羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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塔内編

家畜に神はいない

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「っむ・・・かつくんだよ!!!!」

「うっ!・・・ぶ、ぶー・・・ぶー・・・」

「あー!もう!!収まらないわ!」

「げほっ!げほっ・・・!!ぶ、ぶー・・・ぶー・・・」

「ぶーぶーうっせぇよ!!!」



 街の中央に近い立派な一軒家に一人と一匹が居る。粗暴な言葉と共に蹴りが飛ぶ。理不尽な暴力にさらされる黄色い豚はほぼ裸のまま、ただ嵐が過ぎ去るのを蹲って泣きながら待つだけだった。

「おー!やってやすねぇ~。」

 明るい声と共に部屋に入って来たのは組織を束ねる長の右腕の男。

「あ♪サブさぁん♪いらしていたんですね。・・・ん?どうしました?鼻摘まんで。」

 少女は歓迎の甘い声を出すが、黄色い豚は青い顔で男を見つめていた。

「・・・ん?ああ。相変わらず薬臭いな~って。」
(いらしてた・・・っちゅうか監視と報告のためずっと見てやんしたが。)

「あは♪腐らないようにしてますから。私はもう慣れましたがけど。」

「で?進捗は如何っすか?」

「はい。それはもうばっちり。お姉さまの指示通りに。」

「Xデーは見に来ると言ってやしたねぇ。」

「まぁ!是非是非!ご覧になってください。」

「あ、あの・・・サブさん・・・。おら、おら・・・。」

 部屋の外からおずおずと顔を出したのはメンバーの中でも随一の巨漢の男。お姉さまからは『坊や』と呼ばれている男だ。その男は体格に似合わない情けない顔でサブと呼ばれた男を訴えかけるように見つめていた。

「あー!そうでやんした。便所を借りたいんでやんすが、いいすか?」

「えっと部屋を出て右・・・。・・・ああ~、もしかしてこっちですか?」

 紫の少女は話している途中でサブの表情から”ただのトイレ”求めているわけではない事に気付き、ゲシッっと靴底で黄色い豚の尻を蹴るとそれから細い声が漏れた。

「そうそう、それそれ。」

「どうぞどうぞ!・・・あ、蹴っちゃって汚いですけど・・・。」

「掃除してから使うんでいいでやんすよ。」

 言いながら男は少女にリード付きの首輪を嵌める。

「やだぁ・・・。」

「勝手に喋ってんじゃねぇよ!豚が!!」

 豚からか細い抵抗が漏れると、少女が豚の腹を思いっきり蹴り上げ、豚は苦しそうにえずいた。

「・・・もうやめてぇ・・・今度こそ出来ちゃう・・・。」

「出来るわけねぇだろ!ポルチオ焼いてるんだからよお!」

 嘲笑と共に再び少女から蹴りが飛ぶと靴の型が豚の背中についた。

「シオンちゃ~ん。便所掃除の手間増えるからその辺で。」

「あ♪ごめんなさ~い♪」

「じゃ、行きやしょうか。便所ちゃん。」

「金髪の子!か、可愛いんだな!あ・・・さ、サブさん。こ、これどうしよう?」

「あー・・・後でゴミ捨て場にでも捨てとけば浮浪者でも拾うんじゃないでやんすか?洗えば使えるし。きししししし。」

 部屋の外には股間のイチモツをフル勃起させ目を輝かせる坊やが今か今かと待っている。そのサイズはファンタジー世界で見られるボストロール並みにあるだろう。
 そしてその大男が頭の高さまで持ち上げた手には髪の毛を掴まれ吊るしあげられている女性。手足は力無く垂れ下がり、その上品な服は至る所がボロボロに破け、乳房と性器は露出し、綺麗であったであろう長髪と肉体には黄ばんだ男の精液が至る所にこびりついている。彼女の目には光が無く、生きているのか死んでいるのかさえ判別がつかない。
 その様子に気付いた豚がリードを引っぱられながらも必死に暴れて泣き叫ぶ。

「や、やだ・・・やだぁ!!そんなの無理!無理だってば!!!や゛だぁ゛ーーーーーーーー!!!!」

「大丈夫♪大丈夫~でやんす♪・・・あっ!そうそう!それにクイーンからの伝言があったんでやんした。ええっと確か・・・『二匹もペットは要らない。賢い方を手元に残そうかしら?』だって。伝えたでやんすよ?」

 右腕の男の言葉を聞いて黄色い豚は顔を青くした。 

「うわ・・・キラリちゃんどっちみち死ぬじゃん。ご愁傷様♪」

 少女は豚の肩をポンポンと叩き、別れの言葉を告げた後、男達を残して屋敷の外へ出る。変わった豚の助けを懇願する鳴き声は屋敷の外までいつまでもいつまでも木霊する。だが、例え誰かに聞かれたとしても誰も気にも留めないだろう。厄介ごとに首を突っ込まないのがこの世界で長生きする秘訣なのだから・・・



「いや・・・この世界に限った事じゃないか・・・さ、私は次のお仕事までショッピングでもしてこよーっと♪」

 誰に聞かれることも無い呟きを残して少女は鼻歌を歌いながら繁華街へと足を向けるのであった。
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