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#074 『テレビ幽霊ちゃん』
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森繁さんという悠々自適な老後を過ごしておられる紳士が、建築関係の仕事の都合で大阪に住んでいらした現役バリバリの頃の話。
当時 彼が一人住まいしていたアパートでは、「何もしていないのにひとりでにテレビがつく」という謎の現象が頻繁に発生していた。
しかも、ついたテレビには決まって、ある有名な男性芸人が映っている。
これは 彼のファンである『幽霊ちゃん』の仕業に違いない・・・と、若かりし頃の森繁さんは確信を持って考えていた。
――ピッ
「あ、ついた」
――ピッ
「げ、またかい」
――ピッ
「あら、またテレビ・・・」
――ピッ
「何や、今日は多いな」
日に少なくとも2、3回、そのようなことが起こるのである。
最初はひどく不気味に感じていたものの、あまりに度々なので逆に一ヶ月と経たないうちに すっかり慣れてしまった。
別に、不意に映ったテレビが怪奇特集をやり出すわけでもない。
芸人さんを狙って映すのだから、ほとんどがお笑い番組だ。
更に向こうも(?)それなりに気を遣ってくれているのか、一瞬だけ映したら、直ぐにまた電源を切ってくれる。
――ピッ
「おや、またかいな。幽霊ちゃん、ほんま〇〇〇さんが好っきやなぁ」
遂にはそんな軽口が飛び出すくらいになってしまったという。
※ ※ ※ ※
――ピッ
ある日、森繁さんが仕事の資料と睨めっこをしていると、また突然にテレビがついた。
『ちょ、それアカンやろ!いやいやいや本気本気』
画面の中で、芸人〇〇〇さんが 軽妙なトークを披露。会場からドッカンドッカンの笑いを取っている。
『やー、今日はお客さんの反応が最高ですねぇ-、居心地ええわぁ。ここに住もうかな、ボク』
と、そこでプツン、とテレビが消えた。
いつものことだ。
が。
――森繁さんは、顔面蒼白になった。
何故ならば、その時 芸人〇〇〇さんは、とある不祥事が元で業界を干されていたからだ。
当然、彼がテレビに出演しているとすれば その不祥事を報道するニュース番組くらいである。
なのに。
(・・・いまの番組、何??)
真っ黒なテレビの画面を凝視しながら、ごくりと唾を飲んだ。
放送されていない筈の番組映ってなかった?いま・・・・・・
――ピッ
それから二時間ほどして、またテレビがついた。
『ハイ!というわけで、次のコーナーですけどねぇ』
謹慎している筈の、〇〇〇さんの笑顔のトーク。
また、プツンと切れる。
ありえない。
何だこれ 何だこれ 何だこれ。わけわからん!
(・・・やばい。もう ここ、よう住めん・・・)
森繁さんは震えが止まらなくなった。
※ ※ ※ ※
結局、それから直ぐに転居し、府内の別のアパートに入った。
テレビは同じものを使用したが、もうそれがいきなり芸人〇〇〇さんの映像を映し出すことは無かった。
「いや・・・よくよく考えれば、テレビがいきなり〇〇〇さんの番組のみを映す時点でおかしすぎる話なんですけどね・・・・・・」
頬をポリポリ掻きながら、苦笑まじりに森繁さんは語られる。
「ありえない要素がひとつ増えただけで、人間てアホみたいに恐怖が湧いてくるもんなんですな。まるでビデオみたいに〝放送されていない筈の映像〟がテレビに流れた時の空恐ろしさときたら、もう、忘れられません」
そこまで徹底して、何故〇〇〇さんが出ている映像のみをテレビに映すのか。
いやもしかして、何らか意図があって 〇〇〇さんの姿を自分に見せつけようとしているのか?
そう考えると、理解不能な『幽霊ちゃん』の情熱が 心底怖くなったのだという。
『幽霊ちゃん』て 実際 何かを森繁さんに伝えたかったんでしょうかねぇ?
何気なく私が言うと、「いや、それ、たぶん知ってしまったら眠れなくなるようなことだと思うから 今は深く考えないようにしとります」と ぶんぶん頭を左右に振りながら森繁さんは仰った。
今でも、復帰した〇〇〇さんがテレビに映ると、ぞくりとするという。
当時 彼が一人住まいしていたアパートでは、「何もしていないのにひとりでにテレビがつく」という謎の現象が頻繁に発生していた。
しかも、ついたテレビには決まって、ある有名な男性芸人が映っている。
これは 彼のファンである『幽霊ちゃん』の仕業に違いない・・・と、若かりし頃の森繁さんは確信を持って考えていた。
――ピッ
「あ、ついた」
――ピッ
「げ、またかい」
――ピッ
「あら、またテレビ・・・」
――ピッ
「何や、今日は多いな」
日に少なくとも2、3回、そのようなことが起こるのである。
最初はひどく不気味に感じていたものの、あまりに度々なので逆に一ヶ月と経たないうちに すっかり慣れてしまった。
別に、不意に映ったテレビが怪奇特集をやり出すわけでもない。
芸人さんを狙って映すのだから、ほとんどがお笑い番組だ。
更に向こうも(?)それなりに気を遣ってくれているのか、一瞬だけ映したら、直ぐにまた電源を切ってくれる。
――ピッ
「おや、またかいな。幽霊ちゃん、ほんま〇〇〇さんが好っきやなぁ」
遂にはそんな軽口が飛び出すくらいになってしまったという。
※ ※ ※ ※
――ピッ
ある日、森繁さんが仕事の資料と睨めっこをしていると、また突然にテレビがついた。
『ちょ、それアカンやろ!いやいやいや本気本気』
画面の中で、芸人〇〇〇さんが 軽妙なトークを披露。会場からドッカンドッカンの笑いを取っている。
『やー、今日はお客さんの反応が最高ですねぇ-、居心地ええわぁ。ここに住もうかな、ボク』
と、そこでプツン、とテレビが消えた。
いつものことだ。
が。
――森繁さんは、顔面蒼白になった。
何故ならば、その時 芸人〇〇〇さんは、とある不祥事が元で業界を干されていたからだ。
当然、彼がテレビに出演しているとすれば その不祥事を報道するニュース番組くらいである。
なのに。
(・・・いまの番組、何??)
真っ黒なテレビの画面を凝視しながら、ごくりと唾を飲んだ。
放送されていない筈の番組映ってなかった?いま・・・・・・
――ピッ
それから二時間ほどして、またテレビがついた。
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謹慎している筈の、〇〇〇さんの笑顔のトーク。
また、プツンと切れる。
ありえない。
何だこれ 何だこれ 何だこれ。わけわからん!
(・・・やばい。もう ここ、よう住めん・・・)
森繁さんは震えが止まらなくなった。
※ ※ ※ ※
結局、それから直ぐに転居し、府内の別のアパートに入った。
テレビは同じものを使用したが、もうそれがいきなり芸人〇〇〇さんの映像を映し出すことは無かった。
「いや・・・よくよく考えれば、テレビがいきなり〇〇〇さんの番組のみを映す時点でおかしすぎる話なんですけどね・・・・・・」
頬をポリポリ掻きながら、苦笑まじりに森繁さんは語られる。
「ありえない要素がひとつ増えただけで、人間てアホみたいに恐怖が湧いてくるもんなんですな。まるでビデオみたいに〝放送されていない筈の映像〟がテレビに流れた時の空恐ろしさときたら、もう、忘れられません」
そこまで徹底して、何故〇〇〇さんが出ている映像のみをテレビに映すのか。
いやもしかして、何らか意図があって 〇〇〇さんの姿を自分に見せつけようとしているのか?
そう考えると、理解不能な『幽霊ちゃん』の情熱が 心底怖くなったのだという。
『幽霊ちゃん』て 実際 何かを森繁さんに伝えたかったんでしょうかねぇ?
何気なく私が言うと、「いや、それ、たぶん知ってしまったら眠れなくなるようなことだと思うから 今は深く考えないようにしとります」と ぶんぶん頭を左右に振りながら森繁さんは仰った。
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