6 / 15
第6話 疑惑の光景
しおりを挟む「市庁舎に行ってくるわ」
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
私は執事に行先を告げ、侍女を伴い、市庁舎へ向かった。
父名義のものが諸々残っているいるので、名義変更の手続きをするためだ。
その後、国立銀行にもよらなければならない。
父の個人資産の遺産分割が終わったので、その手続きもしなければいけない。
相続人が母と私だけだから、早めに済んで良かった。
顧問弁護士が手際よく手続きを進めてくれたおかげね。
軽く息をつきながら馬車の小窓から、商店街が立ち並ぶロマニエ通りを眺めていると、思いもかけない光景を目にした。
「――――え…」
それは……シェルダンとセリルの二人。
何か言い争っている様子だった。
シェルダンはセリルの両肩に手を置くが、それをセリルが振り払う。
「と、止めて!」
「どうっ どう!」
馭者が慌てて馬を止める。
私は馬車から飛び出すと二人がいた方向に走り出した。
「お嬢様!」
侍女が私を呼ぶ声が聞こえたが、構わずに人込みの中を掻き分けながら先へ進んだ。
「どこへ行ったの…?」
見失った…
今のは何だったの?!
どうしてシェルダンとセリルが一緒にいるの?!
言い争って…セリルを宥めるかのように、彼女の肩に手を置くシェルダン。
何!? 私はいったい何を見たの!?
最近、会えなくなったシェルダンとセリル。
『私、実はシェルダンにあこがれていたの』
『あこがれよっ あ・こ・が・れ!』
冗談のように言っていたセリルの言葉を思い出す。
父の葬儀の日…母の指輪を届けに、屋敷に向かったセリル。
今考えれば…教会に戻って来たセリルの様子がおかしいとは思ったけれど、あの日シェルダンと何かあったの!?
ま、まさか…セリル…シェルダンと…?
「う、嘘よ…っ そんなの…そんな事ある訳が…っ」
私はその場でへたり込んだ。
信じられない想いの中に、疑惑が次々と芽生える。
「お、お嬢様っ どうなさったんですか?」
追いかけて来た侍女が、私に駆け寄る。
近くで聞こえる侍女の声が、遠くに感じる。
私の胸の鼓動が、耳元で鳴り響いている。
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」
侍女が心配そうに私の顔色を窺う。
「ええ……」
大丈夫じゃない。
けれど、こんな道端でへたり込んでいる場合ではない。
侯爵家当主としてみっともない…
「……っ!」
こんな時に、体面を考えている自分が嫌になった。
「…セリルの屋敷へ向かうわ」
私は侍女の手を借り立ち上がると、来た道を戻り、待たせている馬車へと向かった
「えっ で、では先触れを…」
「必要ないわ」
馬車に乗り込むと、セリルの屋敷へと急がせた。
491
あなたにおすすめの小説
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
*らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。
[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる