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第10話 慰謝料の条件
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「セ、セリルッ その事については、君の見間違いだと何度も言ったはずだ!」
「見間違いではないわっ おば様の指輪を届けに部屋へ行った時、ドアの隙間から見たもの!」
「そんな事していない!!」
「では、おば様とホテルへ行ったことは? あなたたちがホテル街へ行くところを見たわ!」
そう…シェルダンと母との行為を目撃したセリルは、『あなたの事を考えたら、どうしたらいいのかわからなかった』と泣きながら私に話してくれた。
セリルは悩んだ末、シェルダンを問い詰める為にパドリアス家へ行ったそうだ。その時出かける彼の跡を付けた所、ホテルから少し離れた所で馬車を降り、女性と落ち合うとホテル街へと向かう姿を見たという。
「いい加減にしろ! 確かに僕と侯爵夫人だと言えるのか?! 見間違いで済む問題ではないんだぞ!」
「そ、そうよ、セリルッ 私がシェルダンと何かあるはずがないでしょう?」
愚劣な人間たちが、必死に否定している。
「あなたの跡を付けたんだから、間違いないわよっ …女性の顔はベールに隠れて見えなかったけれど、紺色のトーク帽には金色の刺繍が施されて、レースにはスパンコール。あれは確かにおば様の物だったわ。だってオーダーメイドで二つとして同じ物はないはずだものっ だから私はあなたに言ったはずよっ シェルダンッ! アレットが気づく前に、おば様との事は終わらしてって! なのにあなたは聞く耳を持たなかった!!」
そう…私がロマニエ通りでシェルダンとセリルを見たのは、別の日にセリルが彼を呼び出した時の事。
そして母との関係を問い詰めた。
けれど、シェルダンはまともに取り合おうとせず、反対にセリルに『アレットに余計な事をいうなよ!』と恫喝したらしい。
シェルダンがセリルの両肩に手を置いていたのは宥めていたのではない。
威圧していたのだ。
「アレッ…ト…セリルの言葉を信じたりしないよね? 本当に僕が君の母上と関係を持っているなんて…そんなバカげた事があるはずがないだろう?」
あなたの目の前に鏡を持ってきてあげたいわ。
冷静に話しているつもりでしょうけど、口元がひきつっているわよ。
「だ、第一証拠がないだろう? なのに、ここまで大ごとにした責任は重大だぞっ セリル!」
「そうよ! この事はマテウ家に抗議させていただきますっ!」
母が珍しくまともな事を言っている。
本当にセリルの見間違いなら…ね。
「証拠なら…皆様でご判断下さいませ」
そう言うと私は、足元に置いてあった紙袋を取り出し、中身をテーブルの上にぶちまけた。
写真が波のように広がり、そこにはシェルダンと母とのあられもない姿が映されている。
「な、なんだこれは!」
「やっ み、見ないで!」
シェルダンと母は写真を目にすると弾かれたように写真の上に覆い被さり、自分の元へと掻き寄せている。
「こ、これはっ!」
母が隠し切れなかった写真を一枚手に取る伯父。
その声は、驚きと憤りに震えていた。
!!バアン!!
「これはどういうことだ! クロディーヌ!!」
伯父は写真をテーブルに叩きつけ立ち上がった。
「お、お兄様…っ」
声を震わせながら伯父を見る母。
「アレットから手紙をもらったんだ。自分の婚約者が不貞を働いているようだから、調査したい。その為、調査機関を紹介して欲しいと言われた。まさか…まさかその相手がお前だったとは!」
バシンッ
「おまえには常識もモラルもないのか!」
伯父が怒鳴りながら、母を殴り始めた。
「い、痛…っ や、やめ…っ」
「夫の喪が明けていないばかりか、娘の婚約者と!!」
バシン!
「い、痛い! や、めてっ お願い…っ」
「うるさい! この恥知らずがああああ!!」
バシン!!
