羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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塔内編

お祭り屋台の食べ物をお家で食べる事

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バシンッ!バシンッ!ボゴォッ!
 無機質な部屋に乾いた音が響く。
 
「いや~、流石でしたね~。私の先生もこれで上手く誘導できたと大満足でしたよ~。」

「あらぁ~・・・来てたのねぇ~。私もおもちゃが沢山入荷できて有難かったわ~・・・。部下達もぉ・・・喜んでくれてるしぃ~・・・。まぁ、折角だからゆっくりしていきなさい。ヒヒヒヒヒヒ。」

 長身長髪の蛇のような女がねっとりと言うと、引き続きパンチンググローブを付けた拳でソレを叩いてゆく。彼女の傍らには何人もの部下がジッと静かに控えていた。

「あ~・・・一ついいっすか?」

「何かしらぁ~?あ、あ、新しい、い、依頼かしらぁ~・・・?」

「まーそれもあるんですけどね。あ、依頼はこちらの手紙に纏めてあるんで後で読んでください。アーカイブの方も何やら変な計画立ててるみたいでね・・・って、いや・・・そうじゃなくて、”ソレ”もう死んでません???」

 私はずっとサンドバックになっている男を指さす。
 彼女は私から手紙を受け取ってから、グローブを外し、両手を縛られて吊り下げられている男の顔を不思議そうに確認する。

「・・・・。こ、こういうときはぁ~・・・き、金玉を~・・・ガッっと握りつぶすと元に戻るのよ~。て、テレビが~・・・調子悪い時も~・・・叩くでしょう?」

「ぷっ!・・・懐かしいですね~、それ。今は薄型なんでしないっすよ。」
 あまりにレトロな対処法が出てきて懐かしさのあまり吹き出してしまった。

「まぁ・・・見てなさい・・・ふんっ!」

 蛇女がその大きな手で睾丸ごと包み込みギュムっ!と握る。

「・・・」
 しかし返事が無い、ただの屍のようだ。男の顔はだらしなく緩んでおり瞳孔も開いて、ピクリとも反応しなかった。

「・・・」

「・・・」

 自信満々で元に戻ると言っていた手前、私の方からは何とも声がかけられず、変な沈黙が場に流れた。

「おい・・・。」

「へい!」

 私の後方に控えている部下に声をかける蛇女。それにすぐさま反応していい返事と共に傍まで駆け寄る。

「ゴミを掃除しろ。」

「わかりやした!」

 二つ返事で死体を降ろして、そそくさと運んで行く。

「さ~て!次は誰にしようかしら~♪」

 すでに気持ちを切り替えたのか、蛇女がルンルンで先程の男と同様に吊るされている在庫を見渡す。それに恐怖し怯える在庫達。
品定めするかのように、まるで食肉加工の工場のように吊るされている彼ら、彼女らの間を歩く。蛇女が近くを通る度に彼らは恐怖し、顔は青ざめ、小さい悲鳴が漏れる。

「ん?」

 とある少女の前を通った時だ。蛇女が足を止め、少女の顔を唇が触れそうなくらいの距離で覗く。

「・・・。」

 しかし、その少女ときたら怯えもせず、身動ぎ一つしない。それどころか蛇女すら見ようとしない。

「ん。」

 蛇女が小さく声を出し、まるで手術の執刀医のように手を出し合図すると、彼女の部下がすぐさま飛んできてメス代わりのナイフを渡す。その渡されたナイフを彼女の白い肌の首筋に突き立てて、

「ほうら・・・入って行くよぉ~・・・死んじゃうよぉ~?」

 ニヤニヤと笑いながら、ゆっくりと首に突き刺してゆく。白い肌が破け、鮮血が流れ落ち、その肌を赤く染めあげてゆく。そんな状況にも関わらず、彼女は先程と同様に虚ろな目をしたまま、口からだらしなく涎を垂らすだけで全く反応を見せなかった。

「はぁ~・・・おもんな・・・。おい!コイツ要るか?」

「くださるのですか!?ありがとうございます!頂戴します!やった!新しい新品のオナホだ~。」
 彼女はクソデカい溜息をついた後、先程、ナイフを届けた部下に精神の壊れた少女差し出すと、部下は嬉しそうに貰い受けて、運んでいった。
 首刺されてるし、死なないのだろうか?という突っ込みを入れたくなったが、ここの奴らは死んでいても”使いそう”な奴等ではある。

「・・・羨ましい・・・。」

 ボソッと聞こえる少女の声。ピクリと反応し声の主のところへ行く蛇女。

「こんにちはぁ~。何が羨ましいの~・・・。」

 ニヤニヤと嬉しそうにしながら、反応した娘に話しかける。

「ああなりたいの・・・。ここにいる人達は皆そう思ってる。だって壊れてしまえば楽だから・・・。恐怖も苦痛も感じないから・・・。」

「じゃあ、あなたがそうなってしまう前に楽しんでおかないとねぇ・・・キシシ・・・」

 蛇女はその長い舌で少女の左の乳頭をしゃぶりつき舐めまわしながら、嬉しそうにグローブをはめていく。

「死ね・・・変態サイコパス女・・・。あああああああああああああああああああああ!!!」

 か細い罵倒、それが少女の精一杯の反抗であった。だが、それもすぐさま少女の絶叫にかき消えてゆく。少女の胸を見ると、さっきまで蛇女がしゃぶりついていた左胸の乳首が無い。一方、蛇女は恍惚な表情を浮かべてモッチャモッチャと咀嚼している。

「ん~・・・デリシャス・・・。」

「ま、ママ・・・おらも、おらもご褒美欲しい。」

 背丈3mはあろうかと言う、大きな男が蛇女の前に出ておねだりし始める。

「坊や、この間あげたでしょ?あれで遊びなさい。」

「あれ壊れただす・・・。もう気持ちよくない。なんか白い虫も出てきたし・・・。新しいの欲しいだす。」
 俯きながら体格に似合わない、申し訳なさそうな態度。それを聞いた蛇女は苛立ちながら傍に控えていた部下を呼びつける。

「今月の坊やの小屋の当番は!」

「や、ヤスで・・・す。」

「ヤスを懲罰部屋に放り込んでおけ!!あと、坊やの小屋の掃除をしろ!!」

「わ、わかりました!」

 命令実行のため、すぐさま走って出ていく部下。それを見送ると彼女は猫なで声で大男に話しかけだした。

「ごめんねぇ~。坊や。新しい子あげるわぁ~。どの子がいいの~?」

「チッ・・・また坊だけ特別扱いかよ・・・。」
 控えてる部下の一部から小声ながら不満の言葉が漏れるのを蛇女はギロリと睨みつけ目線だけで制する。実力差がはっきりとしすぎているせいか、不満を抱えつつもさすがに逆らうようなことはしないらしい。

「お、おら!この子が良いだす!」
 大男が指さしたのは先程乳首をもぎ取られた少女。

「あーん。この子はもうママが遊んじゃったけどいいの?」

「いい。ママのお下がり、おら、嬉しい。」

「良い子ね~。でも、後ろの穴で遊ぶのは駄目よ。すぐ壊れるから。」

「わ、わかった、ウンチの穴で遊ばない。おら、ママの言いつけ守れるだす。」

 言うや否や、大男の下半身から出てきたのは一升瓶の様なイチモツ。それを見て少女は何が起きるのか予見し震えだす。

「む、無理よ・・・私、初めてなのに・・・。」

「良かったわね~、坊や。当たりよ~♪」

「へへへ・・・やった!やった!」

「おい、小娘。簡単に壊れるんじゃないぞ。」

「無理!無理だってば!」

「ガキが出てくるところなんだからいけるわ。」
 
 大男がそのイチモツを少女の秘部に押し当て、一気に貫く。

「ひっ・・・がああああああああああああああああああ!!!」

 人とは思えない絶叫が響く。大男は構わず獣のように腰を振り少女を蹂躙し満足そうに微笑む。少女は最初のうちは悲鳴を上げたものの、ものの数分で気絶し、泡を吹いて、為すがままの人形の様に虚ろになった。

「さーて、私は新しいおもちゃを・・・ふーむ・・・」

「あ、あの・・・あの!!!」

 歩き回りおもちゃの品定めを始めた蛇女を呼び止める少女が居た。その少女は全裸ではあるが、簡単な拘束具だけで、部屋を自由に歩き回れるようになっており、血色も他の吊るされている者たちより遥かに良かった。

