ステータス値が全て3になる坂

オニオン太郎

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ステータス値が全て3になる坂

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「……ここがかの有名な『ステータスが3になる坂』か」





 女勇者はそう言うと、剣を地面に突き立て辺りの景色を見渡した。



 彼女が立つは山の頂上。そこからふもとの村付近にまでまっすぐに坂が伸びている。

 そこは、この世界にいる冒険者やその他の人々の間で有名な呪われた土地、『転ぶとステータスが値全て3になる坂』だった。



 ある日屈強な男の冒険者が、間違えてこの坂で躓き転んでしまった。すると鍛え上げた肉体はもはやただの見せ筋となり、彼のステータスは瞬く間に低下。そしてステータスに振られた全ての値――例えばパワーや知性など――が3になってしまったのだ。



 そこはある意味魔王よりも恐ろしい土地とされている。故に、女勇者は、自身が魔王討伐の旅に出る直前に、この世の王からこの坂にだけは気を付けろと再三警告を受けたのだ。





「足をひっかけ転んだだけであらゆる人間のステータスを3にしてしまう恐るべき土地だ。皆の者、気を引き締めて行くように」

「うん」

「ああ!」





 女勇者は後ろにいる2人の女に声をかけた。1人はどことなく気迫の薄い黒髪の女賢者で、もう1人はとても動きの速そうな肉体をした女盗賊だった。



 彼女らは女勇者の仲間だ。なんやかんやあって2人は勇者について行くことにしたのだ。



 女勇者は2人の十分な気合いを見て、「よし、大丈夫そうだな!」と金髪をなびかせる。





「だがここさえ超えれば後は何も怖くない。さあ行くぞ、みんな。いつか世界を平和にするため――」





 女勇者はそう言って勇み、足を踏み出した。直後、女勇者は思い切り尖った石を踏んでしまった。





「いたいっ!」





 そして叫び足を上げた勇者はそのまま後ろ向きに転んでしまった。





「あっ」

「ああっ!」





 女賢者と女盗賊は思わず叫ぶ。



 かくして、女勇者は全ステータス値が3になってしまった。





◇ ◇ ◇ ◇





 それから5日ほどが経過した頃。その町では、勇者が宿屋に引きこもってしまったということで大変騒ぎになっていた。



 先日13歳になったショタ冒険者は勇者が引きこもっているという宿屋に来ていた。宿屋の亭主が「よう、ショタ冒険者」と気概良く挨拶をする。





「おじさん、こんにちは!」

「どうしたんだショタ冒険者、いつもはこんなしみったれた宿屋なんかに来ないだろう。一体何の用事なんだ?」

「いえ、勇者様がステータスが3になる坂で転んでしまったとお聞きしまして。それで、僕、少し勇者様とお話がしたくって」

「なるほどなぁ。しかしあの日以降勇者様はすっかり世界の全てを怖がって、誰からの面会も拒むようになっちまった。これまでに貯めた資金でなんとか生活はしているが、まあでも、あれじゃあ魔王の討伐は難しそうだとさ」

「仕方ないですよ。ステ(以下略)で転んでしまったのですから」

「ああ、しょうがねぇ。まあとりあえず、ダメ元で話しかけてみればいいんじゃねぇか? もしかしたら対応してくれるかもだぜ」





 すると調理室から「アンタ! ちょっとコッチに来てよぉ!」と宿屋の亭主を求める声が聞こえた。亭主は「おっと、悪い。家内が呼んでいる」と言い、奥の調理室へと消えていく。





「どうしたんだいハニー?」

「ううん、呼んでみただけ、ダーリン♡」





 ショタ冒険者は調理室から聞こえるそんな声を聞きながら、勇者が泊まっている部屋を目指して2階への階段を上った。



 ショタ冒険者が2階の廊下を歩いていると、途端、1人の女が彼の前に立ち塞がった。





「お前。女勇者に会いたいのか?」

「あ、女盗賊さん! はい、僕、勇者様に会いたくて!」





 女盗賊は少しショタ冒険者に目をやると、「待ってろ」と言いある一室へと消えていった。

 するとその室内から「おいやべーって、メッチャかわいいショタっ子が勇者に会いに来たぞ!」「女盗賊。勇者は今こんな感じ。私に会わせなさい」「ま、待て。外は怖いがショタは別だ。いや、外に行くんじゃなくてここに連れてこい。そしたら平等だ」と会話が聞こえてきた。ショタ冒険者はしばらく待ち続けていると、やがて一室のドアが開き、鼻にやけに赤黒くなっているティッシュを詰め込んだ女盗賊が再度現れた。





「会ってやるだとさ。来い」

「あ、ありがとうございます!」





 女盗賊の鼻腔からブベリを鼻血が吹き出る。ショタ冒険者は「だ、大丈夫ですか!?」と尋ねるが、女盗賊は「ああ大丈夫だ」と言って特に構う様子もなくショタ冒険者を宿泊している室内へと招き入れた。



 ガチャリとドアが閉まる。ショタ冒険者は少し緊張の色を醸しながら、目の前にいる2人の女性を見遣った。





「――なるほど。あなたがショタ冒険者ね」

「確かに、幼くてかわいい子供だな」





 鼻から一筋の血液を出しながら、女賢者と女勇者が言った。ショタ冒険者は「は、はじめまして! 僕はショタ冒険者です!」と頭を下げると、途端、勇者パーティーの面々が一斉に鼻血を吹き出した。





「女盗賊。あなたのことは正直手癖と素早さしか取り柄のないバカだと思っていたけど、今日で評価を変えるわ。あなた最高よ」

「俺そんな風に見られてたんだな。でも今日のところはこのかわいいショタっ子に免じて何も言わねーぜ」

「みんな、少しまずいことになった。今ので残りHPが1になってしまった」





 3人はそう言ってそれぞれ懐からティッシュを取り出し鼻に詰め込んだ。ショタ冒険者はこの異様な空間がわからず、とりあえずと言った感じで、心配そうに「大丈夫ですか?」と言った。





「ああ、大丈夫だ。……ところでだが、君は一体どうしてここに来たんだ?」





 女勇者がキリッとした(鼻にティッシュを詰め込んだままの)顔で尋ねる。と、ショタ冒険者は「は、はいっ!」と言って、かしこまったように背筋をピンと伸ばして上ずった声を出した。





