73 / 151
恋愛編
第17話「そんな恋もアリだと思う」②
しおりを挟む
「……そう言うことだったのね。まあ、話を聞いて大体分かったわ」
優花里は青山の隣に座り、納得したように頷いた。青山と私は、とてつもない緊張感に背筋をピンと張り詰めさせ、方や私の隣の玲菜は、呑気にドリンクバーで取ってきたカルピスをストローでジュージューと吸っていた。
「て言うか、四郎、アンタあの河野と友達だったの?」
「あのってなんだよ」
「……ごめん。え、でも、それなら教えてほしかった」
「まあ、聞かれなかったし」
「ん。まあ、わかった。……とりあえずさ、」
優花里は言いながら、私と青山、両方へと視線を交互させた。
「とりま、話聞いてて思ったこと言うね。
まず、四郎。アンタ、ちょっと酷い」
「うっ……」
「人の色恋沙汰に無闇に突っ込んじゃダメ、って言ってたけど、それ完全にブーメランだからね。あと、知らない男に説教される女の子の気持ちも考えてあげた方がいいよ」
「……それは、うん。俺が悪いな……」
青山は優花里の物言いにたじたじになっていた。どうやら、彼氏彼女とは言え、立場は優花里の方が上のようだ。
「それと、詩子」
と、優花里が今度は、私に対してピシャリと声をかけた。私は背筋を伸ばして、「はいっ」と妙に裏返った声を出す。
「アンタの気持ちはまあわかるけどね。でも、ぶっちゃけ、私は四郎の側に立つ。別に、彼氏だからとかじゃなくてね」
「あう……」
「あのね、付き合う気もないのに、彼女面しちゃダメ。それされると、男の人って、どうすればいいかわかんなくなるからさ。複雑な女心、って言うのはわかるけど。女の子だって、男心理解してあげないと。一方的な理解を求めたら、そんな関係、どんなモノでも上手くいかないよ?」
「……ごめんなさい」
「謝るのなら、私じゃなくて河野と告った子ね」
優花里はそうと言って首を左右へ振ると、「それで、どうするの?」と、私に質問をしてきた。
「……え?」
「ん。だから、河野とのこと。どうするつもりなの? そこだけは、ハッキリさせといた方がいいって思うからさ」
私は優花里に詰められ、口を閉じて、項垂れてしまう。そうして、しばらく誰を見るわけでもなく視線をあちらこちらへと動かして、私は、消え入りそうな声で、優花里の言葉に受け答えた。
「……わかんない……」
私が呟くのを聞き、青山が大きくため息を吐く。と、隣の優花里が、不快そうな表情をして青山の脇を肘で小突く。青山はビクリとして、「すまん……」と小さく頭を下げた。
「……ねえ、詩子」
と、優花里が改まった態度で、私の方へと体を前のめりにさせ話しかけた。私はやや緊張感を感じて、恐る恐ると言う感じで、優花里の目を真っ直ぐに見つめる。
「別にさ、私はアンタの選択に、どうもこうも言う気はないから。このままがいいって言うんなら、それもひとつの答えだと思うし。言うて、他人の恋だからね」
「あう……」
「でもね、詩子。それで、後悔しない?」
優花里がそうと言うのを聞き、私は一瞬、目を見開いた。
――後悔……。私は心の中で呟いて、少し、考える。
付き合わなかったら、どうなるのだろうか。彼はいつか、他の女と付き合ってしまって、私のところからいなくなるのだろうか。
付き合ったとしたら、どうなるのだろうか……。色々と思考を巡らせて、私は、どの選択をしても、絶対に、後悔をしてしまうような気がした。
「……どう、しよう。本当、わかんないよ。だって、どうやっても、私、後悔しかしない気がする。だとしたら、一体、どっちを選べばいいんだろう……」
「…………」
「うう……本当、どうすればいいんだよ……。本当、どうすれば……」
私がぐちぐちと呟いていると。隣にいた玲菜が、「なんかさぁ」と、突然口を開いた。
「あー、ちょい思ったことあるからさぁ。言っていい?」
「……うん」
「なんかさぁ。詩子、らしくないよね」
玲菜はスマホを弄りながら、私のどっちつかずな態度に向かって、そうと表現した。
