肝胆相照のティーシポネー

人の心無いんか?

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キリちゃん視点

サブストーリー To私 Fromわたし その2

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 身体も完全に回復して今日はお店を探しにやってきてます。
 わたしは”もう一人の私”より症状がマシなんだけど、そのせいで”もう一人”が大切にしているお洋服が汚れてるのが分かっちゃったんだよね。なので”くりーにんぐ”に出そうと思いました。
 なんだけど・・・

(どこにあるんだろう・・・?クリーニング屋さん。)

 わたしがキョロキョロとしていると明るい男の人が声をかけてきた。
「彼女~。見かけない子だね~。いくらで遊んでくれるの~?」
 
 ちょっと何言ってるか分からないけど、この人に聞いてみよう。

「ねえ。この辺で腕の良いクリーニング屋さん知らない?」
 わたしは愛想良く男の人に訊ねる。おにいちゃんが言ってた。分からないことは笑顔で聞くと答えてくれるって。

「え~?クリーニング屋?そんなことよりお兄さんとキレイキレイ洗いっこしようよ!」

「え?お兄さんが綺麗に洗ってくれるの?」
 やった!このお兄さんはクリーニング屋さんだったのか!?ラッキーだね。

「そうそう。綺麗に洗っちゃうよ~。」
 お鼻の下が伸びて、何だかおサルさんみたいな顔で言うお兄さん。ちょっと気持ち悪い顔だなー。人を見かけで判断しちゃいけませんっておにいちゃんが言ってたから我慢しよう。

「キリちゃん!駄目だって!変な人に付いて行っちゃ!」
 声のする方を見ると、エクレアさんが来ていた。色々お世話を焼いてくれている内にエクレアさんはわたしのことを「キリちゃん」って呼ぶようになっていた。ちょっとこそばゆいけど悪い気はしない。

「え?キリちゃん・・・?ちょっと待て、こいつの名前なんて言うの?」
 親切なちょっと気持ち悪い顔のお兄さんがエクレアさんと話している。

「えっと・・・本名は知りませんけど、ここじゃキリングドーターとか言われてる子です。」

「う、嘘だろ・・・こいつがピットブル・・・」
 あれ?お兄さんもしかして顔色悪い?まぁ、いいや!

「ねぇ、お兄さん。早く洗いに行こ♪」
 わたしはなるべく笑顔でそう言ったんだけど、
 お兄さんは急にしゃがみ込んで、腕で顔を覆い「ごめんなさい、ごめんなさい。許してください!殺さないで!」とガタガタ震えながら蹲っちゃった。なんで???

 わたしは訳が分からなくてもう一回
「ねぇ・・・洗いっこは?・・・」
 そう声を掛けたけど、お兄さんの反応にわたしも戸惑っちゃって笑顔でお願いできなかったな。

 するとエクレアさんが、
「き、キリちゃん。クリーニング屋さんこっちだよ。」
 わたしの手を引いてどこかに向かおうとする。わたしはお兄さんが折角洗ってくれそうだったし、

「え?でも・・・お兄さんが・・・」
 エクレアさんにそう声を掛けたけど、

「プロの人の方が絶対良いって!行こ行こ。」
 と、半ば強引にその場を離れることになった。

 わたしはお兄さんに申し訳なく感じて、エクレアさんに引っ張られながら、後ろのお兄さんを見てみると、何故か手をすり合わせて拝んでいた。なんで???う~・・・キリハわかんない!


「ね、ねぇ・・・どうして下着姿なの?服はどうしたの?」
 エクレアさんが緊張気味に聞いてくる。どうして緊張してるんだろう?この間、ぶっ殺そうと睨んだからかな?? 