「そ、その、僕、勇者様に提案があってここに来ました!」





 途端、勇者が「提案とは結婚のことかああああっっっ!」と叫び鼻血を吹き出した。瞬間、勇者は棺桶になってしまった。





「勇者ああああああ!!!!!」

「今ので死んでしまったようね。情けない」





 そう言って女賢者は「ミラーフォース!」と棺桶になった勇者に蘇生魔法をかけた。棺桶が勇者に立ち替わる。





「ありがとう女賢者。やはり死者蘇生ができるお前は頼りになる」





 勇者は何事もなかったかのように「さて」と言い、ショタ冒険者に向き直る。





「それで、ぼく君。君がしたい提案とは、一体なんだ?」

「あっ……えっと、その。じ、実は、勇者様には、もう何度かステ(以下略)で転んでいただきたくて……」





 途端、勇者の目の色が変わった。ガタガタと震えだし、頭を抱えて恐怖に戦慄しだした。





「この子、かわいい顔してなんて恐ろしいことを言うのかしら」

「そうだそうだ、お前、これ以上女勇者に苦しめって言うんなら最悪襲うぞ!」





 女賢者と女盗賊が鋭い視線を向ける。ショタ冒険者は「い、いえっ、はな、話を聞いてください!」と怯えながら声を出した。





「ま、まあ、すまない。私も大人である癖に、怖がり過ぎた。それで、何か考えがあるからそんなことを言うのだろう?」





 女勇者は微笑みながらショタ冒険者に尋ねる。するとショタ冒険者は「はいっ!」と言って、自身の意見を話し始めた。





「そ、その、御存じの通り、ステータスが3になる坂は、そこで転ぶと全部のステータス値が3になってしまい、最弱モンスターのスライム以下になってしまいます」

「それは身をもって体験しているが」

「そこで僕、思ったのですよ。つまり、もう一度転んだら、次のステータスは6になるんじゃないかって」





 それを聞き女賢者は「なるほど、転んだ回数分3を足したステータスになるということね」と言うと、ショタ冒険者は「はい、その通りです!」と受け答えた。





「けどよぉ、もしそうじゃなかったらどうすんだよ? 例えば次転んだら、3のステータスが1になって、つまりは2でかけた値になったら、もう手の施しようがねぇぞ?」

「女盗賊。3に2をかけたら6よ。1になるのは3を3で割った場合よ」

「し、しってらぁ!」

「でもそうね。そうなった場合、勇者は下手をすれば厚底の靴で石を踏んだだけで死にかねないわ。あなたはもしも女勇者が死んでしまったら、どうするつもり?」





 ショタ冒険者は女賢者に言われ言葉を詰まらせた。

 当然とも言える。勇者は人類の希望であり、彼女を弱らせるということはそれだけ責任も重いということだ。ショタ冒険者は少し考えた後、覚悟を決めたように3人を見詰め、言った。





「もしも女勇者様が死んでしまわれた場合――僕は責任を取って、どんな言うことでも聞こうと思います」

「よし女勇者今すぐ死んで」

「命の価値が軽いッ!」





 女勇者があまりな応対に嘆き叫んだ。やがて女勇者は咳ばらいをし、緊張の色を隠し切れないショタ冒険者に声をかけた。





「まあ、このまま何もしなくても埒が明かないのは日の目を見るより明らかだ。となれば、やってみる価値はあるだろう。

 なに、大丈夫だ。これでも私は勇者だ。今までこんな程度の困難、幾度となく超えてきたさ」





 女勇者の言葉で、女賢者と女盗賊が誇らしげに胸を張った。ショタ冒険者は、彼女ら3人に、憧れ続けた勇者の気風を見て、感動に目を輝かせた。





「さて、では決まれば善は急げだ。とりあえず例の坂に……あっ」





 勇者がベッドから立ち上がろうとした直後、いい感じに足が引っかかって転んでしまった。

 地面に倒れた勇者には3のダメージが入った。勇者は死んでしまった!





「勇者ああああああ!!!!!」

「なんてこと。こんな程度で死んでしまうなんて、情けない」





 女賢者は呆れかえった表情でまた棺桶になった勇者を復活させた。





◇ ◇ ◇ ◇





「というわけで、坂の上に来たが」





 女勇者はそう言うと辺りの景色を見渡した。





「――不思議なものだ。山頂の景色はこれほどまでに美しいのに、ここがあの厄災の始まりだなんてな」

「まあ言うて5日しか経ってないけどな」





 女盗賊はやたらと郷愁をほのめかす彼女につっこんだ。と、女賢者が「どうでもいいから早く転びなさい」と、ショタ冒険者の頬をぷにぷにしながら冷淡に言った。





「……女賢者。何をやっているんだ、お前だけ」

「たわけ。アンタここに来るまでに何回死んでるのよ。私がその度に何度あなたを生き返らせたと思っているの。いい加減疲れたのよ。蘇生魔法だってタダじゃないのよ? 精神力が必要なの。消費した精神力を回復するためには癒しが必要なのよ」