「私さー、詩子って、自分のことわかってて、そんで、周りとかどーでもいいから、自分らしく生きようって、そんな感じの所が好きだったんよ。でも、なんて言うか……今の詩子って、振り回されてる感じがする。自分の気持ちに」
――! 私は、玲菜の言葉を聞き、ハッと、彼女の方へと目を向けた。
「ていうかさ、逆に私、わかんないんだけど。だってさ、好きなら付き合えばいいし、そうじゃないなら付き合わなきゃいいだけじゃん。なんで詩子、好きなのに、付き合いたくないって思ってるの?」
私はしばし呆然として、玲菜の言葉をゆっくりと処理する。
そうして、考え込んで――私は紡ぎ合わせるように、言葉を一言一言発した。
「……付き合っちゃうと…………今の関係が、崩れちゃう」
「うん?」
「私……私さ、自分でも……わかってるの。恋愛、向かない性格だって。LI○Eのプロフ揃えるとか、二人のイニシャルのキーホルダー買うとか、そう言うの全部、気持ち悪くて。なんて言うか、結局、私って、彼氏がいても、自分のこと優先しちゃう、クソみたいな女だって。
だから、きっと、アイツと付き合ったら、私、嫌になる。そうしたら、もう、アイツとの関係、元に戻せなくなる。……それに、アイツだって、私と近くなったら、きっと私に幻滅する。だから、無理。……そんなくらいなら、最初から付き合わない方がいいから……」
私が自分の気持ちを語ると。玲菜も、優花里も、そして、青山も、「あー」と言って、ようやく溜飲が下がったと言う風に頷いた。
「……姫川さんさ、」
と、青山が、私の気持ちに意見するように口火を切った。
「なんて言うか、ものすごい勘違いしている」
「……勘違い?」
「うん。あのさ、別に、恋愛ってさ、そう言うことをする関係じゃないんだよ」
「……そりゃ、そんなのは……」
「わかってない。姫川さんは、自分の中にある『恋愛』っていうのに縛られてる。それってさ、確かに恋愛っぽいけどさ、でも、別にそれだけが付き合い方じゃないよ」
私は青山の話を聞き、思い当たる節があり、目を一瞬だけ見開いた。
「例えば、俺と優花里は、別に、LI○Eのプロフとか揃えてない。イ○スタにも、そんなにあげてない。そう言うの、あんまり好きじゃなくてさ。そう言う感じでさ、別に、恋愛って言っても、色々あると思うんだよ」
青山がそう言うと、隣の優花里が「うん」と言って、彼の言葉を引き継ぐように私に語り始めた。
「でもね、詩子。絶対、相手が好きなら、恋って関係には発展させた方がいいと思う。だって、考えてみ? 将来さ、例えば、アイツに恋人が出来たとしたら、アンタ、アイツとの関係、切らざるを得なくなるよ?」
「――」
「男と女じゃ、住む世界が違う。少なくとも私は、四郎が女友達と2人で会ってたらイヤ。それで、そんなの、他の人も同じでしょ」
「……」
「あと、河野に恋人がいなくても、やっぱり色々あって離別するのがオチだよ。特に、アンタとアイツは男と女なわけだから、余計関係も疎遠になりやすい。無理だと思うよ、一緒に居続けるの。
だから、友達じゃダメ。大切なら、掴んで、離さないようにしないと。付き合うって言うのは、相手が自分のモノなんだって周りにアピールすることなの。それもしてないのに、他の人に取られたって、そんなの文句言えないよ」
優花里の言葉は全てにおいて正論だった。私は突きつけられていく現実に、しかし、不思議なことに、暗い気持ちにはさせられずに。
「てかさ、詩子。結局、詩子は、どういう関係になりたいの?」
優花里が話を続ける。私は少しだけ考えてから、自分の中の思いをゆっくりと整理し。
「……アイツとは、正直、今までみたいな関係でいたい。恋人になりたくないってわけじゃなくて、なんて言うか、恋って言う気の使い方をしたくない。ドキドキする恋愛とか、別に良くて、今までみたいに、ラーメン食いに行ったり、くっだらない下ネタで笑ってたり、あと、ゲームしたり。そんな感じで、これからもずっといたい」
「なるほどねー。やっぱ、友達って感じだね。
ま、でも、そんな恋もアリだと思うよ? なんだかんだ、バカみたいなことで笑っていられる奴らが一番幸せだと思うし」
優花里はそう言ってにへらと笑った。なんとも言えない表情だったが、私の意見を、肯定的に受け入れていることだけはわかった。