ガタタッッ
何度も叩かれた母は、殴られた拍子に床に突っ伏した。
「や、やめて…っ お願…っ も…やめ…っ…うっう…っ」
母はさめざめと子供のように涙する。
そんな姿を見ても、自業自得だと心の中で冷静になっている自分がいた。
そう…伯父には母の事は伏せ、調査機関を紹介してもらった。
どんな手を使って潜入したか知らないけれど、かなりきわどい写真ばかり。
とても優秀な調査員だったのね。
シェルダンと彼のご両親は、伯父の怒りを前に真っ青になりながら身を縮めるばかりだった。
「証拠は十分にあると思うわ? シェルダン。よってあなたとの婚約を破棄させていただきます。もちろんあなたの有責だがら慰謝料を請求させていただくわ。事前に弁護士に算出してもらった請求額よ」
私はシェルダンの前に、請求額が記載されている一枚の紙を差し出す。
「!! こ、こんな法外な金額…っ」
渡された書類を目にすると、彼の顔色は無くなっていた。
私との婚約が破棄されれば、シェルダンは職に就かなければならなくなる。
どんな職業に就けたたとしても、爵位を持たないあなたに到底払える金額ではない。
子爵家は小さな領地だ。ご両親や後継者であるご長男が、不貞の上、婚約破棄された身内をどこまで助けるか…それでも支払いが終わるまでには数十年かかるだろう。
でも…一応婚約者として過ごした期間を考慮して、最後の温情を与えてあげるわ。
「但し、私からの条件を飲むのなら、この慰謝料を減額してもよろしくてよ?」
「じょ、条件…?」
「私とシェルダンが婚約破棄した後、二人には結婚してもらいます。シェルダンとあなたに」
「「な!?」」
私の言葉に、シェルダンと母は揃って固まる。
そんな二人には構わず、私は話を続けた。
「そして離縁は許さないわ。あと母に関してアルブルグ家は、今後一切関知しません。その事に関して記載してある念書に、承諾する旨の署名捺印をしてもらいたいの」
そう言いながら、シェルダンの目の前に婚約破棄承諾書と念書を置いた。
「ま、待ってくれ! な、何を言っているんだっ アレット!!」
固まっていたシェルダンが覚醒したようだ。
「そうよっ アレット! な、何を言っているの?! 彼は爵位を持てないのよ!? そんな人となぜ私が…!」
二人とも、私の提案に慌てふためいていた。
「あなたに拒否権はないわ、お母様。アルブルグ侯爵家の当主はこの私よ。当主の言葉に従って貰います」
「あ、あなた! 母親である私を侯爵家から追い出すつもりなの?!」
「娘の婚約者を寝取るような母親、私には必要ないわ」
「ア、アレット…ッ」
私の拒絶に母は驚いている。
「ゆ、許して欲しい、アレット! ぼ、僕が愛しているのは君だ! 君だけだ!! か、彼女とは…本当に…出来心で……」
シェルダンは、ブルブルと震える手を私に差し出しながら愛を告げる。
今更何を言っているのかしら、この人。
この人が言葉を発する度に、心が冷えていく。
そして、シェルダンの言葉に反論したのは母だ。
「シェルダン! 嘘はやめて! あなたは私を何度も抱きながら言ってくれたでしょう? 愛してるって! アレットッ あなたは私とそっくりで若くても、しょせん私の偽者なのよ! 誰よりも愛されているのはこの私! あなたなんかじゃないわ!!」
「うるさいっ 黙れ!」
「シェルダン!?」
……――――――― 何それ?
母が私を嫌っていたのは自分と顔が似ていて若いから?
もしかして母は、自分と娘である私をいつも比較していたの?
そんなくだらない理由で、私は母に冷たくされていたというの?
私は、こんな人の愛情をずっと求めていたの?
