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双新星編
裏本編1 ああ!女神様!
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あの日のこと、あの時のこと。
私は鍵付きの引き出しを開ける。
中には色褪せた2枚の写真、古ぼけたお菓子の缶。
写真を手に取る。
古ぼけて色褪せてしまっているが、昨日のことのように思い出す。
当時は苦しく、辛く思っていた。
時が経った今なら思える・・・
あの時間に勝る時は、もうこの先ずっと来ないだろう。
私の甘く、酸っぱく、そして苦い想い出。
今も色褪せず胸にある。
_____________________________________
ぼくはある日、転移した。
ある日、事故に合い、それで命を落とし、神様に力を授けていただいて、異世界に転移した。
異世界での生活は楽しかった。神様から授けてもらった力を使いモンスターをなぎ倒し、現代の知識を使って様々なものを発明し、人々に感謝された。
まるでぼくが好きな漫画の主人公のようだった。なのに・・・
「うわああああああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああ!!!!!」
白銀の毛並みの狼達がぼくたち異世界転移者を食いちぎる。
狼たちは倒しても倒しても次から次へと現れる。
もうすでに5人が倒れて動かなくなり、狼に肉を食いちぎられている。
「おい!君!魔法使いだろ!?援護してくれ!」
目の前でバックラーに片手剣の剣士が狼の牙を何とか防ぎながら叫ぶ。
(はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ!)
「はや・・・はやく!!!!!!はや・・・・あ、あああああああああああ!!!!!!!」
横から3匹の狼がその剣士に飛び掛かり肉を食いちぎりだした。
「い、い゛だい゛・・・やだ!やだ!おかあさああああああああ!!!・・・あ・・・あ・・・・・・」
「う、うわああああああああああああ!!!!」
ぼくは背を向けて走り出した。
すると首に手傷を負った狼がぼくを追いかけてくる。
「い゛や゛だ!い゛や゛だ!死゛に゛た゛く゛な゛い゛ーーーー!!!!」
みっともなく叫びながら必死に逃げるぼく。しかし、足がもつれて転んでしまった。
迫りくる狼の牙。
それをぼくは杖を使い無我夢中で防ぐ。生暖かい息と涎がぼくの顔にかかる。
ぼくはあまりの恐怖に手傷を負った首元に火属性の魔法を滅多矢鱈に打ち込んだ。
絶命したのか狼は力なく『ズルっ』とぼくにのしかかった。
狼を押しのけ立ち上がると、すでにもう二匹の狼がぼくを目掛けて走ってきているところだった。
ぼくは失禁し、「死んだ・・・」と判断も思考も何もかもを手放したその瞬間、
「はぁ~・・・・なんだよ。”外れ”ばっかじゃねぇか。」
空から声がして、浪人が降ってくると同時にぼくに走ってきていた狼が魚の開きのように真っ二つになった。
その後は侍がスキップするかのように鼻歌を歌いながら片手を懐に入れたまま、もう片方の手で向こう側が透けて見えるような薄い刃の刀を振り回し、次々に全ての狼を二枚卸にしてしまった。そして軽々とこう言ったんだ。
「じゃー、どっちに所属するか決めようか。」
ぼくは初日から布団を被り泣いていた。こんなところは一秒も居たくなかった。
同室のヤンキーみたいな軽戦士風の男はぼくをしょっちゅう蹴ったり、物を投げてきたり、笑ったりしてきたが、ぼくはそれでも何も言わず、やり返しもせず、ただただ泣ていた。
同じく同室の木こり風の男は無口でぶっきらぼうだが、自分が食事に行く度にパンや果物を持ってきてくれて、ぼくが嫌がらせを受けていると静かに「やめてやれ」とかばってくれた。
もう一人の剣士風の男はあまり部屋に居なかった。
ぼくがここにきて3日目の朝。
泣き疲れてまどろんでいると、
「おっきろー!朝だぞー!」
いきなり布団をひっぺ剥がされる。
久しぶりにまともに見た視界は
勝気なボブカットの女の子。
お互い目が合うと、相手の女の子は見る見るうちにトマトのように赤くなり、
「わっ!ごめんなさい!間違えました!」
ぼくに謝罪し、そそくさと剣士君のベットに行った。ぼくはまた布団を被って丸まった。
さっきの女の子と剣士君が何やら話して、どうやら剣士君が風呂のために部屋を出ていったようだ。
「おい、デブ!お前も風呂入ってこいや、くせえんだよ!」
「やめ・・・やめてよ!!!!」
軽戦士君がぼくの嫌がらせのためにベッドに乗っかりぼくの布団を引っぺがしにかかり、ぼくは何とか抵抗しようと声をあげた。
「やめてやれ。」
「こんな奴が異世界救った勇者かよ?情けねー。」
木こりが静かに声をかけるが、それを聞いても軽戦士君はやめる様子は無く、ゲラゲラ笑いながらぼくを蹴った。ぼくは布団を取られて、頭を抱え蹲ることしかできなかった。
「ちょっと!あなた!やめなさい!」
さっきの女の子がそう言ってぼくを言葉でかばってくれる。
