羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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黄金都市編

黄金都市編その7

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「おー、降りてきましたね~。」

 声をした方を見ると禿げの人がテーブルについており、テーブルに並べられた料理にちょうどご機嫌で舌鼓を打っているところだった。それを見た剣士さんが非難するようなジト目になっている。

「優雅な食事はどうですか?」

「いやぁ~!最高ですね!」

「嫌味のつもりだったんですけど!」

「知ってますよ。」

 剣士さんの嫌味をサラッと流す禿げの人。

「最後のガルムの動きは放浪者さん見えてたんじゃないですか?なんで止めてくれなかったんです?そしたら気絶することも無かった。」
 ん?この禿げの人・・・放浪者って・・・?

「おかしなことを聞きますね~、君・・・」

 ご機嫌の放浪者さんの目がスッと細まり、その顔から笑みが消える。

「今後も同じように言うのですか?私が居ない所で・・・『どうして助けてくれなかったんだ!』って。命を落とした後に。」

 失言だった・・・と言わんばかりにバツが悪そうにする剣士さん。そんな様子の剣士さんに放浪者さんは容赦無く言葉で追い打ちをかけた。

「がっかりですよ。さっきの動きも、今の発言も・・・甘ったれの小僧ですよ。君の飛ばされた転移世界はよっぽどイージーだったんでしょうね?それとも強力な能力におんぶに抱っこか。その能力も、もう満足に使えないんじゃ意味ないですがね。せっかく女騎士さんが君の現状を思って鍛えてくれたのに、あれじゃ彼女に申し訳が立たないでしょ?」

「放浪者殿、もうその辺に・・・」
 見かねた女騎士さんが仲裁に入るも放浪者さんの小言は止まらなかった。

「あなたもフォーチュンも甘やかしすぎでは?まぁ、殆ど手を掛けなかった私が言うのもなんですが。あの程度じゃ登塔なんて諦めてママの作った安全地帯で過ごすんですね。」

「え?フォーチュンって・・・やっぱり・・・。」
 あたしは思わず呟くように声が出る。この人、アーカイブさんが言ってた原初の人だ。

「どうしました?お嬢さん?」
 あたしの呟きが聞こえたのか、放浪者さんが剣士さんから目線を外し、あたしに向かって柔らかい顔を向ける。

「・・・ッの!」
 言われたい放題だった剣士さんが怒りに任せて、ついに手を出した。しかし、放浪者さんはジョッキを片手に目線があたしに向いているにも関わらず、まるで見えているかのように軽々と剣士さんのパンチを片手で受け止め表情一つ変えず、そのまま豪快に投げ飛ばした。

「安い挑発も受け流せない。そんなのでよくもまぁフォーチュンのとこに行くだなんて言ったものです。口だけは一丁前ですね。」
 床に倒れている剣士さんに向かってさらに追い打ちをかけるもんだから、いたたまれなかったのか、剣士さんは勢いよく立ち上がり店を出ていこうとする。

「け、剣士君!?どこに!?」

 女騎士さんが呼び止めるが関係ないと言わんばかりに剣士さんは歩いて行こうとする。しかし放浪者さんの手が伸びグイっと剣士さんの首根っこを掴み椅子に投げ飛ばした。

「座れ。座って食事にしなさい。このお嬢さん方は君の目が覚めるのを待ってたんですよ。食事も取らずにずっと・・・。ちょっと言われたくらいで拗ねてからに。あなたが食べないと彼女らも食事を摂れないではないですか。そちらの手が面白いことになってるお嬢さんから聞く事もあるのに。大丈夫。心配しなくても君のそう言う子供っぽいところとかみんな知ってますから、今更ですよ。」
 剣士さんが椅子に座ったまま拗ねていると、放浪者さんのフォローになってるのか分からないフォローが飛ぶ。

「・・・手が面白い事になってる彼女には知られていないじゃ無いですか!」

 剣士さんが抗議めいた声をあげると、放浪者さんは少し目を泳がしてから

「あ~・・・ん~・・・どうせバレますって♪」

 てへっ♪という様な音が聞こえてきそうな顔。
 剣士さんは大人しく席につく様子だったが、拳を固く握ってワナワナ震えていた。気持ちは分かる。確かに傍から見ていてもムカつく顔をしていた。
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