「……」
母の言動でいちいち傷ついていた自分がバカバカしくなった。
「…痴話喧嘩は私の話を終えてからしてもらえませんか? 我が国では離婚した女性は六か月間再婚禁止の法律があるけれど、それまでここで暮らされても困るわ。だから今日から彼と一緒に暮らして下さいね、お母様」
「い、いやよ! 私は侯爵家を出て行かないわっ シェルダンは爵位を持たないのだから、彼と結婚したって意味ないじゃない!」
「あなたの都合など関係ないんですよ。これは当主として私が下した決定事項よ」
「アレット!」
「あなたがいらっしゃると、話が進まないわ」
チリンチリン
「お母様を部屋へお連れして。逃げ出さないように見張りをつけてね。あと、お母様の荷物をまとめて差し上げて。今日から別の場所でお暮しになるから」
「かしこまりました」
「ちょ、やっ は、放しなさいっ 放して! アレット!!」
二人の侍女に両脇からがっちりつかまれた母は、部屋から連れ出された。
静寂が戻った部屋で、私は話を進める。
「では、改めて婚約破棄承諾書と念書に署名捺印をお願いいたします。 あと条件を破った場合、もともとの金額を請求します。その事に関しましても念書には全て記載しておりますから、そのおつもりで」
シェルダンもパドリアス子爵夫妻も項垂れ、何も言えない様子。
反論も言い訳も許されない空気を破る度胸はないみたい。
それに私の提案を受け入れなければ、パドリアス子爵家まで道連れになる。
だからあなたは私の条件を飲まざるを得ないのよ、シェルダン。
それに伯父がキレた事が、かえって良い効果を生み出したらしい。
「す、すまなかった…アレット…本当に…」
震える手で署名と捺印を終えたシェルダンが、私への謝罪の言葉を口にした。
「謝るくらいなら最初から私を裏切らなければ良かっただけの事。そんな簡単な事も分からないような愚かな人間、私にふさわしくないわ。結婚前に分かって良かった」
「……っ」
最後の糸を切られたかのような表情のシェルダン。
同情の余地なしだわ。
あの母を妻に据え、これからのあなたの人生どうなるか楽しみね。
⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷
※日本では民法が改正され、現在は離婚後すぐに再婚することが可能になったんですね。
(知らなかったΣ(・ω・ノ)ノ!)
★この物語は、すべてフィクションです。
法律など諸々の設定は、あくまで物語内の事として、あらかじめご了承下さい★
「見間違いではないわっ おば様の指輪を届けに部屋へ行った時、ドアの隙間から見たもの!」
「そんな事していない!!」
「では、おば様とホテルへ行ったことは? あなたたちがホテル街へ行くところを見たわ!」
そう…シェルダンと母との行為を目撃したセリルは、『あなたの事を考えたら、どうしたらいいのかわからなかった』と泣きながら私に話してくれた。
セリルは悩んだ末、シェルダンを問い詰める為にパドリアス家へ行ったそうだ。その時出かける彼の跡を付けた所、ホテルから少し離れた所で馬車を降り、女性と落ち合うとホテル街へと向かう姿を見たという。
「いい加減にしろ! 確かに僕と侯爵夫人だと言えるのか?! 見間違いで済む問題ではないんだぞ!」
「そ、そうよ、セリルッ 私がシェルダンと何かあるはずがないでしょう?」
愚劣な人間たちが、必死に否定している。
「あなたの跡を付けたんだから、間違いないわよっ …女性の顔はベールに隠れて見えなかったけれど、紺色のトーク帽には金色の刺繍が施されて、レースにはスパンコール。あれは確かにおば様の物だったわ。だってオーダーメイドで二つとして同じ物はないはずだものっ だから私はあなたに言ったはずよっ シェルダンッ! アレットが気づく前に、おば様との事は終わらしてって! なのにあなたは聞く耳を持たなかった!!」
そう…私がロマニエ通りでシェルダンとセリルを見たのは、別の日にセリルが彼を呼び出した時の事。
そして母との関係を問い詰めた。
けれど、シェルダンはまともに取り合おうとせず、反対にセリルに『アレットに余計な事をいうなよ!』と恫喝したらしい。
シェルダンがセリルの両肩に手を置いていたのは宥めていたのではない。
威圧していたのだ。
「アレッ…ト…セリルの言葉を信じたりしないよね? 本当に僕が君の母上と関係を持っているなんて…そんなバカげた事があるはずがないだろう?」
あなたの目の前に鏡を持ってきてあげたいわ。
冷静に話しているつもりでしょうけど、口元がひきつっているわよ。
「だ、第一証拠がないだろう? なのに、ここまで大ごとにした責任は重大だぞっ セリル!」
「そうよ! この事はマテウ家に抗議させていただきますっ!」
母が珍しくまともな事を言っている。
本当にセリルの見間違いなら…ね。
「証拠なら…皆様でご判断下さいませ」
そう言うと私は、足元に置いてあった紙袋を取り出し、中身をテーブルの上にぶちまけた。
写真が波のように広がり、そこにはシェルダンと母とのあられもない姿が映されている。
「な、なんだこれは!」
「やっ み、見ないで!」
シェルダンと母は写真を目にすると弾かれたように写真の上に覆い被さり、自分の元へと掻き寄せている。
「こ、これはっ!」
母が隠し切れなかった写真を一枚手に取る伯父。
その声は、驚きと憤りに震えていた。
!!バアン!!