「おんや?珍しいっすね、この金髪の子。自由にしてていいんすか?逃げちゃわないんです?」
 その様子があんまりにも珍しかったのでつい尋ねてしまいました。

「こいつは特別にしてるのよぉ・・・逃げれる程の力も無いしね。それに・・・きひひひひひ。」

 蛇女は何かを含んだ笑いを浮かべる。あー、これはきっと碌でもないことしてますねぇ・・・

「ど、どうして私だけ自由にさせてもらえるのです・・・か?欲しいものも全部与えてくださいますし・・・。それに・・・シオンちゃんは・・・シオンちゃんは無事なんでしょうか!?」

「そうだなぁ・・・そろそろいいかぁ・・・?おい!サブ!連れてこい!」
 先程まで事切れた男の掃除していた部下を呼び寄せ、命令を下した。小柄で冴えないモブ男が小走りに部屋を出ていき、ふたたびやって来た時には鎖をリード代わりに、両手を地面に付けて四足歩行する紫色の髪の全裸少女を連れて来たのだった。全裸の少女は蛇女の足元へ行くとぺろぺろと足を舐め出す。

「ぶー、ぶーぶー。」

「し、シオン・・・ちゃん・・・。」

「どお?久しぶりのお友達との再会はぁ・・・?コイツにはアンタの分まで拷問を受けてもらっていたのよぉ、お友達に感謝しないとねぇ。」
 ニチャアと楽しそうに蛇女が破顔する。豚のような少女はかつての仲間なのだろうか?その姿にショックを受けて金髪の少女は崩れ落ちる。

「ひどい・・・酷すぎます!」

「可哀想か?」

「あんまりです・・・。」

「じゃ、殺すか。サブぅ~?」
 蛇女があっけらかんとそう言って、脇で控えている部下から剣を受け取り振りかぶる。

「ま、待って!!!」

「え、何?なんで止めたの?折角殺してあげようと思ったのに~。ねぇ?」

「さっぱりでやんす。数か月に一回見れるかどうかの慈悲深い行為でしたのに。」

「おい、サブ。」
 蛇女がモブ男を睨むと、彼は口笛を吹きながら目線を逸らす。

「なんで・・・なんで殺すのですか!?私達に酷いことしないで・・・。」

「おーい・・・なんだこいつ。何も解ってないわねぇ・・・。サブ!説明してやれ。」
 蛇女は苛立ちを覚えたようで部下のモブ男に丸投げをする。モブ男も溜息をついてから金髪の少女に語りかけていく。

「あのね、お嬢さん。あんたらはあの日、あっしらに負けたでやんす。この世界は負ければ全てを失うわけ。つまりお嬢さん方は皆すでに死んでるわけ。生きてないの!分かる???あんだすたん?」
 そう言って、懐から写真を一枚取り出し彼女に見せる。あーあれは私への報告用に使っていた写真だ。

「そんな・・・おとなしさ・・・ん・・・みんな・・・。」

「んじゃ・・・ま!理解したところでぇ~。」
 再び蛇女が剣を振りかぶる。

「ま、待って!」

「なにぃ~・・・?そろそろイラついてきたわぁ~・・・」
 一層蛇女の声が低くなって、目つきも暗く、飲み込まれそうな威圧感が辺りに漂う。

「か、彼女に酷いことをしないで。」

「だからぁ!」

「か、かわりに!・・・代わりに私が・・・私が彼女の代わりをします。」

 そのセリフを待っていました、と言わんばかりに蛇女の口角が上がり、今日一番の笑顔を見せる。

「だってさぁ~!!!!」

「ぶーぶーぶーぶー!」
 パープル豚の彼女も嬉しそうだ。

「あ、ごめん。人に模すことを許すわ。」

「お許しありがとうございます。クイーン。」
 先程まで豚のように蛇女の足をぺろぺろ舐めていた紫髪の女の子が恭しく立膝をつき、頭を垂れて、礼をする。

「彼女があなたの分まで拷問を受けるって。友情って美しいわぁ。」

「あなたほどではございません。クイーン。」

「あらぁ~?家畜のくせにお世辞が上手なのねぇ~。」

「滅相も無い。家畜に嘘を付く知能がありましょうや?この口が発するは全て真実にございます。」

「え・・・え・・・どういう・・・こと?」

「これからとっても楽しくなるってことでやんす。」
 紫髪少女の見上げるその眼差しは尊敬と敬愛を込めたもの。混乱する金髪少女にモブ男が優しく肩を叩く。

「では、クイーン。約束通り私が彼女のお慈悲を行っても?」

「許す。良い音楽を奏でてね。」

「お任せください!一人人員をお借りします。」
 紫髪の少女が立ち上がり蛇女に一礼をすると、ガタイの良い男を伴って、へたり込んでいる金髪の少女の元へ行き、ニコリと笑顔を見せてから、その髪を無造作に掴んでズルズルと引っ張っていく。

