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双新星編
本編12 観測世界 その1
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速い・・・・速すぎる!!!何なんだ!!!この人は!!!
ヘッドシューターさん以上だ!!僕は何とかついて行ってるが女騎士さんはかなり離れてる。
「ふむ・・・いけませんねぇ。」
聖女様を脇に抱え直し、その姿が消えた。
何が起きたのか全く分からない。放浪者さんは後ろも見ずにボソッと呟いたかと思うと次の瞬間には僕の横を走っていて、もう片方に女騎士さんを抱えていた。
女騎士さんも『何が起きたのかわからない』という顔をしていた。
「剣士君、能力を使いなさい。フォーチュンのところで休めばいいんですから。飛ばしますよ!」
そう言って僕を追い抜いて加速する放浪者さん。
聖女様や女騎士さんが出血しているので、途中ダイアウルフが寄ってきたりしたが、
ダイアウルフが僕らを襲おうと追ってきても、速度についてこれず、全く近寄って来れないほど加速している。
(無茶苦茶だ!この人!本当に人間なのか!?)
僕は能力を使い、何とかくらいついて行った。
「どうして・・・どうしてこんなことに・・・」
走っている最中についこぼしてしまう。
その呟きが聞こえたのか、放浪者さんが
「この事態はあなた方が招いたことでもあります。」
と、冷たく言う。
「な、なんで!そうなるんですか!?」
あまりの言い草に僕は怒りがこみ上げる。
「あなたのライブラ神は、この世界では知っている人は全くと言っていいほど居ません。
彼らの集落はライブラを除く神を祀っていました。そこに新たなライブラと言う神が舞い込んでくる。
その時、彼らは変化と選択を迫られたのです。」
「な、なにを・・・」
「ライブラを許容し、新たに迎え入れ、習合するのか。それとも拒否し今までのように、と原理主義を取るか。二つに一つを。そして、今まで纏まっていたものが2つに割れる。」
心当たりがありすぎた。シスターとノッポさんだ・・・
「人はその知性から様々な理念、思想、生き方を持ちます。
しかし、多くの人が自分の考えが最も優れているんだ、と考えに囚われます。
考えに囚われてしまえば、その他の考えは取るに足らないものになり下がります。
そして自身の優れた考えに同調出来ない者に怒りや不快感をあらわにするのです。
それを互い互いに思っていて、互いが相手に対して不快感を抱きます。
お互いこう思っているんです。『あいつらはなんであんなに馬鹿なんだ?どうしてこの考えが理解できないんだ!?』ってね。あとはなし崩しに争うだけです。」
「どうすれば・・・どうすれば・・・よかったんですか!?」
抱えられている女騎士さんが半ば抗議のような声で言う。
「人が理念や思想を持つのは当り前のことなんです。その思いを共有できる者たちだけでコミュニティを作り、違う考えの者から遠く離れることが最も簡単な方法です。
これは私が取ろうとした方法です。間に合いませんでしたがね・・・。
もう一つは難しい方法で、自身の考えと他人の考えを比べないことです。優れているとか、劣っているとか。こだわりを持たないことです。
自身の考えは持っても、こだわりがなければ、違う考えの人と出会っても『そう言う考えの人もいるんだな』で終わります。相手の考えに同調しなくても尊重してあげる。他者との違いを認めるです。
そして互いの領分を犯さない適切な距離を保つ。
でも、この方法は扱える人は少ないでしょうね。
なぜなら、元居た世界でも国家が違う、人種が違う、経済が違う、文化が違う、宗教が違う、理念が違う、風習が違う、ありとあらゆる違いで血塗られた歴史を歩みましたから。」
「それだと土地も財産も文化も、みんな捨てなければならないじゃないですか!」
僕も放浪者さんの言い分に抗議の声をあげる。
「そうですよ。でも、元居た世界と違い、この狭間世界に守りたい土地や文化なんてあるんですか?
おまけに人もひしめき合ってはいないですし。危険地帯だらけですが、ある意味ここでだと、いくらでも距離が取れます。元居た世界なら、きっと守りたい土地、文化、財産、人々があるから私が言うような事はなかなか出来ないでしょうがね。」
確かに・・・この世界で守りたいものなんて僅かな仲間ぐらいなものだ。
では・・・さっさと距離を取らなかった僕らが悪いのか。
いや・・・そうだ。僕はあの歓迎会のとき離席した数十人のぽっかりと開いた空間に妙な不安感を抱いていた。
しかし、その後の争いとは無縁の生活を明るく楽しんでいる聖女様を見て、不安感を心の奥に押し込めてしまった。
嫌がらせが始まっても、ここの人は過激な、一線を超えることはしないだろうと、勝手にバイアスが働いていた。3人で過ごす争いのない、あの生活に浸って勝手にそう思いたかったんだ。
放浪者さんの話はショックだった。
「僕たちが・・・僕たちが・・・あの平和な人たちを殺してしまったのですか・・・」
「きっかけはあなた方です。後は違いを容認できない人の”性”が彼らを殺しました。」
女騎士さんが、
「あなたの・・・あなたの話は・・・厳しすぎる!気持ちの逃げ場が無い!!」
と非難する。
「すみません・・・私の良くない性分ですね。フォーチュンにも理屈バカとか、よく言われてしまいます。」
放浪者さんがばつが悪そうに苦笑いを浮かべて、話はそれまでとなった。
ヘッドシューターさん以上だ!!僕は何とかついて行ってるが女騎士さんはかなり離れてる。
「ふむ・・・いけませんねぇ。」
聖女様を脇に抱え直し、その姿が消えた。
何が起きたのか全く分からない。放浪者さんは後ろも見ずにボソッと呟いたかと思うと次の瞬間には僕の横を走っていて、もう片方に女騎士さんを抱えていた。
女騎士さんも『何が起きたのかわからない』という顔をしていた。
「剣士君、能力を使いなさい。フォーチュンのところで休めばいいんですから。飛ばしますよ!」
そう言って僕を追い抜いて加速する放浪者さん。
聖女様や女騎士さんが出血しているので、途中ダイアウルフが寄ってきたりしたが、
ダイアウルフが僕らを襲おうと追ってきても、速度についてこれず、全く近寄って来れないほど加速している。
(無茶苦茶だ!この人!本当に人間なのか!?)
