い。
「……タオル持ってくればよかった。これは流石に飛び込みたかった」
「ンナー……」
「猫ちゃんは浴びてもいいんだよ?」
「ンナ!?にゃう、にゃうう」
「僕が飛び込まないから?入らない?」
「ニャ!」
「あぁ……なんて良い子なの……。汲んで早く帰ろうか、ご主人様くんが起きてるかもしれないからね」
「んにゃ~!」
持ってきたタンクに水を入れ、蓋をする。
かなりの重さにはなったが、持って帰るのに苦労はなさそうだった。
川の水は案外冷たく、顔だけバシャバシャと洗う。そして、その辺で拾ったペットボトルに水を入れ、保冷剤代わりに首へ当てながら帰路に着いた。
ルミエが膝枕をしながら、うたた寝をしている。その膝に寝ていた少年は、目を覚ましている。
そして、目の前の光景に動けないでいた。
「あ、あの……あ、の……おね、おねーさん……?おにーさん……?」
「ん…………。ん、あぁ、すまない、起きていたか少年。うたた寝をしてしまった」
「ぁ、あ……えっと……これは、一体……」
「あぁ。お前がひまわり畑で高熱を出して倒れていたのでな。治療して、適当な民家に避難した。今、仲間と猫が水を取りに行っている」
「ぁ、……そう、ですか……ご迷惑お掛けしました……」
そこからしばらく、波瑠と猫がこの拠点に帰り着くまでの間、ただ沈黙だけが続いた。
鹿は重いだろうが、波瑠は案外何食わぬ顔で抱え歩いている。
「波瑠お前、うんどうぶ……とか言っていたな。何をしていた?鹿は流石に重いだろう」
「重いねほんとに!んまぁでも歩けるくらいだよ。運動部って言うのは、学生の時に皆がそれぞれ所属するものの運動メインでやる団体の事だよ。僕は剣道ってスポーツしてたの」
「剣道……剣か?お前も剣を扱えるのか?」
「まさか!ルミエさんみたいのじゃないよ!まぁ力は要るか……。剣道部は、うちの学校週2だったから他はバスケ部入ってた」
「ふむ……バスケ……?食べ物か……?」
「あっははははっ!!なぁにルミエさん!面白いじゃん」
「なんだかよく分からないんだ……!」
雑談をしながらひまわり畑を進むと、ようやく抜けられたようだった。
ひまわり畑を抜けた先には、白く輝いていたはずのレンガ造りされた街並みが広がっていた。純白の壁はくすみ、所々崩壊し、街としての機能も失っていた。
「何せ火と水が欲しいな……。おい猫、水場を知らないか。人間は見ておくから、波瑠と猫は開けた場所に着き次第、水と木材を探してきてくれ。火は……どうにかしよう」
「わかった!あ、あそこなんてどう?というかもはや誰もいないし廃屋で良いよ、まだ綺麗なはず」
「なら、悪魔が来ないことを確認して入るぞ」
「うん」
元は立派な一軒家だったのだろうが、最早廃屋になった家の扉を開き、中を確認する。
特に中は荒らされた様子もなく、廃屋と言うには綺麗な状態だった。
少し掃除をすれば、問題なく使える程度には整っている。
「うん、2階にもどの部屋にも、悪魔みたいなのは居なかった。電気も水もガスも無いから、雨と直射日光しのぎにしかならないけど……でも、中って結構涼しいんだね?」
「あぁ…。この街の建物は、白い石で出来ているだろう。白は太陽の光を反射するから、家屋内までは浸透してこない。それに、この石は特殊でな。熱を吸い取る性質があるから、万年暑いこの国でも快適なんだ」
「へぇ……生活の知恵ってやつだねぇ。さて……この子をホコリだらけのベッドに寝かせる訳にも行かないな……洗いたいけど、それまでどこに寝かせよう……」
「……仕方がない、とりあえずは膝を貸してやる。波瑠、お前にほとんどのこと任せても良いだろうか」
「いいよ!猫さんと一緒ね!とりあえずは水場だよね。シーツとかを洗うのにも必要だし、探してくるよ!あとは木の枝と…フライパンとかはここの家から拝借しちゃおう。この家の人、大容量のバッグとか持ってないか探してきてもいい?」
「ああ。頼んだ」
波瑠が家の中を捜索し、大きめの旅行バッグを見付けた。
どうやら家人は、よくどこかに行っていたのだろう。この夏の国の遠いところか、それとも他の国か。
その中に、埃まみれのベッドシーツと枕を詰め込み、大きめのカゴと鍋、使っていたであろう空のウォーターサーバーのタンクボトルを持って出掛けた。
その間、家の中でルミエはひたすら眠る少年を見守った。
「人間は、どうしてこうも弱いんだ。…お前も、よくこうなった世界で今日まで生き延びたものだ。まだ幼いだろう…」
返事はなくとも、夢にでも出ていれば御の字だと語り掛けた。
幸い、少年の表情は落ち着いており、穏やかな寝息を立てて眠り続けている。
よく見れば、顔には不思議な模様、来ている服は独特なデザインのパーカーだった。
ポンチョタイプのパーカーと、その下にはタンクトップを着ており、ショートパンツというこの年頃の男児にしか出来ない格好をしている。
「…この人間も、波瑠と同じか…?」
膝で眠る少年の頭を撫でながら、天使はその家で、波瑠の帰りを待った。
一方、波瑠と猫は水場を探して歩き回っていた。
苔むしてツタに覆われた街を抜け、森に入る。
この森は扉の森とは違い、木々がそれぞれに生い茂り、陽光を適度に取り入れる暖かな森だった。
