愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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Grand finale

Grand finale「結婚は人生の墓場だと言う」「それなら、共に、同じ土に還るまで」③

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「――おお。かなり綺麗な場所だ」


 純白の大理石で作られたチャペルを見て、私は思わずそう言葉を漏らしてしまった。

 係員の指示で別室へと案内された後、しばし紅茶を飲んだりソファーでくつろいだりで時間を潰した後、私たちはまた係員の声掛けに従い、実際に式を執り行う礼拝堂へとやって来ていた。

 窓を隔てた祭壇の向こう側では、ちゃぷちゃぷと絶え間なく滝が流れており、心地の良い水音が心を落ち着かせる。木製のベンチが並んだ真っ白な部屋は荘厳さで溢れており、私は柄にもなく式場の景色に心を踊らせてしまった。

 前を歩く心春が、「凄いよね、由希」と私に声を掛ける。私は辺りを見回しながら、「……ああ」と恍惚に彼女の言葉に同意した。

 係員に案内され、参列者たちがベンチへと座って行く。私と心春も同じくバージンロードの脇に逸れ、木製のベンチに座って行く。


「――なんか、緊張するな……」


 私は通路と面した位置に座り、心春は「ね。慣れないよね」と私の言葉に頷いた。

 ベンチに座ってから、しばらくの時間が空いた。私はただじっと祭壇の十字架を見続け、よくわからない緊張感に、まだか、まだかと心の中で唱え続けていた。

 ――そして。


『お待たせ致しました。それでは、新郎様のご入場です!』


 チャペルにアナウンスが響く。私はそれを受けて気を引き締めると、体を出入口へと向け、これから現れるであろう新郎の存在を待った。

 ゆっくりと、扉が開かれる。厳かな雰囲気が場内に満ち、姿を現したのは――白いタキシードを着た新郎の、姫川真白ひめかわましろだった。

 2人は既に入籍済みで、婿入りして真白の苗字が変わったらしい。私は彼の姿が見えると同時に、他の参列者と同様に盛大に拍手を送った。


「よぉ、真白! 似合ってるぞ!」

「緊張し過ぎだろお前!」


 受付をしていた四郎という男と、真白の友達らしい面々が、油の切れたロボットのようにバージンロードを歩く彼をゲラゲラと笑い飛ばす。私は無駄に大騒ぎをする男子たちに苦笑してしまい、「男ってのは……」とぼそりと呟いた。

 真白がゆっくりと祭壇へ向かう。やがて祭壇前の段差に来ると、真白は尻を突き出すようなぎこちない動きでくるりと反転し、私たちはそのあまりにも奇妙な動きに思わず吹き出してしまった。

 真白が会場の笑いに目線をきょろきょろと動かす。私は心の中で、『いいから、落ち着け』とエールを送りながら、しかし、彼の慌てように笑いが止まらなかった。

 それから少しの間を空けて、『それでは、続きまして、新婦様のご入場です!』とアナウンスが鳴る。私は改めて礼拝堂の扉へと体を向けて、今から現れるを思いながら、ぐっと、意識を引き締めた。

 ――扉が、開く。黒の正装モーニングを着た、かなり身なりの整った初老の男と共に、パステルピンクの、童話のお姫様が着ていそうなドレスを纏った女性が現れた。

 ――ああ。詩子だ。私は、かわいくもあり、それでいてどこか奇異でもある、そんな派手なドレスを纏った彼女の姿に、そんな感想を抱いた。

 それにしても。結婚式だって言うのに、白のウエディングドレスじゃなくて、ピンクと黒のドレスを選ぶって。私は相変わらず自我の強い詩子の様子に、なぜだか心が温かくなって、ふわりと笑ってしまった。

 盛大な拍手が、彼女を迎える。私は詩子の姿に見惚れながら、彼女の式が良い物になるよう願い、誰よりも心を込めて拍手を送った。

 一歩。一歩。バージンロードを進む詩子は、緊張しているのか、恥ずかしがっているのか、終始はにかむような笑みであり。

 ふと。詩子は私に気付いたようで、私と彼女の視線が交錯した。私は詩子と目が合ったことに気付くと、横を通り過ぎる一瞬で、彼女に優しく笑みを向けて言う。


「――綺麗だよ、詩子」

「でしょ~?」


 私の言葉に、詩子は一際楽しそうに笑いながら、そう答えた。私はこの一瞬の時間で、私に反応を返してくれた詩子が嬉しくて、彼女に釣られて満面の笑みを浮かべてしまった。

 一歩、一歩。私の傍を離れて、詩子が真白の元へと行く。私はその背中を見送ると、やがて、父親の手から、詩子の腕が真白へと引き継がれていった。

 真白と詩子が並び、祭壇を上って行く。神父の前に立ち、まったくと言っていいほど背丈の違わない2人が、視線を交わす。真白と顔を突き合わせた詩子は、花嫁と言うにはあまりにも無邪気な様子で笑い、その姿はまるで子供のようだった。


「新郎、姫川真白。あなたはここにいる姫川詩子を、病める時も、健やかなる時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


 神父が誓いの言葉を読み上げる。真白はそれに対し、「誓います」と一言答えると、次いで神父は、詩子へと目を向け、同じく誓いの言葉を読み上げる。


「新婦、姫川詩子。あなたはここにいる姫川真白を、病める時も、健やかなる時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


 詩子はハッキリと、「誓います」と答えて、真白に笑いかけた。それを受けた神父は、「それではおふたりに、指輪の交換を行って頂きます」と声をかけた。

 詩子がそっと真白に左手を差し出し、真白はそれを受ける。そして真白は詩子へと指輪をはめると、今度は真白から詩子に左手を差し出し、詩子はそれを受け、薬指へ指輪をはめる。


「それでは、新婦のベールをお上げ頂き、永久の愛を込めて、誓いのキスを」


 神父が更に声をかけ、同時に真白が、詩子の顔にかかるベールを上げる。詩子と真白は互いに顔を見合わせると、途端に顔を赤くさせて、恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。


「ちょ……マジですんの?」

「そりゃあ……そう、でしょ」


 詩子と真白が互いに声を掛け合う。途端に会場が笑いに包まれ、私は肩を落としながら、「なにやってんだアイツら」と苦笑した。

 2人はしばらく、もじもじと私たちとお互いとに視線を交互に動かすと。やがて覚悟が決まったのか、お互いに深呼吸をすると、ゆっくりと顔を近づけ、

 互いの唇に、誓いのキスを重ね合わせた。
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