羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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塔内編

前夜祭

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「あそこかぁ・・・?」

「へい。間違いありやせん。あそこが依頼の集落ですぜ。」

「ヒヒヒ…どいつもこいつも雑魚ばっかだな。」

「流石姐さん。この距離からでも分りますんで?」

「見れば分かるわぁ・・・。見てわからない奴はまだまだケツの青いヒヨッコってことよぉ・・・。」

「すいやせん・・・精進しやす。」

「そんなものでどうにかなるものじゃ無いわぁ・・・。」
 双眼鏡を仕舞い、立ち上がる。

「行きますか?姐さん?」

「ええ・・・はじめましょぉ・・・。手筈通りにと伝えなさい。」

「へい!」

 私は後ろで控えさせていたペットのキングボアのブーちゃんに乗り集落に近づいてゆく。今日はきっと楽しい祭りになるわぁ・・・。




「「待ちなさい!」」

 それは雑用のサブを連れて集落の近くまでやってきた時だった。
 近くの高い岩山に立つ二人の影。

「あなた達見ない顔ね!」
「この先の集落に何の用事!?」

「初めまして。私達は商品の取引に参りましたの~。良い取引をさせていただきたくて。」

 私の言葉に岩山の二人は対応を協議するためかひそひそと何か相談し始めた。

(うわぁ・・・姐さん、普段と全然違う。)

(サブぅ?殺されたいのかしらぁ~?)

(すいやせん・・・)
 小声でサブが呟く。岩山の二人が居なければ今頃地面に顔面から埋めてやるところだったのに。

 協議が終わったのか、二人が口を開く。
「この集落には取引できるようなものはございません。」
「ですが、旅の疲れを癒すのでしたら集落に案内いたします。そうでなければお引き取りください。」

「では、少し休ませていただけますか?」

 私の答えを聞くと二人は手を繋ぎ、

「「ミラクルマジカルメイクアーーーップ!!」」

 黄色と紫色の衣装に変身した。

「おお!姐さん!変身しましたよ!変身!うひょー!テンション上がるな~。お二人さんお綺麗ですぜ!」

 これにはサブが大興奮している。

「あ、ありがとうございます・・・。」
「あ、案内するからついて来なさいよ!」

 サブに褒められた岩山の二人はモジモジと少し恥ずかしそうにしていたが、すぐに岩山を軽くジャンプして降りて、私達に背中を向けて案内しようとする。

「セー●ームーンみたいなものかしら・・・?」

「セー●ームーンって、姐さん・・・。古いですね~。その世代ですか?普通プリ●ュアでしょ?わら。」
 
「せいっ!」
 バキィっ!!
 半笑いで調子に乗ってる雑用にイラっと来たので頭をわし掴みにして、ダイナミック田植えで犬神家オブジェにしてやる。
 先を歩いていた二人は激しい音に振り向く。

「だ、大丈夫ですか!?」
「いったい何があったのよ!?」

「あ、いえ、連れが転びまして。おほほほほほほ。」

(姐さん。その誤魔化しは無理すぎやす・・・。)

 地面に埋まりながら突っ込みを入れてくるとは中々器用なやつね。



「いや~、結構な人数が居ますなぁ~。」

「この塔の中でも傷ついて戦えなくなった人や生活できなくなった人が居ますから・・・そういう人たちが集ってきているんです。私達は危険な人物が襲ってこないかいつも見回りしていて・・・。」
 黄色が色々説明してくれる。

「へぇ~、えらいんすね~。あっ、変身したってことはあっしら警戒されちゃってるわけですね。あははー。」

「す、すみません・・・一応規則ですので。」

「いえいえ~、お気になさらず~。・・・って姐さん?随分静かでやんすね?」

「いや、もういいかな?って」

「え?もうですか?もうちょい楽しみましょうよ~?」

「見知った顔がある。雑魚だけどねぇ~・・・」

「あー・・・そいじゃ、しかたありやせん・・・始めますか?」

「あ、アンタたち・・・何を言って・・・」

「合図はぁ?」

「出しやした。」

「キラリ!シオン!その二人から離れなさい!!!」
 叫びながら急いでこちらに向かって走ってくる女が一人。見知った顔だ。あのチンチクリンの取り巻きの一人。すでに死人の奴だ。どうせ自覚も無いんだろうなぁ・・・自分が死んでいると教えたらどうなるか・・・いやそれで終わらせるのは面白くないか・・・ヒヒヒ。

「久しぶりぃ・・・。えーっと・・・あ~・・・雑魚すぎて名前も浮かんでこないわぁ~。二つ名あったっけ~?まあ会えてうれしいわぁ~」

「さ、サディスティッククイーン・・・。私は二度と会いたくなかったわ・・・。」

 私を見るや否や武器を抜く取り巻きの雑魚。だが構える小刀は小刻みに震えていた。

「小刻みに震えて可愛いわねぇ~・・・。でもぉ、こんなところに居ちゃ駄目よぉ~。」
 
 そのとき、集落の奥で爆発音がすると共に怒号と悲鳴が聞こえてくる。

「ね~、早く非難させてあげないと~。」

 チンチクリンの取り巻きが私から視線を外さずに後ろを気にする。

「行ってください!オトナシさん!ここは私達が!」

 ふーん・・・あの雑魚オトナシって言うのか。ま、明日には忘れてるな。

「で、でも・・・。」

「早く!!」

「わ、わかった。あなた達まともに戦っちゃダメよ!すぐ逃げてきて!」
 そう言い残して音も無く集落の奥に走り去る。

「じゃあ、あなた達が私達の相手ねぇ・・・きひひひひ・・・。」

「気持ちの悪い笑いをするな!化け物め!」
 紫色が強がってくる。こっちが勝気タイプで黄色が大人しめのタイプね・・・フフフ可愛い。この子たちはお持ち帰りね~。

「姐さん!ここはあっしにお任せください!」

「さぶぅ。任せても良いけど、あいつら捕獲できるぅ?」

「言うと思いやした。姐さん。あの変身が珍しいからコレクションにしたいんでしょ?」

「わかるぅ?雑用歴長いだけあるわねぇ~。」

「そりゃもう!姐さんの右腕と自称してやすから!」

「いやそれは無い。キチガイハルバード女のとき逃げ出して人間砲弾にならなかったの永遠に覚えてるから。」

「ちょ・・・姐さん。急に真顔になるのやめてくださいよ。悪かったですって・・・。てか、あのとき逃げなきゃあっし死んでましたよね?」

「お前の命なんぞ空気より軽い。」

「ひどっ!」

「「なにをごちゃごちゃとー!!!」」
 構えもせずリラックスしながらサブと話していると、しびれを切らして突っ込んでくる二人のプリ・・・なんとか。

「じゃー、ちょっくらやってきますんで!あっしの勇姿、見ててくださいよ!」
 それに対して迎え撃つサブ。モブ対モブの熱き一戦の火蓋が切って落とされた!
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