「――あ、てか、わかったわ」
と、青山がハッと何かに気付いたように声をあげた。
「なんで真白が、アンタとの気持ち、理解してなかったか。
アイツさ、アンタに合わせてたんだよ。ほら、アイツ、察しがいいだろ? だからさ、姫川さんのそう言う気持ちに、アイツなりに応えていたんじゃないの、って」
私は青山の言葉を聞き、「あっ、」と呟いた。
――そうなのかもしれない。一瞬、そんな気持ちが頭をよぎったが。しかし、実際のところ、そんなのは、私にとって都合のいい解釈でしかない。
アイツの気持ちは正直わからない。だからこれも、ただの空論でしかない。だけど、大切なのは、きっと、そんなところじゃない。
「姫川さん。真白は結構、人に尽くすタイプだよ。アイツは誰にでも優しいから。だから、きっとアンタの気持ちも理解してくれると思うよ?」
そう。アイツは間違いなく、私の気持ちを理解してくれる。
アイツは下手に私を振り回さない。隣に一緒にいてくれて、並んで歩いてくれる。そこだけは、間違いなく、確信を持って言えることだった。
私は席に手を着き立ち上がる。そして、机に座る3人に向けて言い放った。
「――ごめん、みんな。ありがとう。私、アイツに告ってくるよ」
私の言葉を聞き、優花里と玲菜が嬉しそうに頷く。青山はため息を吐いて、ぼそりと「やっとか」と、緊張の色を解いていた。
「じゃあ、詩子。もう、今から行くの?」
優花里が私に尋ねる。私は一度目を閉じ、そして、ゆっくりと深呼吸をしてから、「いや、」と返事をする。
「いや行かんのかい!」
「ごめん。本当は、さっさとそうしたいんだけど。……でも、私、まだやることがある。それ全部やらないと、アイツの前に、納得して立てない」
私は言いつつ、スマートフォンを取り出す。そして、画面を操作して、ある人物にメッセージを送ってから、私は玲菜と優花里に目を向ける。
「玲菜、優花里。……ちょっと、お願いがあるんだけど」
私が言うのを聞き、2人は「?」と首を傾げた。
優花里は青山の隣に座り、納得したように頷いた。青山と私は、とてつもない緊張感に背筋をピンと張り詰めさせ、方や私の隣の玲菜は、呑気にドリンクバーで取ってきたカルピスをストローでジュージューと吸っていた。
「て言うか、四郎、アンタあの河野と友達だったの?」
「あのってなんだよ」
「……ごめん。え、でも、それなら教えてほしかった」
「まあ、聞かれなかったし」
「ん。まあ、わかった。……とりあえずさ、」
優花里は言いながら、私と青山、両方へと視線を交互させた。
「とりま、話聞いてて思ったこと言うね。
まず、四郎。アンタ、ちょっと酷い」
「うっ……」
「人の色恋沙汰に無闇に突っ込んじゃダメ、って言ってたけど、それ完全にブーメランだからね。あと、知らない男に説教される女の子の気持ちも考えてあげた方がいいよ」
「……それは、うん。俺が悪いな……」
青山は優花里の物言いにたじたじになっていた。どうやら、彼氏彼女とは言え、立場は優花里の方が上のようだ。
「それと、詩子」
と、優花里が今度は、私に対してピシャリと声をかけた。私は背筋を伸ばして、「はいっ」と妙に裏返った声を出す。
「アンタの気持ちはまあわかるけどね。でも、ぶっちゃけ、私は四郎の側に立つ。別に、彼氏だからとかじゃなくてね」
「あう……」
「あのね、付き合う気もないのに、彼女面しちゃダメ。それされると、男の人って、どうすればいいかわかんなくなるからさ。複雑な女心、って言うのはわかるけど。女の子だって、男心理解してあげないと。一方的な理解を求めたら、そんな関係、どんなモノでも上手くいかないよ?」
「……ごめんなさい」
「謝るのなら、私じゃなくて河野と告った子ね」
優花里はそうと言って首を左右へ振ると、「それで、どうするの?」と、私に質問をしてきた。
「……え?」
「ん。だから、河野とのこと。どうするつもりなの? そこだけは、ハッキリさせといた方がいいって思うからさ」
