北の大地で君と

高松忠史

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雷光

雷光

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洋介は早めに起きて熱いシャワーを浴びた。
愛蘭はまだ寝ていたので、なるべく静かにドレッサーの前でタオルで髪を乾かした。

うーん…
愛蘭が目覚めたようだ。

ごめん、起こしちゃったね
洋介は愛蘭の方を向いて謝った。

愛蘭はボーっと周りをキョロキョロした。
あれ?
私どうやって帰ったっけ?

洋介は苦笑した。
天真爛漫な愛蘭らしいと思った。

最初飲んでいたとこまでは覚えているけど途中から記憶がない… 

ねぇ…洋介さん、どうやってここまで帰ってきたの?

ちゃんと帰ってこれたんだから何も心配ないよ。

私 何か変なこと言わなかった?

別に…大人しくしていたよ。
洋介は微笑し平静を装った。

愛蘭もシャワー浴びておいでよ、さっぱりするよ。
俺はフロントから新聞とサービスコーヒーもらってくる。

うん…

愛蘭はシャワーを浴びながら断片的な記憶の中のところどころで洋介におんぶされているような気がした。
しかし洋介に確認することは恥ずかしく憚れた。

愛蘭は洋介がまだ戻ってない部屋のドレッサーで髪を乾かした。

本当に私 何もしてないかなぁ…
記憶がなくなるまで飲むなんて初めてのことに愛蘭は赤面した。

愛蘭が支度を終わらせても洋介はなかなか帰ってこなかった。 

そういえば…
愛蘭は昨夜の夢を思い出した。

急だけど俺 帰らなきゃいけないことになった。
じゃあ元気で。

愛蘭がいくら洋介の名前を呼んでも洋介は振り返ることなく行ってしまう嫌な夢だった。

愛蘭は寂しかった…
目の前から洋介がいなくなってしまう不安と焦り…

しかしこの別れはあと二日後に起こる現実…

ガチャ

ドアが開きコーヒーを持って洋介が戻ってきた。

洋介さん! 
愛蘭は駆け寄った。
洋介は堪らずコーヒーをこぼしそうになった。

洋介は愛蘭が血相を変えて走り寄ってきたので驚いた。

いったいどうしたの?

だって洋介さん戻ってこないから…

愛蘭が部屋で支度していると思ってロビーで時間潰していたんだよ。

愛蘭はホッとした表情を見せた。

昨夜も言ったけど俺はここにいるよ。

昨夜?

あ、いや、違う。

やっぱり私何か変なこと言ったのね?

言って…ない…

もうー教えて
愛蘭は洋介の肩をバンバン叩いた。

言ってない、言ってない
洋介は逃げた。

もう 洋介さんたら…

二人顔を見合わせて笑いあった。

洋介は愛蘭のこの明るい笑顔を見られる時間が有限であることを覚悟していた。

ホテルを出発した二人は
この日もし近くに寄ることがあったらということで前に愛蘭から要望のあった場所に寄ってみることにした。

車を走らせる洋介の隣で昨日の酒も残ることもなく元気な愛蘭は陽気に鼻歌を歌っていた。
愛蘭が楽しんでくれることは洋介にとっても嬉しいことだった。

ねぇ、洋介さんってどんな子供だったの?
愛蘭が突然聞いてきた。

うーん
これと言って特徴がなかったかなぁ…
勉強も普通、運動も普通、特に目標もなく何となくやっていたなぁ。

なんかつまらない。
愛蘭は口を尖らせた。

事実だからしょうがないよ。
でも友達とよくアウトドアして遊んだな…

キャンプとか?

うん。
週末になると家の近所の山に入ってテント張って外でご飯食べたり、釣りしたりね。

なんか楽しそう…
愛蘭は笑顔になった。

当時はスマホも携帯もCDもなかったからラジオをテントに持ち込んで夜になると深夜ラジオを聴いたり星を眺めたりしたんだ。

友達と将来の夢を語り合ったりしたよ。
免許取ったらどんな車乗りたいとか世界一周したいとか…子供だったな。
結局どの夢も叶ってないなぁ…
大人になるにつれて目の前のことをやることに必死で子供のような夢を持てなくなってしまうんだね。

愛蘭には夢はあるのかい?

私は…亡くなったお母さんみたいな女性になりたいの。

愛蘭のお母さんはどんな人だったの?

そう…優しくて、何でもできる人だった。
私が泣いて帰っても優しく包んでくれる温かさがあって…
弱い人には愛情を持って接していたな…

愛蘭ならなれるさ…
君には優しい心があるから…

ありがとう…

もう一つはやっぱり純白のウェディングドレスを着てみたいことかな…
愛蘭は洋介の横顔を見ながら言った。

そうか…愛蘭の花嫁姿 綺麗だろうな…

愛蘭は耳を真っ赤にして照れた。

ハンサムで素敵な新郎さんとヴァージンロードを歩く白いウェディングドレスを着た愛蘭か…
想像しただけでこちらも幸せを貰えそうだ。

そう?

愛蘭は急に不機嫌そうに答えた。

愛蘭は思った。
本当にこの人は!
口を膨らませプイと横を向いた。

洋介は何かマズイことを言ったのかと思ったが思い当たらなかった。


愛蘭が一度訪れてみたいという地…
そこにはポールから延びるロープにたくさんの黄色いハンカチがはためいていた。
丘の上にあるよく保存された古い木造住宅の一番奥にその光景は今でも色褪せずにあった。

ここは 映画「幸福の黄色いハンカチ」
で撮影された場所だった。

黄色いハンカチはその存在を周りの緑や空に向かって鮮やかに主張していた。
まるで何十年も幸せを願う旅人を待ち続けていたような、いや、映画の主人公を待っているかのような当時のままの姿であった。

愛蘭 どうしてここへ来たかったの?
洋介は日本の古い映画を愛蘭が知っていることが不思議に思えた。

私が日本に興味を持つ原点がここなの。
愛蘭は感無量の表情で答えた。

洋介でさえこの映画を観たのは再放送されたテレビでありその後何度か観たが一番最初に観たのは子供の頃である。

確か、高倉健と倍賞千恵子が出演していたね?

うん、高倉健さんは中国でも凄い人気の俳優さんなのよ。

へぇ、そうなんだ…
知らなかったな。
洋介は感心した。

でもどうしてこの映画だったの?

私がこの映画に出会ったのは子供のころだった。
昔、私の故郷では公民館みたいな場所で無料で映画を巡回して観せてくれる風習があって、そこで初めてこの映画を観たの。

子供の頃は最後のハッピーエンドで単純に感動して終わっていたんだけど、私も成長していくうちにまた映画を観る機会があったんだけど、主人公の奥さんの姿勢にちょっと疑問がわいたの。

どんな?

主人公の奥さんはいつ帰ってくるかもわからないご主人をずっと待ち続けていた訳でしょ?
しかも離婚届まで送られてきているのに。

多分こんな風に待ち続けられる女性は中国にはいないと思う。
私も最初はあり得ないと思った。
こんなに耐えられる女性の思考はすごく日本人的だと思ったの。

でも同時に美しいと思った…
それからもっと日本を知りたいと思ったの。

幸福の黄色いハンカチはみんな高倉健さんの目線で映画を観ていたけど、私は倍賞さんの目線で 私だったらどうだろうって観ていたの。
黄色いハンカチを一人きりで準備して家の外につけただろうかって。

でも最近わかる気がするの…
愛する人を信じて待ち続ける気持ちが…
きっと帰ってくるって祈りにも似た女性の気持ち…
愛蘭は洋介を見つめた。

洋介ははためく黄色いハンカチを見て言った。

そうだね…
信じて待つ心か…
奥さんはご主人を愛していたんだね…

同時に洋介には違う思いもあった。

健さん、あなたには帰る家と待ってくれている奥さんがいたんですよね?
待ってくれる人がいたってことはそれだけで幸せだと思いますよ。

俺には…

洋介は哀しい目で天空を見上げた。

建物の中には質素で慎ましく暮らす夫婦の様子が人形で再現されていた。
また、撮影で使われた赤い小型車や小道具が展示されていた。
その周りにはここを訪れた人の幸せの願いを書いた黄色い紙が壁や天井一面に貼られていた。
映画のようなハッピーエンドは現実に起こっているのであろうか。

洋介が映画で使われた小道具が展示されているケースを見ている隙に愛蘭は台に置かれている黄色い紙に中国語で願い事を書いて壁に貼った。

请让我开心
(私を幸せにしてください)

どうかしたの?
洋介が戻ってきた。

ううん、何でもない…
愛蘭は両腕を後ろに組んでそそくさと壁から離れた。

そろそろ行こうか?

