羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

文字の大きさ
19 / 157
双新星編

本編6(緑)(緑)(1) その3

しおりを挟む
「はぁはぁはぁはぁ・・・・」

 隊長と一緒に何とか滝つぼから這いあがる。
(水を飲んでるな・・・)
(聖女様これは不可抗力・・・そう!不可抗力ですから・・・)

 隊長に人工呼吸をする。
『ゲホッ』と水を吐き呼吸が安定する。

(よかった・・・一先ず隊長は大丈夫そうだ。後はぼんぼんだ。)

 滝つぼからうっすら血が上がる。

(そこにいるのか?ぼんぼん。)

 滝つぼに潜水し、底に沈んでいるぼんぼんを引き上げる。
(傷は浅そうだが、呼吸してない!ああ!クソ!恨むぜ!ぼんぼん。)
 ぼんぼんに人工呼吸と心臓マッサージを施す。根気強く繰り返すと水を吐き、呼吸しだした。

「おい!ぼんぼん!おい!おいってば!」
 僕はぼんぼんの頬をぺちぺちと叩く。

「うう・・・ん・・・」
 ぼんぼんの目が薄く開く。

「ぼんぼん、どうだ?立てるか?」

「剣士君・・・っいつ!!」
 ぼんぼんは足に力を入れて立とうとした瞬間、顔を歪める。

「滑落したときか、足をやったな・・・」
 僕は辺りにぼんぼんを隠せるところがないか探る。すると滝の裏側に丁度、人一人分の空間を見つけた。僕はぼんぼんの元へ行き、

「ぼんぼん、支えるから立てるか?あそこまで頑張ってくれ。」

「わかった。迷惑かけてごめん・・・」
 謝罪し、承諾するぼんぼんを支えながら立った瞬間、

「ぐっ・・・」
 視界がぐらつき身体に激痛が走る。

「お、おい・・・大丈夫か?」
 ぼんぼんが心配そうな顔で見つめる。

「へ、お前が重いからぐらついたんだよ。ちょっと痩せてくれ。」
 体の状態を気取られないように軽口を叩いて誤魔化しにかかる。

「そそそそそんなに重くないよ!・・・たぶん。」

 恥ずかしそうに顔を赤くするぼんぼん。
(この様子だと気付かれてないな・・・)
 ぼんぼんを何とか滝裏まで運ぶ。

「ぼんぼん、ここで待っててくれ。」

「え?・・・剣士君はどうするんだ?」

「誰か助けを呼んでくる。」

「ま、待ってくれ!一人にしないでくれ!」

 その時、遠くから「こっちの方だ!探せ!!!」と言う敵兵の声が聞こえる。

「大丈夫だ!必ず迎えに来る。またここで会おう。いいな?」

 後ろで僕を呼ぶぼんぼんを置いて、僕は隊長の元へ戻る。
 隊長を負ぶさろうと屈んだ瞬間、ぐらつき受け身も取れず、すっころぶ。

(まだだ・・・まだ・・・持ってくれ・・・)

 身体を起こし、隊長を負ぶさり、川の浅い部分を探して向こう岸に渡っていく。
(ちょっとでも・・・ちょっとでも遠くへ・・・)
 僕は隊長を担いだまま対岸の深い森へ消えていった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

〈完結〉βの兎獣人はαの王子に食べられる

ごろごろみかん。
恋愛
α、Ω、βの第二性別が存在する獣人の国、フワロー。 「運命の番が現れたから」 その一言で二年付き合ったαの恋人に手酷く振られたβの兎獣人、ティナディア。 傷心から酒を飲み、酔っ払ったティナはその夜、美しいαの狐獣人の青年と一夜の関係を持ってしまう。 夜の記憶は一切ないが、とにかくαの男性はもうこりごり!と彼女は文字どおり脱兎のごとく、彼から逃げ出した。 しかし、彼はそんなティナに向かってにっこり笑って言ったのだ。 「可愛い兎の娘さんが、ヤリ捨てなんて、しないよね?」 *狡猾な狐(α)と大切な記憶を失っている兎(β)の、過去の約束を巡るお話 *オメガバース設定ですが、独自の解釈があります

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...