私は優花里に詰められ、口を閉じて、項垂れてしまう。そうして、しばらく誰を見るわけでもなく視線をあちらこちらへと動かして、私は、消え入りそうな声で、優花里の言葉に受け答えた。
「……わかんない……」
私が呟くのを聞き、青山が大きくため息を吐く。と、隣の優花里が、不快そうな表情をして青山の脇を肘で小突く。青山はビクリとして、「すまん……」と小さく頭を下げた。
「……ねえ、詩子」
と、優花里が改まった態度で、私の方へと体を前のめりにさせ話しかけた。私はやや緊張感を感じて、恐る恐ると言う感じで、優花里の目を真っ直ぐに見つめる。
「別にさ、私はアンタの選択に、どうもこうも言う気はないから。このままがいいって言うんなら、それもひとつの答えだと思うし。言うて、他人の恋だからね」
「あう……」
「でもね、詩子。それで、後悔しない?」
優花里がそうと言うのを聞き、私は一瞬、目を見開いた。
――後悔……。私は心の中で呟いて、少し、考える。
付き合わなかったら、どうなるのだろうか。彼はいつか、他の女と付き合ってしまって、私のところからいなくなるのだろうか。
付き合ったとしたら、どうなるのだろうか……。色々と思考を巡らせて、私は、どの選択をしても、絶対に、後悔をしてしまうような気がした。
「……どう、しよう。本当、わかんないよ。だって、どうやっても、私、後悔しかしない気がする。だとしたら、一体、どっちを選べばいいんだろう……」
「…………」
「うう……本当、どうすればいいんだよ……。本当、どうすれば……」
私がぐちぐちと呟いていると。隣にいた玲菜が、「なんかさぁ」と、突然口を開いた。
「あー、ちょい思ったことあるからさぁ。言っていい?」
「……うん」
「なんかさぁ。詩子、らしくないよね」
玲菜はスマホを弄りながら、私のどっちつかずな態度に向かって、そうと表現した。
「私さー、詩子って、自分のことわかってて、そんで、周りとかどーでもいいから、自分らしく生きようって、そんな感じの所が好きだったんよ。でも、なんて言うか……今の詩子って、振り回されてる感じがする。自分の気持ちに」
――! 私は、玲菜の言葉を聞き、ハッと、彼女の方へと目を向けた。
「ていうかさ、逆に私、わかんないんだけど。だってさ、好きなら付き合えばいいし、そうじゃないなら付き合わなきゃいいだけじゃん。なんで詩子、好きなのに、付き合いたくないって思ってるの?」
私はしばし呆然として、玲菜の言葉をゆっくりと処理する。
そうして、考え込んで――私は紡ぎ合わせるように、言葉を一言一言発した。
「……付き合っちゃうと…………今の関係が、崩れちゃう」
「うん?」
「私……私さ、自分でも……わかってるの。恋愛、向かない性格だって。LI○Eのプロフ揃えるとか、二人のイニシャルのキーホルダー買うとか、そう言うの全部、気持ち悪くて。なんて言うか、結局、私って、彼氏がいても、自分のこと優先しちゃう、クソみたいな女だって。
だから、きっと、アイツと付き合ったら、私、嫌になる。そうしたら、もう、アイツとの関係、元に戻せなくなる。……それに、アイツだって、私と近くなったら、きっと私に幻滅する。だから、無理。……そんなくらいなら、最初から付き合わない方がいいから……」
私が自分の気持ちを語ると。玲菜も、優花里も、そして、青山も、「あー」と言って、ようやく溜飲が下がったと言う風に頷いた。
「……姫川さんさ、」
と、青山が、私の気持ちに意見するように口火を切った。
「なんて言うか、ものすごい勘違いしている」
「……勘違い?」
「うん。あのさ、別に、恋愛ってさ、そう言うことをする関係じゃないんだよ」
「……そりゃ、そんなのは……」
「わかってない。姫川さんは、自分の中にある『恋愛』っていうのに縛られてる。それってさ、確かに恋愛っぽいけどさ、でも、別にそれだけが付き合い方じゃないよ」
私は青山の話を聞き、思い当たる節があり、目を一瞬だけ見開いた。
「例えば、俺と優花里は、別に、LI○Eのプロフとか揃えてない。イ○スタにも、そんなにあげてない。そう言うの、あんまり好きじゃなくてさ。そう言う感じでさ、別に、恋愛って言っても、色々あると思うんだよ」
