愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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友情編

第12話「女でも女の裸にはえっちぃと思うけど私はレズビアンではない。それはそれでこれはこれである」②

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 辺り一帯の時が止まったように、私の耳に音が入らなくなった。私はしばらく松田の顔を呆けて見て、やがてカチカチと時計の音が響くようになってから、私は小さく声を出した。


「………………………………は?」

「だから、天音さんってレズなんだよ。女の子の事が好きなの。え、結構有名だし、いつもいるからそう言うことなのかと思ってた。え、知らなかった――」

「おい」


 由希が机を叩いて松田に迫る。私は色々と事情が呑み込めなくて、ぽかんとその様子を眺めていた。


「お前、適当なこと言うんじゃねーよ。そんな、そんなわけねーだろ。お前ホントふざけんなよ」

「えっ、な、なに怒ってるの天音さん? て、ていうか、天音さん、私にそれ言うの違うくない。だって天音さん、中学の頃――」

「だから、そんなんじゃねーって言ってるだろ! お前マジで変なこと言うんじゃねーよ!」


 由希が突然松田に怒鳴った。私は尚現実が呑み込めず、騒ぎが大きくなっている中、まるで遠くでこれを見ているかのように辺りの静けさを感じていた。

 と。


「姫川?」


 私は後ろからなんか聞き覚えのある声を聞いた。

 振り向くと、河野がそこにいた。隣には見たことの無い太った男子がいて、私はそこまでを認識してからようやく、この現実へと立ち返ることができた。


「こ、河野? え、な、なにしにきたの?」

「いやだって天音さんが大声出してるから……」

「いや、ちょっ、待って。今別に、いいから」


 私が言うと同時、ガシャンと言う音が由希たちの方から聞こえてきた。私は驚いてそちらを見ると、由希は松田につかみかかって、今にも殴りそうな様子をかもしていた。


「つーかお前、なん、なんで私の中学の頃知ってんだよ」

「だって同じクラスだったじゃん。あれ、覚えてないの?」

「いや、そんなん、知らんけど。ていうか、お前、マジでふざけんな。いくらなんでも、適当なこと言い過ぎなんだよ」

「て……適当って、適当じゃないじゃん。だってあんた、私の友達の梨花に……」

「だから適当なこと言うんじゃねえって言ってんだよ!」


 叫ぶと同時、由希が松田を強く突き飛ばした。松田はふらふらと後ろへ下がり、そのまま足をつまずき尻もちを着いた。

 私はその瞬間に、あっと声を出すこともできなくなった。なにか、超えてはならない一線を、超えてしまったような気がして。


「っ――ッてぇな! なにすんだよ!」


 松田は立ち上がりながら由希に迫り、怒りに目を血走らせて大声をあげた。


「なんだよお前、いきなりキレて暴力振りやがって! そんなんだから梨花に振られたんだろうがっ!」

「あっ――ちが、お前、マジでいい加減に……」

「いい加減にしろって言いたいのはコッチだよ! ざっけんなよ、気持ちの悪い趣味してる癖によ! 大体そっちから先に暴力振るってきたんだろうが、どう考えてもお前が悪いだろ!」

「あ――」

「なんとか言えよこのクソ女!」


 松田が叫び、そして由希の髪に掴みかかった。髪を引っ張られて由希が「痛い痛い痛い!」と言いながらもがく、どうやら、これ以上の手出しができない様子だった。

 私はただ呆然と何もできずそれを眺めていた。すると途端、隣にいた河野が「やめろ!」と言って、横から松田を突き飛ばした。

 私は河野の取った行動に舌を巻いてしまった。まさか、この件について完全部外者なアイツが、あろう事か松田を突き飛ばすとは思わなかったからだ。


「いった……!」


 松田は転び、突然突き飛ばした河野をぎらりと睨んだ。途端、周りの様子も、ざわざわと河野に対する困惑が見て取れるモノになった。

 河野はその渦中にいて、「しまった」とでも言わんばかりにたじろいだ様子でその場に立ち尽くしていた。


「てめぇ、いきなり何すんだよ! 男子が女子に暴力振るうとか最低なんだけど!」

「そ、その点はごめん。いやでも、いくらなんでも見てられないよ! だって、あんなもみくちゃになってたら……」

「はぁ? それで私のこと突き飛ばしたってわけ? まじ意味わかんないんだけど。これ裁判したら勝てるよね?」


 河野は松田の言葉に喉を詰まらせ黙り込んでしまった。


「ホント、意味わかんないわ。やっぱアレかな、頭おかしい奴の味方する奴って、みんな頭おかしいのかな?」

「ぼ、僕がそんな感じなのは認めるけど、別に、天音さんはそうじゃないだろ」

「はぁ? 男より女好きになる女とかどう考えても頭おかしいだろ。病気だろ、病気」


 河野がぼそぼそと「もう精神疾患の項目から外れてるんだけど」と呟いた。それにまた松田が「はぁ? 何言ってんのお前?」声を上げる。私はもう、何をやっても、この場においては火に油であるかのような気がした。

 と、しばらくして。


「何やっているんだ君たち!」


 少し年老いた教師がやって来て、そう声を上げた。途端に周りにいた野次馬たちが「やべぇ、やべぇ」と言いながら散っていき、そして、教師はまず言い合いをしていた河野と松田に話しかけた。


「なにがあったんだ、一体」

「先生、こいつらに暴力振るわれたんだけど」

「はぁ? ……ちょ、ちょっと、君たち。後で私の所へ来なさい。いいな?」


 教師が言うと、松田は「意味わかんない」と愚痴を言い、河野は少し納得いかないような素振りを見せながらも、「わかりました」と返した。

 他方で、由希は一切、返事をしていなかった。ただ教師の話を聞くだけで、呆然と、その場に立ち尽くしていた。

 しばらくして。由希はふっと、私の方へ目を向けた。

 私は由希と目を合わせる。しかし私は、アイツに何を言えばいいのかわからず、ただ立ち尽くすのみで。

 やがて、由希は私から目を背けると、そのまま別の場所へと移動していった。

 教師が「あっ、君!」と由希を追う。私はそれでも、一歩も動き出せず。

 その後もただ、呆然と、独りで食事をして、この騒然とした昼休みを終えた。
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