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KAZU:三日目②
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あれからまるで喧嘩腰のようなメッセージが一通あっただけでそれに返信もしなかった。憂鬱な気持ちの俺のところへ五時間目の後の休み時間に心春と智也がやって来る。
「二人の仲直りの架け橋になった俺に何かプロテインドリンクの一本くらい奢ってくれてもバチは当たらないと思うんだけど?」
「別に私達喧嘩してた訳じゃないし! ね? 和樹!」
智也の話を聞くに、昨日の部活中に俺と何かあったのか心春に聞いていたのだとか。喧嘩ではなかったとはいえ、二人のすれ違いが解消されたことに一役買ってくれたことは間違いないわけだし。
「んー確かに喧嘩してたわけじゃなかったけど……まあジュース一本くらいなら」
「ストロベリー味のやつな!」
「はいはい」
恨めしそうな眼を向けてきつつもそれ以上何も言ってこない智也には後でこっそりジュース一本くらい奢ってやろうかと思う。
「ところでさ。例の山内って人はあれからどうなったの? 連絡取ってる?」
話を変えた心春は心配そうに聞いてきた。
「いや。昼休みに訳わからないメッセージが来てから返信してないし、向こうからも何もないよ」
「せっかくファンができたと思ったのに残念ね」
「ファンって何?」
「あ……」
心春の不用意な発言に智也が食いついた。心春はやってしまったとばかりに表情を固めてこちらを見る。智也は俺か心春のどちらかが堪えてくれるのを待つように何度も視線を行き来させていた。俺が小説を書いていると知っているのは心春だけ。智也も友達だが、小説を書いていることを教えるのには抵抗がある。馬鹿にされるのではないか、ひかれるのではないかと不安な気持ちがある。
何も言わない俺を見て不安になったのか、心春が取り繕おうと口を開く。
「いや、言葉の綾というかね。和樹のことを好きになってた女の人がいると思ったのに残念だなーって」
「なんか余計に怪しいな。もしかして隠れてユーチューバーでもやってたとか?」
「違うって違うって」
焦ってあたふたしている心春は珍しい。本当にどうしようかと困っている様子。俺以上にパニック状態になっているおかげで逆に俺が落ち着くことができるほど。何か腹の立つことがあっても、近くで自分以上に怒っている人がいると逆に冷静になれるなんて話を聞いたことがあるが、それと同じようなものだろうか。
「心春には教えてて俺には教えられないって言われるとなー」
「そうじゃないって! どうしよう和樹?」
「ほら、やっぱり何かあるんじゃん」
「ごめん和樹。ごめーん」
話せば話すほど墓穴を掘っていく心春はとうとう俺に平謝りしながら縋り付いてきた。そこまでされると俺も笑うしかなくなってくる。智也になら……言っても良いかもしれないな。
「なんて言うか……ネット小説書いてるんだよ」
尻すぼみではあるが一応俺の口からそう伝えた。それに対して智也は表情を変えることなく質問を重ねた
「エロいやつ?」
「普通のやつ!」
そう俺が堪えた瞬間、智也は声を上げて笑い始めた。
「ほら……そうやって馬鹿にするから言いたくなかったんだよ」
心春は今にも泣き出しそうに顔を蒼くしていた。
「いやいや、馬鹿にしてないって。そんなに心配してたのかと思うと可笑しくなっただけだよ。俺も深夜アニメとか見るし、別に偏見とか無いって。てか俺も読みたい」
「それはちょっとまだ心の準備が……」
「ふーん。ま、見られたくないなら良いや。下手な時に練習風景を見られたくない様なもんだろ?」
「違うような気もするけど、そう言ってくれると助かるよ」
「でも見ても良いってなったら言えよな」
もしかしたら、智也のこういう寛容な考えのおかげで友達としてやっていけるのかもしれない。俺も見習わないといけない。
「よし! じゃあ三人で絆が深まった握手!」
一安心したのか、心春がそう言って俺と智也とニコニコと笑いながら握手をする。
「心春?」
「はい……」
俺の声色に何かを察したのか、心春は急に固まった。
「智也へのプロテインドリンクは心春の奢りな」
「はい……」
心春はまるで叱られて尻尾を丸めた犬のようになっていた。
「二人の仲直りの架け橋になった俺に何かプロテインドリンクの一本くらい奢ってくれてもバチは当たらないと思うんだけど?」
「別に私達喧嘩してた訳じゃないし! ね? 和樹!」
智也の話を聞くに、昨日の部活中に俺と何かあったのか心春に聞いていたのだとか。喧嘩ではなかったとはいえ、二人のすれ違いが解消されたことに一役買ってくれたことは間違いないわけだし。
「んー確かに喧嘩してたわけじゃなかったけど……まあジュース一本くらいなら」
「ストロベリー味のやつな!」
「はいはい」
恨めしそうな眼を向けてきつつもそれ以上何も言ってこない智也には後でこっそりジュース一本くらい奢ってやろうかと思う。
「ところでさ。例の山内って人はあれからどうなったの? 連絡取ってる?」
話を変えた心春は心配そうに聞いてきた。
「いや。昼休みに訳わからないメッセージが来てから返信してないし、向こうからも何もないよ」
「せっかくファンができたと思ったのに残念ね」
「ファンって何?」
「あ……」
心春の不用意な発言に智也が食いついた。心春はやってしまったとばかりに表情を固めてこちらを見る。智也は俺か心春のどちらかが堪えてくれるのを待つように何度も視線を行き来させていた。俺が小説を書いていると知っているのは心春だけ。智也も友達だが、小説を書いていることを教えるのには抵抗がある。馬鹿にされるのではないか、ひかれるのではないかと不安な気持ちがある。
何も言わない俺を見て不安になったのか、心春が取り繕おうと口を開く。
「いや、言葉の綾というかね。和樹のことを好きになってた女の人がいると思ったのに残念だなーって」
「なんか余計に怪しいな。もしかして隠れてユーチューバーでもやってたとか?」
「違うって違うって」
焦ってあたふたしている心春は珍しい。本当にどうしようかと困っている様子。俺以上にパニック状態になっているおかげで逆に俺が落ち着くことができるほど。何か腹の立つことがあっても、近くで自分以上に怒っている人がいると逆に冷静になれるなんて話を聞いたことがあるが、それと同じようなものだろうか。
「心春には教えてて俺には教えられないって言われるとなー」
「そうじゃないって! どうしよう和樹?」
「ほら、やっぱり何かあるんじゃん」
「ごめん和樹。ごめーん」
話せば話すほど墓穴を掘っていく心春はとうとう俺に平謝りしながら縋り付いてきた。そこまでされると俺も笑うしかなくなってくる。智也になら……言っても良いかもしれないな。
「なんて言うか……ネット小説書いてるんだよ」
尻すぼみではあるが一応俺の口からそう伝えた。それに対して智也は表情を変えることなく質問を重ねた
「エロいやつ?」
「普通のやつ!」
そう俺が堪えた瞬間、智也は声を上げて笑い始めた。
「ほら……そうやって馬鹿にするから言いたくなかったんだよ」
心春は今にも泣き出しそうに顔を蒼くしていた。
「いやいや、馬鹿にしてないって。そんなに心配してたのかと思うと可笑しくなっただけだよ。俺も深夜アニメとか見るし、別に偏見とか無いって。てか俺も読みたい」
「それはちょっとまだ心の準備が……」
「ふーん。ま、見られたくないなら良いや。下手な時に練習風景を見られたくない様なもんだろ?」
「違うような気もするけど、そう言ってくれると助かるよ」
「でも見ても良いってなったら言えよな」
もしかしたら、智也のこういう寛容な考えのおかげで友達としてやっていけるのかもしれない。俺も見習わないといけない。
「よし! じゃあ三人で絆が深まった握手!」
一安心したのか、心春がそう言って俺と智也とニコニコと笑いながら握手をする。
「心春?」
「はい……」
俺の声色に何かを察したのか、心春は急に固まった。
「智也へのプロテインドリンクは心春の奢りな」
「はい……」
心春はまるで叱られて尻尾を丸めた犬のようになっていた。
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