愛と友情は紙一重!~オタサーの姫と非モテ童貞陰キャオタクがパコパコするまでの物語~

オニオン太郎

文字の大きさ
54 / 117
恋愛編

第10話「やっぱり男と女は違う」②

しおりを挟む
『そう言えば、詩子、彼氏出来たらしいよ?』


 私はその言葉を聞いて、「えっ」と声を漏らした。

 高校生の頃。私は、周りから嫌われないために、自分の趣向と言うのを隠して生きていた。

 その影響もあってか、私の周りには女の友達がそれなりにはいた。詩子もその内の1人で、だけど、アイツは私にとって、特別な存在だった。

 当然、私はその言葉を聞いて愕然とした。だって、まさか詩子が誰かと付き合うとは思ってもいなかったからだ。

 自分でも気持ちが悪い自覚はあるけれど、アイツのことはよくよく見ていた。だからこそ、アイツにまさか、男の影があるとは思わなかった。

 一体誰と、なぜ付き合ったのだろうか。そんな思考と、何より、失恋と言う二文字の衝撃が私を襲って、私の頭は真っ白になってしまった。


『由希? どしたん?』

『あ、いや。ちょっと、ビックリでさ』


 私はそうやって、適当な返事をして、感情をごまかしていた。幸い、私の言葉は周囲にとっても共感できたようで、みんなが『ねー。意外だよね』と、うまく話が流れてくれた。

 その後、話の流れで一体誰と付き合ったのかは知ることができた。どうやら、普段からよく絡みのある、卓也という男だったらしい。

 納得はできた。だって、イケメンだったし、運動もできたし、テストの点数も結構良かった。ノリも良いし、爽やかだし。陽キャ女子筆頭の「恋人にしたいランキング一位」になるような、そんな憧れの枠だったのだし(私は一切そんな感情持たなかったが)。

 けど、詩子がまさか、そんな基準で相手を選ぶとは思わなかった。

 挙げ連ねた彼の美点は、全て「付き合う前からわかること」でしかない。ようは、表面的な物であって、アイツという人間性を証明しているわけじゃない。事実として、アイツは、自分がキモイと思うオタク男子にはハッキリと「キモイ」と言う人間だった(それがみんなの常識と化していたから、誰も彼の言葉が悪いとは思っていなかったようだが)。

 ソイツ個人の本質と言うのは、日常の、ふと、意識と言う物を外れるような、そんな一瞬の隙からうかがい知れる。だから私は、正直、詩子にこうと言いたかった。


『ソイツだけはやめておけ』
『人に平然と悪意をぶつける男だぞ。絶対に後悔する』
『そんな奴なんかよりも、私の方が――』


 ああ、だけど、言う訳にはいかなかった。

 だって、誰が誰と付き合おうが、ソイツの自由だからだ。相手がどれほどのクソ野郎と付き合っていようと、私に、それに口出しをする権利はない。それに、卓也もいくらなんでも女をヤリ捨てするような男ではなかったし。

 そうして一度目の失恋を味わった後。しかし、アイツはものの3ヵ月もしない間に、件の彼氏とは別れてしまった。

 曰く、相性が悪かった、と。私は心底ホッとした。なにせ、これで私にも、またチャンスが生まれたからだ。
 だけど、私はずっと、そのチャンスを放置していた。だからこそ私は、2度目の失恋を、することになったのだ。

 ――そうだ。覚悟を決めろ、天音由希。

 私は今日、自分の気持ちに、ケリを付ける。『私の方が先に』だとか、『私の方が見ていた』だとか、そんな理屈は、全て捨て置け。

 ――今日が、この恋心の死に時だ。私はそして、自分が住むアパートの部屋から、一歩、足を踏み出した。


◇ ◇ ◇ ◇


 月曜日。学校が終わり、部屋でごろごろとしていた私のLI〇Eに、由希から一報が来た。


『今日暇? 暇なら遊びに行こう』


 やけに突然だな、とは思いつつも、私は何も考えずに『うん、いいよ』と返事をした。そして、当然のように湧く疑問を由希へと投げる。


『それで、どこに行くの?』


 なんてことのない、ただの言葉だった。しかし、私がこの質問をしてから、由希は即座に既読を付けたかと思えば、しばらくの間、返事をすることはなかった。
 ――そして。やや、間が空いた後。由希は、『秘密』とだけ、メッセージを送ってきた。

 ――秘密。どういうことなのか、と、少し頭を悩ませた。

 カラオケに行くのならカラオケで良いし、ボーリングなりショッピングでも以下同文だ。それをわざわざ、もったいぶるように「秘密」とするのは、一体、どういうことなのだろう。

 ふと。私の頭の中に、「まさか」と言う声が響いた。

 ――いや。そんなはずはない。だって、いくらなんでも突然過ぎる。
 考えすぎだ。特に深い意味なんてないはずだ。私は心の中で、そう何度も声を出し、自分の中に生まれた疑念を押さえつけた。


◇ ◇ ◇ ◇


 待ち合わせはいつものコンビニだった。私はそこで由希と落ち会い、彼女の顔を見るなりパッと表情を明るくした。


「由希! 来たよ~!」


 手をひらひらとさせると、由希は微笑みながら「うん」と返した。

 私は彼女のその表情に、些かの違和感を覚えた。

 なんというか、ハッキリとは口に出せなかったが。とにかく、何か、どこか重みのある顔つきをしていた。私の胸の内が、夜風にさざめくようにざわついた。


「――由希?」


 私は呟き、呆然としている由希の顔を覗き込む。しかし由希は、少し首を左右に振ったかと思えば、「ううん、なんでもない」と言って、にこりと微笑んだ。


「行こ、詩子」


 由希がそうと言って私に手を差し出す。私は「う、うん」と言って、彼女のその手をゆっくりと取った。


「……ねえ、由希」

「ん?」

「……その、遊びに行くだけよね?」

「ん、うん。そう、だけど」

「――どこに行くの?」


 私が尋ねると、由希は動きを止め、しばらく黙した。しかしかと思えば、私の目を真っ直ぐに見つめて、そして、握っている私の手に、より一層力を込めた。


「駅前」

「……駅前、って……今、クリスマスの飾りつけしてる……」

「まあ、たまにはさ、そういう所行くのもいいでしょ。ほら、行こう」


 由希が私の手を引く。私は力強いそれに歩いてしまう。

 そうして、結局、私は彼女に逆らうわけにもいかず、流されるままに、暗くなってきた道を歩いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...