魔王の娘がこちらを見ている〜人間に手違いで召喚された俺は、魔王たちと仲良くやります〜

オニオン太郎

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修行開始!

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「に、ににに、人間! わた、私が混乱してたからってどさくさに紛れて頭を撫でるってどういうことだ!」

 ラキアの部屋に入れられたあと、俺は彼女から説教を食らっていた。

「っせー。泣いた子供を慰めるのにゃ、アレが一番効果的なんだよ。……たぶん、うん、そんな感じが、しない気が……」
「バカ! バカバカバカ! は、恥ずかしいじゃないか! 私は偉大なる魔王の娘、ラキアだぞ! 人間ごときに頭を撫でられるなんて、恥ずべきなんだ!」
「じゃあ、もう撫でねーよ」
「やだ! もっとなでなでして!」

 ラキアはそう言って俺に頭を突き出した。なんだこいつ?
 俺はラキアの頭を仕方なく撫でる。ラキアは嬉しそうな表情で、「ふへぇ、これだけでラキアポイント20あげちゃう」と呟いていた。なんだこいつ?

「……なんつーか、かわいいなお前」
「き、キモい! 知り合い程度の女の子にかわいいって! ら、ラキアポイントマイナス15!」
「おー、それでもマイナスじゃないな。おっしゃおっしゃ」
「むむぅ! さらに10減らす!」

 うわお、またマイナスからのスタートだよ。クソ、いつになったら俺はラキアポイント100へ行ける? まあ気にしてねーけど。

「そ、そうだ、人間。お前、名前はなんていうんだ?」
「知らなかったのかよ。俺は、ムダ・カツヒトだ」
「ふへぇ、ムダ・カツヒト! ……ムダ、はなんか可哀想だな。よし、お前はこれからカツヒトだ! それにしても、プフゥ! カツヒトって、すっごく語感悪い!」
「うるせぇ! 気にしてんだから言うな!」

 吹き出すラキアに俺は軽く怒鳴る。ラキアはしかし笑っている。さっきまで泣きじゃくってたくせに、調子の良い奴だ。

「さて、やる気も出たし、ラキアは勉強や練習をするよ! 次の目標は、1週間後に差し迫った武闘大会! 1勝目指して、頑張るぞ!」
「おう! なんかよくわかんねーが、頑張るのなら応援するぞ!」
「ところで、カツヒト。お前さっき、私のやり方が悪かっただけって話をしてたけど……具体的にどんな所が悪いんだ?」

 は? それを俺に聞くのか? 俺はそんな思いが頭をよぎって、口を開けたまま固まってしまった。

 いや、わかるわけねーだろ。魔術なんて門外だぞ。俺は頭をガリガリかきながら、「あー……」と無意味な言葉を連ねた。

「むぅ、わからないんだね。そうだよな……カツヒトは異世界人。この世界の魔術なんて知ってるわけがないよ」
「あ、ああ、わからねー! わからねーけどよ、なんかこう、出来ることもあるかもしれねーじゃねーか! ほら、勉強のやり方とかくらいなら……」

 俺はそう言ってラキアの勉強机に移動した。いや、正直わからねーよ。こちとらどんなに勉強しても大学に行けなかった人間だぞ、効率の善し悪し自体測れるわけが……

「ん? ラキア、思ったんだけどよ。お前、このノート、もしかして……」
「ああ、教科書を丸写しした奴ね。それがどうかしたか?」
「どうもこうもねーよ! そりゃお前、勉強うまくいかねーわ! 教科書なんてな、写すだけ無駄なんだよ!」
「な、なんだってー!?」

 ラキアはそれはもう世界が終わるくらいの衝撃を受けていた。

「うぅ……私の今までの努力は、なんだったんだ……」
「ま、まあ、俺も昔よくやってたことだ、うん。ようはな、重要なのは『覚えられたか』『理解出来たか』の2点なんだよ」
「覚えられたか、と、理解出来たか?」
「ああ。早速矛盾するようで悪いけど、この2点ができてるならお前のやり方でも問題は無い。ただ、じゃあ実際、お前はそれで出来てるのってなったら、話が違うだろ?」
「う、うん……」