「えー?アンタ関係ないだろ?ったく、情けねぇ!俺は元々日本にいた時でも、有事の際に国を守るためなら全然戦えたね~。」
銃を持って『バンバン!』と撃ってるようなジェスチャーをする。
「あーやだやだ。俺が命をかける奴にはこんな情けない奴も混じってんのかー。例え日本に帰っても命かける気無くしちゃうなー。」
「・・・あんた、戦いが怖くないのね。」
「怖いけど、こんな情けない姿さらすよりマシだから全然戦えるわー。」
「だったら私にかかってきなさい。」
「へっ!?いや・・・俺とアンタは味方同士だろ?味方同士で争うなんて・・・」
女の子が冷たい目で軽戦士に言うと、嘲笑うようにぼくを蹴っていた軽戦士が気圧されたように後さずる。
「・・・別に殺し合いじゃないわ。稽古つけてやるって言ってんのよ。」
すごく平坦な声に刺すような視線。
「い、いや・・・・」
「つべこべ言わずかかってこい!!!!!!!!!!」
物凄い覇気で空気が震える。
「ひ、ひぃぃいぃ・・・」
軽戦士が情けない声を上げながらぼくのベッドから落ちた。
「おい、早く立ちなさい。何をやってる。一合もやりあえてないでしょ?」
軽戦士よりはるかに小さいその女の子はさっきの刺すような視線で軽戦士を上から見下し、冷たく言い放つ。
軽戦士は尻もち着いたまま、全身から汗を吹き出し、涙目になりながら、失禁した。
「私は弓使いよ。あなたは戦士で、この距離はあなたの領分。それで一度もかかって来れないなんて、あなたそれでよくそんなデカい口叩けたわね。
私が拾ったのが剣士君で、あなたじゃなくてよかったわ。あなただったら昨日のうちに私の部隊から死者が出てたところよ。」
「誰が死んでいたか言わなくても分かっていると思うけど」と、付け足して女の子は軽戦士から興味を失ったかのように一瞥をくれてから、ぼくのベッドに移動してくる。
軽戦士はそのまま逃げるように自分のベッドに潜り込み毛布を被ってガタガタ震えだした。
ぼくと同じ目線にしゃがんだ彼女はぼくに対し、
「ねぇ、あなた。こんなところにいきなり連れてこられて、戦争しろなんて言われて、震えてしまうなんて仕方のないことなのよ。それを恥ずかしいなんて私は思わないわ。」
優しくぼくの両肩に毛布かけ、そう諭すように言った。
「でもね。勘違いしないで。ここは安全よ。危険な場所なんて無いわ。だって私が守るもの。敵なんて来させないわ。
だからね、ちょっとずつでも頑張ってみない?先ずはベッドから出て、次は部屋から出る。
それが出来たらお風呂に入って、食事をしましょう。買い物にも行きましょう。
大丈夫、怖いなら私が手を握ってあげる。手を引いてあげるわ。だから、ね?頑張ろう?」
と、言って何日も風呂に入ってない震えるぼくの手を取って優しく包むように握ってくれる。
まるで女神さまのような優しい目に、ぼくは心を奪われて完全に呆けてしまった。
ペタペタとこちらに歩いてくる足音を聞いて女神さまがぼくから離れる。
「ありがとう、生産職の俺では出来ないことだった。」
きこりが女神様にぶっきらぼうに言うと、
「いいのよ。あなたも大変だったね。」
と、返した。
部屋に帰ってきた剣士君が「何があったの?」と言ったが誰も説明しなかった。
何があったか聞こうとする剣士君の背中を押していく女神様。
部屋を出る瞬間、ぼくの方に向かって小さく手を振り出ていった。
「なあ」と木こりが聞いてくる。
「俺たちも風呂と食事に行かないか?」
ぼくは頷き、ようやくここでの一歩を踏み出した。
これがぼくと女神様の出会いだった。
私は鍵付きの引き出しを開ける。
中には色褪せた2枚の写真、古ぼけたお菓子の缶。
写真を手に取る。
古ぼけて色褪せてしまっているが、昨日のことのように思い出す。
当時は苦しく、辛く思っていた。
時が経った今なら思える・・・
あの時間に勝る時は、もうこの先ずっと来ないだろう。
私の甘く、酸っぱく、そして苦い想い出。
今も色褪せず胸にある。
_____________________________________
ぼくはある日、転移した。
ある日、事故に合い、それで命を落とし、神様に力を授けていただいて、異世界に転移した。
異世界での生活は楽しかった。神様から授けてもらった力を使いモンスターをなぎ倒し、現代の知識を使って様々なものを発明し、人々に感謝された。
まるでぼくが好きな漫画の主人公のようだった。なのに・・・
「うわああああああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああ!!!!!」
白銀の毛並みの狼達がぼくたち異世界転移者を食いちぎる。
狼たちは倒しても倒しても次から次へと現れる。
もうすでに5人が倒れて動かなくなり、狼に肉を食いちぎられている。
「おい!君!魔法使いだろ!?援護してくれ!」
目の前でバックラーに片手剣の剣士が狼の牙を何とか防ぎながら叫ぶ。
(はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ!)
