真事の怪談～魔性黒電話 通話25件～

第03報『アッタネー』

　大柴さんは、一念発起して転居した引っ越し先がどうにも肌に合わなかった。

　夜　とても寝苦しく、布団に入ってもなかなか寝付けない。

　ある日の夜、やっとウトウトしてきたかと思えば、寝入りばなに

「アッタネー、ココニアッタネー」

　――そんな棒読みじみた女の声が部屋の中で聞こえたので、ハッと覚醒した。

　むっくり身を起こして何気なく視線をやったクローゼットの前に、シミーズ一丁の女が正座している。ギョッとした瞬間、それは消えた。

　そういう出来事が、何度も起きた。

　どうにも腑に落ちないので、家族に協力してもらってクローゼットをどかしてもらった。すると何と、壁際の隅っこあたりにくしゃくしゃに丸めた昔の一万円札が4枚も落ちている。
　絶対、引っ越して直ぐにクローゼットを配置した時には無かったものだ。

「やった、ラッキー！」
「ユーレイ様々！これで何か美味しいものでも食べに行こう」

　家族は盛り上がったが、大柴さんは自分の一存で、その4万円を近所にある神社の賽銭箱に突っ込んできた。打ち明けたときは非難囂々だったが、仕方ないという。

「なんか、あのお金を勝手に使ってしまったら。今度はあの女が、私の枕元に座ってきそうな気がして――」

　それからは何も無い。
　ただ、相変わらず　部屋は意味もなく寝苦しい。