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第8話 伯父への手紙
しおりを挟む「お帰りなさいませ、お嬢様」
「……夕食はいらないわ、呼ぶまで絶対に誰も来ないで」
セリルの屋敷から戻った私を出迎えた執事に指示する。
「か、かしこまりました」
私の様子に違和感を持ったのか、執事が困惑する様子が伺える。
私は足早に階段を上り、自分の部屋に閉じこもった。
バタン!!
「……うっ…ううっ あ、あああ…っ!!」
私は部屋に入るなり寝台に突っ伏し、泣き喚いた。
セリルの話に、私の心が悲鳴を上げている。
信じられない…っ
あなたを愛していたのにっ、シェルダン!
将来この侯爵家を二人で支えあっていこうと…そう、約束していたのにっ
私を裏切るなんて!!
涙と共に零れていくあなたへの愛。
これが悪夢なら、早く目覚めて―――――…!
―――… そう願いながらも、私は深い深い眠りに堕ちた。
そこはシェルダンとの想い出に溢れていた。
初めて彼と会った時
彼に告白された時
彼と婚約を交わした時
シェルダンと出会ってから毎日が幸せだった。
悩む事はどうすれば彼の目に美しく映るか、それだけを悩んでいれば良かったあの時間。
そんな…全てが輝いていた日々は、幻だったかのように消え失せた―――――
チチ……
チチチ……
鳥の囀りと瞼に感じる眩しさに、私は眠りから覚めた。
「………っ 朝…なの……?」
目を瞬きながら、周りを見渡す。外はすでに明るい。
昨日は夕方に帰宅したはずなのに…あれからずっと寝てしまっていたのね。
「……」
私は重い体を起こし、机に向かった。
便箋を取り出し、手紙を認める。
チリンチリン
「お嬢様っ お加減はいかがでしょうかっ すぐにお食事をお持ち致しますっ」
侍女が飛び込んできた。
少し目が赤い…心配してくれていたのが分かる。
昨日帰ってきてから、一度も呼ばなかったから。
私もきっとひどい顏をしている事でしょうね…
「朝食はあとでいいから…これを…至急エンディミオン家に送ってもらえる?」
私は、伯父宛の手紙を侍女に渡す。
「は、はいっ かしこまりました」
手紙を受け取ると、侍女は小走りに部屋を出ていった。
「あなたと別れる準備をしなきゃならないわね」
あなたの裏切りを知った今、いつまでも嘆いている場合ではない。
罪を贖ってもらうわ、シェルダン。
◇
「久しぶりだね、アレット。会いたかったよ」
「…私もよ、シェルダン」
ご両親と共に、我が家に来訪したパドリアス子爵一家。
シェルダンは私の手を取り、甲にキスを落とした。
彼の手を払いたかったけれど、今は我慢するしかない。
「ところで、両親と一緒に大事な話があるって何だい? 」
「…もう皆揃っているから、応接室に行きましょう。パドリアス子爵様、パドリアス子爵夫人、こちらへどうぞ」
私は三人を促すように先頭を歩き、応接室へと向かった。
「皆…?」
ぽつりと呟いたシェルダンの言葉は無視して…
「どうぞ、お入りになって」
先に部屋に入り、席へと促すテーブルにはセリルが座っていた。
「セ、セリルがどうしてここに!?」
驚くシェルダンには構わず、私は席に着いた。
「どうぞ皆様もお座りになって下さい」
私は笑顔で三人を招き入れた。
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