「……あの、女賢者様。それでなんで僕の頬を……」

「別に(ハァハァ)他意はないわ(ハァハァ)」





 ショタ冒険者は女賢者の様子に少しだけ妙な気を覚えた。と、女盗賊は「まあ女賢者の様子はさておき」と言いながら、女勇者に話しかけた。





「けど、賢者の言うことはもっともだぜ。まあ迷ってもアレだし、ドーンと行っちゃえよドーンと」

「お、お前、他人事のように。私は怖いだから? 死ぬとき毎回タンスの角に小指をぶつけたような痛みが走るし」

「つってもしょうがねーだろ。まあ大丈夫、もしものことがあったら俺がレベル上げ手伝ってやるよ」

「女盗賊……」

「それにもしもお前が弱体化して死んだらあの子何でも言う事聞くんだぞ?」

「よしっ俄然ヤル気が沸いてきた。死ぬ気でいくぞぉー!」





 死んでしまったらダメなんじゃないか。ショタ冒険者はやる気のベクトルがおかしい女勇者に内心でつっこんだ(女賢者に頬をぷにぷにされながら)。





「ハーッ!」





 そしてやたらと死ぬ気な女勇者は叫びながらごろりと一度転がった。瞬間、ピロリん♪ という音が周囲に木霊し、女勇者のステータスが空中に表示された。



 ショタ冒険者の予感は的中していた。ステータスの欄には、力や知性などの様々なステータス値が上昇しており、3→6と黄色い文字で表記されていた。





「や、やりましたよ女勇者様!」





 ショタ冒険者は思わず立ち上がる(女賢者が残念そうに「あ~」と彼の頬に手を伸ばす)。と、ショタ冒険者は、少し転がった先に置かれた棺桶に気が付いた。



 どうやら、今の転がりで死んでしまったらしい。





「勇者ああああああ!!!!!」

「あんな程度でも死ぬのね。ゴミめ」





 女賢者はそう言って「ミラーフォース」とやる気が無さそうに棺桶に術をかけた。

 しかしなにもおこらなかった。





「アレ、困ったわ。どうやら魔力切れのようね」

『えぇーっ!?』





 と、ショタ冒険者は脳内に直接聞こえた声に驚きびくりと身を震わせた。どうやら女勇者の声のようだが。





『ま、待て、それは困る! 私に明日までこのままでいろというのか!』

「まあそういうことね。大丈夫、一晩寝れば魔力も回復してなんとでもなるから」

『いやだ! せっかくかわいいショタっ子がいるんだぞ! せめてあの子もこの棺桶の中に入れろ!』

「入れてどうするのよ」

『抱きつく』

「そんなことできるの?」

『なんか、出られそうにないだけで中の私は意外と普通だ。ゾンビとかにはなっていない』

「よくわからないわね。

 でも、そうは言ってもどうしようもないものはどうしようもないのよ。諦めてその中で寝ていることね」





 女勇者が『嫌だあああああ出してくれええええ!!!!』と声をあげガタガタと棺桶が揺れ出した。と、その時。



 ピロリん♪





「アレ、ステータスが上がった音がしましたけど……」

「――! 見て、女勇者のステータスが出てる!」





 と、ショタ冒険者たちは、女勇者のステータスが6→9と上昇していることに気付いた。





「な、なんで? 転んでないのに……?」

「なるほど。棺桶がわずかに動いたから、それで転んだ判定になったんだわ」

「そ、そういうことですか! 確かに地面を這っているので、ありえますね!」





 ショタ冒険者が納得したように声をあげる。すると女賢者は、意味深ににやりと笑った。





「これよ、女勇者」

『えっ、なにが?』

「あなたの棺桶をここで滑らせれば、あなたのステータスは瞬く間に元の値――いえ、それ以上にまで戻せる。これで全ての問題は解決よ」

『ちょっと待て女賢者。まず結局私は死んだままだし、何よりも死者をそのように扱うなど倫理的にまずくないか?』

「コンプラに配慮して勇者が務まると思っているの? 死んだ人間は所詮物言わぬ肉の塊よ、別にどう扱おうと私の勝手だわ」

『いや私は喋ってるのだが! もうちょっと人としての尊厳とか無いのか!』

