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第5話 戻って来た我が家
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「失礼いたします」
私は久しぶりに実家に戻った。
結婚して遠方に住んでいた…母の妹である叔母と一緒に。
叔母の顔を見て、彼は驚いていた。
「き、君はデリーヌの妹の…?」
「ええ、ラフリーヌです。お久しぶりですね、お義兄様」
叔母は満面の笑みを浮かべながらカーテシーをした。
目は笑っていないけれど。
「ところでお義兄様は、ここで何をなさっているのかしら?」
「な、何を言っているんだっ ここは私の家だ! 私がいて当然だろう!」
「あなたに何の資格があるのかしら? ここの当主はアーマコットよ。姉との婚姻時、そう誓約書に書かれていたし、あなたはサインしたでしょう。ほら」
そういうと叔母は少し黄ばんだ紙を彼の目の前に取り出した。
「そ、それをどこで! あいつの部屋をいくら探しても見つからなかったのにっ あっ」
自分で失言したと思ったのか、あわてて口を塞いでいた。
「見つけたらどうしていたのです? 破り捨てていましたか? それとも偽造しましたか? 爵位継承放棄承諾書のように」
「ど、どうしてそれを…っ!」
私の言葉に彼の顔色が一気に変わった。
そんな彼に追い打ちをかけるように叔母が責める。
「そもそもあなたは婿でしょう? 我がエルゴー伯爵の血は一滴も入っていないのに、なぜ当主然としてこの屋敷に居座っているのです? アーマコットが18歳になり成人した時点で、あなたの当主代理は終了しているはずです。アーマコットの許可があれば別ですが…許可しているの?」
そう言いながら私の方を振り返った叔母。
「いいえ、全く」
私は汚らわしいものを見るかのように、彼に冷たい視線を送った。
「ア…アーマコット?」
彼は私の言動が予想外のようで、驚いていた。
それもそうだろう。
今までの私は、彼の顔色を伺っていた。
だから、このように突き放した言い方をしたのは初めてだった。
「あ、あなたっ 当主代理だったの!? 私にはそんな事一言も言わなかったじゃない!」
叔母様の言葉に反応し、突然イザリアが会話に割って入り怒り出した。
「ああ、部外者は黙っていて!」
叔母様は忌々しそうにイザリアの言葉を遮った。
「部外者ですって!? 私は伯爵夫人よ!!」
「だからっ この男が伯爵家の当主ではないのにあなたが伯爵夫人になれる訳がないでしょう? 私の話、聞いていらっしゃいました? 少しはない頭を使いなさいな」
「な、なんですって!!」
イザリアが青筋を立てて怒り出した。
面倒臭そうに叔母がパチンと指を鳴らすと、外で控えていた護衛騎士たちが入ってきて喚いているイザリアを引きずり出した。
「や、やめて! 何をするの!? あ、あなたっ 助けてよ!!」
「イ、イザリア!」
「お母様!」
屈強な二人に両脇を抱えられ連れて行かれたイザリアを見て、声を上げていたその夫と娘のロレーヌ。
ジョシュアは腑抜けたようにぼーっとしている。
こんなに頼りない人だったかしら。
私はロレーヌとジョシュアに向き合った。
さあ、引導を渡そう。
「さて、ロレーヌ。あなたには慰謝料を請求します。もちろん私の元夫との不倫に対してです。ご実家の男爵家がどこまで援助してくれるかは知りませんけれど。ジョシュア、当然あなたにも請求しますから、そのおつもりで。二人を連れて行って下さい」
私の言葉に騎士たちが動く。
「ま、待ってっ アーマコット…っ おねが…っ」
「ア、アーマコットッ 僕が悪かったよっ だ、だから…」
騎士たちに連れていかれながら二人が何か言っていたけれど、もう遅すぎですわ。
そして最後は…
次々に連れて行かれる人たちを見て、呆然としている彼に目をやった。
「先程のお話の続きですけれど、あなたがしてきた事は犯罪だと分かっていらっしゃいますか?」
「そ、それは…」
額に汗をかきながら頭の中で言葉を探しているようですけど、何も出てこないみたいですね。
資産も不動産も領地も全てエルゴー家の物だ。
祖父亡き後、長子である母の許可なく勝手に運用する事はできない。
それは婚姻の際、別途取り交わした誓約書に記載されている。
万が一、母の承認を得られない状態の場合は、母の夫が代理で行う事は是とするが、私的運用は不可の旨も書かれていた。
だがもともと体の弱い母が私を出産した事でし臥し起きがちになり、それをいい事に彼はイザリアやロレーヌたちに使い込んでいた。
完全に誓約書の内容に反している。
それに成人した時点で、エルゴー家の後継者は私だ。
そもそも婿養子の彼にその資格はない。
母が夭折したため、私が成人するまで彼が代理当主として担う事になっていたが、この人は勝手に爵位継承放棄承諾書を作成し法務院に申請した。
横領と文書偽造
「私はあなたを告訴します」
「ま、待ってくれ! 私はおまえの父親だぞ! その父を訴えるのか!? 私が牢に入れられてもいいのか!」
「ええ、全く構いません」