猫は、恐らく主人なのであろう少年が助かったからか、少し足取りが軽く見えた。
「なぁ猫ちゃん。あの子、君のご主人?」
「ウニャー」
「そっかあ。助かって嬉しい?」
「ンナ!」
「はは、君って賢いねぇ、人間の言葉分かってるみたい。こうして水場も探しに来てくれるしほんとに……え?ほんとに賢い」
「ニャ、ニャッ」
波瑠が困惑していると、猫は自身の尻尾を見せつけてきた。尻尾には、青いリボンと鈴が着いている。
「なにこれ、めちゃくちゃ可愛いね」
「ウニャ、ウルニャッ」
「ん?……?…………はっ!もしかして!パーカーと同じようなこと!?」
「ウニャー!」
「ご主人くんが着けてくれたの?」
「ウナ!」
「そっかそっかぁ~~~~!賢いねぇ偉いねぇヨシヨシヨシヨシ」
「ゴロゴロ……」
森の中で、猫と一通り戯れる。すると、今まで喉を鳴らしていた猫が突然、ハッとした様子で道の先を見詰めた。
不思議に思い、波瑠もそちらを見つめる。耳を澄ますと、流れる水の音のようなものが聞こえてきた。
と、同時に。
「ァ……アァー……」
「わー、忘れてたあ…………そうだよねえ、森には居るよねぇ……悪魔」
「フーーーーーーッ……!!!!」
「猫ちゃん、あいつらにやられたんでしょ?ご主人様くん」
「ウニャー!」
1人と1匹を取り囲むように、悪魔が3体脇道から出現する。
波瑠は猫を抱き抱え、撫でるためにしゃがんでいたところから立ち上がる。
「僕が仇取ってあげるからね」
「ウニャ……?」
「はは、仇は難しかったか、可愛いねえ猫ちゃん」
波瑠が3体を見つめ、数秒の瞬きの後。辺り数メートルの青々とした木々は、桜の木に変わる。
そして、そこから舞い散る花びらは地面には落ちず、空中で三体に向かい花弁の根元を向けた。
「人間じゃなかったら、ちゃんとご飯にするからねー」
花弁は、波瑠が指を鳴らすと同時に悪魔へと集まり始めた。
花弁は竜巻のように1体1体を取り囲み、鋭利な性質を付与された花弁の根元で切り裂いて行く。
竜巻のような花弁が、一気に空中へ弾けた。
中に囚われた悪魔は、切り裂かれ息絶えた。そこに残った死骸は、兎、狸、蛇だった。
「お、この3びきなら食べられそうかも。蛇はちょっと……面倒くさそう……。猫ちゃん、食べる?」
「ンニャ!ニャー!」
「そっかそっか、じゃあこの蛇さんは猫ちゃんのご飯だね!」
「ンニャ~!」
「猫ちゃん、背中に乗せて歩ける?」
「ゥナン!」
「じゃあ、よろしくねえ」
猫の背に食料を乗せ、水の音のする方へ歩き出す。
そこからは、心地よい風が吹いてきた。
じっとりと汗をかいた身体は、冷たい水を欲していた。
数分歩くと、目の前には美しい川が現れた。飲むには濾過したいところだが、透き通っていてかなり純度が高い。
「……タオル持ってくればよかった。これは流石に飛び込みたかった」
「ンナー……」
「猫ちゃんは浴びてもいいんだよ?」
「ンナ!?にゃう、にゃうう」
「僕が飛び込まないから?入らない?」
「ニャ!」
「あぁ……なんて良い子なの……。汲んで早く帰ろうか、ご主人様くんが起きてるかもしれないからね」
「んにゃ~!」
持ってきたタンクに水を入れ、蓋をする。
かなりの重さにはなったが、持って帰るのに苦労はなさそうだった。
川の水は案外冷たく、顔だけバシャバシャと洗う。そして、その辺で拾ったペットボトルに水を入れ、保冷剤代わりに首へ当てながら帰路に着いた。
ルミエが膝枕をしながら、うたた寝をしている。その膝に寝ていた少年は、目を覚ましている。
そして、目の前の光景に動けないでいた。
「あ、あの……あ、の……おね、おねーさん……?おにーさん……?」
「ん…………。ん、あぁ、すまない、起きていたか少年。うたた寝をしてしまった」
「ぁ、あ……えっと……これは、一体……」
「あぁ。お前がひまわり畑で高熱を出して倒れていたのでな。治療して、適当な民家に避難した。今、仲間と猫が水を取りに行っている」
「ぁ、……そう、ですか……ご迷惑お掛けしました……」
そこからしばらく、波瑠と猫がこの拠点に帰り着くまでの間、ただ沈黙だけが続いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
異国妃の宮廷漂流記
花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。
夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。
いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。
これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの、ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、ハッピーエンドのサバイバル譚です。
※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。
© 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる