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私 細川卯月
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家の近くの駐車場というのは、四月に智子の家へと向かった際に使ったコインパーキングだった。小学校の学区も同じで家も近いため必然的に使うコインパーキングも同じなのだろう。先生が住所を知っているのは入部届に記載してあったからで、以前どこに住んでいるかという話題になった記憶がある。なんでも、住んでいる場所で育てている作物や地域の文化などが分かるのだとか。私の親はどちらも県外の出身でアパート暮らしのためあまり地域での交流は多い方ではない。しかし生田先生からこの辺りは元々田んぼばかりの地域で収穫祭も兼ねた秋祭りに力を入れているとか、地主と近くにある神社の神主が力を持っていたからその家系の政治家が多くて交通整備が進んでいるなんて聞かされて驚いた。確かに秋祭りは他の地域に比べて規模が大きいし、住宅街にしては道路も公園も広い。歴史の授業とかは好きなので歴史を学ぶことで今の環境も推察できるなどと聞いたときには目から鱗だった。理科の先生とはいえ、歴史の勉強をすることの面白みを教えてくれたりしたのも生田先生の良いところだと思う。
そんなことを考えながらも生田先生を案内するように先導して私の家まで歩く。私の家は私が幼稚園に上がる頃に新築された家族向けの3LDKアパートで、外観も綺麗なクリーム色の建物だ。駐車場もありはするが、一部屋につき一台な上に満室のため先生の車を停めるスペースは無かった。小さい頃は他の家の子たちと駐車場でバドミントンをしたりもしていた。運動嫌いの智子が嫌々付き合ってくれていたことを思い出す。……もし引っ越してしまったら智子と遊ぶことはできなくなるのかもしれない。
「二〇五号室です」
先生にそう告げると私は階段を上がる。二階建てで各階に四部屋ずつの計八部屋があるアパート。その二階の角部屋が私の家だ。駐車場にお父さんの車も停まっていたことだし、もう家に二人とも帰っているはずだ。話をするために残業もせずに帰って来たのだろう。
ドアノブを回して引っ張ると鍵はかかっておらず、すっと玄関が開く。中から声は聞こえてこない。ひとまず喧嘩をしている様子が無くて安心する。
「ただいま」
おかえりの言葉はなく、私は靴を脱ぐと先生を玄関に残して中へと入っていく。
「ちょっと待っててください。両親に先生が来たこと伝えてきます」
お父さんもお母さんも学校の先生が訪ねて来てくれたのに無礼に追い返すような人ではない。言い方が悪いかもしれないが外面は良く礼儀正しい人たちだ。リビングに入ると、お父さんとお母さんは黙ってコーヒーを飲みながら座っていた。お父さんは仕事終わりのワイシャツ姿。お母さんも職場の調剤薬局の制服のまま。見るからに不機嫌そうで、家族なのに話しかけることに緊張してしまう。しかし、先生のことを話さないわけにはいかない。
「帰るの遅くなってごめん……。それと、学校の先生が家庭訪問にって来てくれてるんだけど……」
尻すぼみにそう言うと、お母さんは慌てたような顔をして声を上げた。
「来るなら来るって早く言ってよね。何の準備もできてないのに。ちょっと待って」
そう言いつつ、お母さんは流し台に少し溜まっていた食器を急いで洗うと片付けた。一分か二分程度だろうか。お母さんは食器を片付けた足でそのまま玄関へ向かう。
「すみません。何の連絡もせずに押し掛ける形になってしまって」
出会い頭で先に声を出したのは生田先生だった。玄関で靴も脱がずに姿勢よく立つ姿は流石教師といった風格。そんな生田先生の姿にお母さんは深々と頭を下げた。
「こちらこそ、お忙しいところお越しいただいてすみません。家庭の事情でバタバタしてしまっていまして、ご心配おかけしたんだと思います」
私はまだ何も言っていなかったけれど、お母さんはどうして突然先生が来たのかをすぐに察したようだった。
「どうぞお上がりください」
そんなことを考えながらも生田先生を案内するように先導して私の家まで歩く。私の家は私が幼稚園に上がる頃に新築された家族向けの3LDKアパートで、外観も綺麗なクリーム色の建物だ。駐車場もありはするが、一部屋につき一台な上に満室のため先生の車を停めるスペースは無かった。小さい頃は他の家の子たちと駐車場でバドミントンをしたりもしていた。運動嫌いの智子が嫌々付き合ってくれていたことを思い出す。……もし引っ越してしまったら智子と遊ぶことはできなくなるのかもしれない。
「二〇五号室です」
先生にそう告げると私は階段を上がる。二階建てで各階に四部屋ずつの計八部屋があるアパート。その二階の角部屋が私の家だ。駐車場にお父さんの車も停まっていたことだし、もう家に二人とも帰っているはずだ。話をするために残業もせずに帰って来たのだろう。
ドアノブを回して引っ張ると鍵はかかっておらず、すっと玄関が開く。中から声は聞こえてこない。ひとまず喧嘩をしている様子が無くて安心する。
「ただいま」
おかえりの言葉はなく、私は靴を脱ぐと先生を玄関に残して中へと入っていく。
「ちょっと待っててください。両親に先生が来たこと伝えてきます」
お父さんもお母さんも学校の先生が訪ねて来てくれたのに無礼に追い返すような人ではない。言い方が悪いかもしれないが外面は良く礼儀正しい人たちだ。リビングに入ると、お父さんとお母さんは黙ってコーヒーを飲みながら座っていた。お父さんは仕事終わりのワイシャツ姿。お母さんも職場の調剤薬局の制服のまま。見るからに不機嫌そうで、家族なのに話しかけることに緊張してしまう。しかし、先生のことを話さないわけにはいかない。
「帰るの遅くなってごめん……。それと、学校の先生が家庭訪問にって来てくれてるんだけど……」
尻すぼみにそう言うと、お母さんは慌てたような顔をして声を上げた。
「来るなら来るって早く言ってよね。何の準備もできてないのに。ちょっと待って」
そう言いつつ、お母さんは流し台に少し溜まっていた食器を急いで洗うと片付けた。一分か二分程度だろうか。お母さんは食器を片付けた足でそのまま玄関へ向かう。
「すみません。何の連絡もせずに押し掛ける形になってしまって」
出会い頭で先に声を出したのは生田先生だった。玄関で靴も脱がずに姿勢よく立つ姿は流石教師といった風格。そんな生田先生の姿にお母さんは深々と頭を下げた。
「こちらこそ、お忙しいところお越しいただいてすみません。家庭の事情でバタバタしてしまっていまして、ご心配おかけしたんだと思います」
私はまだ何も言っていなかったけれど、お母さんはどうして突然先生が来たのかをすぐに察したようだった。
「どうぞお上がりください」
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