「な、なんだと!?」
「だってあなたは私の父親ではないのですもの」
「………………え?」
まさに鳩が豆鉄砲を食らったようなまぬけなお顔をされていらっしゃる。
私は久しぶりに実家に戻った。
結婚して遠方に住んでいた…母の妹である叔母と一緒に。
叔母の顔を見て、彼は驚いていた。
「き、君はデリーヌの妹の…?」
「ええ、ラフリーヌです。お久しぶりですね、お義兄様」
叔母は満面の笑みを浮かべながらカーテシーをした。
目は笑っていないけれど。
「ところでお義兄様は、ここで何をなさっているのかしら?」
「な、何を言っているんだっ ここは私の家だ! 私がいて当然だろう!」
「あなたに何の資格があるのかしら? ここの当主はアーマコットよ。姉との婚姻時、そう誓約書に書かれていたし、あなたはサインしたでしょう。ほら」
そういうと叔母は少し黄ばんだ紙を彼の目の前に取り出した。
「そ、それをどこで! あいつの部屋をいくら探しても見つからなかったのにっ あっ」
自分で失言したと思ったのか、あわてて口を塞いでいた。
「見つけたらどうしていたのです? 破り捨てていましたか? それとも偽造しましたか? 爵位継承放棄承諾書のように」
「ど、どうしてそれを…っ!」
私の言葉に彼の顔色が一気に変わった。
そんな彼に追い打ちをかけるように叔母が責める。
「そもそもあなたは婿でしょう? 我がエルゴー伯爵の血は一滴も入っていないのに、なぜ当主然としてこの屋敷に居座っているのです? アーマコットが18歳になり成人した時点で、あなたの当主代理は終了しているはずです。アーマコットの許可があれば別ですが…許可しているの?」
そう言いながら私の方を振り返った叔母。
「いいえ、全く」
私は汚らわしいものを見るかのように、彼に冷たい視線を送った。
「ア…アーマコット?」
彼は私の言動が予想外のようで、驚いていた。
それもそうだろう。
今までの私は、彼の顔色を伺っていた。
だから、このように突き放した言い方をしたのは初めてだった。
「あ、あなたっ 当主代理だったの!? 私にはそんな事一言も言わなかったじゃない!」
叔母様の言葉に反応し、突然イザリアが会話に割って入り怒り出した。
「ああ、部外者は黙っていて!」
叔母様は忌々しそうにイザリアの言葉を遮った。
「部外者ですって!? 私は伯爵夫人よ!!」
「だからっ この男が伯爵家の当主ではないのにあなたが伯爵夫人になれる訳がないでしょう? 私の話、聞いていらっしゃいました? 少しはない頭を使いなさいな」
「な、なんですって!!」
イザリアが青筋を立てて怒り出した。
面倒臭そうに叔母がパチンと指を鳴らすと、外で控えていた護衛騎士たちが入ってきて喚いているイザリアを引きずり出した。
「や、やめて! 何をするの!? あ、あなたっ 助けてよ!!」
「イ、イザリア!」
「お母様!」
屈強な二人に両脇を抱えられ連れて行かれたイザリアを見て、声を上げていたその夫と娘のロレーヌ。
ジョシュアは腑抜けたようにぼーっとしている。
こんなに頼りない人だったかしら。
私はロレーヌとジョシュアに向き合った。
さあ、引導を渡そう。
「さて、ロレーヌ。あなたには慰謝料を請求します。もちろん私の元夫との不倫に対してです。ご実家の男爵家がどこまで援助してくれるかは知りませんけれど。ジョシュア、当然あなたにも請求しますから、そのおつもりで。二人を連れて行って下さい」
私の言葉に騎士たちが動く。
「ま、待ってっ アーマコット…っ おねが…っ」
「ア、アーマコットッ 僕が悪かったよっ だ、だから…」
騎士たちに連れていかれながら二人が何か言っていたけれど、もう遅すぎですわ。
そして最後は…
次々に連れて行かれる人たちを見て、呆然としている彼に目をやった。
「先程のお話の続きですけれど、あなたがしてきた事は犯罪だと分かっていらっしゃいますか?」
「そ、それは…」
額に汗をかきながら頭の中で言葉を探しているようですけど、何も出てこないみたいですね。
資産も不動産も領地も全てエルゴー家の物だ。
祖父亡き後、長子である母の許可なく勝手に運用する事はできない。
それは婚姻の際、別途取り交わした誓約書に記載されている。
万が一、母の承認を得られない状態の場合は、母の夫が代理で行う事は是とするが、私的運用は不可の旨も書かれていた。
だがもともと体の弱い母が私を出産した事でし臥し起きがちになり、それをいい事に彼はイザリアやロレーヌたちに使い込んでいた。
完全に誓約書の内容に反している。
それに成人した時点で、エルゴー家の後継者は私だ。
そもそも婿養子の彼にその資格はない。
母が夭折したため、私が成人するまで彼が代理当主として担う事になっていたが、この人は勝手に爵位継承放棄承諾書を作成し法務院に申請した。
横領と文書偽造
「私はあなたを告訴します」
「ま、待ってくれ! 私はおまえの父親だぞ! その父を訴えるのか!? 私が牢に入れられてもいいのか!」
「ええ、全く構いません」
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