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塔内編
塔内編その24
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シャークという男が案内したのは立ち並ぶコテージの中でも一際豪華な所だった。中は随分広く5~6人で使っても問題なさそうな広さで、私達はそのままコテージの一番奥、臥具の置いてある場所にまで通される。
「ここを使ってくれ。部屋に一人付けるから何かあったらそいつに言ってくれ。外にも二人立たせておくし、そいつらに言ってもいい。」
用事があれば、と男は言うが、つまるところ監視だ。『逃げれないぞ』という牽制だろうか。無能力の私がカルディアさんを連れてここを突破できるなんて流石に思っていない。ここは大人しく・・・ん?
考え事しているとシャークの背後、コテージの出入口付近にひょっこり顔を覗かせる美しい女性が・・・。私の視線に気付いたのかシャークが後ろを振り向く。その女性を見たシャークの表情に一瞬動揺が走るがすぐに取り繕う。
(なんだ?今の?この女性に何かあるのか?)
『おい。嬢ちゃん!気を付けろ!その女、得体が知れない!』
(どういうことだ?)
『わからねぇよ!分からねぇけど、何かマズい!』
その美しい女性は私達が見ていることに気が付くとコテージに入り、出入口付近からシャークに話しかける。
「ねえねえ!シャーク!今日来た外からのお客様ってその子達なんでしょ?お話したいなぁ~!」
「ダメですよ、勝手にうろついて・・・またリーダーに怒られますよ。」
「ええ~。だって移動以外はずっと籠りっきりだし退屈なんだもん。」
「嫌!お話するの!」
「あ・・・こら!」
そのままコテージの中心部まで入ってきた女性をシャークは捕まえようとしたが、その腕をするりと躱して私達に目の前にやってくる。
「ねえ!あなた達だれ?どうして連れてこられたの?あ!私はねー・・・むぐッ!」
身を乗り出すかのように前のめりに私達に迫り早口で矢継ぎ早に喋る彼女を後ろからシャークさんが口を手でふさぎ拘束する。
「本当にダメですって。もう帰りましょうね。」
「むーむーむー!」
口をふさがれている女性がシャークを睨みつけると、彼の目が”とろん”となって、女性を拘束していた手はだらりと垂れ下がり、ぼーっと棒立ちになる。
「もう!シャークはしばらくそこで立っててね!」
「は・・・い・・・。」
「・・・彼に何をしたんですか?」
「お外の二人と一緒でちょっと黙って貰っただけ~。それよりもあなた達はだれ?アーカイブお姉ちゃんがあんなに拘るなんて何をしたの?」
私は質問をする女性をそっちのけで虚ろなシャークの目の前に手を振ったり反応を見る。しかし、彼の目は焦点が合っておらず、こちらを見ていなかった。
(これはチャンスだ。今なら抜け出せるかもしれない!)
「行きましょう!今がチャンスなんです。」
「え?え?女騎士さん!?」
私はカルディアさん手を取るとコテージの出入口に向かって引いていく。
彼女は多少困惑していたが、このチャンス逃がす手は無い。
『!?後ろだ嬢ちゃん!』
「ダメだよ。」
アパラージタの忠告と共に、後ろから女性の声がすると、金縛りにあったかのようにそのまま一歩も動けなくなってしまう。
「私の質問に答えてないじゃん!ねえ、なんで無視するの?」
彼女の言葉を聞いた途端、身体の自由が効かなくなり、彼女の声が心地よく聞こえだす。
「どうしたんですか!?女騎士さん、しっかり!」
『嬢ちゃん!嬢ちゃん!しっかりしろ!・・・くそ!』
目の前で心配そうにカルディアさんが私を見ているが、それに対して私は何も返せない・・・。頭がふわふわと気分が高揚して気持ちがいい・・・何も考えられない・・・目の前の美しい女性のこと以外は。
「あれ~?結構強めに掛けたのにな~?あなたどうして私の偏愛強要が効かないの?不思議な人!」
ラバーズ!?この人がラバーズ!七祖の一人、フォーチュンさんの仲間!
「これ・・・能力なんですか!?彼女に対する能力を解いてください!」
「あなた達が無視するから。お話したら解くよ~。」
「こんな無理矢理・・・酷いです!」
「あなた達にちょっと興味があるだけじゃん!なによ!そんなに怒んなくてもいいじゃん!」
「ら、ラバー・・・ズ・・・。」
私は何とか口を動かし、彼女の名を呼ぶと、
「お?この人すごーい!私の能力に抵抗してる~。でもダ~メ♪」
ああ・・・なんだかもっともっと気持ちよくなってきた・・・。こんな気分は久しぶりだ・・・。ラバーズさんが私の股間辺りを見てクスクスと笑っている。笑ってくれると私も気分がいい。
「あら?あらあらあら?ごめんね~。後で履き替えてね。・・・それじゃ、質問。そうだなぁ~?さっき私の名前呼んだけど、もしかして私のこと知ってる?」
「は・・・い・・・。」
「女騎士さん、女騎士さん!」
橙色の髪の女の子が私を揺さぶってるが・・・この人・・・誰だっけ?
「君、邪魔。能力効かないし、ちょっとどいてて!」
「あう!」
橙色の女の子が突き飛ばされ倒れこむ。いや・・・どうでもいいか。この頭に響く声も何もかも。目の前のラバーズ様以外どうでもいい・・・。
「う~ん・・・どこで知ったんだろ?私こんな人あったこと無いと思うんだけど・・・。拠点にこんな人居たっけな?昔の記憶も曖昧だし・・・なんでこんなところに居るのかも分からないし!う~・・・イライラする!」
「ラバーズ様のことは・・・トータルワークス様とフォーチュン様から聞きました・・・。」
「え?トータルとお姉ちゃんから!?どこで会ったの!?教えなさい!」
「フォーチュン様とは、あの御方が作られたセーフゾーンの森で数十年生活を共にしていました・・・。トータルワークス様はそこに行商人として定期的に訪れていました・・・。」
「数・・・十年?行商人!?嘘言わないで!私達は拠点で戦っていた!」
「・・・私はかつての仲間の話をその二人から聞いたのです・・・。二陣営で争い、死んでしまった仲間の話を・・・。」
「死ん・・・だ・・・?誰が!誰がよ!!」
「ラバーズ様を含め3人が死んだ。そう聞いています・・・。」
「嘘・・・嘘よ!!!・・・そうだ。お姉ちゃんに・・・この先に居るフォーチュンお姉ちゃんに会えばみんな分かる!こいつが嘘つきってことも!」
ラバーズ様が動揺してらっしゃる。ああ・・・カワイソウ・・・可哀想なラバーズ様。
「フォーチュン様はこの先には居ません・・・。フォーチュン様が居るのは下です。下層に居ます。」
「違う・・・違う違う違う!そんな事ないもん!アーカイブお姉ちゃんが言ってたもん!この先でフォーチュンお姉ちゃんが私の事を待ってくれているって!!嘘つき・・・嘘つき!!あなたなんか嫌い!大っ嫌い!!!死んじゃえ!!!」
ああ・・・ラバーズ様が走っていかれる。ああ!置いていかないで・・・さみしい・・・。
ああ・・・でも、追いかけられない。そういう風に言われていないから。
そうだ・・・”死んじゃえ”。彼女の望みだ・・・死ななくちゃ・・・死ななくちゃ・・・死ななくちゃ・・・。死ぬ・・・死ぬ・・・死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
「ダメ!!!!」
ハッとして目の前を見るとカルディアさんが目をぎゅっと閉じて必死に私の腕にしがみつき、目一杯引っ張っている。その私はアパラージタを抜き刃を自身の首に突き立てていた。
ゆっくりと力を抜いて自分の腕を降ろすと、カルディアさんがほっとした様子でへなへなと座り込んだ。
『まさかこんな形で使っちまうとは・・・』
「良かった・・・良かったです。私じゃ止めれなくて・・・刃が突き立って・・・死んじゃったかと思いました。切れ味の悪い剣で良かったです。」
『失礼なお嬢ちゃんだな!こいつ!俺様が能力で守ったんだよ!』
(ちょっと黙っててくれ。)
『俺の扱い酷くない!?』
「もう大丈夫です。ご心配おかけしました。」
落ち着かせるためにへたり込んだ彼女の肩に手を置いて、そっと優しく撫でるが、かなり気持ちが高ぶっしまっている。どうもかなり切迫した事態だったようだ。
「おい!お前ら!何もされてないか!?身体、変だったりしないか!?」
私と同様意識が戻ったのか、シャークが私達に駆け寄り問い詰めてくる。身体?・・・そういえば下が冷たい・・・。
私は視線を下に向けるとあまりの情けなさに死にたくなった。
「ま、まぁなんだ・・・大したことは無い。彼女、単に私たちが珍しかっただけで、どういう冒険をしたかとか話したら満足して帰りましたよ?」
「本当か?」
「本当ですよ。」
本当は死ぬほど辱められてるよ!でも、ここは冷静に・・・そう、冷静に。
彼と視線が交錯する。私は必死にポーカーフェイスを維持する。しばらくジッと見つめられた後、シャークは『ふぅ・・・』と溜息をつき、
「そうか・・・ならいいんだ。」
「それと・・・その・・・着替えたいので退室してくれないか?」
シャークはそこで初めて私の股に染みが出来ているのに気づいたようだ。
まさか囁くだけで性的な高ぶりを覚えさせられるほど強力な能力だとは思わなかった・・・。放浪者さんが肉体系より精神系が怖いって言ってたが・・・身に染みたな・・・。
「わ、悪い!何かあったら声を掛けてくれ。」
何とか誤魔化せただろうか・・・。彼は顔を真っ赤にしてそそくさとコテージを出ていく。
彼女がラバーズの能力を語ったところ辺りまでは覚えているが、その後の記憶があやふやだ。何をされたのか・・・カルディアさんから事情を後で聞くとして、シャークに知られるとまずいことになるだろう。今のでうまく誤魔化せたと思いたいが・・・。
私はカルディアさんを支えて寝具の所まで行き、自身の着替えをしてから彼女を落ち着かせた。
(これで脱走は暫く無理だろうな・・・。再びのチャンスを待つか・・・あるいは剣士君が助けに来てくれるのを待つか・・・。)
自分で思ってて笑みが零れる。彼の甲斐性を考えたら何故か颯爽と助けに来るビジョンは一ミリも浮かばないのだ。
(原生生物に追い回されてみんなの名を怨みがましく叫んでる絵面は簡単に想像出来るんだけどな~。)
まぁ、あれでやるときはやる男だからな。きっと何とかしてくれるはず・・・。
・・・たぶん・・・おそらく、メイビー?
あと・・・今晩はしっかり泣こうと思う・・・。
「ここを使ってくれ。部屋に一人付けるから何かあったらそいつに言ってくれ。外にも二人立たせておくし、そいつらに言ってもいい。」
用事があれば、と男は言うが、つまるところ監視だ。『逃げれないぞ』という牽制だろうか。無能力の私がカルディアさんを連れてここを突破できるなんて流石に思っていない。ここは大人しく・・・ん?
考え事しているとシャークの背後、コテージの出入口付近にひょっこり顔を覗かせる美しい女性が・・・。私の視線に気付いたのかシャークが後ろを振り向く。その女性を見たシャークの表情に一瞬動揺が走るがすぐに取り繕う。
(なんだ?今の?この女性に何かあるのか?)
『おい。嬢ちゃん!気を付けろ!その女、得体が知れない!』
(どういうことだ?)
『わからねぇよ!分からねぇけど、何かマズい!』
その美しい女性は私達が見ていることに気が付くとコテージに入り、出入口付近からシャークに話しかける。
「ねえねえ!シャーク!今日来た外からのお客様ってその子達なんでしょ?お話したいなぁ~!」
「ダメですよ、勝手にうろついて・・・またリーダーに怒られますよ。」
「ええ~。だって移動以外はずっと籠りっきりだし退屈なんだもん。」
「嫌!お話するの!」
「あ・・・こら!」
そのままコテージの中心部まで入ってきた女性をシャークは捕まえようとしたが、その腕をするりと躱して私達に目の前にやってくる。
「ねえ!あなた達だれ?どうして連れてこられたの?あ!私はねー・・・むぐッ!」
身を乗り出すかのように前のめりに私達に迫り早口で矢継ぎ早に喋る彼女を後ろからシャークさんが口を手でふさぎ拘束する。
「本当にダメですって。もう帰りましょうね。」
「むーむーむー!」
口をふさがれている女性がシャークを睨みつけると、彼の目が”とろん”となって、女性を拘束していた手はだらりと垂れ下がり、ぼーっと棒立ちになる。
「もう!シャークはしばらくそこで立っててね!」
「は・・・い・・・。」
「・・・彼に何をしたんですか?」
「お外の二人と一緒でちょっと黙って貰っただけ~。それよりもあなた達はだれ?アーカイブお姉ちゃんがあんなに拘るなんて何をしたの?」
私は質問をする女性をそっちのけで虚ろなシャークの目の前に手を振ったり反応を見る。しかし、彼の目は焦点が合っておらず、こちらを見ていなかった。
(これはチャンスだ。今なら抜け出せるかもしれない!)
