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塔内編
塔内編その41
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「はぁ~・・・。」
「疲れる人でしたね・・・。」
「そうね・・・それに・・・。」
私はコレクターさんの家を後にしてぼんぼん君と繁華街へと来ている。結局リペアペイメントと名乗った彼女はライブラリーの蘇生に協力してくれた。時間はかかるみたいだが・・・。不思議な雰囲気を纏った彼女と話しているとなんだか・・・。
私が言い淀んでいると彼が私の思ってる事を言い当てる。
「不快感ですか?」
「!?そ、それは・・・。」
「はは・・・。実はぼくもそう感じたんです。」
「君も!?」
「なんだろう・・・こんなこと言うと差別的に聞こえるかもしれませんがあの顔。あの顔を見てるとイライラや不快感が募るんです。初めて会う方のはずなのに・・・決して彼女が気に入らないって訳じゃないのですが・・・。なんでだろ?すみません・・・上手く説明できないです。」
「いいよ。私もだから・・・。ま、まぁ!一先ず彼女のことは置いておきましょ!ライブラリーのことも何とかなりそうだし、良い事尽くめじゃない!だから今日はいっぱい楽しもう!」
「そ、そうですね~。へへへ。」
私が明るく声を掛けると眉間に皺を寄せて難しい顔をしていた彼が破顔する。彼にはこういう顔をしていて欲しいのよね。笑っていて欲しいと・・・そう思うの。あまり深く考えると頭が痛くなるのだけれど。それにさっきの桃色髪の女性・・・私はどこかで出会っている。見た目の姿や形じゃない・・・あの雰囲気がそう思わせるのだ・・・。いったいどこで・・・。ダメだ・・・これも頭が割れそうになる・・・。
「わぁ~、先輩!あれ、見てくださいよ!」
考え事をしながら歩いていたら彼が服の裾を”ちょんちょん”と引っ張って、とあるお店の方角を指さす。近寄ってみてみるとガラスショーケースにはディスプレイモニターの魔道映写機、現代で言うところのテレビが置かれて映像が流れていた。その映像に彼は張り付いて『わぁ~いいなぁ~』と子供みたいに目を輝かせている。
『なんとこのおせち、あのトータルワークス氏監修のおせちなんですね~。それがなんと激安の39800G!200セット限り。ご予約はお早めに!』
『150年に及ぶ異世界胡麻の研究により、あなたの健康をサポート!セサミンDX!7日間お試し無料!』
『いいですか?皆さん。ギコギコはしません。一度刃を入れたら・・・スーーーーーッ・・・・。』
『軽くてパワーのあるドリーム超軽量コードレス掃除機は全部セットでなんと1万G』
「怪しげな通販番組しか流れてないじゃない・・・。」
笑顔の男性が値段を発表すると相方の女性が『安い安い~!』と相槌を入れている。・・・てか、この世界の動力って皆、魔力結晶から取っているから普通コードレスだけどね。宣伝で言う意味あるのだろうか?
今はすでにまた別の商品の通販に移り変わり今は青髪、へそ丸出しの可愛らしい女の子が『パワフル元気!明日の活力!タフデラックスZ!30粒で驚きの5980G!』と怪しげな滋養強壮剤を元気に宣伝している。次々と移り変わる番組を見てても、どれもこれもが怪しげな通販番組ばかりだ。貴重な魔道映写機で何やってんだか・・・。
「でもでも・・・!こんな世界でもテレビが見れるって凄くないですか?」
私が呆れながら眺めていたものだから彼があたふたしながらに言う。拠点にもディスプレイがあったが、ランキングやお知らせが表示されるだけで娯楽物は基本的に流れなかったな・・・。いや・・・通販番組が娯楽かどうかは怪しいが・・・。
チラリとテレビにもう一度視線をやると足元に小さな値札がある事に気付いた。その値段を見て見ると・・・
「安心のトータルワークス製。現品限り。値段は・・・198万!?」
しかも、高純度精製魔力結晶は別売り。ふらぁ~っと意識が遠のきそうになる。大袈裟に頭を抱えると彼は慌てて『み、見てるだけですから。』と取り繕う。
根だけ残した豆苗を再生産したり、ネギの根っこを土にぶっ刺して育てたりしている私達には到底手が出ない代物だ。おかしい・・・こんなにひっ迫した暮らししていなかったはずなんだけど・・・。ああ・・・また頭痛が・・・値段の所為かな?