「これはどういうことだ! クロディーヌ!!」
伯父は写真をテーブルに叩きつけ立ち上がった。
「お、お兄様…っ」
声を震わせながら伯父を見る母。
「アレットから手紙をもらったんだ。自分の婚約者が不貞を働いているようだから、調査したい。その為、調査機関を紹介して欲しいと言われた。まさか…まさかその相手がお前だったとは!」
バシンッ
「おまえには常識もモラルもないのか!」
伯父が怒鳴りながら、母を殴り始めた。
「い、痛…っ や、やめ…っ」
「夫の喪が明けていないばかりか、娘の婚約者と!!」
バシン!
「い、痛い! や、めてっ お願い…っ」
「うるさい! この恥知らずがああああ!!」
バシン!!
ガタタッッ
何度も叩かれた母は、殴られた拍子に床に突っ伏した。
「や、やめて…っ お願…っ も…やめ…っ…うっう…っ」
母はさめざめと子供のように涙する。
そんな姿を見ても、自業自得だと心の中で冷静になっている自分がいた。
そう…伯父には母の事は伏せ、調査機関を紹介してもらった。
どんな手を使って潜入したか知らないけれど、かなりきわどい写真ばかり。
とても優秀な調査員だったのね。
シェルダンと彼のご両親は、伯父の怒りを前に真っ青になりながら身を縮めるばかりだった。
「証拠は十分にあると思うわ? シェルダン。よってあなたとの婚約を破棄させていただきます。もちろんあなたの有責だがら慰謝料を請求させていただくわ。事前に弁護士に算出してもらった請求額よ」
私はシェルダンの前に、請求額が記載されている一枚の紙を差し出す。
「!! こ、こんな法外な金額…っ」
渡された書類を目にすると、彼の顔色は無くなっていた。
私との婚約が破棄されれば、シェルダンは職に就かなければならなくなる。
どんな職業に就けたたとしても、爵位を持たないあなたに到底払える金額ではない。
子爵家は小さな領地だ。ご両親や後継者であるご長男が、不貞の上、婚約破棄された身内をどこまで助けるか…それでも支払いが終わるまでには数十年かかるだろう。
でも…一応婚約者として過ごした期間を考慮して、最後の温情を与えてあげるわ。
「但し、私からの条件を飲むのなら、この慰謝料を減額してもよろしくてよ?」
「じょ、条件…?」
「私とシェルダンが婚約破棄した後、二人には結婚してもらいます。シェルダンとあなたに」
「「な!?」」
私の言葉に、シェルダンと母は揃って固まる。
そんな二人には構わず、私は話を続けた。
「そして離縁は許さないわ。あと母に関してアルブルグ家は、今後一切関知しません。その事に関して記載してある念書に、承諾する旨の署名捺印をしてもらいたいの」
そう言いながら、シェルダンの目の前に婚約破棄承諾書と念書を置いた。
「ま、待ってくれ! な、何を言っているんだっ アレット!!」
固まっていたシェルダンが覚醒したようだ。
「そうよっ アレット! な、何を言っているの?! 彼は爵位を持てないのよ!? そんな人となぜ私が…!」
二人とも、私の提案に慌てふためいていた。
「あなたに拒否権はないわ、お母様。アルブルグ侯爵家の当主はこの私よ。当主の言葉に従って貰います」
「あ、あなた! 母親である私を侯爵家から追い出すつもりなの?!」
「娘の婚約者を寝取るような母親、私には必要ないわ」
「ア、アレット…ッ」
私の拒絶に母は驚いている。
