52 / 157
双新星編
ラストエピソード 本編0プロローグ 妹
しおりを挟む
お兄ちゃんが出ていった扉をじっと見つめる。
お兄ちゃんが遠ざかる気配を感じてから、俯き胸を押さえ息を吐く。
額から脂汗が出て目が霞む。その時だった。
『無理すると死んじゃうんじゃない~?ナースコール押したら~?』
顔を辛うじて上げると足元にニコニコと笑いながら座る天秤を持った女の子。
「だ、誰なんです?」
『私~?神様よ~。ちょっとあなたと話したくて来たの。』
「神・・・様?私、死ぬんですか?」
『あ~・・・私はそういうの担当じゃないから。』
「じゃあ、いったい・・・」
『ねぇ、あなた。口では見舞いに来るな~とか、学校行ってるのか~とか言ってるけどさ・・・』
神様は『ニタァ』と口が避けそうなくらい口角を上げて笑いながら、
『本当は分かってるんでしょ?』
「な、なにを・・・」
『うわぁ~とぼけちゃって~』
嬉しそうに話す神様。この人と話していると、どんどん気分が悪くなってくる。
『本当はアイツが学校辞めてることとか、母親に何かあったことも気づいてる。でもあなたは知らないフリをしている。お見舞いに来てほしいから。』
「違う!!!!!!!!!!!」
『違わないわよ。だって私あなたの心読めるもの。』
「いい加減なこと言わないで!人を呼びます!」
そう言ってナースコールを押す。
『無駄無駄~。』
ケラケラ笑う神様。看護師さんはいつまで経ってもやって来なかった。
「どうして・・・」
『あなたやっぱりもう分かってないのね。今ね、世界から色が消えてるのよ。時間が止まっているの。』
そう言って神様は私の水の入ったコップを持ち、
逆さに向けた。
コップの水は一滴も落ちなかった。
『あなた・・・色がもう無いんでしょ。もしかしたら味覚もかな~?それでいてエクレア食べたいだなんて~。あっ!もしかして味がわからなくても昔、大好きなお兄ちゃんと一緒に食べた幸せな記憶に浸りたいからかしら~?』
「やめて!!!!!!!!!!!もう・・・・やめて・・・」
私は神様の責め立てに耐えられず泣き出した。
『負担になりたくないなら、とっとと死になさいよ。中途半端な事して、かまってちゃんしたいのかしら。』
私はまるで小さい子供のように泣きながら『イヤイヤ』と首を振る。
『はぁ~。やっぱ兄妹だわ。負担になりたくない。でも見捨ててほしくない。なんなの。気持ち悪い・・・こんな奴に人生を棒に振る必要あるのかしら?』
神様は冷たい目で私を見てそう言う。
『私が救ってあげるわ~。アンタも。アンタのお兄ちゃんも。つまらない人生を楽しくしてあげる。だから~・・・』
神様は涼しい顔で、
『アンタのお兄ちゃん頂戴ね♪』
「何を・・・言って・・・」
神様はそう言うと『すぅー』と浮いて、天井に消えていく。
「ま、待って・・・取らないで・・・私のお兄ちゃん!取らないでーーーーーー!!!!!」
私は泣きながら叫ぶ。
看護師さんが駆け付け、泣きながら錯乱する私を押さえつける。
その日を境にお兄ちゃんは行方不明になり、
私は嘘のように復調し、退院することが出来た。
そしてもう叶わないと思っていた学校に、もう一度通えるようになった。
だが、家族のいない人生は空虚で色が無かった。
今日は青空。全国的な日本晴れ。
同級生が制服に身を包み、元気に、晴れやかに、友達と通学路を歩いてゆく。
私もその通学路を行く一員だった。
だが私だけ、曇り空だった。すべてが灰色だった。きっと私の目は深く暗いだろう。
学校へ続く坂道。
日の光に照らされて白く光る。
その光り輝く道に向かって私は吐く。
「嘘つき・・・」
「嘘つきめ・・・」
「どこが楽しいだ・・・」
「嘘つきめ・・・」
「殺してやる・・・」
「探し出して・・・殺してやる・・・」
「天秤の神!!!!」
私の呪詛は晴れやかな日の光に溶けて消えていった・・・
to be continued?
