自称M

アーシはオス♂

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バイバイ

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「ふんふんふーん☆」

今日も猫谷ちゃんと会える♡♡
美術室の事件?ハプニング?以降、避けられてるんだけどね。
地味にシカトと無縁だった俺にはカルチャーショックなわけで。

「三毛野ー!はよー!!」

ふいに、後ろから腕が絡まってくる。
誰だっけこの子。

「おはー。あ、猫谷ちゃーーん!!」

視界に猫谷ちゃんが映った。
俺の体は吸い寄せられる磁石みたいに、方向転換して走り出していた。

「お前か、んじゃな。」

「ちょいちょい!一緒に行こ!」

車道に俺が立って、猫谷ちゃんを歩道寄りに歩かせる。
手を握ろうと思ったら、叩かれた。
ちぇー。
あれ、腕時計が新しくなってる。

じーーっと猫谷ちゃんを見つめる。
横顔綺麗。

「何だよ。」

目も合わせてくれない。
はぁ。つれないよ。悲しい。

「腕時計、買ったの?」

「兄貴のお下がり。」

ゴツめのG-SHOCK。
俺も同じの買っちゃおうかな。
あ、お兄さんいるんだ。
メモメモ。

「猫谷ちゃん、手首細いのによく付けられたね。」

「うるせ。」

猫谷ちゃんの同中を探したけど、学区が違うし同中もいない。
むしろ、1時間半もかかる電車通学らしい。って聞いた。

高校まで駅から徒歩15分。

誰かを追っかけて受験したのかな。
付き合ってるのかな。

どんどん思考がエスカレートしいてく。

これが、嫉妬??

「俺、死ぬのかも。」

「あ、そう。」

もう!!心臓痛いよ!!猫谷ちゃんのアホ!!
ちょっとはさ、心配されたいよ、、。

「参考書と俺、どっちが大切なの?」

「参考書。」

はい、即答!!!
0.000001秒で答えたよ、この人。

「三毛野ー!!!」

後ろからさっきの男にハグされる。

「こんなつれないヤツほっとこ!俺と教室行こ!!」

グイグイと腕を引っ張られた。
猫谷ちゃんは参考書を見てる。
ねぇ、ねぇ、俺は要らないの??
数式よりも俺には価値ないの??

俺の命は参考書以下??

教えて、猫谷ちゃん。

引っ張られるままに、俺は名も知らないクラスメイトと教室に足は動いていた。


「三毛野と綾萌(あやめ)付き合ったんだ!!」
「朝からラブラブかよぉー!!」

え、何で付き合ってる設定なの??

「あ、いや、付き合ってーー」
「るよね?三毛野♡♡昨日、告っておk貰った♡」

クラス中から声援がおくられて。
俺は呆然と立ち尽くす。

時間は8時15分。
猫谷ちゃんが中庭でいちごオレ飲んでる時間だ。

行かなきゃ、、。

行かなきゃ、、?

俺の事、好きでもないやつのこと。



「忘れちゃえばいいんだ、、。」


バイバイ。
猫谷ちゃん。


「え?何か言った??」
綾萌と呼ばれた男が振り返る。

「ん?何でもないよ。」
ニッコリ笑えば何事もいいように取られる。
案の定、顔を真っ赤に染めて照れてる綾萌。

ちょれー。


1週間後


「おい!!!!猫谷がタメ庇ってトラックに撥ねられたってよ!!!」

朝の校内がザワザワと騒ぎ出した。
すぐ校内放送が流れて、事実確認をしてるから騒ぐな、とお達しが流れた。

猫谷ちゃん…。

「ねぇ、綾萌。ちゅーして?」

「ここで?!」

「早く。」

ちゅっ

教室、廊下を歩いてる子らが俺と綾萌に釘付けだ。
綾萌は得意気に微笑んで、腕を絡めてきた。


それから朝礼が始まった。



「どういう事だよ!!!!あいつは虐められた1年を庇って車道に放り出したんだ!!!」

「落ち着いてください!お兄さん!!」

「落ち着いていられるか!!!弟に後遺症があったら、将来は、今に絶望するに決まってる!!!!」


すごい言い合いが響く。


「猫谷さん!!!落ち着いて!!!」


え、、。


「この!!!くそ教師共!!!イジメの1つや2つは普通とか思ってんだろ!!!だから、アイツは守ったんだ!!!お前ら無能共が動かねぇから!!!」


ズキン、胸が傷んだ。
俺が原因でイジメられて、不登校になった子が沢山いたのは知っていた。
それを俺も何も思わず、1つや2つとタカをくくっていた。

お兄さん、、?
弟、、?

え、顔みたい。

「ちょっと具合悪いので保健室行ってきマース。」

「あ、コラ!三毛野!!」

担任の声なんてなんのその。
のらりくらり躱して、声の方向に向かった。


「え、、?!」


制服着てるお兄さん??顔が瓜二つ!!

いや、でもここはブレザーだし、お兄さん?は学ランだ。

身長高ぇ。俺と同じくらい?
ウルフにインナーカラーは紫。
かっちょええ。

ドアの隙間越しに目がう。

「誰だよ、お前。」

ドアがバンと開けられた。

「ドブネズミみてぇに這いずりやがって、失せろ。」

「あ、あの。猫谷ちゃんのお兄さんですか?」

怖いけど、勇気を出せ、俺。

「猫谷ちゃんだぁ??!!」

ガシッと胸ぐらを掴まれる。

「巫山戯た呼び方すんなら、殺すぞ。」

この人、猫谷ちゃんの血縁なのぉ?!ガチで!?
ワイシャツのボタンが2つも弾けた。

「こーれ!!何言ってんの!!」

椅子に座っていた保健室の先生が、お兄さんの肩に手を置く。


「センセ、コイツ何。」

ビシッと指を俺に向ける。

「ちょっと前まで仲良かった三毛野って子。今は彼氏とラブラブタイムだとさ。」

「ほぉー。こんなチンチクリンでもいっちょ前に恋人いんのか。」

「アンタねぇ、双子の兄としての自覚持ちなさいって。」

ふ、ふ、、双子おおおお!!!???

猫谷ちゃんが!!!???

あ、だから顔似てるんだ。

「アンタが悪い態度取ると、三毛野が絡みづらくなるでしょ。」

「ちっ、センセ、俺は病院に行く。」

「警察も病院向かってるって連絡あった。車で送るよ。」

「悪い。」

センセとお兄さんは生徒指導室から出ていった。



3日後


ゴロン、ゴロン、、。

今日は日曜日。

猫谷ちゃん、大丈夫かな、、。

ピルン

LINE、、。

スマホに触れる。

「綾萌かぁ、、。」

猫谷、、ちゃん、、。

ぶわぁっと視界がボヤける。
弧を描いて、涙が流れた。

俺が喧嘩の仲裁に入っていたら?
俺が先輩を止めていたら?
俺が先にいじめられっ子を助けていたら?

俺がーー

俺が、猫谷ちゃんを諦めなかったら?


「っく、ひっく、、ごめっ、、ごめんねっ、、猫谷ちゃ、、」

ピコピコ

新着のニュースが届いた通知音。

少しでも猫谷ちゃんの情報欲しさにダウンロードした。


「ね、、こやちゃ、、ねこちゃっ、、」


素っ気なくていい。
喧嘩っ早くてもいい。
だけど、そばに居るのは、猫谷ちゃんの心を独占出来るのは、、



俺だけがいい。



月曜日

「綾萌、ごめん。別れよ。」

放課後、カフェで別れ話を持ちかけた。

「何で、、?」

「俺ね、猫谷ちゃんのことー」

「嫌い!!!アイツ、大嫌い!!!」

「あ、綾萌??」

「アイツは偽善者だ!!」

「ちょちょ!!声大きい!!」

「アイツの兄貴も大概クソ野郎だったな。」

ハッ、と鼻で笑い出す綾萌。
ニンマリと笑みを浮かべて、事の真実を話し出した。





「は?綾萌が猫谷ちゃんの事故を計画したの、、?」



いじめられっ子は嘘。
猫谷ちゃんが絡んだ先輩は3年の筋肉ダルマこと、館田。


全て、猫谷ちゃんを消すため。



「フフッ、俺の事嫌っていいけど。愛しの猫谷ちゃんの命を握ってるのも俺ってこと、忘れないでね?ダーリン。」


ちゅ


リップ音付きのキス。
周りはガラス色を俺たちを見てはいない。



どうしたら、どうすれば助かるの?



「猫谷ちゃん、ごめんね。」



違う、弱音は後で吐け俺。
俺が助けるんだ。



猫谷ちゃん、猫谷ちゃん。


助すけたら、俺は消えるから。
それしかないんだよ、猫谷ちゃんを救える方法。
俺には参考書程の価値もないことに、やっと気がつけた。

数式程、偉くは無い自分を見つけた。


「よしっ、、!」



俺は保健室を尋ねた。


「失礼しマース。」


「どうしたの?三毛野。」

足音で判別してんのか?って程に、書類しか見てない先生。


「あ、あの。猫谷ちゃんのお見舞い、、に行きたくて、、。」

「猫谷、意識ないってさ。行っても無駄無駄。親族に迷惑だからな。」

「俺、、!!俺にとって、猫谷ちゃんは!!!大切な人なんです!!!」

「はぁ。そうなのか。でも、綾萌と付き合ってるって聞いたけど。」

「成り行きってゆーか。その、、。」

「ま、お前さんみたいな中途半端野郎にお見舞いされても嬉しかねーよ。出直せ。」

「、、嫌です。」

「あのなぁ。」

「中途半端でも、喜ばれなくても、いいんです。猫谷ちゃんがまた、素っ気なくもいい!俺よりも参考書を選んでくれる猫谷ちゃんに会いたいんです!!!」


「だとさ、オニイサン。」


へ?