青山がそう言うと、隣の優花里が「うん」と言って、彼の言葉を引き継ぐように私に語り始めた。
「でもね、詩子。絶対、相手が好きなら、恋って関係には発展させた方がいいと思う。だって、考えてみ? 将来さ、例えば、アイツに恋人が出来たとしたら、アンタ、アイツとの関係、切らざるを得なくなるよ?」
「――」
「男と女じゃ、住む世界が違う。少なくとも私は、四郎が女友達と2人で会ってたらイヤ。それで、そんなの、他の人も同じでしょ」
「……」
「あと、河野に恋人がいなくても、やっぱり色々あって離別するのがオチだよ。特に、アンタとアイツは男と女なわけだから、余計関係も疎遠になりやすい。無理だと思うよ、一緒に居続けるの。
だから、友達じゃダメ。大切なら、掴んで、離さないようにしないと。付き合うって言うのは、相手が自分のモノなんだって周りにアピールすることなの。それもしてないのに、他の人に取られたって、そんなの文句言えないよ」
優花里の言葉は全てにおいて正論だった。私は突きつけられていく現実に、しかし、不思議なことに、暗い気持ちにはさせられずに。
「てかさ、詩子。結局、詩子は、どういう関係になりたいの?」
優花里が話を続ける。私は少しだけ考えてから、自分の中の思いをゆっくりと整理し。
「……アイツとは、正直、今までみたいな関係でいたい。恋人になりたくないってわけじゃなくて、なんて言うか、恋って言う気の使い方をしたくない。ドキドキする恋愛とか、別に良くて、今までみたいに、ラーメン食いに行ったり、くっだらない下ネタで笑ってたり、あと、ゲームしたり。そんな感じで、これからもずっといたい」
「なるほどねー。やっぱ、友達って感じだね。
ま、でも、そんな恋もアリだと思うよ? なんだかんだ、バカみたいなことで笑っていられる奴らが一番幸せだと思うし」
優花里はそう言ってにへらと笑った。なんとも言えない表情だったが、私の意見を、肯定的に受け入れていることだけはわかった。
「――あ、てか、わかったわ」
と、青山がハッと何かに気付いたように声をあげた。
「なんで真白が、アンタとの気持ち、理解してなかったか。
アイツさ、アンタに合わせてたんだよ。ほら、アイツ、察しがいいだろ? だからさ、姫川さんのそう言う気持ちに、アイツなりに応えていたんじゃないの、って」
私は青山の言葉を聞き、「あっ、」と呟いた。
――そうなのかもしれない。一瞬、そんな気持ちが頭をよぎったが。しかし、実際のところ、そんなのは、私にとって都合のいい解釈でしかない。
アイツの気持ちは正直わからない。だからこれも、ただの空論でしかない。だけど、大切なのは、きっと、そんなところじゃない。
「姫川さん。真白は結構、人に尽くすタイプだよ。アイツは誰にでも優しいから。だから、きっとアンタの気持ちも理解してくれると思うよ?」
そう。アイツは間違いなく、私の気持ちを理解してくれる。
アイツは下手に私を振り回さない。隣に一緒にいてくれて、並んで歩いてくれる。そこだけは、間違いなく、確信を持って言えることだった。
私は席に手を着き立ち上がる。そして、机に座る3人に向けて言い放った。
「――ごめん、みんな。ありがとう。私、アイツに告ってくるよ」
私の言葉を聞き、優花里と玲菜が嬉しそうに頷く。青山はため息を吐いて、ぼそりと「やっとか」と、緊張の色を解いていた。
「じゃあ、詩子。もう、今から行くの?」
優花里が私に尋ねる。私は一度目を閉じ、そして、ゆっくりと深呼吸をしてから、「いや、」と返事をする。
「いや行かんのかい!」
「ごめん。本当は、さっさとそうしたいんだけど。……でも、私、まだやることがある。それ全部やらないと、アイツの前に、納得して立てない」
私は言いつつ、スマートフォンを取り出す。そして、画面を操作して、ある人物にメッセージを送ってから、私は玲菜と優花里に目を向ける。
「玲菜、優花里。……ちょっと、お願いがあるんだけど」
私が言うのを聞き、2人は「?」と首を傾げた。
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる