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塔内編
塔内編その19
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「それじゃ、行ってきます!」
「じゃあ頑張ってね、剣士君。これ餞別ね。」
ベスパ様との出発の際、妙に優しい目をしたコレクターさんに小袋を渡される。
「なんです?これ?」
「魔法の収納袋。荷物何でも入るよ~。後その中に私の世界の丸薬入れといたから。君、すごく強いけど、戦闘に継続性無さすぎだね。その薬、リペアちゃんみたいにはいかないけど、身体を治すから・・・。」
「いいんですか?こんなの貰って。」
「いいのいいの。イチゴイチエ?って言うの?君の世界の言葉。良い言葉だよね。ほんとこの世界じゃ次あるか分からないからね・・・。」
「コレクターさん・・・。」
彼女もまた多くの別れを経験してきたのだろう。その経験から来る、表情と言葉には重みがあった。
「因みに”イチゴ”って言ったら他にもこんな言葉もあるんだよね?確か・・・ホベツイチゴ?だっけ?みんな意味教えてくれないのよ~。」
「ソノコトバハワスレテクダサイ・・・・。」
純粋な目をしてそんなこと聞かないで~。誰だ!そんな言葉教えた奴!我が国の恥部です!それ!
「え~、いいじゃんいいじゃん!教えてくれても~。お~い、ベスパ~!!”ホベツイチゴ”って何~?」
既に準備を済ませて、少し離れた位置で僕の準備を待っていたベスパ様に向かって大声でそんなこと言うもんだから、あの走らないお嬢様が大慌てで走ってきて、
「あああああああああああああああああああああああなた何教えてますの!!!!!くだらないことしていないで、行きますわよ!!!」
「違うんです!違うんですって~~~~~!!!」
顔を真っ赤にして怒ったベスパ様が僕の耳を引っ張り、引きずっていく。
「二人とも気をつけてね~~~!!!!」
見送るコレクターさんの顔は満面のニヤつきでその豊満な胸を両手でタプタプと揺らしてやがる。
あの、糞エルフ!知っててやりやがったな~~~~!!!
その後のベスパ様はゴミを見るような目で僕を見てくるし、暫く声も冷たかった。全く散々な目にあった。あのエロフ、今度、会ったらタダじゃおかねぇ!!!・・・・おっふ・・・
_________________________________
珍しく先を行くヴェスパ様。一体どこへ向かっているのかと言う僕の疑問に答えるように口を開いた。
「まずは、あの女騎士とカルディアが働いていた夜のお店に行きますわよ。」
「え?お嬢様が働くんですか?顔は良いので結構良い線行きそうですけど、そんな暇無いですy・・・あだっ!」
「何を馬鹿なこと言ってますの?後、顔”は”とはなんです!?ケツ蹴り飛ばしますわよ!」
「もう蹴ってます・・・。」
「店の方なら女騎士とカルディアの宿泊先知っているでしょう?彼女らの部屋に何か無いか調べますわよ。」
「それって・・・。」
「まあ見てなさい。」
歩きながら話しているうちに、いつの間にか女騎士さんと再会したあのお店の前まで来ていた。
「ついこの間ここで再会したのにな・・・。」
「感傷に浸ってないで入りますわよ。・・・ん?」
「どうしました?」
「閉まってますわ・・・。」
「まー、今お昼ですもんね。」
「ふむ・・・。おい、愚民。従業員用の裏口を見てきなさい。わたくしはその間に別の手を打っておきます。」
「はぁ・・・まぁ、わかりました。」
言われた通り、裏に回って出入口が無いか見てくる。しかし、別の手ってなんだろ?
案の定、裏手には簡素な勝手口があったが、ノブを回しても開く様子が無い。ノックと声かけもしてみるが、中からの反応は無かった。
「仕方がない・・・戻るか・・・。」
独り言を呟いて戻ろうとした時、
「きゃあああああああああああ!!!!!」
建物の中から悲鳴が上がり、けたたましい足音が近づいてきて、勢いよく裏口が開け放たれる。中から飛び出してきたのは、綺麗なお姉さん。美しく染めあげた髪は寝癖でボサボサ、着ている物は薄い官能的なベビードール一枚だ。よっぽど急いで出てきたのだろう、外に出た彼女はその場でへたり込み肩で息をしている。
「あ、あの・・・。」
僕が声をかけると、顔を上げた彼女は”キッ”とこちらを睨みつけ
「さっきのあなたの仕業!?」
「な、何のことです?あ・・・強くドアを叩いたことですか?すみません・・・。」
「そんなんじゃないわよ!!!!あんな・・・あんな・・・。うぇ・・・。」
彼女は怒って叫び、何かを思い出したのか口に手を当てえずいた。そんな事はお構いなしに騒ぎを聞きつけてやって来た、ヴェスパ様がマイペースに彼女に質問しだした。
「もし?そちらの方。ここで働いていた金髪の騎士風の女性とカルディアと言う少女が住んでいた場所を教えて欲しいのだけれど?」
「・・・あ、あなたね!!!さっきの!!!ちょっと齧っちゃったじゃない!!!どうしてくれるの!?」
「心配なさらずとも、毒もありませんし、寧ろ栄養価は高いかもしれませんわよ?」
「え?何したんで・・・す?ヴェスパ様?」
「ちょっとした虫たちを使役して中に人がいないか調べさせましたの。そしたら寝てるとの事でしたので、起こしてきなさい、って。」
「だからって寝てる人の口の中に突っ込むこと無いでしょ!!!しかもあんな・・・あんな・・・。」
また思い出したのか、綺麗なお姉さんが青い顔でプルプルと震えだす。
「仕方ありませんわ。閉め切ってる家屋に侵入できる虫なんて限られていますもの。」
「まさか・・・ヴェスパ様・・・。」
嘘だろ・・・?それは人としてやっちゃいけない・・・。
「あの・・・黒光りしたあいつよ・・・。」
お姉さんがえずきながら恐ろしい事を言い放つ。アレを・・・食ったのか・・・。いや、食わされたのか・・・。どこの拷問だよ!?
「いやいやいやいや!!!!ダメですってそれは!!!殺人強姦の次にやっちゃダメな行為ですって!」
「お、お待ちになって?ここは異世界で見た目似てますけど、元居た世界のあいつとは全然別物ですし、それに安全なのはシャークで実験済みですから!それに殺人強姦の次は盗みでしょ?」
僕がヴェスパ様の行為を攻めると彼女は急にしどろもどろで目が泳ぎ出した。
「シャークさんに?・・・食べさせたんですか!?」
「ね、寝てるのを叩き起こすのに・・・。」
「なんちゅうことしてるんですか!?あなた!その後のシャークさんは!?どうだったんです!?」
「い、至って健康でしたわよ?・・・ただ、何も無い時に急に真顔で涙流すくらいで・・・い、一週間ほどで収まりましたし・・・。」
「精神やられてんじゃねぇか!!!あんた人の心無いんか?」
「これはギルティですわ。」
「まごうこと無きギルティ。」
「さ、昨今は昆虫食も流行ってきて・・・ます・・・し・・・?ですから・・・あの・・・その・・・」
「「・・・」」
美人のお姉さんと二人で無言の圧力をかけていくと、ついには彼女は小さくなり
「ご、ごめんなさい・・・。」
「もうやらない?」
「やりません・・・。」
「次、同じ状況になったら?」
「え?えーっと・・・えーっと・・・致命的でない毒虫を這わせて起こ・・・す?」
「そうじゃねえ!!!」
「そうじゃないでしょ!!!」
「は、はいぃぃぃ!!!」
暫く僕とお姉さんでくどくどと説教することになった。全く嘆かわしい。何てモラルの無い・・・これに比べたら僕の発案したアドミラルさん奴隷化救出作戦なんて可愛いものだな!ねえ?