お兄ちゃんが遠ざかる気配を感じてから、俯き胸を押さえ息を吐く。
額から脂汗が出て目が霞む。その時だった。
『無理すると死んじゃうんじゃない~?ナースコール押したら~?』
顔を辛うじて上げると足元にニコニコと笑いながら座る天秤を持った女の子。
「だ、誰なんです?」
『私~?神様よ~。ちょっとあなたと話したくて来たの。』
「神・・・様?私、死ぬんですか?」
『あ~・・・私はそういうの担当じゃないから。』
「じゃあ、いったい・・・」
『ねぇ、あなた。口では見舞いに来るな~とか、学校行ってるのか~とか言ってるけどさ・・・』
神様は『ニタァ』と口が避けそうなくらい口角を上げて笑いながら、
『本当は分かってるんでしょ?』
「な、なにを・・・」
『うわぁ~とぼけちゃって~』
嬉しそうに話す神様。この人と話していると、どんどん気分が悪くなってくる。
『本当はアイツが学校辞めてることとか、母親に何かあったことも気づいてる。でもあなたは知らないフリをしている。お見舞いに来てほしいから。』
「違う!!!!!!!!!!!」
『違わないわよ。だって私あなたの心読めるもの。』
「いい加減なこと言わないで!人を呼びます!」
そう言ってナースコールを押す。
『無駄無駄~。』
ケラケラ笑う神様。看護師さんはいつまで経ってもやって来なかった。
「どうして・・・」
『あなたやっぱりもう分かってないのね。今ね、世界から色が消えてるのよ。時間が止まっているの。』
そう言って神様は私の水の入ったコップを持ち、
逆さに向けた。
コップの水は一滴も落ちなかった。
『あなた・・・色がもう無いんでしょ。もしかしたら味覚もかな~?それでいてエクレア食べたいだなんて~。あっ!もしかして味がわからなくても昔、大好きなお兄ちゃんと一緒に食べた幸せな記憶に浸りたいからかしら~?』
「やめて!!!!!!!!!!!もう・・・・やめて・・・」
私は神様の責め立てに耐えられず泣き出した。
『負担になりたくないなら、とっとと死になさいよ。中途半端な事して、かまってちゃんしたいのかしら。』
私はまるで小さい子供のように泣きながら『イヤイヤ』と首を振る。
『はぁ~。やっぱ兄妹だわ。負担になりたくない。でも見捨ててほしくない。なんなの。気持ち悪い・・・こんな奴に人生を棒に振る必要あるのかしら?』
神様は冷たい目で私を見てそう言う。
『私が救ってあげるわ~。アンタも。アンタのお兄ちゃんも。つまらない人生を楽しくしてあげる。だから~・・・』
神様は涼しい顔で、
『アンタのお兄ちゃん頂戴ね♪』
「何を・・・言って・・・」
神様はそう言うと『すぅー』と浮いて、天井に消えていく。
「ま、待って・・・取らないで・・・私のお兄ちゃん!取らないでーーーーーー!!!!!」
私は泣きながら叫ぶ。
看護師さんが駆け付け、泣きながら錯乱する私を押さえつける。
その日を境にお兄ちゃんは行方不明になり、
私は嘘のように復調し、退院することが出来た。
そしてもう叶わないと思っていた学校に、もう一度通えるようになった。
だが、家族のいない人生は空虚で色が無かった。
今日は青空。全国的な日本晴れ。
同級生が制服に身を包み、元気に、晴れやかに、友達と通学路を歩いてゆく。
私もその通学路を行く一員だった。
だが私だけ、曇り空だった。すべてが灰色だった。きっと私の目は深く暗いだろう。
学校へ続く坂道。
日の光に照らされて白く光る。
その光り輝く道に向かって私は吐く。
「嘘つき・・・」
「嘘つきめ・・・」
「どこが楽しいだ・・・」
「嘘つきめ・・・」
「殺してやる・・・」
「探し出して・・・殺してやる・・・」
「天秤の神!!!!」
私の呪詛は晴れやかな日の光に溶けて消えていった・・・
to be continued?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
〈完結〉βの兎獣人はαの王子に食べられる
ごろごろみかん。
恋愛
α、Ω、βの第二性別が存在する獣人の国、フワロー。
「運命の番が現れたから」
その一言で二年付き合ったαの恋人に手酷く振られたβの兎獣人、ティナディア。
傷心から酒を飲み、酔っ払ったティナはその夜、美しいαの狐獣人の青年と一夜の関係を持ってしまう。
夜の記憶は一切ないが、とにかくαの男性はもうこりごり!と彼女は文字どおり脱兎のごとく、彼から逃げ出した。
しかし、彼はそんなティナに向かってにっこり笑って言ったのだ。
「可愛い兎の娘さんが、ヤリ捨てなんて、しないよね?」
*狡猾な狐(α)と大切な記憶を失っている兎(β)の、過去の約束を巡るお話
*オメガバース設定ですが、独自の解釈があります
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる