愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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恋愛編

第10話「やっぱり男と女は違う」②

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『そう言えば、詩子、彼氏出来たらしいよ?』


 私はその言葉を聞いて、「えっ」と声を漏らした。

 高校生の頃。私は、周りから嫌われないために、自分の趣向と言うのを隠して生きていた。

 その影響もあってか、私の周りには女の友達がそれなりにはいた。詩子もその内の1人で、だけど、アイツは私にとって、特別な存在だった。

 当然、私はその言葉を聞いて愕然とした。だって、まさか詩子が誰かと付き合うとは思ってもいなかったからだ。

 自分でも気持ちが悪い自覚はあるけれど、アイツのことはよくよく見ていた。だからこそ、アイツにまさか、男の影があるとは思わなかった。

 一体誰と、なぜ付き合ったのだろうか。そんな思考と、何より、失恋と言う二文字の衝撃が私を襲って、私の頭は真っ白になってしまった。


『由希? どしたん?』

『あ、いや。ちょっと、ビックリでさ』


 私はそうやって、適当な返事をして、感情をごまかしていた。幸い、私の言葉は周囲にとっても共感できたようで、みんなが『ねー。意外だよね』と、うまく話が流れてくれた。

 その後、話の流れで一体誰と付き合ったのかは知ることができた。どうやら、普段からよく絡みのある、卓也という男だったらしい。

 納得はできた。だって、イケメンだったし、運動もできたし、テストの点数も結構良かった。ノリも良いし、爽やかだし。陽キャ女子筆頭の「恋人にしたいランキング一位」になるような、そんな憧れの枠だったのだし(私は一切そんな感情持たなかったが)。

 けど、詩子がまさか、そんな基準で相手を選ぶとは思わなかった。

 挙げ連ねた彼の美点は、全て「付き合う前からわかること」でしかない。ようは、表面的な物であって、アイツという人間性を証明しているわけじゃない。事実として、アイツは、自分がキモイと思うオタク男子にはハッキリと「キモイ」と言う人間だった(それがみんなの常識と化していたから、誰も彼の言葉が悪いとは思っていなかったようだが)。

 ソイツ個人の本質と言うのは、日常の、ふと、意識と言う物を外れるような、そんな一瞬の隙からうかがい知れる。だから私は、正直、詩子にこうと言いたかった。


『ソイツだけはやめておけ』
『人に平然と悪意をぶつける男だぞ。絶対に後悔する』
『そんな奴なんかよりも、私の方が――』


 ああ、だけど、言う訳にはいかなかった。

 だって、誰が誰と付き合おうが、ソイツの自由だからだ。相手がどれほどのクソ野郎と付き合っていようと、私に、それに口出しをする権利はない。それに、卓也もいくらなんでも女をヤリ捨てするような男ではなかったし。

 そうして一度目の失恋を味わった後。しかし、アイツはものの3ヵ月もしない間に、件の彼氏とは別れてしまった。

 曰く、相性が悪かった、と。私は心底ホッとした。なにせ、これで私にも、またチャンスが生まれたからだ。
 だけど、私はずっと、そのチャンスを放置していた。だからこそ私は、2度目の失恋を、することになったのだ。

 ――そうだ。覚悟を決めろ、天音由希。

 私は今日、自分の気持ちに、ケリを付ける。『私の方が先に』だとか、『私の方が見ていた』だとか、そんな理屈は、全て捨て置け。

 ――今日が、この恋心の死に時だ。私はそして、自分が住むアパートの部屋から、一歩、足を踏み出した。


◇ ◇ ◇ ◇


 月曜日。学校が終わり、部屋でごろごろとしていた私のLI〇Eに、由希から一報が来た。


『今日暇? 暇なら遊びに行こう』


 やけに突然だな、とは思いつつも、私は何も考えずに『うん、いいよ』と返事をした。そして、当然のように湧く疑問を由希へと投げる。


『それで、どこに行くの?』


 なんてことのない、ただの言葉だった。しかし、私がこの質問をしてから、由希は即座に既読を付けたかと思えば、しばらくの間、返事をすることはなかった。
 ――そして。やや、間が空いた後。由希は、『秘密』とだけ、メッセージを送ってきた。

 ――秘密。どういうことなのか、と、少し頭を悩ませた。

 カラオケに行くのならカラオケで良いし、ボーリングなりショッピングでも以下同文だ。それをわざわざ、もったいぶるように「秘密」とするのは、一体、どういうことなのだろう。

 ふと。私の頭の中に、「まさか」と言う声が響いた。

 ――いや。そんなはずはない。だって、いくらなんでも突然過ぎる。
 考えすぎだ。特に深い意味なんてないはずだ。私は心の中で、そう何度も声を出し、自分の中に生まれた疑念を押さえつけた。


◇ ◇ ◇ ◇


 待ち合わせはいつものコンビニだった。私はそこで由希と落ち会い、彼女の顔を見るなりパッと表情を明るくした。


「由希! 来たよ~!」


 手をひらひらとさせると、由希は微笑みながら「うん」と返した。

 私は彼女のその表情に、些かの違和感を覚えた。

 なんというか、ハッキリとは口に出せなかったが。とにかく、何か、どこか重みのある顔つきをしていた。私の胸の内が、夜風にさざめくようにざわついた。


「――由希?」


 私は呟き、呆然としている由希の顔を覗き込む。しかし由希は、少し首を左右に振ったかと思えば、「ううん、なんでもない」と言って、にこりと微笑んだ。


「行こ、詩子」


 由希がそうと言って私に手を差し出す。私は「う、うん」と言って、彼女のその手をゆっくりと取った。


「……ねえ、由希」

「ん?」

「……その、遊びに行くだけよね?」

「ん、うん。そう、だけど」

「――どこに行くの?」


 私が尋ねると、由希は動きを止め、しばらく黙した。しかしかと思えば、私の目を真っ直ぐに見つめて、そして、握っている私の手に、より一層力を込めた。


「駅前」

「……駅前、って……今、クリスマスの飾りつけしてる……」

「まあ、たまにはさ、そういう所行くのもいいでしょ。ほら、行こう」


 由希が私の手を引く。私は力強いそれに歩いてしまう。

 そうして、結局、私は彼女に逆らうわけにもいかず、流されるままに、暗くなってきた道を歩いた。
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