愛と友情は紙一重!|キュンとしないのになぜか尊い、陰キャ同士の捻くれた純愛ヒューマンドラマ

オニオン太郎

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恋愛編

第17話「そんな恋もアリだと思う」②

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「……そう言うことだったのね。まあ、話を聞いて大体分かったわ」


 優花里は青山の隣に座り、納得したように頷いた。青山と私は、とてつもない緊張感に背筋をピンと張り詰めさせ、方や私の隣の玲菜は、呑気にドリンクバーで取ってきたカルピスをストローでジュージューと吸っていた。


「て言うか、四郎、アンタあの河野と友達だったの?」

「あのってなんだよ」

「……ごめん。え、でも、それなら教えてほしかった」

「まあ、聞かれなかったし」

「ん。まあ、わかった。……とりあえずさ、」


 優花里は言いながら、私と青山、両方へと視線を交互させた。


「とりま、話聞いてて思ったこと言うね。
 まず、四郎。アンタ、ちょっと酷い」

「うっ……」

「人の色恋沙汰に無闇に突っ込んじゃダメ、って言ってたけど、それ完全にブーメランだからね。あと、知らない男に説教される女の子の気持ちも考えてあげた方がいいよ」

「……それは、うん。俺が悪いな……」


 青山は優花里の物言いにたじたじになっていた。どうやら、彼氏彼女とは言え、立場は優花里の方が上のようだ。


「それと、詩子」


 と、優花里が今度は、私に対してピシャリと声をかけた。私は背筋を伸ばして、「はいっ」と妙に裏返った声を出す。


「アンタの気持ちはまあわかるけどね。でも、ぶっちゃけ、私は四郎の側に立つ。別に、彼氏だからとかじゃなくてね」

「あう……」

「あのね、付き合う気もないのに、彼女面しちゃダメ。それされると、男の人って、どうすればいいかわかんなくなるからさ。複雑な女心、って言うのはわかるけど。女の子だって、男心理解してあげないと。一方的な理解を求めたら、そんな関係、どんなモノでも上手くいかないよ?」

「……ごめんなさい」

「謝るのなら、私じゃなくて河野と告った子ね」


 優花里はそうと言って首を左右へ振ると、「それで、どうするの?」と、私に質問をしてきた。


「……え?」

「ん。だから、河野とのこと。どうするつもりなの? そこだけは、ハッキリさせといた方がいいって思うからさ」


 私は優花里に詰められ、口を閉じて、項垂れてしまう。そうして、しばらく誰を見るわけでもなく視線をあちらこちらへと動かして、私は、消え入りそうな声で、優花里の言葉に受け答えた。


「……わかんない……」


 私が呟くのを聞き、青山が大きくため息を吐く。と、隣の優花里が、不快そうな表情をして青山の脇を肘で小突く。青山はビクリとして、「すまん……」と小さく頭を下げた。


「……ねえ、詩子」


 と、優花里が改まった態度で、私の方へと体を前のめりにさせ話しかけた。私はやや緊張感を感じて、恐る恐ると言う感じで、優花里の目を真っ直ぐに見つめる。


「別にさ、私はアンタの選択に、どうもこうも言う気はないから。このままがいいって言うんなら、それもひとつの答えだと思うし。言うて、他人の恋だからね」

「あう……」

「でもね、詩子。それで、後悔しない?」


 優花里がそうと言うのを聞き、私は一瞬、目を見開いた。

 ――後悔……。私は心の中で呟いて、少し、考える。

 付き合わなかったら、どうなるのだろうか。彼はいつか、他の女と付き合ってしまって、私のところからいなくなるのだろうか。

 付き合ったとしたら、どうなるのだろうか……。色々と思考を巡らせて、私は、どの選択をしても、絶対に、後悔をしてしまうような気がした。


「……どう、しよう。本当、わかんないよ。だって、どうやっても、私、後悔しかしない気がする。だとしたら、一体、どっちを選べばいいんだろう……」

「…………」

「うう……本当、どうすればいいんだよ……。本当、どうすれば……」


 私がぐちぐちと呟いていると。隣にいた玲菜が、「なんかさぁ」と、突然口を開いた。


「あー、ちょい思ったことあるからさぁ。言っていい?」

「……うん」

「なんかさぁ。詩子、らしくないよね」


 玲菜はスマホを弄りながら、私のどっちつかずな態度に向かって、そうと表現した。


「私さー、詩子って、自分のことわかってて、そんで、周りとかどーでもいいから、自分らしく生きようって、そんな感じの所が好きだったんよ。でも、なんて言うか……今の詩子って、振り回されてる感じがする。自分の気持ちに」


 ――! 私は、玲菜の言葉を聞き、ハッと、彼女の方へと目を向けた。


「ていうかさ、逆に私、わかんないんだけど。だってさ、好きなら付き合えばいいし、そうじゃないなら付き合わなきゃいいだけじゃん。なんで詩子、好きなのに、付き合いたくないって思ってるの?」


 私はしばし呆然として、玲菜の言葉をゆっくりと処理する。

 そうして、考え込んで――私は紡ぎ合わせるように、言葉を一言一言発した。


「……付き合っちゃうと…………今の関係が、崩れちゃう」

「うん?」

「私……私さ、自分でも……わかってるの。恋愛、向かない性格だって。LI○Eのプロフ揃えるとか、二人のイニシャルのキーホルダー買うとか、そう言うの全部、気持ち悪くて。なんて言うか、結局、私って、彼氏がいても、自分のこと優先しちゃう、クソみたいな女だって。
 だから、きっと、アイツと付き合ったら、私、嫌になる。そうしたら、もう、アイツとの関係、元に戻せなくなる。……それに、アイツだって、私と近くなったら、きっと私に幻滅する。だから、無理。……そんなくらいなら、最初から付き合わない方がいいから……」


 私が自分の気持ちを語ると。玲菜も、優花里も、そして、青山も、「あー」と言って、ようやく溜飲が下がったと言う風に頷いた。


「……姫川さんさ、」


 と、青山が、私の気持ちに意見するように口火を切った。


「なんて言うか、ものすごい勘違いしている」

「……勘違い?」

「うん。あのさ、別に、恋愛ってさ、そう言うことをする関係じゃないんだよ」

「……そりゃ、そんなのは……」

「わかってない。姫川さんは、自分の中にある『恋愛』っていうのに縛られてる。それってさ、確かに恋愛っぽいけどさ、でも、別にそれだけが付き合い方じゃないよ」


 私は青山の話を聞き、思い当たる節があり、目を一瞬だけ見開いた。


「例えば、俺と優花里は、別に、LI○Eのプロフとか揃えてない。イ○スタにも、そんなにあげてない。そう言うの、あんまり好きじゃなくてさ。そう言う感じでさ、別に、恋愛って言っても、色々あると思うんだよ」


 青山がそう言うと、隣の優花里が「うん」と言って、彼の言葉を引き継ぐように私に語り始めた。


「でもね、詩子。絶対、相手が好きなら、恋って関係には発展させた方がいいと思う。だって、考えてみ? 将来さ、例えば、アイツに恋人が出来たとしたら、アンタ、アイツとの関係、切らざるを得なくなるよ?」

「――」

「男と女じゃ、住む世界が違う。少なくとも私は、四郎が女友達と2人で会ってたらイヤ。それで、そんなの、他の人も同じでしょ」

「……」

「あと、河野に恋人がいなくても、やっぱり色々あって離別するのがオチだよ。特に、アンタとアイツは男と女なわけだから、余計関係も疎遠になりやすい。無理だと思うよ、一緒に居続けるの。
 だから、友達じゃダメ。大切なら、掴んで、離さないようにしないと。付き合うって言うのは、相手が自分のモノなんだって周りにアピールすることなの。それもしてないのに、他の人に取られたって、そんなの文句言えないよ」


 優花里の言葉は全てにおいて正論だった。私は突きつけられていく現実に、しかし、不思議なことに、暗い気持ちにはさせられずに。


「てかさ、詩子。結局、詩子は、どういう関係になりたいの?」


 優花里が話を続ける。私は少しだけ考えてから、自分の中の思いをゆっくりと整理し。


「……アイツとは、正直、今までみたいな関係でいたい。恋人になりたくないってわけじゃなくて、なんて言うか、恋って言う気の使い方をしたくない。ドキドキする恋愛とか、別に良くて、今までみたいに、ラーメン食いに行ったり、くっだらない下ネタで笑ってたり、あと、ゲームしたり。そんな感じで、これからもずっといたい」

「なるほどねー。やっぱ、友達って感じだね。
 ま、でも、そんな恋もアリだと思うよ? なんだかんだ、バカみたいなことで笑っていられる奴らが一番幸せだと思うし」


 優花里はそう言ってにへらと笑った。なんとも言えない表情だったが、私の意見を、肯定的に受け入れていることだけはわかった。


「――あ、てか、わかったわ」


 と、青山がハッと何かに気付いたように声をあげた。


「なんで真白が、アンタとの気持ち、理解してなかったか。
 アイツさ、アンタに合わせてたんだよ。ほら、アイツ、察しがいいだろ? だからさ、姫川さんのそう言う気持ちに、アイツなりに応えていたんじゃないの、って」


 私は青山の言葉を聞き、「あっ、」と呟いた。

 ――そうなのかもしれない。一瞬、そんな気持ちが頭をよぎったが。しかし、実際のところ、そんなのは、私にとって都合のいい解釈でしかない。

 アイツの気持ちは正直わからない。だからこれも、ただの空論でしかない。だけど、大切なのは、きっと、そんなところじゃない。


「姫川さん。真白は結構、人に尽くすタイプだよ。アイツは誰にでも優しいから。だから、きっとアンタの気持ちも理解してくれると思うよ?」


 そう。アイツは間違いなく、私の気持ちを理解してくれる。

 アイツは下手に私を振り回さない。隣に一緒にいてくれて、並んで歩いてくれる。そこだけは、間違いなく、確信を持って言えることだった。

 私は席に手を着き立ち上がる。そして、机に座る3人に向けて言い放った。


「――ごめん、みんな。ありがとう。私、アイツに告ってくるよ」


 私の言葉を聞き、優花里と玲菜が嬉しそうに頷く。青山はため息を吐いて、ぼそりと「やっとか」と、緊張の色を解いていた。


「じゃあ、詩子。もう、今から行くの?」


 優花里が私に尋ねる。私は一度目を閉じ、そして、ゆっくりと深呼吸をしてから、「いや、」と返事をする。


「いや行かんのかい!」

「ごめん。本当は、さっさとそうしたいんだけど。……でも、私、まだやることがある。それ全部やらないと、アイツの前に、納得して立てない」


 私は言いつつ、スマートフォンを取り出す。そして、画面を操作して、ある人物にメッセージを送ってから、私は玲菜と優花里に目を向ける。


「玲菜、優花里。……ちょっと、お願いがあるんだけど」


 私が言うのを聞き、2人は「?」と首を傾げた。
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