羊頭狗肉のベルゼブブ

人の心無いんか?

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塔内編

塔内編その25

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 小さな宿屋に3人と一匹がテーブルを囲んでいる。椅子から立ち上がり神妙な面持ちの黒髪の女性アドミラルはこのパーティの中で最も頭の切れる存在だった。



「お金を稼がねばなりません。」

「世知辛いな・・・。」

「でもさ!この街に着いて早々に良いお医者さん見つかったのはラッキーだったよね。アドミラルもこうして日常生活出来るくらいになったわけだしさ!」
 青髪の少女アイスエイジは前向きに屈託なく笑うが、黒獣のガルムてっちゃんと栗毛の落ち着いた女性アーセナルは先行きの暗さから表情がさえない。

「しかし、アドミラルの治療費、そしてここの宿泊費、日々の生活費・・・。それらをとりあえず消費者金融から借りることで一時凌ぎしましたが、借りたものは返さなきゃ・・・。みんな仲良く泡まみれになる?」

「や、やだーーーー!!絶対ヤダ!私、アイドルとして返り咲くためにこの塔に来たのよ?ソープ嬢しにきたんじゃないわ!」

「そんなこと言ったって稼ぎの良い仕事なんて、だいたいそういう感じよ?」

「やだやだやだやだ!!やるならアーセナル一人でやって!私はやらない!」

「何言ってんの!働かざる者なんとやらよ!私、ニートは養わないわよ!」

「ニートじゃないもん!アイドルだもん!」

「今、現在ニートでしょ!あんた!」

 アーセナルとアイスエイジの二人が次第に揉めてしまう。アーセナルのきつい言葉にアイスエイジは涙目で反抗していた。どうしてだろう?戦闘になると凛々しく頼りがいがあるのにそれ以外だと実にポンコツだ。そこが愛らしくもあり、彼女がアイドルで成功していた秘訣なのかもしれない。だが、そろそろ止めないと本格的に彼女は泣いてしまいそうだ。私は手を叩いてみんなの注目を集める。

「落ち着いてください。大丈夫です。既に私は追加融資をお願いしに各方面へ働きかけ、僅かですがお金を得ることが出来ました。」

「やったじゃん!これで暫く暮らせる。」

「何言ってるの!それじゃ借金増えて首絞めるだけでしょ。アドミラル、何を考えてるの?」

「アイスエイジは普段こんなですが、確かに結構名の知れたアイドルでファンも居ました。それは偏に彼女の才能と努力でしょう。ポテンシャルはあるのです。・・・黙っていれば(小声)」

「フフン!まあ、当然よね!・・・って、最後なんか言った?」

「いえ何も。・・・ですのでその追加融資で既に衣装、作曲、振り付けを各所に依頼しています。そして今、この街でご商売をされている方にアイスエイジをPRで使って頂けないか交渉中です。」

「本気?この子をアイドルとして売り出すの?本当に成功するの?失敗したら?」

「その時はみんなでお風呂に行きましょう。ト●コ式のね・・・。」

「???」

「あなたの能力(容姿)が最大限生かせる場所よ。」
 アイスエイジがきょとんとして頭に『?』を浮かべていた。そんな彼女にアーセナルがほくそ笑みながら答える。

「えへへ~。ならどちらにしても成功したも同然ね!この仕事貰ったわ!」
 にへら~と笑って自信満々に言う彼女に真実を告げる私には勇気は無かったが、てっちゃんがちょいちょいと私をつつく。

「アドミラル、ト●コ式の風呂ってなんなのだ?」

「・・・性風俗の事です。どうぞ彼女にはご内密に・・・。」

「ああ・・・その方がいいな。」

 暫くの間、はしゃぐアイスエイジを見つめるてっちゃんの目が猛獣とは思えぬほど優しい目をしていた。
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