「ゆ、許して欲しい、アレット! ぼ、僕が愛しているのは君だ! 君だけだ!! か、彼女とは…本当に…出来心で……」
シェルダンは、ブルブルと震える手を私に差し出しながら愛を告げる。
今更何を言っているのかしら、この人。
この人が言葉を発する度に、心が冷えていく。
そして、シェルダンの言葉に反論したのは母だ。
「シェルダン! 嘘はやめて! あなたは私を何度も抱きながら言ってくれたでしょう? 愛してるって! アレットッ あなたは私とそっくりで若くても、しょせん私の偽者なのよ! 誰よりも愛されているのはこの私! あなたなんかじゃないわ!!」
「うるさいっ 黙れ!」
「シェルダン!?」
……――――――― 何それ?
母が私を嫌っていたのは自分と顔が似ていて若いから?
もしかして母は、自分と娘である私をいつも比較していたの?
そんなくだらない理由で、私は母に冷たくされていたというの?
私は、こんな人の愛情をずっと求めていたの?
「……」
母の言動でいちいち傷ついていた自分がバカバカしくなった。
「…痴話喧嘩は私の話を終えてからしてもらえませんか? 我が国では離婚した女性は六か月間再婚禁止の法律があるけれど、それまでここで暮らされても困るわ。だから今日から彼と一緒に暮らして下さいね、お母様」
「い、いやよ! 私は侯爵家を出て行かないわっ シェルダンは爵位を持たないのだから、彼と結婚したって意味ないじゃない!」
「あなたの都合など関係ないんですよ。これは当主として私が下した決定事項よ」
「アレット!」
「あなたがいらっしゃると、話が進まないわ」
チリンチリン
「お母様を部屋へお連れして。逃げ出さないように見張りをつけてね。あと、お母様の荷物をまとめて差し上げて。今日から別の場所でお暮しになるから」
「かしこまりました」
「ちょ、やっ は、放しなさいっ 放して! アレット!!」
二人の侍女に両脇からがっちりつかまれた母は、部屋から連れ出された。
静寂が戻った部屋で、私は話を進める。
「では、改めて婚約破棄承諾書と念書に署名捺印をお願いいたします。 あと条件を破った場合、もともとの金額を請求します。その事に関しましても念書には全て記載しておりますから、そのおつもりで」
シェルダンもパドリアス子爵夫妻も項垂れ、何も言えない様子。
反論も言い訳も許されない空気を破る度胸はないみたい。
それに私の提案を受け入れなければ、パドリアス子爵家まで道連れになる。
だからあなたは私の条件を飲まざるを得ないのよ、シェルダン。
それに伯父がキレた事が、かえって良い効果を生み出したらしい。
「す、すまなかった…アレット…本当に…」
震える手で署名と捺印を終えたシェルダンが、私への謝罪の言葉を口にした。
「謝るくらいなら最初から私を裏切らなければ良かっただけの事。そんな簡単な事も分からないような愚かな人間、私にふさわしくないわ。結婚前に分かって良かった」
「……っ」
最後の糸を切られたかのような表情のシェルダン。
同情の余地なしだわ。
あの母を妻に据え、これからのあなたの人生どうなるか楽しみね。
⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷
※日本では民法が改正され、現在は離婚後すぐに再婚することが可能になったんですね。
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