「いたい!痛いよ!シオンちゃん!やめて!」
 かつての仲間の叫びにも笑顔を崩さず引っ張ってゆく。そうして移動した先は部屋の奥の暖炉。金髪の少女をその暖炉の前に無造作に放り投げた。

「始まるぞぉ・・・。サブぅ!椅子だ!椅子を用意しろぉ。」

「へい!クイーン!すでにお持ちしてやす!」
 すかさず阿吽の呼吸でロッキングチェアを持ってきているモブ男。こいつかなり優秀だな。

「さっきの言葉は何かな?きらりちゃん。”やめてください?””酷すぎます?”私達はクイーン所持の家畜ってことが理解できてないみたいだね・・・。」

「何を言っているの?シオンちゃん!目を覚まし・・・げほっ!げほげほ!」
 キラリと呼ばれた少女が喋っている途中でシオンという少女が鳩尾に蹴りを入れる。

「ああそうか。先ずは、ご主人様の所持物であるっていう”印”を付けないと・・・。教育はその後だよね。」
 そう言って暖炉の火にくべている、”それ”を取り出す。所謂”やきごて”というやつだ。

「知ってるよね?これ?漫画やアニメにもよく出てくるものね。」

「や、やめて・・・そんなの押し付けられたら・・・」

「あ!大丈夫だよ!私を見て!ほうら!どこも焼き印なんてついてないでしょ?」
 そう言ってシオンがくるっと回って見せる。確かにどこにも焼き印なんてものは付いていない。それにさっきから気になる。あの焼きごて、妙に短いし小さいのだ。
「それじゃ、いくよ~。そっち持ってくれる?」
 ガタイの良い男を指示してキラリという少女の足を開くよう押さえつける。そしてシオンはキラリの秘部を開き、

「待って!待って!!!まさか・・・。やめて!私、初めてなの!そんな事したら赤ちゃんが・・・。」

「そうなの?お揃い”だった”のね、キラリ。私も初めて”だった”よ。それに赤ちゃんの心配なんて要らないよ?だって私達・・・本当はもう死んでるんだからぁぁぁぁ!!!!」
 
 焼きごてが一気にキラリの秘部を貫く。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 股から焼けこげる臭いがする。お構いなしに笑顔でぐりぐりと奥に押し付けるシオン。ずぼっと焼きごてを引き抜くと、秘部から大量に出血し、その焼きごての先には肉片が付いていた。それを何の躊躇も無く暖炉に戻すと、ジュッと音を立てて、僅かに肉の焼けた臭いがした。

「おめでとう。おめでとう~!」
 
「なにが・・・よ!友達だと思っていたのに!親友だと思ていたのに!!クソ女!死ね!アンタなんか死んじゃえ!!」

「うーん・・・言葉遣い直らないなぁ。次は口の中がいいかな~?」
 
 シオンは別の焼きごてを取り出し、キラリに迫る。

「嘘・・・待って!・・・やだ・・・やだやだ!!助けて!誰かたすけてよおおおおおおおお!!!!」

「私もそうだった。今のあなたの様に誰かへの助けを求め、あなたへの呪詛を唱えた!あなたの姿は過去の私。私の姿は未来のあなたよ?さあ、お口開けましょうね~、歯医者さんに来た時のように大きくね!それじゃ、治療をいたしまーす!言葉遣いの治療をねぇ!!!あはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」

 辺りに絶叫が木霊する。それを蛇女は傍らでロッキングチェアに座って目を瞑り満足そうに聞いている。傍に使えているモブ男のサブが彼女に話しかけた。

「いやぁ~。感動的な光景でやんす。」

「サブ。静かにしろ。私は今、音楽鑑賞してるのよ。お前も音楽を集中して聴くときは静かにして欲しいでしょ?」

「音楽・・・でやんすか?はて?」

「分からないか?この友愛が壊れる音が奏でる旋律が。」

「失礼しやした、クイーン。確かに音楽がなっておりやすね。」

 かつての仲間を罵る声。かつての仲間の絶望を笑う声。響く悲鳴と愉悦の笑い。その旋律を静聴し、聴き入る二人を置いてそっと静かに私は部屋を後にした。あーくわばらくわばら。
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