羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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双新星編

裏本編3 女神さまにお布施をしよう!

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 その日、ぼくは第二モールへ来ていた。
 理由は先輩へのプレゼントを買いにだ。
 先日、剣士君を見舞いに行ったとき、彼から先輩の好みを聞いたのだ。

(先輩があんなに渋い好みだったなんて・・・)

 彼から聞いた先輩の好みは何と言うか、若い子の好みとしては珍しいものだった。

(まあ、人それぞれだもんな。そういう人も居るか・・・)

 ぼくはモールの食品館でプレゼントを品定めする。

(作戦中でも荷物にならず簡単につまめて、保存性の高いのがいいか)

 ぼくは乾燥の豆菓子コーナーを見て回る。

(あ、これいいかもしれない。)

 乾燥大豆に糖衣をかけたものだ。

(これなら軽いし、保存も効くし、いいかも)

 ぼくは豆菓子を買い、簡単に包んでもらう。

(よし!あとはこれを渡すだけだ!・・・・あ・・・・・)

 そこでぼくは重要なことに気づいた。

(どこに行ったら会えるんだ?)

 肝心なことを忘れていた。



「はあ~~~~~~~~~~~」

 部屋に戻り、自分の机で大きいため息をつく。
 どうしてぼくはこう肝心なとこが抜けているんだ。
 机で先輩へのプレゼントを弄りながら、机に突っ伏す。

「ガチャっ」っと部屋が開く音がして見てみると、木こりだった。
 因みに男軽戦士はあの事件以降どこかへ行ってしまい、部屋に帰ってこない。

「どうした?元気がないな。」

「実はさー・・・先輩のプレゼントを買ったんだけど・・・先輩がどこにいるのか分からないんだ。」

 『ふっ』と木こりが小さく笑い、
「この部屋の並びの4220号室に剣士の知り合いの女の子が居る。彼女らはヘッドシューターさんに目をかけられてるから何か知ってるんじゃないか?」

「ほんとか!?」
  ぼくは『ガバッ』と起き上がり、興奮気味に聞き返した。

「ああ、女子部屋だから・・・」
 きこりが全部言う前にぼくはロケットのように飛び出す!

 廊下を走り部屋番を確認!間違いない!ここだ!ぼくは勢いよく部屋の扉を開けると・・・
 眼前には剣士君を治療していたピンク髪の女の子の着替え中だった。
 お互いに目が合いフリーズする。

「あ、あわ、あわ、あわわわわ・・・・・」
 
 童貞のぼくには刺激の強すぎる光景にうまく言葉が出てこず、そうこうしているうちに固まっていた相手のピンク髪の子の目に見る見るうちに涙が溜まり、

「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
 おもいっきり叫ばれた。すると、

 ドタドタドタドタドタドタ!!!!誰かが猛スピードで走ってくる音。

 ままままままままままままままずいまずいまずい!!!

「あ、あの・・・ぼぼぼぼぼぼくは怪しいものじゃ・・・」
 自分で言っててかなりおかしいと思った。
(どうみても変質者じゃないかーーーーーーー!!!!)
 そう考えていると後ろから殺気が・・・

「おい・・・お前・・・いい度胸だな!最後の言葉は考えたか?」

 鬼の形相をした長身の美女が指と首を鳴らしながら立っていた・・・
 あ・・・あは、あはは・・・オワタ・・・・




 頬を腫れあがらせて、ぼくは正座している。
 うなだれて女騎士さんからお叱りを受けている。

 ぼくは何とか命を取り留めた。
 木こりが後から追いかけてきて事情を説明してくれたのだ。
 だけどもやったことは完全にこちらの落ち度だ。
 大人しく説教を受ける。
 ピンク髪の女の子も女騎士に「聖女様も着替えるときと一人の時はちゃんと鍵を掛けてください!」と叱られ『しゅん』としている。

「まぁ、悪気があったわけではなさそうですので、今回は見逃します。」
 何とか女騎士さんの怒りの嵐が過ぎ去ったようだ。

「ヘッドシューターさんの部屋番号は知っていますが、よく下層の食堂に来ていますよ。もう少ししたら来るんじゃないですか?」

「あ、ありがとうございます!」
 お礼を言って食堂に行こうとドアに手をかける。

「あ、君・・・」

「はい?」
 女騎士さんに呼び止められ振り返ると、

「頑張りなさい。」
 惚れてしまいそうな、かっこいい笑顔でエールを貰った。
(ドキッとした。心臓がバクバク言ってる。)






 プレゼントを胸に抱き、食堂の入口で先輩を待つ。
 暫くすると、
「えー、やだ、もぅ~」
 先輩の声がしたが、沢山の女の子と一緒に来ていた。

 あわ、あわ、あわ、あわわわわわ。
 どどどどどどどうしよう!想定してなかった!!
 というか、なんで考えなかったんだ!!!
 あんなに魅力的な人だ!
 他にも付き合いがあるのは当然じゃあないか!!!!
 どうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ!!!

 迷っているうちに通り過ぎようとしている。
 ぼくはやけくそになって
「あ・・・・・あ、あの!!!!!!!!!!!!!」
 緊張のあまり声量がコントロールできず凄くデカい声が出てしまった。


 先輩が気づいてこっちを見て、声を出そうとした瞬間。

「あーん!?お前何もんだぁ!!!!!!どこの奴だ!!!!」
 取り巻きの女の子がぼくと先輩の間に入りメンチを切ってくる。

(ひいいいいいいい!!!!完全に輩じゃないか)

「ゴラァ!なんとか言えや!!!」

「あ、あわあわ、あわわわわあわ。」

「もう!駄目だよ!この子は知ってる子だから。」

「え!?隊長の知り合いですか。すみません。」
 輩の女の子がばつが悪そうに頭をかく。
 先輩が「みんな先に行っていつもの席取っておいて~」と取り巻きの子たちを先に行かせる。
 去っていくとき、さっきの怖いお姉さんが「お前シャキッとしろ!シャキッと!」と言ってから食堂に入っていった。

「ごめんねー。ちょっと血の気の多い子が多くて。悪い子じゃないのよ?」
 やくざかと思いました、という言葉は飲み込んだ。だってそう言う先輩の顔はまるで元気が有り余っている下の子に向けるお姉さんの様な顔だったから・・・

「それで?どうしたの?」

「あ、あの!これ!」
 ぼくは用意していたプレゼントを先輩に突き出す。

「くれるの?」
 ぼくは目をぎゅっと閉じたまま『コクコク』と無言で頷いた。

「ありがとー!開けていい?」

「ど、どうぞ。」
 緊張する。先輩は丁寧に包装を開け、中身を見た瞬間『ピタっ』っと固い表情で固まった。

「あ、あの、剣士君から、乳製品とか大豆製品がお好きだと聞いたので・・・」
 そういうと先輩は小声で「あいつ、帰ってきたら腹に一発叩きこんでやる」と言ったような気がした。
 優しい先輩がそんなこと言うなんて気のせいだよね?

「あの、お嫌いでしたか?」

「ううん。違うわ。ありがとうね。大切に頂くわ。」
 不安げなぼくに対して笑顔で言ってくれたが、若干顔が引きつっていた。

 先輩は「みんなを待たせているから。」と足早に去っていく。

(失敗したのだろうか・・・)

 ぼくは肩を落としてトボトボと部屋に帰った。

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