「行きましょう!今がチャンスなんです。」
「え?え?女騎士さん!?」
私はカルディアさん手を取るとコテージの出入口に向かって引いていく。
彼女は多少困惑していたが、このチャンス逃がす手は無い。
『!?後ろだ嬢ちゃん!』
「ダメだよ。」
アパラージタの忠告と共に、後ろから女性の声がすると、金縛りにあったかのようにそのまま一歩も動けなくなってしまう。
「私の質問に答えてないじゃん!ねえ、なんで無視するの?」
彼女の言葉を聞いた途端、身体の自由が効かなくなり、彼女の声が心地よく聞こえだす。
「どうしたんですか!?女騎士さん、しっかり!」
『嬢ちゃん!嬢ちゃん!しっかりしろ!・・・くそ!』
目の前で心配そうにカルディアさんが私を見ているが、それに対して私は何も返せない・・・。頭がふわふわと気分が高揚して気持ちがいい・・・何も考えられない・・・目の前の美しい女性のこと以外は。
「あれ~?結構強めに掛けたのにな~?あなたどうして私の偏愛強要が効かないの?不思議な人!」
ラバーズ!?この人がラバーズ!七祖の一人、フォーチュンさんの仲間!
「これ・・・能力なんですか!?彼女に対する能力を解いてください!」
「あなた達が無視するから。お話したら解くよ~。」
「こんな無理矢理・・・酷いです!」
「あなた達にちょっと興味があるだけじゃん!なによ!そんなに怒んなくてもいいじゃん!」
「ら、ラバー・・・ズ・・・。」
私は何とか口を動かし、彼女の名を呼ぶと、
「お?この人すごーい!私の能力に抵抗してる~。でもダ~メ♪」
ああ・・・なんだかもっともっと気持ちよくなってきた・・・。こんな気分は久しぶりだ・・・。ラバーズさんが私の股間辺りを見てクスクスと笑っている。笑ってくれると私も気分がいい。
「あら?あらあらあら?ごめんね~。後で履き替えてね。・・・それじゃ、質問。そうだなぁ~?さっき私の名前呼んだけど、もしかして私のこと知ってる?」
「は・・・い・・・。」
「女騎士さん、女騎士さん!」
橙色の髪の女の子が私を揺さぶってるが・・・この人・・・誰だっけ?
「君、邪魔。能力効かないし、ちょっとどいてて!」
「あう!」
橙色の女の子が突き飛ばされ倒れこむ。いや・・・どうでもいいか。この頭に響く声も何もかも。目の前のラバーズ様以外どうでもいい・・・。
「う~ん・・・どこで知ったんだろ?私こんな人あったこと無いと思うんだけど・・・。拠点にこんな人居たっけな?昔の記憶も曖昧だし・・・なんでこんなところに居るのかも分からないし!う~・・・イライラする!」
「ラバーズ様のことは・・・トータルワークス様とフォーチュン様から聞きました・・・。」
「え?トータルとお姉ちゃんから!?どこで会ったの!?教えなさい!」
「フォーチュン様とは、あの御方が作られたセーフゾーンの森で数十年生活を共にしていました・・・。トータルワークス様はそこに行商人として定期的に訪れていました・・・。」
「数・・・十年?行商人!?嘘言わないで!私達は拠点で戦っていた!」
「・・・私はかつての仲間の話をその二人から聞いたのです・・・。二陣営で争い、死んでしまった仲間の話を・・・。」
「死ん・・・だ・・・?誰が!誰がよ!!」
「ラバーズ様を含め3人が死んだ。そう聞いています・・・。」
「嘘・・・嘘よ!!!・・・そうだ。お姉ちゃんに・・・この先に居るフォーチュンお姉ちゃんに会えばみんな分かる!こいつが嘘つきってことも!」
ラバーズ様が動揺してらっしゃる。ああ・・・カワイソウ・・・可哀想なラバーズ様。
「フォーチュン様はこの先には居ません・・・。フォーチュン様が居るのは下です。下層に居ます。」
「違う・・・違う違う違う!そんな事ないもん!アーカイブお姉ちゃんが言ってたもん!この先でフォーチュンお姉ちゃんが私の事を待ってくれているって!!嘘つき・・・嘘つき!!あなたなんか嫌い!大っ嫌い!!!死んじゃえ!!!」
ああ・・・ラバーズ様が走っていかれる。ああ!置いていかないで・・・さみしい・・・。
ああ・・・でも、追いかけられない。そういう風に言われていないから。
そうだ・・・”死んじゃえ”。彼女の望みだ・・・死ななくちゃ・・・死ななくちゃ・・・死ななくちゃ・・・。死ぬ・・・死ぬ・・・死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
「ダメ!!!!」
ハッとして目の前を見るとカルディアさんが目をぎゅっと閉じて必死に私の腕にしがみつき、目一杯引っ張っている。その私はアパラージタを抜き刃を自身の首に突き立てていた。
ゆっくりと力を抜いて自分の腕を降ろすと、カルディアさんがほっとした様子でへなへなと座り込んだ。
『まさかこんな形で使っちまうとは・・・』
「良かった・・・良かったです。私じゃ止めれなくて・・・刃が突き立って・・・死んじゃったかと思いました。切れ味の悪い剣で良かったです。」
『失礼なお嬢ちゃんだな!こいつ!俺様が能力で守ったんだよ!』
(ちょっと黙っててくれ。)
『俺の扱い酷くない!?』
「もう大丈夫です。ご心配おかけしました。」
落ち着かせるためにへたり込んだ彼女の肩に手を置いて、そっと優しく撫でるが、かなり気持ちが高ぶっしまっている。どうもかなり切迫した事態だったようだ。
「おい!お前ら!何もされてないか!?身体、変だったりしないか!?」
私と同様意識が戻ったのか、シャークが私達に駆け寄り問い詰めてくる。身体?・・・そういえば下が冷たい・・・。
私は視線を下に向けるとあまりの情けなさに死にたくなった。
「ま、まぁなんだ・・・大したことは無い。彼女、単に私たちが珍しかっただけで、どういう冒険をしたかとか話したら満足して帰りましたよ?」
「本当か?」
「本当ですよ。」
本当は死ぬほど辱められてるよ!でも、ここは冷静に・・・そう、冷静に。
彼と視線が交錯する。私は必死にポーカーフェイスを維持する。しばらくジッと見つめられた後、シャークは『ふぅ・・・』と溜息をつき、
「そうか・・・ならいいんだ。」
「それと・・・その・・・着替えたいので退室してくれないか?」
シャークはそこで初めて私の股に染みが出来ているのに気づいたようだ。
まさか囁くだけで性的な高ぶりを覚えさせられるほど強力な能力だとは思わなかった・・・。放浪者さんが肉体系より精神系が怖いって言ってたが・・・身に染みたな・・・。
「わ、悪い!何かあったら声を掛けてくれ。」
何とか誤魔化せただろうか・・・。彼は顔を真っ赤にしてそそくさとコテージを出ていく。
彼女がラバーズの能力を語ったところ辺りまでは覚えているが、その後の記憶があやふやだ。何をされたのか・・・カルディアさんから事情を後で聞くとして、シャークに知られるとまずいことになるだろう。今のでうまく誤魔化せたと思いたいが・・・。
私はカルディアさんを支えて寝具の所まで行き、自身の着替えをしてから彼女を落ち着かせた。
(これで脱走は暫く無理だろうな・・・。再びのチャンスを待つか・・・あるいは剣士君が助けに来てくれるのを待つか・・・。)
自分で思ってて笑みが零れる。彼の甲斐性を考えたら何故か颯爽と助けに来るビジョンは一ミリも浮かばないのだ。
(原生生物に追い回されてみんなの名を怨みがましく叫んでる絵面は簡単に想像出来るんだけどな~。)
まぁ、あれでやるときはやる男だからな。きっと何とかしてくれるはず・・・。
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