僕は能力を使い、何とかくらいついて行った。
「どうして・・・どうしてこんなことに・・・」
走っている最中についこぼしてしまう。
その呟きが聞こえたのか、放浪者さんが
「この事態はあなた方が招いたことでもあります。」
と、冷たく言う。
「な、なんで!そうなるんですか!?」
あまりの言い草に僕は怒りがこみ上げる。
「あなたのライブラ神は、この世界では知っている人は全くと言っていいほど居ません。
彼らの集落はライブラを除く神を祀っていました。そこに新たなライブラと言う神が舞い込んでくる。
その時、彼らは変化と選択を迫られたのです。」
「な、なにを・・・」
「ライブラを許容し、新たに迎え入れ、習合するのか。それとも拒否し今までのように、と原理主義を取るか。二つに一つを。そして、今まで纏まっていたものが2つに割れる。」
心当たりがありすぎた。シスターとノッポさんだ・・・
「人はその知性から様々な理念、思想、生き方を持ちます。
しかし、多くの人が自分の考えが最も優れているんだ、と考えに囚われます。
考えに囚われてしまえば、その他の考えは取るに足らないものになり下がります。
そして自身の優れた考えに同調出来ない者に怒りや不快感をあらわにするのです。
それを互い互いに思っていて、互いが相手に対して不快感を抱きます。
お互いこう思っているんです。『あいつらはなんであんなに馬鹿なんだ?どうしてこの考えが理解できないんだ!?』ってね。あとはなし崩しに争うだけです。」
「どうすれば・・・どうすれば・・・よかったんですか!?」
抱えられている女騎士さんが半ば抗議のような声で言う。
「人が理念や思想を持つのは当り前のことなんです。その思いを共有できる者たちだけでコミュニティを作り、違う考えの者から遠く離れることが最も簡単な方法です。
これは私が取ろうとした方法です。間に合いませんでしたがね・・・。
もう一つは難しい方法で、自身の考えと他人の考えを比べないことです。優れているとか、劣っているとか。こだわりを持たないことです。
自身の考えは持っても、こだわりがなければ、違う考えの人と出会っても『そう言う考えの人もいるんだな』で終わります。相手の考えに同調しなくても尊重してあげる。他者との違いを認めるです。
そして互いの領分を犯さない適切な距離を保つ。
でも、この方法は扱える人は少ないでしょうね。
なぜなら、元居た世界でも国家が違う、人種が違う、経済が違う、文化が違う、宗教が違う、理念が違う、風習が違う、ありとあらゆる違いで血塗られた歴史を歩みましたから。」
「それだと土地も財産も文化も、みんな捨てなければならないじゃないですか!」
僕も放浪者さんの言い分に抗議の声をあげる。
「そうですよ。でも、元居た世界と違い、この狭間世界に守りたい土地や文化なんてあるんですか?
おまけに人もひしめき合ってはいないですし。危険地帯だらけですが、ある意味ここでだと、いくらでも距離が取れます。元居た世界なら、きっと守りたい土地、文化、財産、人々があるから私が言うような事はなかなか出来ないでしょうがね。」
確かに・・・この世界で守りたいものなんて僅かな仲間ぐらいなものだ。
では・・・さっさと距離を取らなかった僕らが悪いのか。
いや・・・そうだ。僕はあの歓迎会のとき離席した数十人のぽっかりと開いた空間に妙な不安感を抱いていた。
しかし、その後の争いとは無縁の生活を明るく楽しんでいる聖女様を見て、不安感を心の奥に押し込めてしまった。
嫌がらせが始まっても、ここの人は過激な、一線を超えることはしないだろうと、勝手にバイアスが働いていた。3人で過ごす争いのない、あの生活に浸って勝手にそう思いたかったんだ。
放浪者さんの話はショックだった。
「僕たちが・・・僕たちが・・・あの平和な人たちを殺してしまったのですか・・・」
「きっかけはあなた方です。後は違いを容認できない人の”性”が彼らを殺しました。」
女騎士さんが、
「あなたの・・・あなたの話は・・・厳しすぎる!気持ちの逃げ場が無い!!」
と非難する。
「すみません・・・私の良くない性分ですね。フォーチュンにも理屈バカとか、よく言われてしまいます。」
放浪者さんがばつが悪そうに苦笑いを浮かべて、話はそれまでとなった。
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