気分が悪くなってきたので『他の店に行きましょ。』と踵を返したとき、妙な人だかりに気付いた。
(確かここは食料品を扱っているお店だったはず・・・。)
そのお店はいつもならゆったりと買い物が出来るくらいなのに今日は異様なほど人が密集していたのだ。
「あそこ、なんだか凄い人だかりね。」
「なんでしょう?行ってみますか?」
彼と二人で人だかりに近づくとキャンペーンガールの恰好したお姉さんが話しかけ来る。
「アイスエイジのかき氷、最後尾はこちらでーす!・・・あ?かき氷ですか?こちらです。どうぞ~!」
そのまま背中を押されてなし崩しに列に加えられてしまった。
「なんだか流れで列に入っちゃいましたけど・・・。」
「いいじゃない。かき氷なんて久しぶりだし!甘い物食べたかったのよね~。」
頭を使ったからだろうか・・・。いや・・・あの頭痛の所為か無性に冷たくて甘いものが食べたかったし、ちょうど良かったわ。二人で暫く列に並び順番が来るのを待っていると・・・
「もうやだ~。私、アイドルなのに!アイドルなのに~!」
「泣く間があったら氷を作ってください、アイスエイジ。今がファンの囲い時なのですよ!」
「泣いてる姿も可愛いよ~!」
「頑張って~!頑張ってアイスエイジ!もうちょっと!もうちょっとよ~。」
「頑張れ頑張れできるできるもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!」
「あの顔面ぐしゃぐしゃでマジ泣き鼻提灯が良いんだよな~。」
ぼんぼん君と二人で顔を見合わせる。人だかりで声の主は見えないのだが・・・
「先輩・・・今の声、ぼく、聞き覚えがあるんですが・・・。」
「奇遇ね。私もよ・・・。」
というか、何だろう?人だかりで全く見えないのだが、人の壁の向こうで非常に可哀想な事が起きている気がする。
順番が進むと疲れた顔の女性に話しかけられる。彼女は同じ文言を並んでいる人に向かって機械的に話しかけていた。
「お二人ですねー・・・かき氷券を拝見しまーす。」
「何やってるのよ・・・アーセナル。」
「お、お久しぶりです。アーセナルさん。」
「だからかき氷券を・・・って、はあああああああああああああ!!!???たたたたた隊長!?」
疲れた顔のアーセナルさんが同じ事を言おうとしてようやく私達に気付いた。
「久しぶりー。・・・で、何やってんのよ、あんた。」
「わた・・・わた・・・私だって・・・私だってこんなこと・・・びえええええええええ!!!」
最早、精神が限界だったのか見る見るうちに目に涙が溜まっていき、しゃがみ込んで泣き出す。こんな子供みたいなアーセナルの姿は何時ぶりだろうか?
「何をしてるのですか?アーセナル様。働いてください。チャンスと借金は待ってくれませんよ・・・って、あら?」
冷徹な声で近寄って来たのは先程、発破をかけていた声と同じ人物、アドミラルだった。彼女は私の姿とぼんぼん君の姿を見て一瞬驚いて、気まずそうに目を逸らしたが、それも束の間。いつもの様な冷静な彼女になり、
「ふむ・・・なるほど。てっちゃん様、お二人を控室にお連れして。アーセナル様は働きましょうねー。」
アドミラルに呼ばれてやってきたのは珍しい喋るガルムだった。長く生きてエルダーになると知能も高く人語を理解するというし、そう言う類だろうか・・・。
「アドミラル、向こうでアイスエイジが逃げようとしていたぞ。」
「なんですって?ここは任せます。アーセナル様は泣いてないで早く”もぎり”に戻ってください。」
アドミラルはアーセナルを無理矢理立たせてから慌ててまた戻っていった。無理矢理立たされたアーセナルはと言うと完全に目が死んでいる・・・。
