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第24報『目血鼻血』
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暁美さんが、看護学生だった十代の頃の話。
ある秋口の涼しい夜、百物語形式で書かれた有名な怪談本を寮の自室で読んでいた。
一夜で完読すれば『怪』に見舞われると当時から噂されていた――あの大名作の初版本だ。
日が暮れて直ぐに読み始めた為、午後9時前には読破してしまった。
さて読んだぞ、これから何が起こるのやら?
少しワクワクしながら本を閉じるや、いきなりその表紙にボッタリ、真っ赤な液体が弾け散った。
(え、血?!!)
反射的に天井を見る。
と。決して広くない一人部屋の天井を埋め尽くすように巨大な女の顔が恨めしそうにこちらを見下ろしており、その両眼からは文字通りの血の涙が垂れているではないか!
「わ、わぁぁ、本当に出たぁ!!」
パニック状態で部屋を飛び出し、隣室の友人の所へ慌てふためき雪崩こむ。
「ね、ねぇ笑わずに聞いて?部屋にお化けが出たの。目から血を流してるの!!」
友人は笑わなかった。
そのかわり、呆れたような顔で暁美さんの顔を指さしながら言う。
「目じゃない。鼻、鼻」
鼻?!
思わず掌を当てて確認すると、何とダラダラ鼻血が垂れていた。
「・・・鼻血に驚いて幻でも見たんじゃない?それにしても怖がりすぎよ?」
あんな本を読んでいた手前、申し開きが出来ない。
とにかく平謝りし、鼻にティッシュを詰めて自室に戻った。
鼻血は意外にひどく、暁美さんの着衣は小豆色に染まり、歩いてきた廊下にもボタボタと物騒な血痕が出来上がっていた。
しかし。
「おかしいんですよ・・・女の顔がいなくなってたのは勿論なんですが、私の部屋にだけは何処にも血の痕がなくて。それどころかボッタリ血で染まった筈の怪談本の表紙が、何事もなかったように綺麗なままだったんです――」
鼻血は流れた。それは事実だ。
だが何故、血の涙が流れた形跡だけがなくなっているのか?
――暁美さんは、今でも本気で真相が気になるという。
ある秋口の涼しい夜、百物語形式で書かれた有名な怪談本を寮の自室で読んでいた。
一夜で完読すれば『怪』に見舞われると当時から噂されていた――あの大名作の初版本だ。
日が暮れて直ぐに読み始めた為、午後9時前には読破してしまった。
さて読んだぞ、これから何が起こるのやら?
少しワクワクしながら本を閉じるや、いきなりその表紙にボッタリ、真っ赤な液体が弾け散った。
(え、血?!!)
反射的に天井を見る。
と。決して広くない一人部屋の天井を埋め尽くすように巨大な女の顔が恨めしそうにこちらを見下ろしており、その両眼からは文字通りの血の涙が垂れているではないか!
「わ、わぁぁ、本当に出たぁ!!」
パニック状態で部屋を飛び出し、隣室の友人の所へ慌てふためき雪崩こむ。
「ね、ねぇ笑わずに聞いて?部屋にお化けが出たの。目から血を流してるの!!」
友人は笑わなかった。
そのかわり、呆れたような顔で暁美さんの顔を指さしながら言う。
「目じゃない。鼻、鼻」
鼻?!
思わず掌を当てて確認すると、何とダラダラ鼻血が垂れていた。
「・・・鼻血に驚いて幻でも見たんじゃない?それにしても怖がりすぎよ?」
あんな本を読んでいた手前、申し開きが出来ない。
とにかく平謝りし、鼻にティッシュを詰めて自室に戻った。
鼻血は意外にひどく、暁美さんの着衣は小豆色に染まり、歩いてきた廊下にもボタボタと物騒な血痕が出来上がっていた。
しかし。
「おかしいんですよ・・・女の顔がいなくなってたのは勿論なんですが、私の部屋にだけは何処にも血の痕がなくて。それどころかボッタリ血で染まった筈の怪談本の表紙が、何事もなかったように綺麗なままだったんです――」
鼻血は流れた。それは事実だ。
だが何故、血の涙が流れた形跡だけがなくなっているのか?
――暁美さんは、今でも本気で真相が気になるという。
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