7番目のシャルル、聖女と亡霊の声

しんの(C.Clarté)

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【番外編】歴史コラム・資料・作者の覚書など

【資料】シャルル七世(12歳)が兄の王太子に送った手紙(1)

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幼少期のシャルル七世(12歳)が兄の王太子・ギュイエンヌ公に送った手紙を見つけたので、日本語に翻訳しました。

オリジナルは、フランス国立図書館所蔵。
1425年11月23日付けと書かれています。
アジャンクールの戦い(10月25日)の一ヶ月後ですね。
のちのシャルル七世はまだ12歳の王子にすぎず、称号はポンティユ伯。

当時、シャルルには歳の離れた兄が二人もいたので、王位を継承する可能性は低く、婚約者マリー・ダンジューの実家アンジュー公夫妻のもとで養育されていました。

手紙によると、パリから遠く離れた地で、王国のことを憂いていたようです。

というのも、これから紹介する内容から推測して、
この手紙の前にも、シャルルからをしたためた手紙を送っている……?ように読めるからです。

ようするに、「1枚目の手紙の返信ください!」という催促っぽい。



============
ポンティユ伯爵、会計検査院にて
1415年11月23日

親愛なる良き友人、パリの国王陛下の顧問および監査役たちへ
フランス王の息子、ポンティユ伯シャルルより

聡明で良き友である彼らは国王陛下のために剣を捧げました。
ギュイエンヌ公爵殿下のご助言とご配慮のもとでさえ、
私たちはこのような災難に見舞われました。
つきましては、ヴァンセンヌの森にある砦を
守護する隊長(砦の城主)を私に命じてください。

この件について、ギュイエンヌ殿下が
私たちに下さった書簡をご覧になればおわかりのように、
この手紙は、貴殿に確認していただくために渡したものです。

親愛なる忠実な騎士であり侍従長であるペアン・ド・メイエ卿と、
親愛なるエスクワイア(従騎士)ジャン・ルヴローを使者として送り、
この手紙を預けます。

このような理由から、
私たちは、私たちのために、私たちの名において、
前述したヴァンセンヌの砦、および城に付属する物品その他を
管理して守るための役目を要求します。私たちを砦に派遣してください。

騎士と従騎士は、私のもとを離れてから、
前の手紙について検討していただけたのか確証を得られず、
したがって、この件について動くこともできず、
この仕事は、貴殿によって放置または先延ばしされていると
私に報告しました。

なぜなら、貴殿は他の仕事を抱えているからだと、
また、ボルヌ・フーコー(砦の本来の城主)の生死は未確認で、
多くの人々が彼は生きていると信じているからだと聞きました。

ですが私は、本件について(砦を守る城主がいない状況)
たとえ王の息子であろうと、
このようなこと(状況の放置・先延ばし)を
決してすべきではないと考えています。

親愛なる友人たちよ、このような理由から
現在、私はこの手紙を書いています。

森の砦を守護する隊長(城主)の任にあたるように、
約束した書簡をすぐに検証してください。

貴殿がこれらのことを考慮し、よく考え抜いた上で、
さらに当該地域の同胞に対して、
私たちに何ができるか、何を与えるかについて、
適切かつ迅速に遠距離通信することをお願いします。

貴殿が受け取るもの、貴殿に帰属するものについて、
貴殿が私たちを喜ばせたいと考えていることを
私たちが認識できるように

また、貴殿の意志と願望が、
他の権力者のように「遠回しな説明」や「長い遅延」ではなく、
私たちの仕事や報酬を実行したり守るためではないことを
ご理解ください。

それから、この件について再び説明したり、
再び使者(手紙)を送ったり、
主君に申し上げる必要がないように取り計らってください。

そうすれば、別の方法で、貴殿の問題に対処することができます。
私たちに楽しい喜びを与え、
いざというとき、あるいは任務を譲るときが来ても、
私たちは今回の件をよく覚えていることでしょう。

この手紙を、さらによく理解していただくために、
私自身の意志に基づいていること、
また私がこの手紙に込めている愛情を示すために、
自筆で記しました。

これはあなたがたを聖なる御許に置いておられる主の印章である(締めくくりの聖句)

11月23日、ヴェルノンにて。
シャルル
============



完璧に翻訳できているとは言い難いですが、大体こんなニュアンスではないかと。

兄の王太子(ギュイエンヌ公)に送った……というか、
「取り巻きの家臣たちが受け取る→先に読まれる」ことを意識している内容に見えます。

12歳にしては聡明。公文書ではなく私信ということもあってか、シャルル七世の人柄が滲み出ているように見えませんか。

アジャンクールの戦いの一ヶ月後であることを念頭に置くと、「フランス王国の状況」と「シャルルが短期間に二度も手紙を書いてまで訴えている内容」がなんとなーく見えてきます。いろいろ想像してみてね。

次回、私なりに解説してみます。


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