______________________________
「・・・と言う訳で女騎士さんとカルディアさんの宿泊先を僕らは知りたいのです。」
お嬢様を正座させて怒り倒したら、お姉さんは少し落ち着いて何とか話が出来る状態になったので、とりあえず服を着てもらい、身だしなみを整えて頂いてから今までの経緯をかいつまんで説明する。
「ふーん・・・やっぱりあの二人ライカちゃんのことを調べるために入ってきてたわけねー。危ないからやめときなさいって言ったのに・・・。でも、二人を攫ったのはそこのお嬢さんのお仲間なんでしょ?二人の部屋を調べて何か意味あるの?」
「二人に接触した男は何らかの連絡手段を渡しているはずですわ。そしてその男の名からするとおそらくは追跡能力。二人を追うのに役立つはずです。」
会話する二人を眺める。
(西洋ヨーロッパのお嬢様と港区女子が会話しとる・・・)
二人とも方向性は違うけどお洒落なんだよなぁ・・・。対して僕はと言うと簡素な無地の服上下のザ・モブセット(現地の謎の植物素材で作って貰ったトータルワークス製)
うーん・・・僕も服買おうかな?っていかんいかん!節約せねばな・・・
「なるほどねぇ・・・。よし分かったわ。お姉さんも協力してあげる。従業員のピンチだしね。」
「え・・・危ないですよ?そこまでしていただくわけには・・・。」
「大丈夫大丈夫。こう見えて戦闘職だったし・・・。あ!もしかして、聖夜に情報が筒抜けになると思ってる?そこは信用してもらうしかないのだけれども、私はお金の為にこういう仕事してるけど、別に聖夜のやり方に賛同してるわけじゃないのよ?そのうち手ごろな所で抜けようと思っているし・・・。どっちかっていうと警戒してるのよね~・・・聖夜の事。」
「聖夜って人の事、何か知っているんですか?」
「いや、深くは知らないわよ?ただ、一度グループの懇親会であったことがあるのよ。その時、最初、私は遠くから彼を見ていたの。すっごいイケメンで大量の女を侍らせて。でも女の子を顎で使ういけ好かない奴だったわ。そう思ってたのにね・・・彼が近づいて来てその瞳を見た時、異様な違和感があったのよね・・・。ボーっとして頭が回らないっていうの?彼と何か話したはずなのに、何話したのか全く思い出せない、そんな感じ?ふわふわとして彼の傍に寄ってみたい、触れてみたいって考えがよぎるの・・・。何とかトイレに行くとだけ言って頭から水被ったわ。それ以来、彼とは直接会わないようにしてるのよ。」
何かのマインドハック系の能力なのか・・・。放浪者さんが精神に干渉する能力は最も恐ろしいと言っていたな。彼の威圧感もそうだったが・・・。
僕が顎に手を当てて考えていたら、ベスパ様は僕が彼女のことを悩んでいると勘違いして口を挟んだ。
「いいじゃありませんの。人手は多い方が良いですわ。それにチェイサーからの依頼はライカという女の調査でしょ?あくまで調査なのですから、聖夜と言う人と溝を作らずに済む可能性だってありますわ。」
「まー・・・ライカちゃんが聖夜にぞっこんなのがね~。とりあえず、信用してくれたってことでいいの・・・かな?」
お姉さんが上目遣いで僕の方を見てくる。ちょっとやめてよね!そっちはプロなんだから・・・おっふ。
「お、おほん!・・・ちょっと信用できない部分があるんですよね。」
「え~・・・?」
「あなたになんのメリットがあるんです?」
「まー、確かにね。お店も休むからお金は入ってこないし、助けたところであなた達に見返り求めても何も出ないでしょうし~。確かに無いわね~。」
「怪しすぎますって・・・。」
「強いて言うならあなた達に恩が売れる・・・かな?」
「僕らに恩を売って何の得が?」
「今、私が働いているお店のオーナーの聖夜なんかは金儲けはするけど、本質的にはこの世界の脱出何て考えていないわよ。この街を作って運営してるゴールドラッシュもそう。最前線行ってる部隊は何て言うか・・・効率主義でネジが飛んでる所あるし。その点、君達はそのどれでもないって感じ?カルディアちゃんにしろ、バニラちゃんにしろ。まー、私の勘なんだけどね。パイプ作っておいたらその内化けて、リターンがあるかなって?青田買いだと思ってよ。」
「その愚民に投資だなんて、随分分の悪いギャンブルを致しますのね、あなた。」
「お嬢様?ひどすぎません?・・・まぁ、否定しませんが・・・。」
「あはは。まぁ、そう言うことだから。これが理由じゃダメかな?」
「はぁ~、じゃあ精々ご期待にそえるよう頑張らせていただきますよ。」
「じゃ、OKってことで。・・・あ、もしもし~?ノリコちゃん?ごめ~ん!ちょっと風邪ひいちゃってさ。もしかしたら一か月くらい治んないかも?え?元気そう?いやいや、死にそうなんだって!ほんとほんと~。肝臓が石みたいになってて~。うん・・・うん・・・じゃ、お店の方よろしくね~。」
ついてくることを了承したら、懐から携帯を出して同僚だろうか?に電話をかけて、お店の引継ぎをお願いしていた。
てか、こんな無茶苦茶な仮病の言い訳する人初めて見たぞ?いいのか?あれで・・・
「ごめんごめん。その前に私はミナモね、源氏名だけど。それじゃあ行こっか。」
「あ、あの・・・。」
電話を終えたミナモお姉さんが先導しようとするのを呼び止める。不思議そうに振り向く彼女に僕は・・・
「じ、実はお金が・・・」
「それはダメ。」
「まだ何も言ってない!?」
「というか、軍資金無しなの!?」
あからさまに目が泳ぐ僕を見て彼女は呟くのだった・・・。
「失敗したかしら・・・。」
そんな彼女にニヤニヤと楽しそうに口角を上げたお嬢様が追い打ちをかける。
「諦めなさい~。もう、電話してしまったものね~。一か月は風邪ですものね~。」
それはもう楽しそうに・・・。ミナモお姉さんはただただ頭をかかるのだった・・・。
「じゃあ頑張ってね、剣士君。これ餞別ね。」
ベスパ様との出発の際、妙に優しい目をしたコレクターさんに小袋を渡される。
「なんです?これ?」
「魔法の収納袋。荷物何でも入るよ~。後その中に私の世界の丸薬入れといたから。君、すごく強いけど、戦闘に継続性無さすぎだね。その薬、リペアちゃんみたいにはいかないけど、身体を治すから・・・。」
「いいんですか?こんなの貰って。」
「いいのいいの。イチゴイチエ?って言うの?君の世界の言葉。良い言葉だよね。ほんとこの世界じゃ次あるか分からないからね・・・。」
「コレクターさん・・・。」
彼女もまた多くの別れを経験してきたのだろう。その経験から来る、表情と言葉には重みがあった。
「因みに”イチゴ”って言ったら他にもこんな言葉もあるんだよね?確か・・・ホベツイチゴ?だっけ?みんな意味教えてくれないのよ~。」
「ソノコトバハワスレテクダサイ・・・・。」
純粋な目をしてそんなこと聞かないで~。誰だ!そんな言葉教えた奴!我が国の恥部です!それ!
「え~、いいじゃんいいじゃん!教えてくれても~。お~い、ベスパ~!!”ホベツイチゴ”って何~?」
既に準備を済ませて、少し離れた位置で僕の準備を待っていたベスパ様に向かって大声でそんなこと言うもんだから、あの走らないお嬢様が大慌てで走ってきて、
「あああああああああああああああああああああああなた何教えてますの!!!!!くだらないことしていないで、行きますわよ!!!」
「違うんです!違うんですって~~~~~!!!」
顔を真っ赤にして怒ったベスパ様が僕の耳を引っ張り、引きずっていく。
「二人とも気をつけてね~~~!!!!」
見送るコレクターさんの顔は満面のニヤつきでその豊満な胸を両手でタプタプと揺らしてやがる。
あの、糞エルフ!知っててやりやがったな~~~~!!!
その後のベスパ様はゴミを見るような目で僕を見てくるし、暫く声も冷たかった。全く散々な目にあった。あのエロフ、今度、会ったらタダじゃおかねぇ!!!・・・・おっふ・・・
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珍しく先を行くヴェスパ様。一体どこへ向かっているのかと言う僕の疑問に答えるように口を開いた。
「まずは、あの女騎士とカルディアが働いていた夜のお店に行きますわよ。」
「え?お嬢様が働くんですか?顔は良いので結構良い線行きそうですけど、そんな暇無いですy・・・あだっ!」
「何を馬鹿なこと言ってますの?後、顔”は”とはなんです!?ケツ蹴り飛ばしますわよ!」
「もう蹴ってます・・・。」
「店の方なら女騎士とカルディアの宿泊先知っているでしょう?彼女らの部屋に何か無いか調べますわよ。」
「それって・・・。」
「まあ見てなさい。」
歩きながら話しているうちに、いつの間にか女騎士さんと再会したあのお店の前まで来ていた。
「ついこの間ここで再会したのにな・・・。」
「感傷に浸ってないで入りますわよ。・・・ん?」
「どうしました?」
「閉まってますわ・・・。」
「まー、今お昼ですもんね。」
「ふむ・・・。おい、愚民。従業員用の裏口を見てきなさい。わたくしはその間に別の手を打っておきます。」
「はぁ・・・まぁ、わかりました。」
言われた通り、裏に回って出入口が無いか見てくる。しかし、別の手ってなんだろ?
案の定、裏手には簡素な勝手口があったが、ノブを回しても開く様子が無い。ノックと声かけもしてみるが、中からの反応は無かった。
「仕方がない・・・戻るか・・・。」
独り言を呟いて戻ろうとした時、
「きゃあああああああああああ!!!!!」
建物の中から悲鳴が上がり、けたたましい足音が近づいてきて、勢いよく裏口が開け放たれる。中から飛び出してきたのは、綺麗なお姉さん。美しく染めあげた髪は寝癖でボサボサ、着ている物は薄い官能的なベビードール一枚だ。よっぽど急いで出てきたのだろう、外に出た彼女はその場でへたり込み肩で息をしている。
「あ、あの・・・。」
僕が声をかけると、顔を上げた彼女は”キッ”とこちらを睨みつけ
「さっきのあなたの仕業!?」
「な、何のことです?あ・・・強くドアを叩いたことですか?すみません・・・。」
「そんなんじゃないわよ!!!!あんな・・・あんな・・・。うぇ・・・。」
彼女は怒って叫び、何かを思い出したのか口に手を当てえずいた。そんな事はお構いなしに騒ぎを聞きつけてやって来た、ヴェスパ様がマイペースに彼女に質問しだした。
「もし?そちらの方。ここで働いていた金髪の騎士風の女性とカルディアと言う少女が住んでいた場所を教えて欲しいのだけれど?」
「・・・あ、あなたね!!!さっきの!!!ちょっと齧っちゃったじゃない!!!どうしてくれるの!?」
「心配なさらずとも、毒もありませんし、寧ろ栄養価は高いかもしれませんわよ?」
「え?何したんで・・・す?ヴェスパ様?」
「ちょっとした虫たちを使役して中に人がいないか調べさせましたの。そしたら寝てるとの事でしたので、起こしてきなさい、って。」
「だからって寝てる人の口の中に突っ込むこと無いでしょ!!!しかもあんな・・・あんな・・・。」
また思い出したのか、綺麗なお姉さんが青い顔でプルプルと震えだす。
「仕方ありませんわ。閉め切ってる家屋に侵入できる虫なんて限られていますもの。」
「まさか・・・ヴェスパ様・・・。」
嘘だろ・・・?それは人としてやっちゃいけない・・・。
「あの・・・黒光りしたあいつよ・・・。」
お姉さんがえずきながら恐ろしい事を言い放つ。アレを・・・食ったのか・・・。いや、食わされたのか・・・。どこの拷問だよ!?
「いやいやいやいや!!!!ダメですってそれは!!!殺人強姦の次にやっちゃダメな行為ですって!」
「お、お待ちになって?ここは異世界で見た目似てますけど、元居た世界のあいつとは全然別物ですし、それに安全なのはシャークで実験済みですから!それに殺人強姦の次は盗みでしょ?」
僕がヴェスパ様の行為を攻めると彼女は急にしどろもどろで目が泳ぎ出した。
「シャークさんに?・・・食べさせたんですか!?」
「ね、寝てるのを叩き起こすのに・・・。」
「なんちゅうことしてるんですか!?あなた!その後のシャークさんは!?どうだったんです!?」
「い、至って健康でしたわよ?・・・ただ、何も無い時に急に真顔で涙流すくらいで・・・い、一週間ほどで収まりましたし・・・。」
「精神やられてんじゃねぇか!!!あんた人の心無いんか?」
「これはギルティですわ。」
「まごうこと無きギルティ。」
「さ、昨今は昆虫食も流行ってきて・・・ます・・・し・・・?ですから・・・あの・・・その・・・」
「「・・・」」
美人のお姉さんと二人で無言の圧力をかけていくと、ついには彼女は小さくなり
「ご、ごめんなさい・・・。」
「もうやらない?」
「やりません・・・。」
「次、同じ状況になったら?」
「え?えーっと・・・えーっと・・・致命的でない毒虫を這わせて起こ・・・す?」
「そうじゃねえ!!!」
「そうじゃないでしょ!!!」
「は、はいぃぃぃ!!!」
暫く僕とお姉さんでくどくどと説教することになった。全く嘆かわしい。何てモラルの無い・・・これに比べたら僕の発案したアドミラルさん奴隷化救出作戦なんて可愛いものだな!ねえ?
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「・・・と言う訳で女騎士さんとカルディアさんの宿泊先を僕らは知りたいのです。」
お嬢様を正座させて怒り倒したら、お姉さんは少し落ち着いて何とか話が出来る状態になったので、とりあえず服を着てもらい、身だしなみを整えて頂いてから今までの経緯をかいつまんで説明する。
「ふーん・・・やっぱりあの二人ライカちゃんのことを調べるために入ってきてたわけねー。危ないからやめときなさいって言ったのに・・・。でも、二人を攫ったのはそこのお嬢さんのお仲間なんでしょ?二人の部屋を調べて何か意味あるの?」
「二人に接触した男は何らかの連絡手段を渡しているはずですわ。そしてその男の名からするとおそらくは追跡能力。二人を追うのに役立つはずです。」
会話する二人を眺める。
(西洋ヨーロッパのお嬢様と港区女子が会話しとる・・・)
二人とも方向性は違うけどお洒落なんだよなぁ・・・。対して僕はと言うと簡素な無地の服上下のザ・モブセット(現地の謎の植物素材で作って貰ったトータルワークス製)
うーん・・・僕も服買おうかな?っていかんいかん!節約せねばな・・・
「なるほどねぇ・・・。よし分かったわ。お姉さんも協力してあげる。従業員のピンチだしね。」
「え・・・危ないですよ?そこまでしていただくわけには・・・。」
「大丈夫大丈夫。こう見えて戦闘職だったし・・・。あ!もしかして、聖夜に情報が筒抜けになると思ってる?そこは信用してもらうしかないのだけれども、私はお金の為にこういう仕事してるけど、別に聖夜のやり方に賛同してるわけじゃないのよ?そのうち手ごろな所で抜けようと思っているし・・・。どっちかっていうと警戒してるのよね~・・・聖夜の事。」
「聖夜って人の事、何か知っているんですか?」
「いや、深くは知らないわよ?ただ、一度グループの懇親会であったことがあるのよ。その時、最初、私は遠くから彼を見ていたの。すっごいイケメンで大量の女を侍らせて。でも女の子を顎で使ういけ好かない奴だったわ。そう思ってたのにね・・・彼が近づいて来てその瞳を見た時、異様な違和感があったのよね・・・。ボーっとして頭が回らないっていうの?彼と何か話したはずなのに、何話したのか全く思い出せない、そんな感じ?ふわふわとして彼の傍に寄ってみたい、触れてみたいって考えがよぎるの・・・。何とかトイレに行くとだけ言って頭から水被ったわ。それ以来、彼とは直接会わないようにしてるのよ。」
何かのマインドハック系の能力なのか・・・。放浪者さんが精神に干渉する能力は最も恐ろしいと言っていたな。彼の威圧感もそうだったが・・・。
僕が顎に手を当てて考えていたら、ベスパ様は僕が彼女のことを悩んでいると勘違いして口を挟んだ。
「いいじゃありませんの。人手は多い方が良いですわ。それにチェイサーからの依頼はライカという女の調査でしょ?あくまで調査なのですから、聖夜と言う人と溝を作らずに済む可能性だってありますわ。」
「まー・・・ライカちゃんが聖夜にぞっこんなのがね~。とりあえず、信用してくれたってことでいいの・・・かな?」
お姉さんが上目遣いで僕の方を見てくる。ちょっとやめてよね!そっちはプロなんだから・・・おっふ。
「お、おほん!・・・ちょっと信用できない部分があるんですよね。」
「え~・・・?」
「あなたになんのメリットがあるんです?」
「まー、確かにね。お店も休むからお金は入ってこないし、助けたところであなた達に見返り求めても何も出ないでしょうし~。確かに無いわね~。」
「怪しすぎますって・・・。」
「強いて言うならあなた達に恩が売れる・・・かな?」
「僕らに恩を売って何の得が?」
「今、私が働いているお店のオーナーの聖夜なんかは金儲けはするけど、本質的にはこの世界の脱出何て考えていないわよ。この街を作って運営してるゴールドラッシュもそう。最前線行ってる部隊は何て言うか・・・効率主義でネジが飛んでる所あるし。その点、君達はそのどれでもないって感じ?カルディアちゃんにしろ、バニラちゃんにしろ。まー、私の勘なんだけどね。パイプ作っておいたらその内化けて、リターンがあるかなって?青田買いだと思ってよ。」
「その愚民に投資だなんて、随分分の悪いギャンブルを致しますのね、あなた。」
「お嬢様?ひどすぎません?・・・まぁ、否定しませんが・・・。」
「あはは。まぁ、そう言うことだから。これが理由じゃダメかな?」
「はぁ~、じゃあ精々ご期待にそえるよう頑張らせていただきますよ。」
「じゃ、OKってことで。・・・あ、もしもし~?ノリコちゃん?ごめ~ん!ちょっと風邪ひいちゃってさ。もしかしたら一か月くらい治んないかも?え?元気そう?いやいや、死にそうなんだって!ほんとほんと~。肝臓が石みたいになってて~。うん・・・うん・・・じゃ、お店の方よろしくね~。」
ついてくることを了承したら、懐から携帯を出して同僚だろうか?に電話をかけて、お店の引継ぎをお願いしていた。
てか、こんな無茶苦茶な仮病の言い訳する人初めて見たぞ?いいのか?あれで・・・
「ごめんごめん。その前に私はミナモね、源氏名だけど。それじゃあ行こっか。」
「あ、あの・・・。」
電話を終えたミナモお姉さんが先導しようとするのを呼び止める。不思議そうに振り向く彼女に僕は・・・
「じ、実はお金が・・・」
「それはダメ。」
「まだ何も言ってない!?」
「というか、軍資金無しなの!?」
あからさまに目が泳ぐ僕を見て彼女は呟くのだった・・・。
「失敗したかしら・・・。」
そんな彼女にニヤニヤと楽しそうに口角を上げたお嬢様が追い打ちをかける。
「諦めなさい~。もう、電話してしまったものね~。一か月は風邪ですものね~。」
それはもう楽しそうに・・・。ミナモお姉さんはただただ頭をかかるのだった・・・。
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