「うるさいわね。さっさと行きなさい」





 女賢者はそう言って棺桶を蹴飛ばした。途端、棺桶はズザザザザと勢い良く滑り落ちて行った。





『あああああああ恨むぞ女賢者ああああああ!!!!!!』

「ふぅ。スッキリしたわ」





 ショタ冒険者は、もしかしたらこの女の人こそ魔王なのではないかと戦慄を覚えた。



 その後、女賢者は山の頂上に棺桶を持って行っては滑り落とすという蛮行を繰り返し、なんやかんやで女勇者は完全復活した。





◇ ◇ ◇ ◇





「……ショタ冒険者。感謝する。おかげで私は魔王討伐の旅を続行することができた」





 女勇者は跪き、ショタ冒険者に頭を垂れた。ショタ冒険者は女勇者の態度に戸惑う。





「いえ、そんな! 僕はただ、思い付いたことを話しただけなので……」

「いや。そのアイデアを最初に私たちに伝えてくれたことが大きいのだ。本当に感謝する。

 君はまだ幼く、食べ頃な少年ではあるが、その実世界の救済の大きな功労者でもある。そこで、僭越ではあるが、私に礼をさせて欲しい」





 女勇者の言葉にショタ冒険者は「え……」と呟いた。しかしそんな困惑を他所に、女勇者は更に続ける。





「まあ勇者とは言え私も人間だ。できる範囲には限界があるが、例えば夜伽とか、叶えられる範囲であるならどんな願いも聞き届けよう。例えば夜伽とか」

「そ、そんな……どんな願いでも、なんて……」





 ショタ冒険者はそれを聞き、少し考え込んだ。

 浅ましくも、勇者様に願いを伝えるなど、できるはずがない――そんなことを思っていたが、しかし彼女の申し出を断るとは、すなわち、彼女の厚意を無下にするということでもある。

 それはむしろ、彼女たちに失礼ではないか――。ショタ冒険者はそこまで考えてから、「それでは……」と呟き。





「――僕を、その、一緒に、連れて行ってくれませんか?」

「!!」

「僕、つ、強くなりたいのです。ゆ、勇者様たちの冒険は過酷で、辛いと聞いています。だから、そ、その旅について行けば、きっと僕は、強くなれると思うのです!

 わ、わかっています。危険な旅に、ぼ、僕みたいな子供がついて行くなんて――って。だけど僕は、決して、甘い覚悟でこんなことを言っているわけではありません。僕もいつか立派な男になりたいです。そのためなら、どんな苦しみも、耐え抜いてみせます。だから、その……」





 女勇者はそれを聞き、ショタ冒険者に背中を向けた。ショタ冒険者は、やはりダメなのか、と、一瞬しょんぼりと下を向く。



 ――と。





「――君が想像している、100倍は辛いぞ。それでもいいのだな?」





 女勇者の言葉に、ショタ冒険者は顔を上げた。彼はゴクリと固唾を飲んでから、「はいっ!」と笑顔で言った。





「――覚悟は確かなようだな。なら、好きにするといい。君を私たちの仲間として認めよう」





 ショタ冒険者は女勇者の言葉を聞き、明るく笑い「ありがとうございます!」と言った。女勇者は「ふっ……」と呟くと、そのまま歩き出す。





「行くぞ、女賢者、女盗賊」

「ええ」

「ああ」





 仲間の2人が声を出す。そして女勇者は、新たな仲間を振り返りながら、優しく笑い。





「――そして、ショタ冒険者」

「は、はい!」

「まだまだ私たちの旅は、始まったばかりだ!」





 風に金髪がなびく。そして一行は村を後にした。



 魔王討伐まではまだ遠い。いつか世界に平和が訪れるまで、彼女たちは、歩みを止めない。













「とりあえず次の目的地はネオン街だ。ホテルで休憩することにしよう」

「賛成よ、女勇者」

「俺も同意だ」

「……あの、ネオン街って、なんですか?」

「――なに、君は知らなくてもいい。なにせこれから、たくさんのことを知っていくのだからな……(ハァハァ)」
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