「はや・・・はやく!!!!!!はや・・・・あ、あああああああああああ!!!!!!!」
横から3匹の狼がその剣士に飛び掛かり肉を食いちぎりだした。
「い、い゛だい゛・・・やだ!やだ!おかあさああああああああ!!!・・・あ・・・あ・・・・・・」
「う、うわああああああああああああ!!!!」
ぼくは背を向けて走り出した。
すると首に手傷を負った狼がぼくを追いかけてくる。
「い゛や゛だ!い゛や゛だ!死゛に゛た゛く゛な゛い゛ーーーー!!!!」
みっともなく叫びながら必死に逃げるぼく。しかし、足がもつれて転んでしまった。
迫りくる狼の牙。
それをぼくは杖を使い無我夢中で防ぐ。生暖かい息と涎がぼくの顔にかかる。
ぼくはあまりの恐怖に手傷を負った首元に火属性の魔法を滅多矢鱈に打ち込んだ。
絶命したのか狼は力なく『ズルっ』とぼくにのしかかった。
狼を押しのけ立ち上がると、すでにもう二匹の狼がぼくを目掛けて走ってきているところだった。
ぼくは失禁し、「死んだ・・・」と判断も思考も何もかもを手放したその瞬間、
「はぁ~・・・・なんだよ。”外れ”ばっかじゃねぇか。」
空から声がして、浪人が降ってくると同時にぼくに走ってきていた狼が魚の開きのように真っ二つになった。
その後は侍がスキップするかのように鼻歌を歌いながら片手を懐に入れたまま、もう片方の手で向こう側が透けて見えるような薄い刃の刀を振り回し、次々に全ての狼を二枚卸にしてしまった。そして軽々とこう言ったんだ。
「じゃー、どっちに所属するか決めようか。」
ぼくは初日から布団を被り泣いていた。こんなところは一秒も居たくなかった。
同室のヤンキーみたいな軽戦士風の男はぼくをしょっちゅう蹴ったり、物を投げてきたり、笑ったりしてきたが、ぼくはそれでも何も言わず、やり返しもせず、ただただ泣ていた。
同じく同室の木こり風の男は無口でぶっきらぼうだが、自分が食事に行く度にパンや果物を持ってきてくれて、ぼくが嫌がらせを受けていると静かに「やめてやれ」とかばってくれた。
もう一人の剣士風の男はあまり部屋に居なかった。
ぼくがここにきて3日目の朝。
泣き疲れてまどろんでいると、
「おっきろー!朝だぞー!」
いきなり布団をひっぺ剥がされる。
久しぶりにまともに見た視界は
勝気なボブカットの女の子。
お互い目が合うと、相手の女の子は見る見るうちにトマトのように赤くなり、
「わっ!ごめんなさい!間違えました!」
ぼくに謝罪し、そそくさと剣士君のベットに行った。ぼくはまた布団を被って丸まった。
さっきの女の子と剣士君が何やら話して、どうやら剣士君が風呂のために部屋を出ていったようだ。
「おい、デブ!お前も風呂入ってこいや、くせえんだよ!」
「やめ・・・やめてよ!!!!」
軽戦士君がぼくの嫌がらせのためにベッドに乗っかりぼくの布団を引っぺがしにかかり、ぼくは何とか抵抗しようと声をあげた。
「やめてやれ。」
「こんな奴が異世界救った勇者かよ?情けねー。」
木こりが静かに声をかけるが、それを聞いても軽戦士君はやめる様子は無く、ゲラゲラ笑いながらぼくを蹴った。ぼくは布団を取られて、頭を抱え蹲ることしかできなかった。
「ちょっと!あなた!やめなさい!」
さっきの女の子がそう言ってぼくを言葉でかばってくれる。
「えー?アンタ関係ないだろ?ったく、情けねぇ!俺は元々日本にいた時でも、有事の際に国を守るためなら全然戦えたね~。」
銃を持って『バンバン!』と撃ってるようなジェスチャーをする。
「あーやだやだ。俺が命をかける奴にはこんな情けない奴も混じってんのかー。例え日本に帰っても命かける気無くしちゃうなー。」
「・・・あんた、戦いが怖くないのね。」
「怖いけど、こんな情けない姿さらすよりマシだから全然戦えるわー。」
「だったら私にかかってきなさい。」
「へっ!?いや・・・俺とアンタは味方同士だろ?味方同士で争うなんて・・・」
女の子が冷たい目で軽戦士に言うと、嘲笑うようにぼくを蹴っていた軽戦士が気圧されたように後さずる。
「・・・別に殺し合いじゃないわ。稽古つけてやるって言ってんのよ。」
すごく平坦な声に刺すような視線。
「い、いや・・・・」
「つべこべ言わずかかってこい!!!!!!!!!!」
物凄い覇気で空気が震える。
「ひ、ひぃぃいぃ・・・」
軽戦士が情けない声を上げながらぼくのベッドから落ちた。
「おい、早く立ちなさい。何をやってる。一合もやりあえてないでしょ?」
軽戦士よりはるかに小さいその女の子はさっきの刺すような視線で軽戦士を上から見下し、冷たく言い放つ。
軽戦士は尻もち着いたまま、全身から汗を吹き出し、涙目になりながら、失禁した。
「私は弓使いよ。あなたは戦士で、この距離はあなたの領分。それで一度もかかって来れないなんて、あなたそれでよくそんなデカい口叩けたわね。
私が拾ったのが剣士君で、あなたじゃなくてよかったわ。あなただったら昨日のうちに私の部隊から死者が出てたところよ。」
「誰が死んでいたか言わなくても分かっていると思うけど」と、付け足して女の子は軽戦士から興味を失ったかのように一瞥をくれてから、ぼくのベッドに移動してくる。
軽戦士はそのまま逃げるように自分のベッドに潜り込み毛布を被ってガタガタ震えだした。
ぼくと同じ目線にしゃがんだ彼女はぼくに対し、
「ねぇ、あなた。こんなところにいきなり連れてこられて、戦争しろなんて言われて、震えてしまうなんて仕方のないことなのよ。それを恥ずかしいなんて私は思わないわ。」
優しくぼくの両肩に毛布かけ、そう諭すように言った。
「でもね。勘違いしないで。ここは安全よ。危険な場所なんて無いわ。だって私が守るもの。敵なんて来させないわ。
だからね、ちょっとずつでも頑張ってみない?先ずはベッドから出て、次は部屋から出る。
それが出来たらお風呂に入って、食事をしましょう。買い物にも行きましょう。
大丈夫、怖いなら私が手を握ってあげる。手を引いてあげるわ。だから、ね?頑張ろう?」
と、言って何日も風呂に入ってない震えるぼくの手を取って優しく包むように握ってくれる。
まるで女神さまのような優しい目に、ぼくは心を奪われて完全に呆けてしまった。
ペタペタとこちらに歩いてくる足音を聞いて女神さまがぼくから離れる。
「ありがとう、生産職の俺では出来ないことだった。」
きこりが女神様にぶっきらぼうに言うと、
「いいのよ。あなたも大変だったね。」
と、返した。
部屋に帰ってきた剣士君が「何があったの?」と言ったが誰も説明しなかった。
何があったか聞こうとする剣士君の背中を押していく女神様。
部屋を出る瞬間、ぼくの方に向かって小さく手を振り出ていった。
「なあ」と木こりが聞いてくる。
「俺たちも風呂と食事に行かないか?」
ぼくは頷き、ようやくここでの一歩を踏み出した。
これがぼくと女神様の出会いだった。
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