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18話

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 昼食をとるべくヒヨリと倉庫を出て軽く周りを見渡すと、玄関の前に敷物をしいてメリー待っていた。
 「さあ、お二人とも座ってください。」
 「庭で昼食とはなかなかいい案だな。」
 「今日はお天気も良いので丁度いいかと思いまして。」
 「うわ~!サンドイッチだ。美味しそう。」
 「メリーちゃん特製サンドイッチですよ~!それでは早速いただいちゃいましょう!」
 「「「いただきます。」」」
 
 「そういえばメリーに聞きたいことがあったんだ。」
 「なんです?」
 「倉庫に魔法職用の杖がいくつかあったんだ。それでなんだが、魔法職が杖を持つことのメリットがなんなのか気になってな。」
 「なるほどですね。確かに何も知らない人からすると杖って飾りに見えますよね。魔法使うやつはとりあえず杖もっとけみたいな。でも、ちゃんと意味があってですね、杖には使用者の魔力を安定させる効果があります。」
 「ということはつまり、魔法の発動を補助してくれるってことか。」
 「おおまかにはそういう認識で大丈夫です。ただ、もっと深いところまで言えば、杖には使う魔法の種類によって相性があったり魔法の補助効果に個体差があったりします。杖の値段の違いはそういった個体差の違いです。」
 「魔法にはそれぞれ、使う人によって得意不得意があるって本に書いてありました!」
 「なるほどなぁ。それじゃあ杖を選ぶ前にまずは、ヒヨリが得意な魔法の分野を見つけることから始めなきゃいけないわけだな。」
 とりあえずこれで当面の目標は決まったわけだな。
 「そういえばヒヨリちゃんってプリーストなんだっけ?」
 「はい。魔物は怖いっていう私の気持ちをアキトさんが尊重してくれました。」
 「アキトさんって優しいんですね♪」
 「まあな…」
 改めて感謝されると照れくさいなぁ。
 つい緩んでしまった頬を二人に見られないよう、サンドイッチにかじりついた。


 あれからさらに倉庫のなかを掃除し、ほどよい疲労を蓄えた俺は部屋であることを考えていた。

 メリーの話によると、この世界では個人の能力もスキルとして区分され、生活に役立てることが可能らしい。
 となると、生きていく上で身体的能力を上げることはとても重要ということだ。
 そこで今日から己の限界を押し上げるためにトレーニングを始めようと思う。
 そうだなぁ、とりあえずオーソドックスなトレーニングをしばらく続けて様子を見てみよう。
 そうして俺は現代技術によって退化してしまった身体能力を伸ばすために、ムキムキボディ計画を始動した。
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