 ラキアはしゅんと顔を下げて呟いた。なんか、悪い事をしているみたいだ。

「あー、それでな。昨日お前、俺が出てったあとどんなやり方してた?」
「それはもう、しっかりと文章を読んだよ。ずっと、理解しようと、夜中の2時まで!」

 気合いの入った言葉だな。俺は「まあとりあえず睡眠は取れ」と注意を促し、話を先に進めた。

「お前はそれで、わかったところが多かったろ?」
「――はっ! そうか、アレがいいやり方なのか!」
「まあ、読むだけじゃ不安だけどな。ノートをしっかりまとめて、丸写しじゃなく、自分の言葉で紡いでいく。これが大事だ!」
「ほへぇ、初めて知ったよそんなこと……」

 いや、まあ、基本中の基本なんだけどな。俺は苦々しく笑ってみせ、とりあえずラキアの気を悪くしないようにした。
 まあ、基本中の基本とは言ったけど、これができてない奴が意外と多いんだよな。かつての俺然り。

「……まあ、とりあえずそんなものか。ところで、魔術理論ってのは、具体的にどんな科目なんだ?」
「これはね、魔術とはいかに構成されているか、というのを考える学問だよ! これの成績が悪い人は、魔術の成績も悪くなるんだよね。魔術って、頭が良くないとできないから!」
「つまり、お前は魔術成績もよろしくないと」
「む、むむむ。そうなんだけど……改めて言われると辛いよ」
「悪かった」

 俺は、顎に人差し指を当ててぽくぽくと考えた。
 ――そうだな。俺にもわずかながら魔術の力があるってんなら、これを習っておいて損は無いだろう。目の前のガキに教えを乞うってのは年上のプライド的に嫌だが、そんなのは気にしてられない。なによりも、これはこいつのためにもなるはずだ。俺は「よし」と言って、ラキアに語りかけた。

「ラキア。俺にも魔術ってのを教えてくれないか?」
「えぇー! ゆ、勇者でもないあんたに!? クソジジイから聞いてるぞ、並の力すら無いって」
「本当に、泣けてくるよ。……そういや、魔術理論を知らないと魔術って上手くいかないって話してたけど、勇者の場合どうなるんだ?」
「アレは伝説の力って言うので最初っから限界突破してるから使えるよ」

 マジで勇者チートじゃねーか。クソ、楽に登りつめやがってあの野郎。俺が国から追い出された時も、かつての友人の癖に、何も言わなかったからな。ああいうのを真性のクズって言うんだろうな。
 ――まあ、その点は俺も同じか。俺は顔をパンと叩き、「まあ、とにかく!」と気合いを入れ直した。

「授業であのクソナルシストゴミクズ教師(?)も言ってたろ。マナは増やせるって。俺にも可能性、あるんじゃないのか?」
「無くはないけど、私が心配なのは、私が教えられるかだよ。それなら、クソジジイに聞いた方が早いぞ」
「ばーか。勉強を教えるのは、至上の勉強になるんだ。だからお前には、俺のために必死で頭に詰め込んで、教えてもらう!」
「バカ! なんで人間のために……まあいいや。お前は人間だけど、魔族こっち側だしな。何より私のためになるのなら、私は頑張るよ!」

 こいつ、本当にわかりやすいな。俺はラキアの自慢げな顔を見て笑いそうになった。
 だってこいつは、他人のためならどこまでも自分を犠牲にできるタイプだ。自分のためになるからなんて言ってるが、その本当の目的は俺のためなのだろう。

 ……まあ、俺が人間側の奴だったら、きっと返答は変わっていたのだろうがな。しかし、人間と魔族って違う生き物なのに、こうも同じところがあるとなんだか笑えてくるな。

「よっしゃ、なら今すぐにでも練習、及び勉強だ! 1週間後の武闘大会? とやらに、なんとしてでも間に合わせるぞ!」
「おー!」

 ラキアは気合い十分に右手を掲げた。俺はその様子に満足して頷くと、ラキアもどこか嬉しそうに笑顔を向けてきた。
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