シャッとカーテンが開いて、仏頂面の双子兄が出てきた。

「お前か、弟を悩ませてたのは。」

猫谷ちゃんを悩ませる??俺が??

「え、思い当たる節はないんすけど??」

うーん。と5秒間は考えたけど、全く思いつかない。

「俺に聞いたんだよアイツ。『俺って優しい顔してる?』って。誰に言われたって聞いても口は割らねぇし、事故で意識が朦朧としてる時にアイツが口走った。」


『バカ三毛野、、俺は優しい顔してねぇよ。』


「そう言ったんだ。」

俺は咄嗟にボイスレコーダーを差し出して、大音量で流した。

事故の本当の事実を。

本当は警察に俺1人で乗り込むつもりだった。
だけど、猫谷ちゃんのお兄さんは俺を試した。

俺にとっての試練は、猫谷ちゃんと向き合うこと。

ほんの僅かだけど、猫谷ちゃんの中に俺は存在していた。

それが、何よりも嬉しくて。





1ヶ月後

ニュースでは連日、事故加害者のうんちくを垂れていた。

「ねぇ、猫谷ちゃん、ニュースつまんない。」

猫谷ちゃんは管に繋がれて呼吸だけを繰り返す。
心音が絶えずあるだけで、俺の心は平穏だ。

「猫谷ちゃん、好きだよ。」

「まだ眠いの?俺も一緒に寝ていい?」

椅子に座って、上半身をベットに突っ伏した。
手を握る。

叩いてくれるかな、なんて希望はほんの僅かあったけど。

ピクリとも動かない手を握りしめた。

「冷たい、、。」

左手を両手で包んで、俺は寝てしまった。



「おい、クソ野郎。交代だ。」

時計を見ると17時。たっぷり1時間半は寝ていた。

「あ、オニーサン。俺、明日も来れるよ。」

「馬鹿言え、顔色悪すぎる。明日は寄らなくていい。」

「、、最近、寝れなくて。」

「はぁ、、お前な。弟がそれで喜ぶとでも思ってんのか?」

「え、いや、そんな事はないですけど、、。」

「土日は来なくていい。」

「2日も猫谷ちゃんに会えないの辛いスよ!!」

「辛いのは弟も同じだ、、。弱って、眠りこけてる姿なんざ、見られたくねぇだろ。」

「、、、。分かりました、、。」

ブレザーを羽織って、病室を出た。
ドアの向こうから、鼻をすする音が聞こえて。
オニーサンも辛いんだ、と人を見た目で判断しちゃいけないなって初めて思った。


猫谷ちゃんは普段、すごく度が強い眼鏡をつけてる。
そのせいか、細目に見えるけど、眼鏡を外すとまつ毛が長くて、可愛くて、綺麗なすっごい柔らかい目をしている。
茶色で真っ直ぐな瞳。

少し癖っ毛な髪質。

日焼けしてもヤケない繊細肌。

骨ばってる指。

参考書は付箋だらけ。

得意科目は英語。

苦手科目は美術。


俺が集めたありったけの猫谷ちゃん情報。



河川敷で夕日を眺める。
小学生がワーワー言ってサッカーボールを追いかける。

「猫谷ちゃん、みんな元気だね。」

眠れない。
猫谷ちゃんの心音が無いと眠れない。
安心に包まれてないと寝れない。

猫谷ちゃんの手の冷たさを覚えてる。

猫谷ちゃんがこの世から居なくなるとしたら、俺は悔やむ。

忘れようとしたこと。
猫谷ちゃんの傍にいたこと。

「ねこ、、ちゃっ、、!!ごめ、、っごめんっ、、」

ブルブルブルとスマホが着信を知らせる。

表示は『オニーサン』

勢いよく画面を押す。

「も、もしもし?!何かあったんですか!!??」

(声、デケーんだよてめぇ。弟の手が動いた。)

「マジっすか!!今から戻ってもーー」

(はよ来い。)

ブチッ、ツーツーツー

今までで1番早く走った。
息が切れるとかどうでも良くて、ありったけの力で走った。

控えめに病室のドアをノックする。

「入れよ。」

「失礼しマース。」

「俺は担当医に呼ばれてるから席外すわ。何かあったら分かるな?」

「はい!」

パタン

「猫谷ちゃん、、。」

ベットの椅子に腰掛ける。

「猫谷ちゃん、そろそろ起きてよ。寂しくて死にそう。」

手をまた包んで、ギューっとした。


すると、機械から心音が消えた。



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