真事の怪談～魔性黒電話 通話25件～

第23報『みそしる』

　今口さんは学生時代からオカルト好きで通っており、高校に自力でオカ研を立ち上げたり実話怪談の類いを蒐集したりと、精力的に活動を行っていた。

　故に何人かのタチの悪い同級生からはしょっちゅうバカにされ、キモいだの学校から出て行けだのと言われていじめに近い仕打ちをされていたが。それでも絶対に自分の意見は変えず、マイペースを貫いていたという。

　そんな彼が高二の頃の夏休み明けのこと。
　常々今口さんにいらぬチョッカイを出していた師岡もろおかという不良が、折り入った様子で「仲間と一緒に肝試しに行った古戦場跡で、俺だけ幽霊みたいなものを見たんだが」と相談を持ちかけてきた。

「ボロッボロの恰好のサムライみてぇでよぉ、『味噌汁を～』とか言われてメッチャ怖かったんだけど･･･『味噌汁』って何なんだよ。おめーならわかるだろ」

　新手の方法でからかいに来たか、と直感した今口さんは、「はいはい、味噌汁ね。昔の霊は味噌汁をねだるものなんだ。気にしなくていいから。挨拶みたいなものだから」と適当なことを言ってあしらった。

「･･･マジかよ。本当に大丈夫だろな。祟りとかねぇだろな、オイ」

　師岡はどこか不服そうだったが、構わず放っておいたという。　


　それから二日も経たぬうちだった。
　師岡は、不慮の自動車事故に巻き込まれて帰らぬ人となった。
　遺体は特に首の損傷が激しく、ほとんどもぎ取れるような形になっていたらしい。


　――もしかして師岡の言ったことはぜんぶ本当で。ヤツは侍から『味噌汁を』でなく『首級みしるしを』と　せがまれたんじゃないのかな･･･

　けっこう後になってぼんやり、今口さんは考えたという。