うん。
愛蘭は立ち去る間際もう一度風になびく黄色いハンカチを振り返った。

きっと私にも…

幸福の黄色いハンカチ想い出広場を後にした二人は昼を食べてから石炭博物館などを見学して大きな川の辺りにある公園で休むことにした。

川幅のある大きな川には岩肌から流れる滝が見ることが出来た。
恐竜の爪痕の様な削られた岩肌に白い水が勢いよく流れ落ち周りの緑と一体となり迫力ある風景を演出していた。

川にかかる吊り橋を二人は歩いて見ることにした。

上から見ると川まで意外と高さがあり愛蘭は足がすくむ思いがした。
吊り橋は歩くたびに上下に揺れて船に乗っているかのような感覚だった。
風も大分出てきていた。
半分くらい進んだところで揺れが大きくなった。

怖い…
愛蘭は洋介の腕にしがみついて景色を楽しむ余裕はなかった。

ごめん、高い所怖かったかい?
戻ろうね。
洋介は愛蘭に悪い事をしたと思った。

ううん…
大丈夫…

愛蘭はしっかり洋介の腕を掴んだ。

橋の上から遠くの空の雲行きが次第に怪しくなってきているように見えた。
黒い雲が湧いてきていた。

二人は雨が降る前に車に戻った。

今晩の宿のことなんだけど
愛蘭は温泉に入ったことはあるかい?
洋介は聞いた。

まだ一度も…
日本にはたくさんあるんでしょ?

特にこの北海道には色々な温泉が数多くあるんだよ。

一度は行ってみたいとは思っていたんだけど…

よし!
今日は温泉宿に泊まろうよ。

本当?嬉しい。
愛蘭は笑顔で頷いた。

そこで相談なんだけど、今日は俺に奢らせてもらえないか?

え?

愛蘭には北海道の良い思い出を作っていって貰いたいんだ。
俺にはこれくらいしか出来ないけど、どうか俺の顔をたてさせてくれないか?

…ありがたくお受けします

愛蘭は洋介の気持ちが嬉しかったが、洋介の気遣いには別れの日が近いことを愛蘭は感じ取っていた。

洋介は早速ネットで旅館の予約を入れた。
一時間ほど走って予約した温泉宿に到着した。
洋介が奮発しただけあって立派な旅館だった。
部屋一棟が全て離れになっていて中庭には大きな日本庭園があった。
旅館に入ると色々な柄から浴衣を選ぶことが出来た。

この色かわいい…
愛蘭はピンクで花柄の浴衣を選び洋介は藍色の浴衣を選んだ。

二人は部屋に入ると次の間で交互に浴衣に着替えた。
愛蘭は髪をアップにしてピンクの浴衣をとても可愛く着こなしていた。

部屋から日本庭園が一望でき落ち着いた雰囲気の中 侘び寂びを感じさせる茶室のような威厳のある日本間だった。

二人は静かな離れの部屋で豪華な晩餐を共にした。

洋介さんこんなに贅沢しちゃっていいのかな?
愛蘭は豪華な夕食を前に恐縮していた。

これも日本文化の習得だと思って遠慮なく食べて。
洋介は笑顔で勧めた。

じゃあ遠慮なく…
愛蘭は繊細な懐石料理に舌鼓を打った。
すごい…
手が込んでいて何て美味しいの…
愛蘭が喜んで食べてくれることに洋介も嬉しかった。

外は雨が降りだしていた。

夕食の後 愛蘭が楽しみにしていた温泉風呂に愛蘭は先に出掛けて行った。

愛蘭が風呂に行っている間洋介はボーッとテレビを観ていた。
画面からはニュースが流れていた。

…本日日露首脳会談を終えたプーチン大統領が帰国の途につきました。

続いてのニュースです。
明日は今年最大の天体ショー ペルシウス座流星群が見られるかもしれません。
明日の日本列島は全国的に雲の予報が出ておりますが一部地域では晴れて流星群が見られるかもしれません。