「服はこれ。汚れちゃったから綺麗にしたいの。」
 わたしはそう言って胸に抱いている紙袋を見せる。エクレアさんが紙袋を覗き込む。

「ほ、他の服は無いの?」

「ん?無いよ。」

「そ、そっかー。早くクリーニング屋さんに行かないとね。」



 でも、クリーニング屋さんで問題が起きちゃった。

「え?駄目なの?」
 目に涙を溜めた店員さんから汚れが落ちないと言われてショックだった。この服は”もう一人”が大事にしているし、わたしも大事に思っている・・・何とかしたい・・・どうしよう・・・どうしよう・・・うー!うー!!

「き、キリちゃーん。落ち着いて。服のデザインが気に入っているの?」

 エクレアさんがそう聞いてくる。落ち着いてるもん!イライラなんて・・・し、してないもん!

「可愛いでしょ~?」

「で、デザインが一緒ならおっけー・・・かな?」

 デザインさえ一緒なら、もしもおにいちゃんが見た時わたしだって気づくから大丈夫。
 わたしは小さく頷くと、

「じゃあさ!服屋さんにオーダーしてみるのはどうかな?同じデザインで作ってくださいって」
 
 そっか!新しく作って貰えばいいんだ!

「じゃあそうする。ありがとう。”エクレアさん”。」
 わたしがお礼をそう言うと、エクレアさんは何だかブツブツ言ってたけどなんだろ?まぁいいや!
 そうと決まれば服屋さんにしゅっぱーつ!
 わたしは元気よく服屋さんに歩いて行くのだった。


 服屋さんに着くとエクレアさんと服屋の店員さんが何やら話していた。
 わたしは暇なのでお店の中を見回っていると、

「わ、わぁ・・・」
 
 すごく可愛い服を見つけた。お人形さんみたいなフリフリの服!こんなの本当にあるんだ!

「そうですか・・・ありがとうございます。行こう、キリちゃん。」
 エクレアさんと店員さんのお話が終わったみたい。

 わたしは興奮気味にエクレアさんに可愛いフリフリの服を指して、
「ねえねえ!エクレアさん!この服可愛くない?」

「えっと・・・キリちゃん。この制服以外着ないんじゃないの?」

 エクレアさんがちょっと驚いたような顔をしていた。

「え?そうだっけ?着れるよー。でも、その服はなんか・・・とても大事だからちゃんと直したいの。」

「そ、そっかー。じゃあオーダーしてから服選ぶ?」

「選ぶ!」

 後であの服が買えるんだ~。楽しみだなぁ~。



 エクレアさんに連れられてお向かいのお店に入ったけど、そこでも断られた。エクレアさんはわたしの為にお店の人と言い合っている・・・。皆がわたしに意地悪しているみたい。なんで?病院でも意地悪されたし・・・。どうして皆して意地悪するの?
 わたしは俯き、悲しくて涙が零れそうだった。すると後ろから

「おい、兄ちゃんよ。受けてやれや。」

 そこには、おにい・・・う~ん・・・おじさんが立っていた。
 おじさんが、お店の人にお願いするとお店の人は服を作ってくれることになった。
 おじさんとエクレアさんのおかげだね!


 

 お店の外でおじさんとエクレアさんが話している。
「ありがとうございます。スタンピードさん。助かりました。」

「構わないぜ。それよりも支払いはいけんのか?結構するぜ?」

「あー・・・まだ考えてないんです。」

「それじゃ、俺の部隊に来るのはどうだ?俺の部隊で仕事してくれたら俺が立て替えるが?」

「えっと、キリちゃん、どうする?」

 お礼しなきゃと思ってたんだー。でもわたしに出来ることって気に入らない奴をぶっ飛ばすか、殺すことしか出来ないから、ちょうど良かったかも!

「いいよー。おじさんの部隊で働いても。」

「お、おじ・・・。”お兄さん”な。」
 おじさんの顔が引きつってる。おにいさん?どこに居るんだろ?わたしは辺りを見回してから、

「わかったわ!おじさん!」
 とりあえず笑いながら元気よく返事しておいた。

「ごめんなさい、スタンピードさん。」

「いや・・・もういいや。そいじゃ明日からな。あと・・・服はなんか着て来いよ?」

「すみません!すみません!」
 エクレアさんが謝ってるけどなんで?