「ついて来てくれ、お二人さん。」
アーセナルをそのままにして大丈夫だろうかとも思ったが、喋るガルムが顎をしゃくり、私達を案内するのでそれについて行くことにした。連れてこられたのはお店のバックヤードの一室。部屋には四人掛けのテーブルが置かれてあり、部屋の隅には木箱が大量に積み上げられていた。私は木箱に近づいて中を覗くと、そこには大量のCDやTシャツ。タオルに抱き枕カバー等々が入っている。私は何気なくCDを一つ手に取り調べてみることにした。
「『1stアルバム、恋するフォーチュンバッキー』・・・」
ジャケットの表面にはチョコが練りこまれた棒アイスを片手にウインクする可愛らしい青髪の女の子。この子・・・さっきテレビ通販に出てたような・・・。
というか、これ・・・大丈夫なんだろうか?いや・・・この狭間世界に著作権とか求める方がどうかしているのかもしれないが・・・。好きだったけどね?バッキーアイス。うん・・・。
「先輩!これ!」
彼もCDを手に取り調べていたみたいで、ケースの内側を私に見せてきた。そこには手書きを印刷したのか『人を探しています。』と書いており、似顔絵も掲載されていた・・・が。
「画・・・伯?」
独特のタッチで正直参考にはならないだろう・・・。しかし似顔絵の横に特徴も書いており、
『ストラクチャー。黒髪の見た目パッとしない男。一応剣士。失礼な奴。スケベ。バカ。アホ。クズ。』
『バニラ。金髪、髪長い、女騎士様。モデルさんみたい。礼儀正しい。誠実。カッコいい。よしよししてくれる。』
『カルディア。橙髪、肩くらいまで。優しい。大人しい。引っ込み思案。おいしいものくれる。お菓子作りが上手い。』
「これって・・・もしかして・・・。」
「先輩・・・さっき案内してくれたガルム、喋ってましたよね?」
「・・・」
「・・・」
「えーっと・・・仲間何て言ってたっけ?あの女性。」
「アイスクリーム、カルデラ、アドバンスです。」
「確か表でアイスエイジのかき氷って・・・。アドミラルも居たわね。で・・・。」
私はジャケットの内側を見る。
「カルディア・・・。それにストラクチャーとバニラ・・・。」
二人して顔を見合わせる。そんなまさかね・・・。彼は若干引きつった顔をしているが、きっと私も同じ顔をしているだろう。その時、部屋に近づく複数人の足音がする。部屋を勢いよく開けてすぐさま椅子に座ってテーブルに突っ伏し液状化したのは、青い髪の可愛らしいが、へそ出しの恥ずかしい恰好をした少女。続いてアーセナルも同じ様に机に突っ伏し液状化する。
二人に続いて入ってきたのはアドミラルとこの部屋に案内してくれたガルム。アドミラルは腰に手を当てて机に伏せる二人を呆れた表情で眺め、ガルムはアドミラルの足元でお行儀よく伏せていた。
「二人とも!だらしないですよ!お客様の前で。」
「もーやだ!鬼!悪魔!休みくださいお願いします!」
「労基守ってください!労基!」
二人が突っ伏したままアドミラルに抗議する。
「おかしいですね・・・。人は成功を収めれば24時間働けるはずなんです。バブル時代にそう証明されたはずなのですが・・・。成功が足りないのでしょうか・・・。」
「アドミラル・・・。病院に行こう。お前の新しい病気が発覚したぞ。」
「え?今のところ先生に診て貰って良い具合ですが?」
「違う、肉体の方じゃなしに精神の方。普通そんなに働けない。」
アドミラルが顎に手を当てながら恐ろしいことを呟くと、足元のガルムが困った表情で心の病院を勧めている。ワーカーホリックって治るのかしら・・・?
「そんなに変かしら?あ・・・ごめんなさい、二人とも。さ、席に座って。」
アドミラルが私達にテーブルに着くように勧めてくれる。正直、死にかけてる二人の対面に座るのは気が引けたが笑顔で勧められては座らざるを得なかった。
私達が着座するとアドミラルは青髪の子を揺さぶり
「アイスエイジ様、お仕事ですよ。お二人にかき氷を。」
「無理!もう一片の氷も出ない!」
かき氷のカップを渡すアドミラルに対し、突っ伏したまま拒否するアイスエイジと呼ばれた青髪の子。
「そうですか・・・では今はゆっくり休んで明日は今日の1.5倍働きましょう!」
アドミラルがにこやかにそう言うとアイスエイジさんは『ガバッ』っと勢いよく起き上がり
「ハイ!ダイジョウブデス!ヨロコンデ!!!!アハハハハッハハハハハ!!!」
良い返事をして、笑いながらかき氷のカップに氷を注いでいく少女の目は瞳孔が開き、目が血走っていた。彼女・・・絶対大丈夫じゃない・・・。
「ヘイ、オマタセシマシタ。カキゴオリブラッドソースガケデス。あはははは・・・」
目の前に赤いシロップがかけられたかき氷が置かれる。ほんとに血なのかとちょっと身構えたが、さすがにそんなことは無く、ただのおいしいイチゴソースだったが、作った本人は笑い終わると静かになり、今度は真顔で涙を流している。そして、そのままスーッと静かにゆっくりと机に突っ伏した。
私はアイスエイジにかき氷を作るように指示した後、顎に手を当てて何か考え事に耽っているアドミラルに話しかけた。
「あのー・・・アドミラル・・・。」
「あ・・・すみません。ええ、分かってます、ヘッドシューター。現状の確認ですね。」
「そうじゃなくて!いや・・・それもなんだけど・・・彼女、限界だと思うわよ?このままじゃ再起不能になるわ。」
「え?そうですか?私のかつての部下はこれくらいしましたよ?」
「あんな鉄の掟で結ばれた子達と一緒にしちゃだめよ。彼女限界だわ。休ませてあげて。」
「そうですか。では今のスケジュールをこなしたら・・・。」
「い・ま・す・ぐ・!休ませてあげてね!!!」
「わ、わかりました・・・。」
私が少し威圧しながら言うと彼女は面食らった様子でしぶしぶ予定がどうのと独り言を言いながらスケジュール帳と睨めっこしながら部屋を退室していった。
アドミラルが居なくなったことで死人みたいな二人と魔獣だけが残ってしまう。隣に座っている彼も同じ事を思っていたようで、
「(どうしましょうか?先輩。これで話聞ける人居なくなりましたよ?)」
「(アーセナルは・・・無理そうよね・・・。仕方ない・・・人じゃないけど、あの魔獣に聞いてみる?)」
「(が、ガルムですよ?今更なんですが大丈夫なんでしょうか?)」
「言っておくが聞こえているからな。二人とも。」
小声での会話をしっかりと聞き取られていたようで、ジロリと一瞥される。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「それに我を怖がるようなタマでは無いだろう?ヘッドシューター。それとも弓が無ければ怖いか?」
「私を知っているの?」
「ああ。よく知っているよ。元々我はスタンピードの部隊に居たのだから・・・怖いのは寧ろこっちさ。お前の弓の腕は嫌と言うほど知っているからな。」
「驚いたわ・・・。まさか蹂躙走破の部隊に居たなんてね。それでどうしてこんなところに?」
「君との一戦後に運命の出会いがあったのさ。それから色々あったよ・・・。色々とね・・・。」
喋るガルムはかつてを思い起こすように遠い目をし、口を噤んだ。その姿を見るとそれ以上突っ込んで聞く気にはなれなかった。
「あ・・・あの!ガルムさん!」
隣の彼がおずおずと遠慮がちに聞く。
「てっちゃん。」
「え?」
「みんなそう呼んでいる。」
「えーと・・・てっちゃんさん・・・。このCDなんですが・・・。」
「ああ!それな。そこで魂が抜けてるアイスエイジの歌で・・・。」
「いや!そーじゃなくて!このジャケットの内側!」
てっちゃんの言葉を遮り、彼はジャケットの内側を見せる。
「それもアイスエイジが描いたんだ・・・なんというか・・・うん・・・。ちょっと独特だが特徴は~・・・捉えてると思う。」
若干目を泳がせながらそう言うてっちゃん。
「これって女騎士さんと剣士君?ああっと・・・女騎士さんは左手が義手になってる?」
「知ってるのか?どこで見た!?」
やっぱり、その反応、新人と女騎士さん、あのリペアペイメントという桃色髪のシスターの仲間で間違いなさそう。
「やっぱり・・・。ああ、ごめん。”ここでは”見てないんだ。外で友達だったんだよ・・・。でも、行き先は知ってるんだ。」
「何!?それはどういうことだ!?」
「「ちょっと!それどういうことよ!?」」
てっちゃんの声に先程まで机に突っ伏した死体だった二人が勢いよく起き上がり、声が重なる。そこへ少し疲れた顔をしたアドミラルが帰ってきた。
「ふぅ・・・。なんとかスケジュールの調整がつきました。・・・ん?どうしました?」
「ま、まぁ・・・全員揃いましたし、ぼくと先輩で説明しますので落ち着いて・・・。」
私達は全員が揃ったところでリペアペイメントから聞いた話を全員に説明したのだった。
「疲れる人でしたね・・・。」
「そうね・・・それに・・・。」
私はコレクターさんの家を後にしてぼんぼん君と繁華街へと来ている。結局リペアペイメントと名乗った彼女はライブラリーの蘇生に協力してくれた。時間はかかるみたいだが・・・。不思議な雰囲気を纏った彼女と話しているとなんだか・・・。
私が言い淀んでいると彼が私の思ってる事を言い当てる。
「不快感ですか?」
「!?そ、それは・・・。」
「はは・・・。実はぼくもそう感じたんです。」
「君も!?」
「なんだろう・・・こんなこと言うと差別的に聞こえるかもしれませんがあの顔。あの顔を見てるとイライラや不快感が募るんです。初めて会う方のはずなのに・・・決して彼女が気に入らないって訳じゃないのですが・・・。なんでだろ?すみません・・・上手く説明できないです。」
「いいよ。私もだから・・・。ま、まぁ!一先ず彼女のことは置いておきましょ!ライブラリーのことも何とかなりそうだし、良い事尽くめじゃない!だから今日はいっぱい楽しもう!」
「そ、そうですね~。へへへ。」
私が明るく声を掛けると眉間に皺を寄せて難しい顔をしていた彼が破顔する。彼にはこういう顔をしていて欲しいのよね。笑っていて欲しいと・・・そう思うの。あまり深く考えると頭が痛くなるのだけれど。それにさっきの桃色髪の女性・・・私はどこかで出会っている。見た目の姿や形じゃない・・・あの雰囲気がそう思わせるのだ・・・。いったいどこで・・・。ダメだ・・・これも頭が割れそうになる・・・。
「わぁ~、先輩!あれ、見てくださいよ!」
考え事をしながら歩いていたら彼が服の裾を”ちょんちょん”と引っ張って、とあるお店の方角を指さす。近寄ってみてみるとガラスショーケースにはディスプレイモニターの魔道映写機、現代で言うところのテレビが置かれて映像が流れていた。その映像に彼は張り付いて『わぁ~いいなぁ~』と子供みたいに目を輝かせている。
『なんとこのおせち、あのトータルワークス氏監修のおせちなんですね~。それがなんと激安の39800G!200セット限り。ご予約はお早めに!』
『150年に及ぶ異世界胡麻の研究により、あなたの健康をサポート!セサミンDX!7日間お試し無料!』
『いいですか?皆さん。ギコギコはしません。一度刃を入れたら・・・スーーーーーッ・・・・。』
『軽くてパワーのあるドリーム超軽量コードレス掃除機は全部セットでなんと1万G』
「怪しげな通販番組しか流れてないじゃない・・・。」
笑顔の男性が値段を発表すると相方の女性が『安い安い~!』と相槌を入れている。・・・てか、この世界の動力って皆、魔力結晶から取っているから普通コードレスだけどね。宣伝で言う意味あるのだろうか?
今はすでにまた別の商品の通販に移り変わり今は青髪、へそ丸出しの可愛らしい女の子が『パワフル元気!明日の活力!タフデラックスZ!30粒で驚きの5980G!』と怪しげな滋養強壮剤を元気に宣伝している。次々と移り変わる番組を見てても、どれもこれもが怪しげな通販番組ばかりだ。貴重な魔道映写機で何やってんだか・・・。
「でもでも・・・!こんな世界でもテレビが見れるって凄くないですか?」
私が呆れながら眺めていたものだから彼があたふたしながらに言う。拠点にもディスプレイがあったが、ランキングやお知らせが表示されるだけで娯楽物は基本的に流れなかったな・・・。いや・・・通販番組が娯楽かどうかは怪しいが・・・。
チラリとテレビにもう一度視線をやると足元に小さな値札がある事に気付いた。その値段を見て見ると・・・
「安心のトータルワークス製。現品限り。値段は・・・198万!?」
しかも、高純度精製魔力結晶は別売り。ふらぁ~っと意識が遠のきそうになる。大袈裟に頭を抱えると彼は慌てて『み、見てるだけですから。』と取り繕う。
根だけ残した豆苗を再生産したり、ネギの根っこを土にぶっ刺して育てたりしている私達には到底手が出ない代物だ。おかしい・・・こんなにひっ迫した暮らししていなかったはずなんだけど・・・。ああ・・・また頭痛が・・・値段の所為かな?
気分が悪くなってきたので『他の店に行きましょ。』と踵を返したとき、妙な人だかりに気付いた。
(確かここは食料品を扱っているお店だったはず・・・。)
そのお店はいつもならゆったりと買い物が出来るくらいなのに今日は異様なほど人が密集していたのだ。
「あそこ、なんだか凄い人だかりね。」
「なんでしょう?行ってみますか?」
彼と二人で人だかりに近づくとキャンペーンガールの恰好したお姉さんが話しかけ来る。
「アイスエイジのかき氷、最後尾はこちらでーす!・・・あ?かき氷ですか?こちらです。どうぞ~!」
そのまま背中を押されてなし崩しに列に加えられてしまった。
「なんだか流れで列に入っちゃいましたけど・・・。」
「いいじゃない。かき氷なんて久しぶりだし!甘い物食べたかったのよね~。」
頭を使ったからだろうか・・・。いや・・・あの頭痛の所為か無性に冷たくて甘いものが食べたかったし、ちょうど良かったわ。二人で暫く列に並び順番が来るのを待っていると・・・
「もうやだ~。私、アイドルなのに!アイドルなのに~!」
「泣く間があったら氷を作ってください、アイスエイジ。今がファンの囲い時なのですよ!」
「泣いてる姿も可愛いよ~!」
「頑張って~!頑張ってアイスエイジ!もうちょっと!もうちょっとよ~。」
「頑張れ頑張れできるできるもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!」
「あの顔面ぐしゃぐしゃでマジ泣き鼻提灯が良いんだよな~。」
ぼんぼん君と二人で顔を見合わせる。人だかりで声の主は見えないのだが・・・
「先輩・・・今の声、ぼく、聞き覚えがあるんですが・・・。」
「奇遇ね。私もよ・・・。」
というか、何だろう?人だかりで全く見えないのだが、人の壁の向こうで非常に可哀想な事が起きている気がする。
順番が進むと疲れた顔の女性に話しかけられる。彼女は同じ文言を並んでいる人に向かって機械的に話しかけていた。
「お二人ですねー・・・かき氷券を拝見しまーす。」
「何やってるのよ・・・アーセナル。」
「お、お久しぶりです。アーセナルさん。」
「だからかき氷券を・・・って、はあああああああああああああ!!!???たたたたた隊長!?」
疲れた顔のアーセナルさんが同じ事を言おうとしてようやく私達に気付いた。
「久しぶりー。・・・で、何やってんのよ、あんた。」
「わた・・・わた・・・私だって・・・私だってこんなこと・・・びえええええええええ!!!」
最早、精神が限界だったのか見る見るうちに目に涙が溜まっていき、しゃがみ込んで泣き出す。こんな子供みたいなアーセナルの姿は何時ぶりだろうか?
「何をしてるのですか?アーセナル様。働いてください。チャンスと借金は待ってくれませんよ・・・って、あら?」
冷徹な声で近寄って来たのは先程、発破をかけていた声と同じ人物、アドミラルだった。彼女は私の姿とぼんぼん君の姿を見て一瞬驚いて、気まずそうに目を逸らしたが、それも束の間。いつもの様な冷静な彼女になり、
「ふむ・・・なるほど。てっちゃん様、お二人を控室にお連れして。アーセナル様は働きましょうねー。」
アドミラルに呼ばれてやってきたのは珍しい喋るガルムだった。長く生きてエルダーになると知能も高く人語を理解するというし、そう言う類だろうか・・・。
「アドミラル、向こうでアイスエイジが逃げようとしていたぞ。」
「なんですって?ここは任せます。アーセナル様は泣いてないで早く”もぎり”に戻ってください。」
アドミラルはアーセナルを無理矢理立たせてから慌ててまた戻っていった。無理矢理立たされたアーセナルはと言うと完全に目が死んでいる・・・。
「ついて来てくれ、お二人さん。」
アーセナルをそのままにして大丈夫だろうかとも思ったが、喋るガルムが顎をしゃくり、私達を案内するのでそれについて行くことにした。連れてこられたのはお店のバックヤードの一室。部屋には四人掛けのテーブルが置かれてあり、部屋の隅には木箱が大量に積み上げられていた。私は木箱に近づいて中を覗くと、そこには大量のCDやTシャツ。タオルに抱き枕カバー等々が入っている。私は何気なくCDを一つ手に取り調べてみることにした。
「『1stアルバム、恋するフォーチュンバッキー』・・・」
ジャケットの表面にはチョコが練りこまれた棒アイスを片手にウインクする可愛らしい青髪の女の子。この子・・・さっきテレビ通販に出てたような・・・。
というか、これ・・・大丈夫なんだろうか?いや・・・この狭間世界に著作権とか求める方がどうかしているのかもしれないが・・・。好きだったけどね?バッキーアイス。うん・・・。
「先輩!これ!」
彼もCDを手に取り調べていたみたいで、ケースの内側を私に見せてきた。そこには手書きを印刷したのか『人を探しています。』と書いており、似顔絵も掲載されていた・・・が。
「画・・・伯?」
独特のタッチで正直参考にはならないだろう・・・。しかし似顔絵の横に特徴も書いており、
『ストラクチャー。黒髪の見た目パッとしない男。一応剣士。失礼な奴。スケベ。バカ。アホ。クズ。』
『バニラ。金髪、髪長い、女騎士様。モデルさんみたい。礼儀正しい。誠実。カッコいい。よしよししてくれる。』
『カルディア。橙髪、肩くらいまで。優しい。大人しい。引っ込み思案。おいしいものくれる。お菓子作りが上手い。』
「これって・・・もしかして・・・。」
「先輩・・・さっき案内してくれたガルム、喋ってましたよね?」
「・・・」
「・・・」
「えーっと・・・仲間何て言ってたっけ?あの女性。」
「アイスクリーム、カルデラ、アドバンスです。」
「確か表でアイスエイジのかき氷って・・・。アドミラルも居たわね。で・・・。」
私はジャケットの内側を見る。
「カルディア・・・。それにストラクチャーとバニラ・・・。」
二人して顔を見合わせる。そんなまさかね・・・。彼は若干引きつった顔をしているが、きっと私も同じ顔をしているだろう。その時、部屋に近づく複数人の足音がする。部屋を勢いよく開けてすぐさま椅子に座ってテーブルに突っ伏し液状化したのは、青い髪の可愛らしいが、へそ出しの恥ずかしい恰好をした少女。続いてアーセナルも同じ様に机に突っ伏し液状化する。
二人に続いて入ってきたのはアドミラルとこの部屋に案内してくれたガルム。アドミラルは腰に手を当てて机に伏せる二人を呆れた表情で眺め、ガルムはアドミラルの足元でお行儀よく伏せていた。
「二人とも!だらしないですよ!お客様の前で。」
「もーやだ!鬼!悪魔!休みくださいお願いします!」
「労基守ってください!労基!」
二人が突っ伏したままアドミラルに抗議する。
「おかしいですね・・・。人は成功を収めれば24時間働けるはずなんです。バブル時代にそう証明されたはずなのですが・・・。成功が足りないのでしょうか・・・。」
「アドミラル・・・。病院に行こう。お前の新しい病気が発覚したぞ。」
「え?今のところ先生に診て貰って良い具合ですが?」
「違う、肉体の方じゃなしに精神の方。普通そんなに働けない。」
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「そんなに変かしら?あ・・・ごめんなさい、二人とも。さ、席に座って。」
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「アイスエイジ様、お仕事ですよ。お二人にかき氷を。」
「無理!もう一片の氷も出ない!」
かき氷のカップを渡すアドミラルに対し、突っ伏したまま拒否するアイスエイジと呼ばれた青髪の子。
「そうですか・・・では今はゆっくり休んで明日は今日の1.5倍働きましょう!」
アドミラルがにこやかにそう言うとアイスエイジさんは『ガバッ』っと勢いよく起き上がり
「ハイ!ダイジョウブデス!ヨロコンデ!!!!アハハハハッハハハハハ!!!」
良い返事をして、笑いながらかき氷のカップに氷を注いでいく少女の目は瞳孔が開き、目が血走っていた。彼女・・・絶対大丈夫じゃない・・・。
「ヘイ、オマタセシマシタ。カキゴオリブラッドソースガケデス。あはははは・・・」
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私はアイスエイジにかき氷を作るように指示した後、顎に手を当てて何か考え事に耽っているアドミラルに話しかけた。
「あのー・・・アドミラル・・・。」
「あ・・・すみません。ええ、分かってます、ヘッドシューター。現状の確認ですね。」
「そうじゃなくて!いや・・・それもなんだけど・・・彼女、限界だと思うわよ?このままじゃ再起不能になるわ。」
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「そうですか。では今のスケジュールをこなしたら・・・。」
「い・ま・す・ぐ・!休ませてあげてね!!!」
「わ、わかりました・・・。」
私が少し威圧しながら言うと彼女は面食らった様子でしぶしぶ予定がどうのと独り言を言いながらスケジュール帳と睨めっこしながら部屋を退室していった。
アドミラルが居なくなったことで死人みたいな二人と魔獣だけが残ってしまう。隣に座っている彼も同じ事を思っていたようで、
「(どうしましょうか?先輩。これで話聞ける人居なくなりましたよ?)」
「(アーセナルは・・・無理そうよね・・・。仕方ない・・・人じゃないけど、あの魔獣に聞いてみる?)」
「(が、ガルムですよ?今更なんですが大丈夫なんでしょうか?)」
「言っておくが聞こえているからな。二人とも。」
小声での会話をしっかりと聞き取られていたようで、ジロリと一瞥される。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「それに我を怖がるようなタマでは無いだろう?ヘッドシューター。それとも弓が無ければ怖いか?」
「私を知っているの?」
「ああ。よく知っているよ。元々我はスタンピードの部隊に居たのだから・・・怖いのは寧ろこっちさ。お前の弓の腕は嫌と言うほど知っているからな。」
「驚いたわ・・・。まさか蹂躙走破の部隊に居たなんてね。それでどうしてこんなところに?」
「君との一戦後に運命の出会いがあったのさ。それから色々あったよ・・・。色々とね・・・。」
喋るガルムはかつてを思い起こすように遠い目をし、口を噤んだ。その姿を見るとそれ以上突っ込んで聞く気にはなれなかった。
「あ・・・あの!ガルムさん!」
隣の彼がおずおずと遠慮がちに聞く。
「てっちゃん。」
「え?」
「みんなそう呼んでいる。」
「えーと・・・てっちゃんさん・・・。このCDなんですが・・・。」
「ああ!それな。そこで魂が抜けてるアイスエイジの歌で・・・。」
「いや!そーじゃなくて!このジャケットの内側!」
てっちゃんの言葉を遮り、彼はジャケットの内側を見せる。
「それもアイスエイジが描いたんだ・・・なんというか・・・うん・・・。ちょっと独特だが特徴は~・・・捉えてると思う。」
若干目を泳がせながらそう言うてっちゃん。
「これって女騎士さんと剣士君?ああっと・・・女騎士さんは左手が義手になってる?」
「知ってるのか?どこで見た!?」
やっぱり、その反応、新人と女騎士さん、あのリペアペイメントという桃色髪のシスターの仲間で間違いなさそう。
「やっぱり・・・。ああ、ごめん。”ここでは”見てないんだ。外で友達だったんだよ・・・。でも、行き先は知ってるんだ。」
「何!?それはどういうことだ!?」
「「ちょっと!それどういうことよ!?」」
てっちゃんの声に先程まで机に突っ伏した死体だった二人が勢いよく起き上がり、声が重なる。そこへ少し疲れた顔をしたアドミラルが帰ってきた。
「ふぅ・・・。なんとかスケジュールの調整がつきました。・・・ん?どうしました?」
「ま、まぁ・・・全員揃いましたし、ぼくと先輩で説明しますので落ち着いて・・・。」
私達は全員が揃ったところでリペアペイメントから聞いた話を全員に説明したのだった。
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