流星群か…
明日晴れるかな…
洋介は愛蘭に流星群を見せてあげたいなと漠然と思った。

テレビを消すと洋介も風呂に立った。
雨音が激しく聞こえた。

洋介が風呂から上がり体を拭いていると物凄い音で雷鳴が轟いた。

部屋に戻ろうと風呂から部屋に向かう廊下を歩いていると突然灯が消えた。

停電か…?
旅館の廊下は真っ暗になったが、直ぐに非常灯がうっすら足元を照らした。
暫くして自動音声の案内が館内に停電していることを知らせた。

洋介は愛蘭が心配になって部屋へ急いだ。

洋介が部屋の襖を開くと真っ暗な部屋の中で愛蘭は敷き布団の上に正座をして座っていた。

床の間の非常灯が橙色の灯でぼんやりと部屋を照らしていた。

空気を裂くような激しい雷の音と雨の音が響いた。

愛蘭、停電みた…い…
洋介は暗い部屋の中愛蘭の顔を見た。

愛蘭は真剣な表情で微動だにせず正座していた。
洋介はその状況に驚いたが愛蘭の口が開いた。

洋介さんお話があります。
愛蘭は真剣な眼差しで洋介を見上げた。

はい…
洋介は愛蘭の前に正座をして座った。
障子を通して雷光が愛蘭の横顔を浮かび上がらせた。

洋介さん今日は本当にありがとう…

そんなこといいんだよ。
洋介は微笑んだ。

私…
明後日国に帰らなければなりません…

洋介も頭ではわかっていたが愛蘭の口からその言葉を聞くとドキリとした。

初めて洋介さんと会ったあの海で私は命を絶つことを邪魔されてあなたを恨みました…

洋介は愛蘭の真剣な眼差しに応えるよう視線を逸らさず愛蘭を見つめ返した。

私は…
洋介さんあなたが憎くて憎くてたまらなかった…

洋介は黙って聴いた。

でも…一緒に旅をするようになってあなたに対する私の気持ちは変わっていったの…

洋介さんの考え方、洋介さんが私にかけてくれた言葉…
どれも私にとって貴重なものだった…

見るもの聞くもの全てが生きているからこそ感じることが出来たんだって…

生きているって素晴らしいと思った…

そう…
あなたは私の命を救ってくれただけじゃなく私の魂まで救ってくれたのよ…

あなたはこの前 自分には人を幸せにする資格なんてないって言った…

でも…それは違う…

洋介さんは自分を卑下しすぎている…

現に私が…
愛蘭は目線を落とした。

私は…

私はあなたに救われたの…

愛蘭は涙を浮かべながら洋介を見つめた。
 
なのに洋介さんあなたは未だに苦しんでいる…

もう…私いなくなっちゃうんだよ?
洋介さんこのままじゃ…

私にできることはないの?

だって私は…

私は…

洋介さんのことが…

愛蘭は洋介の手を握った。

雨音が激しく雷鳴が轟き雷光が閃光した。


愛蘭… 

俺は…

俺のなか…には

洋介が言いかけて視線を落としたその刹那 愛蘭は唇を洋介の唇に重ねた。

う…

そのまま愛蘭は洋介を押し倒した。

洋介の瞳の真上には涙で潤む愛蘭の瞳があった…

愛蘭の憂いを帯びた瞳には洋介の顔が映っている…

これでお別れなの…?

愛蘭は震える声で囁いた

洋介が口を開こうとしたとき愛蘭は両手で洋介の頰に手を添えて再び唇を重ねた。

愛蘭は留めてあった髪を解いた。

ファサッと洋介の顔に愛蘭の髪がかかり甘くいい香りが洋介の鼻腔をくすぐった。

近くで雷鳴が轟き雷光が閃くとき部屋を青く照らした。

二人は見つめ合った…

洋介は愛蘭の肩を抱き寄せ、そしてもう一度唇を重ねた。

とても長い時間であった

愛蘭は自ら帯を緩めると浴衣を腰まではだけた。

雷光が愛蘭のまるでモデルを思わせる均整の取れた裸体を青白く映し出した。

愛蘭は洋介の浴衣を開き首筋に口づけをした。

洋介は愛蘭を抱いた。

外から激しい雨音と雷鳴が轟いていた。

部屋の片隅に置いてある愛蘭のバックにつけてある幸福ゆきのキーホルダーに雷光が反射した。

このまま時間が止まってほしい…
愛蘭は抱かれながら洋介の腕の中で願った。


やがて雷光と雷鳴が遠ざかっていった。

愛蘭は洋介の肩もとで寝息を立てて眠っていた。

洋介は愛蘭の顔に掛かる髪を指でそっとなであげた。

















































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