 エクレアさんと一件目の服屋さんに戻る。
(フリフリの服がたくさんあって目移りしちゃうなー。)

 色んな可愛い服を手に取って選んでいると、たくさんのフリルとリボンをあしらった真っ赤な服に目が留まる。
 
(あ・・・この赤いフリフリの服可愛い!それにこれなら”敵”の血が目立ち難そうだし!)

「エクレアさん!エクレアさん!これ!この服可愛い!」

「か、可愛いんじゃない?付けてみたら?」
 少し引きつった顔で言うエクレアさん。

 わたしは試着室に入って着替えてみる。
(いい・・・すごく良い!)
 試着室にある鏡に向かってポーズを幾つかとる。
(よし!これで行こう!)

「どうかしら?」
 外に出て試着室で試したポーズを取る。

 エクレアさんはポカンとして
「いい・・・」

「ん?」

「すごく良いです!」

「ホント!これください!」
 すぐさま店員さんに伝えた。

(エクレアさんもすごく褒めてくれて嬉しいなぁ~。)
 わたしは鏡の前で自信満々にポーズを取ったり、服の裾をつまんでターンしてみたり、エクレアさんが褒めてくれたことで、ますますこの服が気に入っていっていた。

「・・・き、キリちゃーん?」

「なにー?エクレアさん。」
 わたしは呼ばれてエクレアさんと店員さんの元に駆け寄った。

「あのー・・・キリちゃん。お金は・・・?」

「???」
 そう言えばここでのお金知らないや?どうしたらいいんだろ?

「店員さん・・・」
 エクレアさんが震えた声で呼ぶ

「はい・・・」

「おいくら万円でしょうか?」
 
 ここでのお金のことが分かっていないわたしに代わって、服の代金はエクレアさんが出してくれた。

 お店を出た後、
「ごめんなさい・・・」
 わたしはエクレアさんに謝った。
 
 エクレアさんはちょっとびっくりした顔をした後、すごく優しい顔をしてわたしの頭を撫でて、
「あたしからのプレゼントね。」

 その時の優しいエクレアさんの顔はわたしの脳裏に焼きついている。わたしの宝物だ。もう一人のわたしもエクレアさんを好きになってくれるといいな。もう一人のわたしはいつも悲しそうで辛そうだもん。いつも一人で居るから心配になる。
 この人ならもう一人のわたしの氷の様な心も解かしてくれるんじゃないかな?って、そう思ったの。
 本当にその通りになったよね?ねぇ?わたし。



 はっ!として飛び起きる。目の前で焚火がゆらゆらと揺れている。辺りはまだ暗く、横を見るとてっちゃんを布団にカルディアがスヤスヤと寝息を立てていた。
 てっちゃんが私に気づき、顔を上げ、心配そうな目で見上げた。

「なんでもないよ。」
 そう言っててっちゃんの鼻を撫でると、自身の腕に顔を埋めて、またスヤスヤと寝息を立てだした。

 拠点から出発したばかりだからだろうか?こんな夢を見たのは・・・
 カルディアの荷物からもう一人の私の宝物が覗く。カルディアがもう一人の私にプレゼントしたフリフリの服だ。もう一人の私はこの服をプレゼントして貰った時、飛び上がるほど喜んでいた。それを私は汚した。もう一人の私は、私の大切にしていた制服を綺麗にしてくれたというのに・・・。
 私はあいつのことをガキだと思ていたけど、いったいどっちがガキなんだ。
 本当に私は恥ずかしい奴だ・・・11歳の時の私の方がよっぽど大人だ・・・
 もう、謝罪もできない。だから、私は守らなきゃ・・・彼女が大切にした友達を・・・いや、違うな・・・すでにカルディアは私の大切な人なのだから・・・。
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